六人の守護女神による公開模擬戦も残すはブランとシエルの模擬戦のみとなった。
戦いは既に始まっており、二人の戦斧がぶつかり合う音が響き渡っている。
剣と槍がぶつかり合って生じていた甲高い音と聞き比べてみると
打撃武器で敵を殴った時の音に非常に近い。純粋な力と力の衝突なのだ。
ブランの絶氷も第二段階にシフトしつつあるようで今度は気温が下がり始めている。
「遂に今回の公開模擬戦の最後を飾る戦いが始まったところではありますが、解説席の方にはノワール様とベール様にお越しいただきました! 第三回戦についてはお二人に解説をしていただきたいと思いますが、お話を伺っても?」
「構わないわ。シエルのことについては私達よりずっと長い間一緒にいたセレナの方が詳しいとは思うけどね。私達が理解している範囲で解説させてもらうわ」
「ありがとうございます! 早速お聞かせいただきましょう。これまでの戦いを見てきたところ、女神様は新しい能力を習得しているようですが、ブラン様の新しい能力は一体どのような力なのでしょうか?」
「ブランの新しい能力は絶氷と名付けられた能力ですわ。ブランが纏っている強力な氷の魔力は元々高いブランの防御力をさらに引き上げていますの。並みの攻撃では貫くことは叶わないと言えますわ」
「さっきは私の能力で気温が上がってたと思うけど、今は下がり始めているわ。第二段階に移行した時の効果は私の業火と真逆の効果よ。これが完全な形になれば一瞬で氷点下まで気温が下がるでしょうね。その状態のブランに逆らうことは雪国であるルウィーの大地を相手にするような物よ。氷属性と寒さに耐性が無いと一瞬で氷漬けにされてあの戦斧で砕かれるでしょうね…」
「ちなみに今は第二段階にシフトしている途中だね。気温が氷点下までさがれば第二段階だよ。この戦いでそこまでたどり着けるかどうかはわからないけどね。イストワール、ブランが苦手としている物は何だと思う?」
「魔法でしょうか…? これはネプテューヌさん達に共通していることだとは思いますが、守護女神で魔法の扱いに長けていた女神は稀です。先代の四女神の中には一人だけいましたが、セレナさんを除けば記憶に残っているのは彼女だけですね」
「正解。あの人は本当にすごいと思った。魔法は苦手だって言ってたけど鍛練で完璧に自分の物にしてたからね…。何十年も前の話にはなるけど一度だけ戦ったことがあるよ。月の魔術書の魔法をほとんど出しきったのに、引き分けに持って行かれたから忘れられない思い出の一つと言ってもいいかな」
セレナが魔術戦で最後まで勝つことができなかった人物。
それは今は亡き先代ゴールドハートである自分の姉と三人で旅をしていた時に
一度だけ戦ったとある国を守護していた守護女神の二人だけである。
「私の昔話はこれくらいにさせてもらって話を戻させてもらうね。ブランは今代の四女神の中で魔法の適正が一番低いの。それはブラン自身が一番理解して受け止めている短所でもある。ブランが今行使している絶氷はやっと発動に至ったばかりだからね。今は戦いながら状態を安定させてるところだよ」
最初はセレナの指導の下で四人一緒に練習をしていたのだが、
ブランはその後も自分の番が回ってくるまで練習を続けていたという。
「ブランは前に仕事のし過ぎで倒れたこともあったから、一度熱が入ると倒れるまでやるかもしれないね? 何かに熱中しているブランを止めるのは私には無理かなぁ。それと一つ気になったことがあるんだけど、セレナが勝てなかった相手って誰なの?」
「ネプテューヌにも関係がある人とだけ言っておくよ。その話はまたの機会にね。今は二人の戦いを見守ろうか。時間がある時に考えてみるといいと思う」
「セレナさんのおっしゃる通りです。お時間がある時にプラネテューヌの歴史でも勉強してみてはいかがですか?」
