一日に一回投票できるとは言っても誰に投票しようか私は非常に迷っています。
六人の守護女神による公開模擬戦も無事に終わり、
最後の演説で自分達が抱いている思いとネプギア達への言葉を伝える。
女神達の思いは観客達に、中継を見ていた者達に、ネプギア達へと伝わった。
ネプギア達もその思いを受け取り姉達が待つ闘技場へと向かおうとするが、
女神候補生達を待つ女神達の前に連れ去られたはずの神奈 舞が姿を現す。
正確には神奈 舞の姿をした何者かというのが正しいのだが。
危険をいち早く察知したセレナはイストワールに連絡を取る。
ネプギア達を共に待ってくれている観客を避難させるようにお願いした。
観客の避難誘導は既に完了しており、闘技場に残っているのは六人の守護女神のみ。
「邪魔なギャラリーが消えたところで早速始めようか。来ないのなら、私から行かせてもらうよ」
舞は銀の大剣を構えるとネプテューヌ達に斬りかかってきた。
髪の色が銀色に変わっているので特殊女神化状態であると推測されるが、
目の前にいる舞からは奇妙な違和感を感じ取ることができる。
姿形や声色は舞なのだが、目の前にいる舞が放出している力は彼女が戦闘の際に
用いる銀のシェアの力では無い。それに似せている別の邪悪な力と呼べる物である。
舞は手始めにネプテューヌに狙いを定めると、連撃を繰り出して追い詰めていく。
「…っ! 舞! どうしちゃったの!? 私のこと、忘れちゃったの!?」
「ふふっ。忘れてはいないよ。今のあなたは私の敵。死にたくないのならその大剣で私を斬ればいい。躊躇えば死ぬのはネプテューヌの方だよ?」
「舞を斬るなんてできないよっ! だって友達だもん!」
「その友達が敵に操られでもして、倒さなければ自分が殺される状況になったとしてもそんなことを言うつもり? それは流石に甘すぎるよ。まぁ、私は誰にも操られてはいないけどね。自分の意志で、今この場所に立っているから」
「本気で言ってるの…?」
「ネプテューヌ、騙されないで! 目の前にいる舞は偽物だよ!」
「偽物呼ばわりは流石に傷つくかな…。セレナの言葉を信じて私を斬る? 選ぶのはネプテューヌだよ。私を斬って生き残るか、それとも私に斬られるか…」
「どちらもお断りだよ。本当に偽物ならやっつけるし、本物なら目を覚まさせるだけ! それに今この場にいる女神は私だけじゃないんだから!」
「面白いよ。そう言えば六対一の構図になってるのか…。ネプテューヌばかり狙っていたらノワール達の存在を忘れてたよ。だからと言って私が逃げ出す理由にはならないけど…。せめてネプギア達が来るまでは持ちこたえてよね」
舞は自分が持っている全ての武器をコールする。
短剣、銃、ハンマー、ランス。四つの銀の武器が姿を現した。
これらは模造品などでは無く、紛れもない本物の武器である。
「フロート・ウェポン!」
それはセレナが舞に教えた武器を浮かせて自分の意志で自在に操る魔法。
舞の意志を宿した武器は攻撃を加えようとしていたノワール達に襲い掛かる。
舞と打ち合うネプテューヌは紫電を発動して大剣と体に雷の魔力を纏わせた。
「それがネプテューヌの新しい力なんだね? 私が見ていたのはノワールとベールの戦いが始まってからだから、それは見ていない。どんな能力なのか見せてよ」
「言われなくても見せてあげる! 瞬雷斬!」
ネプテューヌの姿が消えたと思った次の瞬間、舞の背後に移動していた。
雷の一閃が舞の体を捉えると、紫電が舞の体内を駆け巡りダメージを与える。
「うあっ…! 見切れなかったか…。ここまでの速度を身に着けているとはね。一気に追い抜かされた気分だよ」
「セレナの言う通り、あなたは舞じゃないんだね。今のではっきりとわかったよ。さっきの私の攻撃は女神化した舞なら見切ってる速度だからね。毎朝、一緒に鍛練してたおかげでわかった! あなたは舞の偽物!」
ノワール達を足止めしていた武器も地面に叩き落とされもう動かない。
さらに後方には魔法の詠唱を完了したセレナが控えていた。
「あはははっ! 流石に手を抜きすぎたかなぁ。君の答えで正解だよ。私はファントムハート。見事に見抜いた報酬として本物の舞が今どうなっているのか見せてあげる」
舞の姿をしたファントムハートは月の魔術書を取り出してとある魔法を発動する。
大きな鏡がネプテューヌ達の前に現れ、その鏡面に映像が映し出される。
