イストワールからの連絡で明らかになったゲイムキャラの居場所。
私達はバーチャフォレストの最奥部で眠りに就いていると言われる
プラネテューヌのゲイムキャラを探すため、最奥部を探索している。
バーチャフォレストの最奥部は先ほどまで私達がいた草原地帯とは
また一味違った雰囲気の場所になっていた。私達が立っている地面は
自然的な物と言うより人工的な感じが強い。さらに目を引くのが辺りに見られる大木。
それらの存在により草原地帯よりかは日当たりが悪いが木々の隙間から漏れる
太陽の光が幻想的な雰囲気を作り出している。
さらに赤いキノコや青いクラゲ、大きな白い蜘蛛に加えて
土管から出てくる人食い花に似たモンスターと言ったふうに外とはまた違う
モンスターが多数生息していた。外のモンスターと比較すると少し強いが
こちらは4人いるので襲いかかってくるモンスターを撃破しつつ探索を進める。
「ねぇ、あれがフェンリスヴォルフ?」
私の視界に1体の大型のモンスターが映る。逆立った蒼い毛と鋭い爪を持った
狼型のモンスターである。今まで遭遇したモンスターと何か違う感じがする。
強い。今の私ではきっと勝てない。直感がそう告げていた。
「そうね。幸いにも離れた行き止まりの場所にいるから無視できるわ。こっちに来る前にさっさと通り抜けるわよ」
実をいうとこの時私は心の奥底で一度戦ってみたいと思っていた。
私達の目的はゲイムキャラ探しなので躍動する自身の気持ちを抑える。
今はいいかもしれないが、倒さないといけないこともあるだろう。
私達はその場所を後にしてさらに奥へと進んで行く。
「なんかそれっぽいのがあるわね。あれがゲイムキャラなのかしら?」
アイエフが示した場所には台座に乗せられた紫色のディスクが置かれていた。
だが、それに加えてもう1つ人影があった。ディスクに持っている鉄パイプを叩きつけている。
明らかに壊そうとしている。私達はそれを止めるべくその場に駆けつける。
「やめてください! それをどうするつもりですか!?」
その人物は鉄パイプを叩きつけるのを止め、こちらを向く。
「見てわかんねーのかよ。壊そうとしてるに決まってるじゃねーか。バカか? クソガキ」
灰色の肌を持ち、ネズミ型のフードがついたコートを着た人物が言う。
「壊そうとしてるってことはあんた、まさか…」
「テメェの考えてることで正解だぜ? アタイは犯罪組織マジェコンヌのマジパネェ構成員、リンダ様だ。ここには上からの命令で来たんだよ。ゲイムキャラを破壊してこいっていう命令でな。話を聞くと我々マジェコンヌにとっては邪魔な存在らしいからよ」
「かっこよく説明してくれてるけど、構成員って言ったわね。ってことは下っ端じゃない」
「な!? 誰が下っ端だ! アタイにはリンダって名前があるんだよ!」
「名前があるのはわかりますけど、アイエフさんの言う通り下っ端ですよね?」
「あいちゃんの言う通りです。下っ端さんです」
「リン…。ごめん。下っ端だね」
可哀そうに思った私は名前を呼ぼうとするが
あまりにも下っ端呼びの空気が強すぎたので諦めた。
「テメェら…。バカにしやがって…。後、最後のお前、諦めんじゃねえよ! お前だけはちゃんと名前で呼んでくれるって少しでも思ったアタイがバカみたいじゃねーか!」
「ごめん。あまりにも場の空気が強すぎたから諦めるしかなかったよ。これでも反省はしてるつもりだよ。それで、ゲイムキャラを壊そうとしてるって言ったよね?じゃあ私達の敵だね」
「下っ端が相手なら私でも勝てるかもしれない…」
「バカにしやがってこのクソガキ…。これでもくらいやがれ!」
リンダはそう言うとネプギアに鉄パイプで襲いかかる。
ネプギアはビームソードでリンダの攻撃を受け止めるが
相手の力が強いのかネプギアは弾き飛ばされてしまう。
「きゃああっ!」
「ネプギア!?」
「アタイをバカにしたことを後悔させるだけじゃ済まさないぜ? テメェらもわかってるだろう? 今のゲイムギョウ界のシェアの8割以上を我々マジェコンヌが占めてるってことをよ。犯罪組織に属するアタイの能力はそのおかげで普段より格段に強くなっているんだぜ? こんなクソガキに負けるわけねぇだろうが」
その言葉は間違うことなき事実。現に女神化していないとはいえ、
女神候補生であるネプギアを一撃で吹き飛ばしたのだから。
「散々バカにしてくれたからな。その礼はたっぷりさせてもらうぜ」
リンダはネプギアに攻撃を加えようとする。私はそれをさせまいと剣で攻撃を加えるが