「え~! 勉強は嫌だなぁ…。最近やっと仕事が苦にならないと思えるようになってきたのに、これ以上苦手な物を頑張るのは厳しいよ。でもすごく気になるからそれくらい自分で調べてみようかなぁ…」
舞のおかげでネプテューヌの生活もかなり改善されてきているのも事実である。
この調子で行けば数年後にはプラネテューヌもさらに発展していくことだろう。
「いや~。色々なお話が聞けてこちらもありがたいですね。女神様とこうしてお話ができる機会は普段では滅多にありませんから、この機会にどんどんお話を聞いて行きたいところです! 続いてはシエル様についてですが、シエル様もセレナ様と同じ国を持たない女神様なんですよね?」
「そうね。私達もシエルと出会って話をしたのはつい最近の出来事と言ってもいいわ。一つだけ確かなのはシエルの実力は私達より上よ。流石は危険種狩りを趣味と言うだけはあるわね」
「毎日必ず一つは危険種討伐のクエストをこなすようにしていると言っていましたわ。私も相手にしたことは何度かありますが、倒せたとしても弱めの接触禁忌種までといったところです。それ以上の接触禁忌種をも単独で難なく討伐するシエルさんの強さは、女神であるから強いということではない、本物の強さと呼べる物ですわ」
シエルは危険種狩りに出かける時は基本的に単独で行動しているが
常に単独行動をしているのかというとそれは否。戦友とも呼べるアリアやセレナと
一緒に行くこともあればギルドの高レベル冒険者とパーティを組むこともある。
特に最近になって観測され始めたダンジョン内のモンスターの変化に伴って現れる
危険種はこれまでとは比較にならないほどの戦闘力を持つ個体が確認されている。
アリアとセレナが加わって何とか討伐まで持って行けるレベルらしい。
自分よりも上の相手はいくらでもいるというのはどの世界でも言えることなのだ。
「国を持っていなくても、ゲイムギョウ界を守りたいって思いは同じだよ。この模擬戦が終わったら見てくれている人たちに私達の思いを改めて伝えたい。今この世界で何が起きているのか、それを解決するために私達が何をしたいのかをね…」
「それがこの公開模擬戦が始まる前にイストワール様から告知があった女神様からの重大発表なんですね? 私達はその発表をしっかりと聞き届けたいと思います! お二人についての解説をしていただいたところで最後の戦いの行方を観客の皆さんと一緒に見守って行きましょうか!」
二人が戦っている空間内の温度は間もなく氷点下に到達しそうになっている。
シエルは自身の能力である蒼炎を体に纏いながら相手をしていた。
「第二段階まであと少しと言ったところかな? ここまで寒い環境で戦うのはルウィーのアイシクルホールに行って以来だよ」
シエルの蒼炎は纏う際に自分の意志で炎の性質を変えることができる。
完全ではないが極寒の環境では熱い炎にすることで冷気を遮断することができ、
逆に炎天下の環境では冷たい炎となり熱波を遮断する効果を持つ。
「ルウィーで一番寒いダンジョンだからな。私も過去にモンスター討伐で行ったことがある。私は魔法の適正が低い分、ネプテューヌ達と比べると成長が遅い。戦いが始まるまでの時間も練習に回して使えてる状態だからな」
妹のロムとラムは魔法の適正が高いが、近接戦闘の適正は低い。
反対にブランは近接戦闘の適正が高く、魔法の適正が低いという特徴がある。
決して魔法が使えないというわけでは無いが、発動に要する時間や
魔力消費が非常に大きいため、滅多に使わないのである。
「ネプテューヌ達ができてるのに私だけが遅れてるようじゃ、守護女神としてもそうだが、あいつらの姉として恰好がつかないからな…。絶対に超えてみせるッ…!」
ブランは目を閉じて意識を集中させる。
魔法の適正が低いからと言って諦める理由にはならない。
ブランの意志に応える形で絶氷が第二段階へとシフトする。