鏡面に映し出されたのは巨大な黒い繭。その周りには六人の黒コートの集団がいた。
禍々しい紫光を漏らしながら脈動を繰り返すそれは
繭の中から新たな生命が生まれようとしているかのようである。
「まさか、あの繭の中に舞ちゃんが!?」
「大正解! あの繭の中には舞と女神を喰らう魔剣、ゲハバーンがある。救世の銀陽の誕生は近い。舞がいるあの舞台に上がれるのは、四人の女神候補生だけだよ。君達六人の守護女神には別に遊び相手を用意してある」
「それが繭の周りにいるあの黒コートの奴らってわけ?」
「そう言うこと。退屈はさせないから。試しに一人この場に呼んであげる。セレナ、君とは少なからず因縁のある相手だよ。アリス!」
ファントムハートが呼ぶと黒コートとフードで顔を隠した人物が現れた。
フードを取って顔を見せる。セレナにとって忘れられない人物だった。
「嘘…。どうして…! あなたは私が倒したはずなのに!」
「ファントムハート様がこの世界に甦られたように私も復活したのですよ。またお会いできて嬉しいです。魔法学校で最後まで私の事を見捨てなかったあなたと戦場で再会した時は残念な気持ちで一杯でした。運命とは本当に残酷な物ですよね」
女神化した時のセレナのような金髪を持ち、赤と緑の虹彩異色の瞳を持つ少女。
彼女の名はアリス。ファントムハートの直属の部下である六魔将が一人である。
「私は会いたくはなかった。あなたが復活しているということは他の六魔将も復活しているってことだよね?」
「はい。私達は今代のゲイムギョウ界を守護する守護女神の皆様のお相手をするためだけにファントムハート様の手でこの世界に復活を果たしました。先程ファントムハート様が仰られたように舞様が待つあの舞台に上がることを許されているのは四人の女神候補生の皆様だけです」
「もう一度あなた達と戦うことになるとはね…。一気に条件が厳しくなった…」
「セレナ、六魔将って言うのはあの黒コートの集団のこと?」
「うん…。ファントムハートの部下の中でも特に優れた戦闘能力を持った六人のことだよ。一人一人が守護女神に匹敵する力を持っている。目の前にいるアリスはかつて国を賭けた戦争で私が倒した相手だよ」
セレナの言葉にネプテューヌ達は驚きを隠せない。
守護女神に匹敵する戦闘力を持つ存在がアリスを含めて六人もいるのだから。
「君達の戦いはさっきも言ったように、第二回戦、黒と緑の女神の戦いから見させてもらっていたよ。新しい力を習得し、さらなる強さを得たことで君達もこの祭に参加する資格を手に入れた」
「六人の守護女神の皆様には我々六魔将とそれぞれ一対一で戦っていただきます。四人の女神候補生の皆様については私が舞様が待つ山の頂へご案内しましょう。決闘はお互いに小細工無しの真剣勝負です。妙な真似をした場合は舞様の命は勿論のこと、あなた方が守護する国が消えて無くなることを覚悟してください」
淡々と説明するアリスは真剣な眼差しを向けている。
それは今の説明に嘘偽りは存在しないことを示していた。
それは舞の命を奪うことも四つの国を滅ぼすことも
自分達がその気になればいつでもできるという意志の現れである。
「一つ聞かせて…。 アリアは、どうなったの?」
「彼女には生け贄になってもらったよ。舞がシルバーハートになるためのね。繭の中で眠る舞はもう人間じゃない。君達やかつての私と同じ守護女神さ。あの子が消える時、何て言ったと思う? 泣きながら、ごめんなさい…だよ! 笑えるよね。違う世界で平和に暮らしていた女の子を戦いに巻き込んでおいて、ごめんなさいで済むかって話だよ」
セレナとシエルはファントムハートを睨み付ける。
長い間共に戦ってきた戦友のことを馬鹿にされたのだ。
大切な友達を馬鹿にされて怒らない人間はいない。
だが、二人の中には希望の灯火が残されていた。
ファントムハートの言葉が真実ならアリアは消滅したということになるのだが、
セレナとシエルとアリアを繋ぐハード・リンクはまだ生きているのだ。
セレナの頭の中にある人物の姿が浮かび上がった。
それは体を失い、意識だけの存在となっても
このゲイムギョウ界を見守っている一人の守護女神。
「そっか…。アリアは舞と一つになったんだね…」
アリアはまだ消滅していないとは決して言わない。
言えば間違いなく消滅させられてしまうだろう。
唯一無二の相棒の少女はこの瞬間も一人で戦っている。
