「さて……この鏡をどうするかなんだけどね」
「直せないんですか?」
「うーん、直せることは直せると思うんだけど鏡の機能がちゃんと生きているのかはわからないからね。能力が発動しないんだったらただの鏡だし……」
「能力、ですか?」
「あれ、説明してなかったっけ?」
「すいません、資料に目を通してはいたんですが記憶から抜けてしまっているみたいで」
「そっか……まぁ、簡単に説明すると亡者の生前の行いを知る方法って今はタブレット端末に表示されるでしょ?」
「はい、そうですね」
「現世の地獄絵図とかにも書かれてるんだけど補佐が鏡に亡者の生前の行いを映してそれをぼくが見て刑罰を決める、みたいな使い方してたんだけど今のシステムを作る時にいらないよなーと思ったからぼくの部屋に保管してたんだ」
「それを閻魔様が割ってしまった、で合ってますか?」
「うーん、面目ないねー。まぁ、その通りなんだけど。どこか余ってる部屋ないか聞いてみるね」
そう言うと閻魔様はこめかみに人差し指をつけ、眉間に皺を寄せた。しばらくすると終わったのだろうか一息をつくようにして椅子に座った。
「使ってない執務室あるっぽいから鍵借りて使っていいよー」
「わかりました。閻魔様はどうされますか?」
「ん?ぼく?少し休んでから仕事に戻るよ。時間が取れたらそっちに顔出しに行くね〜」
「了解です」
「では、私が鏡の本体を持っていくので破片を持ってついてきてください」
佐藤さんの後ろについて、しばらく歩くと佐野さんが今日も鍵を磨いていた。少しだけ話をして鍵を受け取る。
「さて、この鏡を元の状態に戻さないといけませんね……」
「ですね。破片はどうやって戻すんですか?」
「浄玻璃の鏡はその性質上、破片だけでも効力はあるのですが効率が非常に悪いと言わざるを得ませんからね。例えばこの破片をおそらくこの辺りに置くと……」
佐藤さんが鏡の破片を枠の中に置くと、破片は接着剤で固定したかのように固まった。どうやら、正しい位置に置けばいいみたいだ。
「ではやっていきましょう」
「そうですね」
◇◇◇
しばらく佐藤さんと2人で鏡の破片と睨めっこしながら組んでいくと、枠の外周を組むことはできた。だが、内側の破片がどうもうまく組めない。
「少し、休憩しましょうか……」
「そうですね……」
執務室に常備されているお茶を湯呑の注ぎ、手渡されたので受け取った。お茶は熱すぎず、飲みやすい温度だったので一気に飲み干した。
「ありがとうございます」
「思った以上に時間がかかりそうですね……どうやらかなり細かく割れているようですし」
「ですね……」
「もうしばらくしたら巻尾も合流できるみたいなので頑張りましょう」
「はい!」
休憩が終わると2人黙々と鏡を直していく。そうこうしているうちに、巻尾さんがやってきた。
「お疲れ様っスー!!!進み具合どうっスか?」
「外周は出来たんですが内側がまだですね……」
「どれどれ、本当だ……」
「なかなか骨が折れますよ」
「私も手伝うっス」
「ありがとうございます。ですが……」
「なんかあるっスか?」
「いや、できれば早めに直したいんですが思った以上に時間かかってますからね。もしかすると、犯人たちの要求の時間が迫るかもしれませんし」
「あー、なるほどっスね。その件なんスけど」
「なにか進展ありました?」
「どうやら犯人たちは独自の回線を使って連絡を取ってるみたいなんスよ。で、色々調べた結果、位置自体は割れてるっス。後は、犯人たちからの連絡を待つだけっスね」
「そうですね」
「はなちゃんが心配なのもわかるっスけど種田さん最近まともなもの食べてるっスか?」
「あんまり喉通らなくて……」
「そうなると早く解決させないといけないっスね」
「そうですね」
巻尾さんが言ったように、早く解決してくれてば嬉しいが、犯人たちからの連絡は来ない。はなは大丈夫だろうか?ずっとそのことばかりを考えてしまっている自分がいた。
そうこうしているうちに、執務室の扉をノックする音が聞こえた。佐藤さんが応対すると、どうやら佐野さんが気を利かせて江藤さんと轟にも連絡をしたようだ。
「お疲れお疲れー!!!人手足りてないんだろ?俺らにも手伝わせろ」
「そうだぞ。水臭いじゃねぇか。あっ、これつまめるものです。よかったら」
「ありがとうございます。お二人は執務は?」
「今日は亡者の数自体は少なかったからな。上長に掛け合って早めに終わらせてもらったってわけだ」
「そう言うこと。これ、組めばいいんだろ?」
「あぁ……最初2人でやってたんだけど外枠だけは終わらせることはできたんだが内側がな」
「まかせろ。昔からこう言うのは得意なんだ」
そう言うと轟は腕まくりをして作業に入っていった。大人数で仕事をするのもそうそうないので物珍しい感が否めない。
「種田さん」
「はい」
「ここにいる人たちは種田さんのためにきてくれている人たちです」
「はい」
「いい関係をお持ちですね」
「はい」
不思議と泣きそうになった自分がいた。理由はわからない。