二人が立っている戦場の気温が氷点下となり、地面が凍り始めた。
ブランの体から放たれる氷の魔力は密度の濃いさらに強力な物となっている。
魔力を集めて氷結晶を複数作り出すとそれを戦斧を使ってシエルに飛ばす。
「ゲフェーアリヒシュテルン!」
放たれた氷結晶が複雑な軌道を描きながら縦横無尽に飛びまわる。
直線のみの軌道だったのに対して、様々な方向から飛んでくるようになり、
予測がしづらくなっている。狭い空間で使われたら逃げ切ることは不可能だ。
対するシエルは目の前に蒼炎を展開すると背の翼で力一杯仰いだ。
強烈な熱風が前方に広がると、向かってきた氷結晶を溶かしていく。
「流石に全部は処理しきれないか…」
範囲外から飛んできた氷結晶は蒼炎を纏わせた戦斧で正確に砕いていく。
「簡単には通らねぇか。なら、こいつはどうだ!」
ブランが冷気を纏わせた戦斧を地面に叩きつけると
鋭い槍のような形をした氷塊が連なるように生成されシエルに向かっていく。
「その攻撃も通さないよ! 蒼龍滅焦陣!」
ブランと同じようにシエルも蒼炎を纏わせた斧を地面に叩きつける。
凍り付いた地面から蒼炎が噴き出し、ブランが放った氷塊とぶつかり合う。
氷塊が蒼炎に溶かされたことで濃い霧が発生しお互いの姿が見えなくなった。
「これはっ…!」
今度はブランがいた方向から戦斧が回転しながら飛んできた。
この攻撃動作をシエルはブランと鍛練をした際に見たことがあった。
飛んできた戦斧を弾き返すと即座にエクセドライブの発動準備に移る。
「女神をも打ち砕く超ド級の戦斧の一撃ッ…!」
「全てを屠り、喰らいし龍の牙よ…! 天を斬り裂けッ!」
濃い霧が晴れると同時に二人のエクセドライブが激突する。
「ハードブレイク!」
「蒼龍滅牙・天裂刃!」
その直後に凄まじい轟音が響き渡ると、続いて特大の衝撃波が広がる。
互いに吹き飛ばされ、二人の戦斧が宙を舞って地面に突き刺さった。
ブランの女神化が解除され元の姿に戻ると気温が元の状態に戻る。
シエルの背中の翼も特殊女神化状態が解除されたことにより光に包まれて消えた。
「凄まじい一撃だった…。女神をも打ち砕く超ド級の戦斧の一撃の名は伊達じゃないね」
「あなたの一撃もすごかった…。世界には自分より強い人はいくらでもいるのね…。それを実感することができたわ。世界が平和になったらまた私と戦ってくれるかしら?」
「勿論。ブランが望むなら何度でも相手になるから。私だけじゃない。セレナやネプテューヌ達、今この場にはいないアリアと舞、ネプギアちゃん達もいる。お互いに認め合ってみんなで高みを目指せば私達はどこまでも強くなれるよ」
「そうね…。私もまだまだ弱い。私達女神を信仰してくれるみんながいてくれるから、こうして戦うことができる。もう二度と負けないように頑張らないといけないわ…。絶氷の制御についてもまだ課題があることだし…。今日はあなたと戦えてよかったわ。本当にありがとう」
「こちらこそ、ありがとう。次に戦う時はもっとすごいことになりそうだね? その時が楽しみだよ。私も追い越されないようにもっと強くならないと。今日は引き分けでいいとは思うけど簡単には勝たせないからね?」
「望むところよ…。目標があった方がやる気も出る…。またこの舞台で戦いましょう」
戦いを終えたブランとシエルは握手を交わした。
それは再びこの舞台で戦い合うことの約束でもあった。
「第三回戦、これにて終幕ッ! 一瞬たりとも目が離せない純粋な力と力のぶつかり合い! それを見せてくれた六人の守護女神の皆様に盛大な拍手を!」
実況であるデンゲキコの言葉に呼応して観客達が盛大な拍手をしてくれた。
闘技場内を満たす拍手と大歓声は止まらない。
「守護女神同士の公開模擬戦はこれにて終了となりますが、最初に言ったようにこの後には女神様からの重大発表が控えています! 五分後に始まる予定ですので、観客の皆様はそのままお待ちください!」