取り乱すことは無く、冷静な気持ちを保って言葉を紡ぐ。
「おや、そんなの嘘だよ!とか言って怒鳴ってくるかと思ったけど、冷静だね?」
「馬鹿にしないで。口には出してないだけで私とシエル、ネプテューヌ達もあなたを許さないって気持ちでいっぱいだよ。この場であなたに怒鳴ったところで状況は何も変わらないことはみんなわかってるもの」
「へぇ…。舞には及ばないけど、面白いじゃないか。ありきたりの反応ばかりされるのもつまらないからね。おっと、今回の祭の主役のご到着のようだよ?」
ファントムハートの言葉に後ろを振り向くと
そこには戦意を取り戻したネプギア達が立っていた。
四人とも特殊女神化状態でその瞳には力強い輝きが宿っている。
「やっと来たね。来なかったらどうしようかと思ったよ」
「舞さんの姿で、舞さんの声で喋らないでください。セレナさんの国を奪っただけじゃなく、今度は舞さんとアリアさんを連れ去って…。どこまで他人の大切な物を奪えば気が済むんですか?」
「どこまでも…だよ。私に限らず人の欲望は底無しさ。私が欲しいと思った物はどんな手段を使ってでも奪い取る。全ては尽きることのない私の欲望を満たすためさ」
「同じ守護女神だったとは到底思えない考え方ね。アンタみたいなのがどうして甦ったのか不思議でならないわ 。アンタのことは前に舞から聞いたけど、誰かに甦らせてもらったとかじゃ無いんでしょ?」
「君の言う通りさ。戦いに敗れて消滅したはずの私が今代のゲイムギョウ界に甦った理由は私自身にもわからない。これは私の単なる仮説に過ぎないけど、このゲイムギョウ界という世界その物が私を甦らせた…。これが最も妥当な理由だと私は考えている」
「難しいことはわたしにはわからない…。でも、一つだけ言えること…。舞お姉ちゃんは返してもらう。わたし達の邪魔をするならみんなやっつける…!」
「いいね。その力強い眼差し。やはり舞と強く結びついていた君達こそ、あの舞台に上がるに相応しいよ。繭の中で眠る舞と会ったとしようか。君達は舞に刃を向けることができるかい?」
「その覚悟はできてるわ。操られてたとしても、舞の目はわたし達が絶対に覚まさせてみせるんだから! あんた達に負けるつもりは無いわ!」
「君達と過ごした思い出を忘れていたとしてもかい? 残念だけど、舞の記憶は既に消去済みさ。君達のことなんか覚えていない。むしろ敵とみなすことだろうね。何故なら、私が繭の中で眠る舞に君達女神候補生に襲われる夢をみせているから。記憶を失った無垢な少女の反応は素晴らしいの一言に尽きるよ。今頃夢の世界の舞の体は君達のせいで血まみれになっていることだろうね?」
ファントムハートの一言に全員が苦虫を噛み潰したかのような表情をする。
ネプテューヌ達はセレナからファントムハートの能力を聞いていたので
この最悪の事実を頭の片隅で予測していたが、ネプギア達はその話を聞いていない。
彼女達の心を再び折るつもりで言ったのかはわからないが、
ネプギア達の意志はここに来る前に既に決まっていたのである。
「例え舞さんが私達のことを覚えていなくても、逃げ出す理由にはなりません。私達は舞さんと直接戦う覚悟はできています。あなた達を倒して舞さんを救い出す…。私達の目的はそれだけです。そしてゲイムギョウ界の平和を取り戻してみせます!」
「世の中そんなに自分の思っている通りに上手く進むと思ったら大間違いだよ? 君達のような偽善者の綺麗事を聞くだけでも虫唾が走るくらいさ…。いいだろう。君達のその覚悟をあの舞台で見せてもらうとしよう。友達同士で存分に殺し合うといい」
「舞を助け出したらアンタのくだらない欲望も終わらせてあげるわ! もう二度とこんなふざけた真似はさせないんだから!」
「絶対に許さない…! 舞お姉ちゃんを助け出して、あなたをやっつける…!」
「わたし達の力、見せてあげるわ! 舞は必ず取り戻してみせるっ!」
「あはははっ! その意志の強さがどこまで持つか見物だね? 今から楽しみになってきちゃったよ! アリス、例の物をネプギアちゃんに渡して」
「かしこまりました。ネプギアさん、これを受け取ってください」
アリスはネプギアに向けてある物を投げる。
ネプギアは投げられたそれを両手でキャッチする。
「このディスクは…」
