超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

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Chapter 8
Game83:不穏の幕開け


ギョウカイ墓場の黒い塔の下に辿り着いた舞達の前に顕現した犯罪神マジェコンヌ。

全員の力を合わせて撃破するが、舞達が撃破したのは犯罪神の器に過ぎなかった。

崩壊した器から姿を現した犯罪神の本体がギョウカイ墓場と融合してしまう。

 

さらに突如現れたファントムハートによって舞とアリアが闇の中に連れ去られ、

ギョウカイ墓場と融合した犯罪神が活動を開始したことで撤退を余儀無くされる。

ネプギア達は無事にプラネテューヌに帰還するが、全員揃っての帰還は叶わなかった。

 

「な、何があったんですか!?」

 

「いーすんさんっ…! 舞さんとアリアさんがぁ…!」

 

「舞とアリアが連れ去られるのを黙って見てることしかできなかったっ…!」

 

「ぐすっ…! 舞お姉ちゃんとアリアさん、どこに連れていかれたの…? もう会えないの…?」

 

「ひっぐ…! どうすれば、いいのか、わかんないよぉ…!」

 

バラバラだった自分達を繋いでくれた舞とアリアが闇の中に連れ去られた。

その事実は女神候補生達だけでは無く共に旅をした仲間達の心に深い傷を刻み込む。

 

「詳しいことは私から話すよ。セレナ、ネプギアちゃん達を部屋に連れていってあげて」

 

「わかった…! みんな、行こう? 二人が連れ去られてつらいとは思うけど、気持ちを落ち着かせないと二人を取り戻すことはできない…!」

 

「わかり、ました…!」

 

セレナとアイエフ達がネプギア達の手を握って部屋に連れていく。

シエルは一人その場に残ってイストワールに説明するつもりだったのだが

ふと後ろを振り返るとネプテューヌ達、四女神も同じ場に残っていた。

 

「あれ…? ネプテューヌ達は行かないの…?」

 

「ついて行きたいけど、ネプギアにどんな言葉をかけてあげればいいのかわかんないや…」

 

「私も同じよ…。ユニにかける言葉が出てこない…。本当に悔しいわ…」

 

「私もロムとラムに何を言えばいいのかわからないわ…。下手な言葉をかけてあの子達の心を傷つけることはしたくない…。言い訳に過ぎないけど…」

 

「自分をあまり卑下するのはよくありませんわよ? 私には妹はいませんがネプテューヌ達のネプギアちゃん達を思う気持ちはわかっているつもりです。連れ去られた二人を取り戻すために私達にできることを探しましょう?」

 

「つらい気持ちの中、申し訳ありませんが、お話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「わかった。それから私達にできることを考えてみようか」

 

シエルはイストワールにギョウカイ墓場で起きたことを説明する。

 

「そうでしたか…。犯罪神は器に収まってさえいれば倒せると思ったのですが、どうやら私の読みが甘かったようですね…。それに舞さんとアリアさんを連れ去ったファントムハート…。彼女は二人をこのタイミングで連れ去って何を始めるつもりなのでしょうか…?」

 

「準備が整ったから舞を迎えに来たって言ってたよね? あれってどういうことなの?」

 

「舞にゲハバーンを使わせる準備ができたって意味だと思う。ネプテューヌ達は聞いたことがないかな? 古の時代に犯罪神を倒すために作られたとある魔剣の話を」

 

「それならルウィーの歴史書で読んだことがあるわ…。かつて犯罪神を葬ったという魔剣が登場する物語…。あれって実話なの…? だとしたら、最悪の事態が想定できる…」

 

「聞いたことがあります。魔剣ゲハバーン、それは女神を喰らうことによって犯罪神を滅ぼす救済の刃と成る呪いの魔剣。今もこのゲイムギョウ界のどこかに存在していると…」

 

「魔剣ゲハバーンは守護女神を喰らう…。言い換えれば殺すことによってその真価を発揮する呪われた剣。ルウィーの歴史書にあった物語は本当にあった実話。歴史書の記述と違う点は当時の守護女神の妹である女神候補生が無事だったってことかな」

 