ネプテューヌ達は解説席を後にしてブランとシエルと合流すると準備にかかる。
「ネプ子達、いつの間にあれだけの強さを身に着けたのかしら? 新しい能力まで習得しているとは思わなかったわ」
「そうですね。ねぷねぷ達の頑張りを強く感じたです。ギアちゃん、立ち上がることはできそうですか? ねぷねぷ達はギアちゃん達を支えたいって気持ちでここまで頑張ってきたですよ」
「そうね。舞とアリアを取り戻すには新しい力を得たネプ子達だけじゃ駄目。そこにアンタ達四人の女神候補生が加わることで救出作戦が進められるようになるのよ。今から始まるネプ子達の話を聞いて、自分が今何をしなければならないのか考えて答えを出しなさい」
アイエフの言葉を聞いてテレビの画面に視線を移す。
このゲイムギョウ界を守護する四人の女神が再び姿を現した。
「ゲイムギョウ界に遍く生を受けし皆さん、本日はこの場にお越しいただき本当にありがとうございます。最後にこの場をお借りして私達女神からお伝えしたいことがあります。皆さん、どうか私達の言葉を聞いてください」
女神化したネプテューヌが言葉を続ける。
「皆さんもご存じかとは思いますが、三年前に突如出現した犯罪組織マジェコンヌ。その討伐に向かった私達は戦いに敗れ、ギョウカイ墓場に幽閉されてしまいました。暗い闇の中に捕らわれ続けていた私達を再び明るい光の元に連れ出してくれたのは、四人の女神候補生とその仲間達です。そしてもう一人、今この場にはいませんが、彼女達を導いてくれた一人の少女がいました」
「彼女の名前は神奈 舞。古の女神である銀の女神が選んだ継承者です。明るい太陽のような輝きを持つ彼女は女神候補生達と旅の中で出会った仲間達を導き、私達をギョウカイ墓場から助け出してくれました。彼女には感謝の気持ちでいっぱいです」
「犯罪組織を率いる四天王を倒し、さらに復活を果たした犯罪神マジェコンヌを倒したと思った矢先、突如介入してきた悪意を持った存在が彼女を深い闇の中に連れ去りました。犯罪神マジェコンヌはギョウカイ墓場と一体化し、再度復活を果たす時は刻一刻と迫ってきています。今度は私達が彼女を助け出したい。そして彼女と一緒に平和なゲイムギョウ界を作り上げたい。これが私達六人の守護女神の総意です」
「ですが、彼女を闇の中から救い出すためには私達六人の力だけでは足りません。私達をギョウカイ墓場から助け出してくれた四人の女神候補生と仲間達の力、そしてこのゲイムギョウ界に生きる皆さんの力が必要なのです。どうか、皆さん。私達女神にその力を貸してください」
ネプテューヌ達は深く一礼をする。観客達はその言葉を静かに聞いていた。
観客達や中継を見ている人たちの中にも舞のことを知っている人はかなり多い。
きっかけになったのは女神救出後にリーンボックスで行われたライブである。
あの日のライブも全国に中継されていたのだから。
「ここから先はこの言葉を聞いてくれていると信じて、女神候補生達に伝えます」
ネプテューヌは女神化を解除して元の姿に戻るとマイクを持って次の言葉を紡ぐ。
「ネプギアーッ! いつまで部屋で落ち込んでるの!? 最初はお姉ちゃんとしてどんな言葉をかけてあげたらいいのかわからなかったけど、今ならわかる! いつまでも塞ぎ込んでたらダメだよ! 今のままじゃ舞は帰って来ない! 会いたいのなら立ち上がらなくちゃ! はい! 次はノワールの番だよ」
いきなりノワールに振っているようにも見えるが模擬戦前の
打ち合わせで話し合っていることなのでノワールも焦ることなく続けて話す。
「ユニ、私も泣いてるあなたに何て言葉をかけたらいいのかわからなかったわ。姉失格よね。でも、私の言いたいことは一つでネプテューヌと同じことよ。悲しみを乗り越えて立ち上がりなさい! 自分が動かない限りこの悪い状況は何一つ変わらないわ! 舞にも教わったでしょう!? 自分にできることを精一杯頑張るって!」