「そのディスクの中にはこのゲイムギョウ界全体のマップデータが入っています。我々六魔将が待つ場所には星の印がついています。どの場所に誰が向かうのかはそちらの自由です。決闘の開始時刻ですが明日の夜、太陽が完全に沈む時刻とさせていただきましょう。六人の守護女神の皆様がそれぞれの戦場に到着したことが確認でき次第、私が女神候補生の皆様を舞様がいる場所にご案内します」
ゲイムギョウ界の太陽が完全に沈む時刻は午後六時。
かつてないほどの厳しい戦いが展開されることが予想される。
「先程、守護女神の皆様にもお伝えしましたが、我ら六魔将と守護女神同士の決闘は一対一の小細工なしの真剣勝負です。守護女神以外の誰かが加勢したりと妙な真似をしたその瞬間、舞様の命と自分達が帰る国は消えて無くなると認識していただきたい。ファントムハート様、お戯れはこの辺りで切りあげることを提案します。祭の役者も無事に揃ったことですし、我々も最後の仕上げに取り掛かりましょう」
「ふふふ…。いよいよだよ。楽しい楽しい祭…。カーニバルの始まりさ。君達の希望がどこまで通用するのか存分に見せてもらうとしよう。そして一つ教えてあげるよ。私を倒すことができるのは真のシルバーハートとして覚醒した舞だけさ。特に深い意味は無いけど、頭の片隅で覚えておくといい。次に会える時を楽しみにしているよ…!」
ファントムハートとアリスは空間に溶け込むように消えていった。
絶対に負けられない戦いが控えている。緊張が場を支配していた。
「…」
ネプギア達は特殊女神化状態を解除して気持ちを落ち着かせる。
ネプテューヌ達も武器を収めると、輝きを取り戻したネプギア達を見る。
「ネプギア、大丈夫?」
「さっきのお姉ちゃんの言葉で目が覚めたから大丈夫だよ。今度は必ず舞さんとアリアさんと一緒に…。六人でプラネテューヌに必ず帰ってくるから。お姉ちゃんは私達と舞さんが帰る場所を守ってくれる?」
「よーし! プラネテューヌのことはお姉ちゃんに任せなさい! 六魔将だか何だか知らないけどネプギア達と舞とアリアが帰る場所を壊そうとするならやっつけるんだから!」
「私達守護女神に匹敵する戦闘力を持った六人か…。今までで一番厳しい戦いになるとは思うけど、絶対に負けられないわね…! 国の守りは私達に任せて、あなた達は自分のできることを全力でやりなさい!」
「同じ場所に立ってあなた達を支えることができないのは心苦しいけど、あなたたちのことを信じているわ。私達をギョウカイ墓場から助け出してくれたように誰一人欠けること無く舞とアリアと一緒に帰ってきてくれることを…」
「これまで舞さんと一緒に培ってきた物を全て出しきって勝利を掴んできてください。あなた達の帰る場所は私達が全力で守ってみせますわ」
「舞とアリアのこと、お願い…。私にはこれくらいしか言えないけど…。今まで舞と一緒に頑張ってきたネプギアちゃん達なら、きっと大丈夫。ネプギアちゃん達の背中は私達が預かるよ。舞とアリアを取り戻すことだけを考えて全力を出し切って」
「無事に帰ってきたら、みんなでまた色々なことをしよう。私は舞やネプギアちゃんと言葉を交わしていく中で思った。みんなでバカみたいに笑って過ごす日常を大切にしてそれを守っていきたいってね。冷静に自分達に出せる最高の一打を放ってきて。ネプギアちゃん達の思いの力はきっと舞に届くはずだから」
六人の守護女神達が自分達の背中を押してくれている。
ネプギア達はそれを強く感じ取っていた。後は自分達にできることを全力で成す。
もう一人の姉とも呼べる舞から教わったことを実行に移すのみだ。
話が纏まったところで闘技場を後にしてプラネテューヌの教会に帰還する。
明日の朝に全員で集まって事前の対策会議を行うことになった。
対策会議を終え、アリスが指定した決戦の時刻まで一時間となったところで、
プラネタワーの屋上から全国に中継する形でこれから六人の守護女神と
四人の女神候補生で世界と一人の少女の命を懸けた決戦に臨むことを伝える。
ネプテューヌ達の決意を聞いた国民は全力で応援してくれた。
自分達の力の源であるシェアの力が限界まで高まり、全ての準備が整った。
先に新たな力を習得した六人の守護女神が六魔将が待つ戦場に飛び立つ。
舞とアリアを取り戻して誰一人欠けることなくみんなで明日を迎えるために。
Re;birth3は12月18日に発売ですか…。
超次元編完結後の神次元のお話を作る(予定)ためにも
これは絶対に買わないといけませんね。予約も早めに入れないと…