魔剣を手にした女神が自分以外の全ての女神を手にかけて犯罪神を滅ぼしたと言う物語。

犯罪神を滅ぼした守護女神がゲイムギョウ界を統べる支配者となり最後に魔剣に喰われる。

悲しき結末を迎える物語が今ファントムハートの手によって甦ろうとしているのだ。

 

「その無事だった四人の女神候補生の中に…」

 

「当時のゴールドハートの妹である私と魔剣を手にして支配者となった守護女神であるスカーレットハートの妹、今のファントムハートがいた…」

 

「セレナ…! ネプギアちゃん達は?」

 

「眠ったよ。今はコンパちゃん達が傍についてくれてる。ファントムハートは魔剣を手にした舞を自分の操り人形とすることで復活した犯罪神を消滅させようと目論んでいる。事実、それを可能とするだけの力を持っているからね」

 

ファントムハートが持っている力は他人の能力の強奪だけでは収まらない。

彼女の原点にして本質とも呼べる力はさらに悍ましい能力と言える。

 

「セレナが使っていた魔法の原典である月の魔術書と私の適応化能力を奪った能力は亡霊として甦ったことで得た力。あいつの本質とも言える真の力はまた別にある」

 

「あいつの真の力は人を弄ぶことに特化した力。洗脳は序の口と言っていい。それに加えてギョウカイ墓場で言っていたように人の感覚の操作、記憶と感情の改竄及び消去まで行うことができるから。実際あいつはその魔法を使って国民の信仰を得ていたからね。あいつにとっては国と国民は自分の娯楽を満たすためのオモチャに過ぎない」

 

自分が守護する国と国民でさえも彼女の眼にはオモチャという形でしか映らない。

その邪悪な欲望は留まることを知らない。人の欲望に終わりがないことと同じなのだ。

 

「じゃあ、私達は舞と戦わないといけないってこと!? そんなの嫌だよっ! そうなる前に助け出すことはできないの!?」

 

ネプテューヌの意見は最もである。連れ去られた舞がファントムハートの手によって

操り人形となる前に救出することができれば全て解決するがそう簡単にはいかない。

 

「ファントムハートがどこに潜んでいるのかは私とシエルにもわからない…。ネプテューヌの言う通り、潜んでいる場所を特定して二人を救出すれば最悪の事態は回避できるよ。でも、私達がその場所を見つけ出す前に先手を打たれると思う…。さらにアリアを一緒に連れ去ったってことは…」

 

「舞ちゃんを強引にシルバーハートとして覚醒させるつもりだと思う…。舞ちゃんの命を握られた状態だとアリアはファントムハートに逆らうことができない。私達はシルバーハートとなった舞ちゃんと戦うことを前提としてその時にどうやって二人を取り戻すのかを考える必要があるね」

 

アリアの力を借りている今の舞の状態は人間以上女神未満と言ったところである。

継承者から真の女神になることは人間を辞めるという意味と同義。

亡霊が持つ無限の欲望は一人の少女の運命を強引に塗り替えようとしているのだ。

 

シエル達が話し合いをしている頃、ファントムハートはとある場所にいた。

彼女が今いるこの場所はかつて自分が守護していた緋色の大地である。

別の言い方をすればスカーレットハートとして君臨していた自分が敗れた場所。

 

国を賭けた戦争が終結した後、緋色の大地は暗い海の底に沈められた。

ファントムハートは光の届かない闇の中で準備を進め、機会を窺っていたのである。

 

「この夢の跡地から最高のショーが始まる…。それにしても随分と粘るね?」

 

ファントムハートの眼に移るのは黒いコードに拘束されたアリア。

シェアエナジーを搾取され続けたことでアリアの体は半透明になっている。

舞の命を握られた状態では彼女に武力で抵抗するという選択肢は与えられない。

 

「っ…!」

 

「いい加減に楽になった方がいいと思うけどね。君を捕まえていた時は君を壊してしまわないようにアンチクリスタルの牢獄に細工をしていたけど今回は違う。君の力を全て搾取して神奈 舞と言う器に捧げれば君は跡形もなく消える。潔く散ったらどうだい?」