ノワールは続けてブランにマイクを手渡した。
「ロム、ラム。私はあなた達の心を傷つけてしまうことが怖くて、あの時言葉をかけることができなかった…。言い訳に過ぎないことはわかってる…。でも、舞を取り戻すにはあなた達の力が必要よ。あなた達の行く手を阻む物はお姉ちゃんが何とかしてみせる。だから、お願い。悲しみを乗り越えて。私達と一緒に舞を助け出しましょう…!」
最後にベールに繋げる。
「私には妹はいませんが、ネプギアちゃん達の姉のつもりでお話をさせていただきますわ。舞さんが連れ去られてつらいという気持ちは痛いほどにわかります。ですが、私達は舞さんを助け出してこの世界の平和を取り戻すために前に進まなければなりません。ネプギアちゃん達、そして皆さんの力が合わさって初めてその一歩を踏み出すことができるのです。私達はここでネプギアちゃん達をお待ちしておりますわ」
テレビの中継画面を見て姉たちの言葉を聞いていたネプギア達。
その瞳には舞と同じ輝きが戻り始めていた。後は一歩踏み出すだけだ。
「どう? ネプ子達の言葉を聞いて答えは出せそうかしら?」
「はい。お姉ちゃんの所にこれから四人で行こうと思います」
「お姉ちゃん達のおかげで目が覚めたわ。遅れた分は取り返すわよ!」
「うん…! お姉ちゃんと一緒に舞お姉ちゃんを助ける…!」
「早くお姉ちゃんのところに行くわよ! これ以上待たせるわけにはいかないわ」
戦う意志を取り戻したネプギア達は準備をして
ネプテューヌ達が待つ闘技場へと向かおうとするが。
「コンパ、どうしたの? そんな驚いた表情をして」
「おかしいです…。どうしてあの場所に舞さんがいるです?」
「えっ…?」
コンパの言葉にテレビ画面を見ると確かにいないはずの人物が映っていた。
時はほんの数分前、ネプテューヌ達の演説が終わったところまで遡る。
ネプギア達に思いを伝えたネプテューヌ達はネプギア達が来るのを待っていた。
観客達も帰ることは無くネプギア達が来てくれることを信じて待ってくれていた。
「ネプギア、来てくれるかな?」
「大丈夫。きっと来てくれるわ。私達の思いは伝わったはずよ」
「今の私達にできることはここまで…。あの子達を信じて待ちましょう…」
「この場に来てくれている皆さんも待ってくれていますわ。大丈夫、ネプギアちゃん達を信じましょう」
演説が終わってからまだ数分しか経っていないので、
ネプギア達が来るにしてもまだ時間がかかると思われていた。
「なら、待っている間は暇だよね? それまで私と遊ばない?」
突如聞こえてきた少女の声。全員が聞こえてきた方に視線を移す。
「えっ…?」
夜風に靡く銀色の髪と銀の太陽の髪飾り。
そして髪と同じ銀色の瞳に浮かび上がった女神の印。
「なんで、ここにいるのよ…?」
彼女がいつも着ていたモノクロのパーカーワンピ。
右手に握られているのは彼女が使っていた銀色の刀身を持つ大剣。
「どういうことなの…?」
「本物の舞さん、なのですか…?」
少女は背中に部分展開した銀の翼のプロセッサユニットで宙に浮いていた。
冷たい輝きを放つ銀の瞳には彼女が持っていた優しさは無い。
まるでネプテューヌ達を己が敵と見なしているかの如くである。
「違う…! あれは舞じゃないよ!」
「セレナの言うことが本当だとしたら…。目の前にいる舞ちゃんは…!」
「ふふっ…。ネプギア達が来るまで私と遊ぼうか。相手になってくれるよね?」
舞は地面に降り立つと銀の大剣を構える。
ネプテューヌ達もやむを得ず武器をコールして戦闘態勢に入る。
新たな力を得たネプテューヌ達の前に姿を現した舞。
自分達を助け出してくれた最高の友達を前に戦うことはできるのだろうか。
救世の歯車は回り続ける。絶望のカーニバルはまだ始まったばかり。