鉄パイプであっさり防がれたうえに剣が折れてしまった。
「なっ!?」
「そんなナマクラでアタイに攻撃したつもりか? 攻撃ってのはな、こうするんだよ!」
リンダは鉄パイプで私に攻撃してくる。私は盾で防ぐがその力はかなり強く
ネプギアと同じように吹き飛ばされてしまう。
「くっ…」
盾に視線を移すと、その表面にヒビが走っており
それが全体に広がると盾は粉々に砕けてしまった。
「盾まで…?」
「これでテメェはもう戦えねえな。さて、あのクソガキを先にぶっ殺したら次はお前だ」
リンダはネプギアに近づき、鉄パイプを振り上げる。
そしてそれを動けないネプギアに容赦無く振り下ろす。
「危ないっ!」
鈍い音が響く。アイエフがネプギアを庇いその攻撃を体に受けたのだ。
アイエフは痛みで苦しそうな表情をしている。
「無事みたいね…。くっ、さすがに今のは効いたわ…」
「アイエフさん! どうして!?」
「守りたいと思ったから守っただけよ…。自分が守りたいものを守るのに理由なんかいらないでしょ…? そんな悲観した顔しないでよ…。あんたは自分にできることを精一杯頑張るって舞とあの時一緒に頑張って決めたんでしょ? なら、そんな顔しないで」
「っ…!」
ネプギアは立ち上がり、リンダと向き合う。その目には強い意志が宿っていた。
「イチャつくのは勝手だけどよ。何が自分にできることを精一杯頑張るだぁ? テメェにできることなんて何もねぇんだよ」
「あなたの言う通りです。確かに私は何もできません。3年前もそうでしたから。でも、もう逃げることはやめるって決めたんです。過去を乗り越えて今を精一杯生きるって決めたんです! そうすれば私にできることもきっと見つかるはずだから!」
「かなりいい顔になったじゃない。これも舞のおかげかしら。あいつにまだ立ち向かえる?」
「はい!」
「そう。なら今の私にできるのはこれくらいしかないわね」
アイエフはそう言うとネプギアの頬に口づけをする。
「えっ…?」
「今の私に残っている力を全部あげるわ。使いなさい。あいつを倒すのよ!」
アイエフの力がネプギアに流れ込んでいく。ネプギアの体が光に包まれる。
白いレオタードのような服をその身に纏い、肩、腰、背中に機械的なパーツが装着される。
そしてその手にはビームガンブレイド〈マルチプルビームランチャー〉を持っている。
女神パープルハートの妹、女神パープルシスターが再び舞い戻った。
「なっ!? テメェ、その姿は…。女神だったのか!?」
「今の私にできること。それはあなたに立ち向かうことです。覚悟してください。今の私はさっきまでの私とは違いますよ?」
その体から膨大なシェアの輝きを放ち、ネプギアはリンダに言う。
ネプギアの体から放出されるシェアの一部が私のところに集まってくる。
『さあ、あなたも解き放って』
暖かいシェアの光が私を包むと頭の中に女性の声が響いてくる。
「私の頭の中に直接話しかけてるの? あなたは誰?」
『私のことより先にやることがあるんじゃないかな。あの子は自分のトラウマを乗り越えてその力を解放した。今度はあなたの番だよ?まだまだ完全には至らないけど、あの子の手助けをするには十分。さあ、その力を解き放って。一緒に戦おうよ』
「そうだね。それじゃ、行くよっ! はあああああっ!」
私は声を張り上げ、力を解放する。シェアの光が私の両腕に集まり銀色のグローブが装着される。
そして足にはビッグスライヌと戦った時に発現した銀色の装甲が再び現れる。
私の服装は変化せず、女神化したネプギアのように機械的なパーツは現れない。
謎の声の言う通り完全には至らない力。つまり不完全な女神化と呼ぶべきなのだろうか。
私は女神化したネプギアの隣に立つ。女神と不完全な女神の二人が並び立つ。
「なっ!? テメェも女神だったのかよ!?」
「そうとも言えるのかな? 私の眼はネプギア達と同じ女神の眼みたいだからね」
「舞さん、それは一体…?」
「きっとネプギアと一緒に戦うための力だよ。まだまだ不完全だけどね。さぁ、こんどはこっちの番だよ。あいつに一泡吹かせてやろう」
「はい!」
先に動いたのはネプギア。女神化する前とは比較にならないほど
早いスピードでリンダに接近する。女神化をすると身体能力は大幅に向上するようだ。
「行きます。ミラージュダンス!」
ネプギアは舞うように剣を振り、リンダに5連撃を与える。
最初の一撃は防がれるが隙を生むことなく繰り出される連撃は
確実にリンダにダメージを与えていた。