 

「私は絶対に、諦めないっ…! 私の体が、消えて無くなったとしても…」

 

「一体その気持ちはどこから湧いてくるのやら…。それだけの意志の強さが神奈 舞という最高のオモチャになり得る人間をこのゲイムギョウ界に呼び寄せたのかもしれない。何にせよ、君には感謝しなければならないね。最後に言い残す言葉はあるかい?」

 

「最後に、言い残す言葉なんて、無いよ…。あなたの、歪んだ欲望が、成就することは、絶対にあり得ないっ…!」

 

「死にぞこないの分際で随分と偉そうな口を聞いてくれるね。もういいや。君を遥かに凌駕する最高のオモチャが誕生する…。その糧になれたことを光栄に思うといいよ」

 

ファントムハートはアリアを拘束している装置の出力を最大まで上げる。

 

「ああああああっ! 舞っ…! ごめん、なさいっ…!」

 

舞に対する謝罪の言葉を最後にアリアは涙を流しながら銀色の光の粒子になった。

その場に残されたのはアリアが身に着けていた純白のドレスと太陽の髪飾り。

黒いコードを伝って反対側にいる舞に向かってアリアのシェアエナジーが流れ込む。

 

これがファントムハートが復活させた女神の力を強制的に人間に転写する装置である。

この装置は緋色の大地の裏側で行われていたとある実験の主軸を担っていた。

 

それが自分の能力で洗脳した人間に女神の力を強制的に転写する実験である。

転写された人間は女神の力に対して拒絶反応を起こして醜い怪物と化したのだ。

 

継承者である舞の場合はそのようなことは起きないが体にかかる負担は計り知れない。

アリアのシェアエナジーが舞の体の中に全て入り切ると黒い髪は銀色に変化した。

 

「ここは、どこ…?」

 

「お目覚めかい? ここがどこなのかを今さら知ったところで意味は無いよ」

 

「ファントム、ハート…! 私に、何をしたの…? アリアをどこにやったの…?」

 

「あの子はもういないよ? 舞、君はもう人間じゃない。新たなる銀の女神、シルバーハートとなった。これから君は私の最高のオモチャになる」

 

「っ…!」

 

混乱している舞の頭を右手で鷲掴みにする。

 

「うあっ…! 私に何を、するつもり…?」

 

「君の記憶を消去する。余分な感情もいらないと思うから消させてもらうね。かつては国民全員を手駒にしたこの力も亡霊となった今では一人を操るだけで精一杯…。でもそれでいい。さあ、君と言う存在を書き換えさせてもらうとしよう。苦しむのは一瞬で済むよ」

 

舞に告げると同時に右手に力を集中させると改竄能力を発動させた。

 

「嫌っ! 私の中に入ってこないでっ!」

 

「抵抗すれば君の苦しみは余計に増えるだけだよ?」

 

「うあああっ…! ネプ、ギアっ…! みんなっ…! 嫌だよぉ…!」

 

舞の悲痛な叫びはファントムハートの能力による蹂躙をさらに加速させる。

 

「嫌っ…! 嫌ああああ!」

 

闇の中に響き渡る悲鳴が記憶と感情の消去が完了したことを告げる。

ファントムハートは意識を失った舞の拘束を外して別の場所に転移した。

 

彼女が転移したのはゲイムギョウ界の中央に位置する山の頂上。

戦いの舞台のように見えるその場所にあるのは巨大な黒い繭と魔剣ゲハバーン。

ファントムハートは黒い繭の中に意識を失った舞とゲハバーンを入れる。

 

黒い繭は舞とゲハバーンを包み込むと濁った銀色のシェアの光を放出する。

それはゲイムギョウ界全体に広がる気流に乗って四つの国へ飛んで行った。

 

「ふふふっ…! さて、この場所に無事にたどり着けるかな?」

 

全ての準備を完了したファントムハートは不敵な笑みを浮かべる。

記憶と感情を消去された舞が黒い繭の中から目覚めるのはまだ少し先の話。

 

舞台は再びプラネテューヌに戻る。

 

「敵になった舞を止めるにはどうすればいいの?」

 

