地獄の沙汰も君次第   作:Marks_Lee

111 / 186
決意

朝の光が窓から差し込む病室は静かだった。はなはまだ眠っている。昨夜の激しい出来事が嘘のように、彼女の呼吸は穏やかで安らいでいた。

 

隣に座る佐藤さんが、小さなため息をついて言った。

 

「もうすぐ退院ですね。でも、無理はさせられませんよ」

 

「そうですね……これからが本当の勝負かもしれないですから」

 

窓の外を見ながら答えた。地下施設での戦いは終わった。しかし、はなの体と心の状態はこれからどうなるか、まだわからない。けれど目の前の彼女は確かにあのはなであり、これからも守っていかなければならない存在だ。

 

その時、はながゆっくりと目を開けた。瞳はまだ少し眠そうで、それでも確かな意思が宿っているように感じられた。

 

「おはよう、はな」

 

「……おはよう」

 

その声は少し落ち着いていて、あの子のままだった。以前よりもずっとしっかりと。

 

「気分はどう?」

 

「ちょっと疲れてる。でも、大丈夫」

 

その答えに、ほっと安堵した。どんなに変わっても、はなははなだ。けれど無理は禁物だ。

 

朝食の時間、佐藤さんと改めて話した。

 

「この先のこと、どう考えていますか?」

 

「体の変化はまだ落ち着いていません。それに回復には時間が必要だろうし、精神面のケアも不可欠です。焦らずゆっくり進めるしかありません」

 

佐藤さんの声には冷静さと優しさが混ざっていた。

 

「それに、普通の日常に戻ることも大事です。はなちゃんが安心できる場所を守ってあげることが、なによりも大切だと思います」

 

黙ってうなずいた。そうだ、焦ってはいけない。

 

退院の手続きを終え、病院を出た。外は晴れ渡り、風が心地よく吹いている。

 

はなは少し歩きづらそうにしていたが、一歩一歩を確かめるように前へ進んでいた。

 

「ゆっくりでいいからな」

 

そう声をかけると、はなが少し笑った。

 

「うん、ありがとう」

 

帰り道、端末が震えた。巻尾さんからの連絡だ。

 

『報告書、確認したっス。特に問題はないっスね。はなちゃんの体調も引き続き注意しながら、しっかり見守ってほしいっス』

 

俺は画面を見つめて、少し安堵した。

 

家に戻ると、はなは窓の外をじっと見ていた。

 

「なにか考えてる?」

 

声をかけると、彼女は少しの間黙ってから答えた。

 

「外の世界は……怖い。でも、それでもここが私の場所なんだって思う」

 

俺はそっと肩に手を置いた。

 

「怖いのは当然だ。これからも守るから、一緒に進もう」

 

はなは小さく頷き、そして微笑んだ。

 

「ありがとう。……これからもよろしくね」

 

その笑顔を見て、俺はわずかな光を感じた。未来はまだ見えないけれど、確かに始まっている。

 

外の世界は変わらず動いている。色々と変化することもあるだろう。それでも、はなと共に、新しい日常を築いていくのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。