「やりやがったな! 調子に乗るんじゃねーぞ!クソガキ!」
リンダは鉄パイプでネプギアに反撃をする。
ネプギアは自身の武器で受け止める。先ほどは弾き飛ばされたが
今度は弾き飛ばされる気配が全くない。ネプギアは冷静な表情である。
「私もいるってことを忘れないでほしいかな。教授、技を借りるよ」
私はあるゲームに出てくる教授のことを思い出す。
格闘術の達人であり拳で対話を求める熱き魂を持った人だ。
たった1人の弟子の少女を娘のように可愛がるところもあるが
敵側の四天王の1人だと分かった時は驚いたものである。
私はその人が使っていたある技を繰り出す。
「はあああああっ! バリアントアタック!」
殴る。ひたすら手を動かして殴る。相手は女性だけど遠慮はしない。
ラストに力を溜めて強烈なアッパーを叩きこむ。
「くそがああああ!」
リンダは叫びながら吹き飛ぶ。どうやらこの場は私達の勝利ということで良さそうだ。
「ずりーぞ! 変身なんかしやがって! そこのお前もわけがわかんねえ力でアタイをタコ殴りにしやがったな!」
「あなたが言えたことじゃないよね? さっき得意げになんて言ってたっけ?」
「マジェコンヌのシェアが8割を占めているおかげで普段より格段に強くなってるから私みたいなクソガキに負けるわけないって言ってましたね」
「そういうこと。あなたは最初から自分に有利な状態だった。私達は自分の力を土壇場で発動してその差を無くしただけに過ぎないよ。むしろフェアになったと言うべきじゃないかな? 数は私達の方が多いけどね。もう降参して逃げたらどう?」
「舞さんの言う通りです。そうすれば見逃してあげます」
「そんなことすると思ってんのか! アタイの目的を忘れたわけじゃねえよな? ゲイムキャラさえ破壊できればテメェらに負けてもアタイの目的は達成されるんだよ!」
リンダはそう言うとゲイムキャラに近づき、鉄パイプを力いっぱい叩きつけようとする。
『足に力を込めてほんの一瞬だけでいいから誰よりも早く動いて』
謎の声が再び頭に響く。私はその声に従い足に力を込める。
1回だけだが誰よりも早く行動できる。あるアビリティが私の脳裏に蘇る。
「アクセラレイターッ!」
ほんの一瞬ではあるが私の反応速度が一気に高まる。
その速度に乗り、私はゲイムキャラとリンダの間に割り込む。
「双龍脚!」
リンダに蹴り技をお見舞いする。素早く右・左と相手を蹴り飛ばす。
あるゲームに登場する花の名を持つ少女が使う格闘技の1つである。
「ぐあぁっ! テメェ、またやりやがったな!?」
邪魔をされたリンダは私に怒るがこれ以上抵抗されたら正直なところまずい。
より上級の技を撃ちこむしかないし、今の時点では失敗する確率のほうが高い。
「チッ! 今日のところは引いてやるよ! 次はラステイションのゲイムキャラだな…。覚えてやがれ、クソガキ女神と暴力女神!」
リンダはそう言うと全速力でその場を立ち去る。
暴力女神って…。まぁタコ殴りにしたのは事実だから否定はしないけど。
『上手くいってよかったね』
「そうだね。ところであなたは誰なの?いきなり私に話しかけてきて。おかげで助かったから感謝はしてるけど。」
『私は『銀の女神』。今教えられるのはこれだけだよ。また会おうね』
銀の女神と名乗った謎の声は聞こえなくなった。
私の両腕の銀色のグローブと脚についていた銀色の装甲は光となって消える。
「また会える…か。いつか姿を見せてくれるのかな。その時は改めてお礼を言わないとね」
「舞さん、誰かと話してたんですか?」
「まあね。さっきの力をくれた人だとは思うけど…」
「端から見れば独り言を言っているようにしか見えないわね」
「アイエフ、もう大丈夫なの?」
「まだ痛むけど、コンパが応急処置をしてくれたから大丈夫よ」
「私にはこれくらいしかできないですけど…」
「戦って怪我をしてしまった人を治す。コンパには大事な仕事があるでしょ? 私はまだ怪我とかしてないけど、コンパのお世話になる時もきっとあるだろうから、その時はよろしくね。」
「はいです。舞さんが怪我したら私が全部治してあげるです!」
頼もしい返事をコンパからもらった。でもなるべく怪我しないようにしないとね。
無茶しやがって…。なんて言われたくないし。
私達はゲイムキャラを見つけて無事に守ることができた。
後は協力をお願いするだけだね。後ついでに銀の女神のことも聞いてみよう。
古の女神達が生み出した存在なら知っているかもしれないし。