「舞を無力化する方法は一つ。それは魔剣ゲハバーンを破壊すること。ただ、舞はアリアと同じであらゆる武器の扱いと魔法を会得しているから破壊するのは至難の技。非常に厳しい条件だけど魔剣ゲハバーンを破壊すれば私達に勝機が回ってくると思うよ」

 

「難しい条件ね…。舞の強さは正直言って今の私達を遥かに超えてるじゃない。私達が束になって太刀打ちできるのかしら?」

 

「私達六人の守護女神、舞と強い繋がりを持ってる四人の女神候補生の力を合わせれば可能だよ。今のネプギアちゃん達の心には深い傷が刻まれてるから戦うことすらできない。でも、舞とアリアを助けたいって言う気持ちは私達と同じだし、困難な状況でも絶対に諦めない意志の強さを持ってるから今すぐは無理でもきっと四人で力を合わせて立ち上がってくれると信じてる」

 

四人の女神候補生の心には舞と同じ強い意志の力がある。

悲しみを乗り越えて自分達の力で再び立ち上がることができるはずだ。

それまでにできることは立ち上がった妹達を支えるために自らの力を上げること。

 

「ネプテューヌ達はみんな近接型だよね? それはシエルが主導の鍛錬でさらに力を伸ばしていく。それに加えて私が魔法を教えるよ。自分が守護する国の大地に宿る属性を主軸にした攻撃魔法を習得してほしい。ネプテューヌは雷、ノワールは火、ブランは氷、ベールは風の魔法を」

 

「どうやら方針が決まったようですね。実は舞さんと女神候補生の皆さんが日々頑張っているのを見て、用意させてもらった場所があるのです。闘技場という場所をご存知ですか?」

 

「あっ! それ舞と一緒に仕事してた時に闘技場の建設に関する書類を見たことがあるよ! もう完成したの!?」

 

「はい。実は女神が戦うところを直に見たいという国民からの要望が増えてきていまして、ギルドの方にも協力を仰いで建設を進めていました。今はまだ本格的に運用していませんが、情勢が落ち着けば誰でも参加することができる形で運用したいと考えています。勝ち抜けば女神に対する挑戦権を与えられるので思わぬ挑戦者がネプテューヌさんたちの前に姿を現すかもしれません。その場所を使って力を高めてください。ネプギアさん達の様子は私が責任を持って見ておきますので」

 

「ありがとっ! いーすん! 私、頑張るよっ!」

 

「私も負けてられないわね。舞を取り戻すために強くなってみせるわ!」

 

「あの子たちが安心して背中を預けられるように私達が頑張らないといけないわね…」

 

「足手まといにならないためにもレベルアップは必須ですわね」

 

ゲイムギョウ界を守護する四女神の意思が一つに纏まる。

早速行動を開始しようとしたその時にイストワールの元に連絡が入る。

 

「ギルドからですね? どうやら緊急クエストのようですが、これは何でしょうか…」

 

「何かおかしいところでもあるの?」

 

「いえ、内容は危険種であるフェンリスヴォルフ1体の討伐なのですが、何やら通常時とは異なる様子が見られるため注意して当たってほしいとのことなのです。気がかりではありますが放置しておくわけにはいきません。バーチャフォレストの最奥部に赴いて様子を見てきてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「全員で当たると守りが薄くなるから二人で様子を見にいってみようか。ネプテューヌ、私と行ってもらってもいいかな?」

 

「オッケー! シエルと私で様子を見てくるよ!」

 

「じゃあ、ノワール達は二人が出ている間は魔法の鍛錬をしようか。イストワール、その場所に案内してもらえる?」

 

「わかりました。シエルさん、ネプテューヌさん、注意して討伐に当たってください。厳しい時は無理をせずに撤退を」

 

「わかった。ネプテューヌ、行こうか?」

 

「うん! 私達の邪魔をするなら倒すだけだよ!」

 

シエルとネプテューヌはバーチャフォレストの最奥部に向かう。

通常時とは異なる様子が見られるというのはいったい何を意味しているのだろうか。

不穏な空気がこのゲイムギョウ界に漂い始めていた。

 

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