地下施設の冷たい空気が、肌にじんわりと染み込む。わずかな灯りに照らされた薄暗い空間で、ぐったりとしたはなを抱き締めていた。
はなの小さな胸は微かに上下しているものの、その呼吸は弱々しく、いつ止まってもおかしくないほどだった。そんなはなの命の灯火を見つめて、気持ちは重く沈んでいく。
「はな……どうか……」
声は震え、涙が頬を伝う。だが、その時、静かな声が隣から聞こえてきた。
「種田さん、どうか冷静になってください」
振り返ると、佐藤さんがいつもと変わらない調子で話しかけてきた。彼女の表情はいつも通り落ち着いているが、その奥に確かな緊張が隠れているのを感じ取れた。
「私に出来ることがあるはずです。ですが、無理はなさらぬでください。私の力にも限界がありますから」
佐藤さんがいっていることが慰めだとわかっていたけれどなんとも言えない気持ちが胸を締めつける。
「佐藤さん、力を貸してください。はなを助けたいんです」
佐藤さんはゆっくりと頷き、立ち上がる。
「わかりました。しかし、ここで使う力は私の身体に大きな負担がかかります。以前も使い過ぎて倒れかけた経験がありますかえあ、ご理解してください」
薄暗い空間の中で、彼女は深く息を吸い込み、両手を差し出した。ゆっくりと目を閉じ、意識を集中させる。
「はなちゃんの命を繋ぐため、全力を尽くします」
掌から、かすかな光が漏れ始めた。空気がひんやりと震え、冷気に混じるように暖かさが漂う。佐藤さんの体が小さく震え、汗が額を伝う。
「皆さん、警戒してください。私の力を使います。敵の接近に備えてください」
背後の闇から、敵の気配が次第に近づく。轟と江藤さんは即座に構えをとり、暗闇に備えた。
『敵の数が増えているっス!』
巻尾さんが端末を操作しながら声を上げる。地下施設の狭い通路に、無数の影が蠢いているのが見えた。
佐藤さんの掌の光は次第に強くなり、はなの体を包み込んだ。その光がはなの小さな身体に染み入り、奇跡を願った。
「どうか……はな、目を開けてくれ……」
だが、その時、佐藤さんの体に異変が起きた。顔色が悪くなり、膝をつこうとしたのを慌てて支える。
「佐藤さん!無理しないでください!」
「……まだ、頑張れます。ここで止まるわけにはいきませんから」
声はかすれ、明らかに限界が近い。しかし、その瞳は必死に光を灯し続けている。
敵の一体が佐藤さんに襲いかかったが、轟が間一髪で阻止。地下の戦いが激しさを増す。
「種田さん、はなちゃんの反応が……!」
ぼんやりとだが、はなの胸がわずかに力強く動くのを、種田は感じ取った。小さな命が必死に抗っている。
「もう少しだけ、持ちこたえて……!」
佐藤さんの体が震え、冷たい汗が滴る。彼女は静かに目を閉じ、最後の力を振り絞った。
「はなちゃん……どうか……」
光が最高潮に達し、はなの体から淡い輝きが溢れ出した。自然と目に涙があふれ、祈るように見守る。
やがて、はなの小さな目がゆっくりと開いた。
「はな……!」
思わず抱き締め、声を震わせて喜びを噛み締めた。
佐藤さんはぐったりとその場に膝をつき、疲労で体が震えているようだ。
「無理をしすぎました……申し訳ありません」
種田は急いで彼女を支え、励ます。
「佐藤さん、あなたがいなければ、はなは今ここにいません。ありがとう」
「そう言っていただけるなら……幸いです」
静かに微笑みながらも、その目にはまだ闘志の光が消えていなかった。
地下の闇は深く、容赦なく襲うが、今はただ、はなの命が繋がった奇跡を胸に、皆立ち上がる。