まずは現状を整理していこう。
佐藤さんたちとの連絡はとれる……はず。ただ、連絡ができたとしてもそこから切り開けるかはまた別だと思う。
外には出ることはできると思う。ただ、いかんせん上に戻れるとは正直怪しいところがある。
力で押し通す?……それができるのならばおそらく実行しているだろうしこの家の主人は明らかに人ではない。
そんなことを考えていると、ふと空から塵のようなものが見えた。それはまるで羽ばたきをしているかのようにこちらへどんどん近づいてくる。
「よぅ、元気そうじゃないか」
そう語りかけてきたのはアルカだった。この子憎たらしい蝙蝠は相も変わらずふらふらとしている。
……待てよ。
「アルカ、すこし話がしたい」
「いいぜ、どんな話をするんだ?」
「まず一つ。どうやってこの場所が分かった?」
「それが聞きたいことか?俺とお前は一応は契約をしてるからな。お前がどこにいるのかなんてこっちからしたら当たり前みたいにわかるんだよ」
「……つまり、最初からわかっていた。であっているのか?」
「そうだなぁ……今の現状を切り開こうとしてるがとどのつまり何もできない。そう考えて満を持しての俺様の登場ってわけだ」
たしかに今の現状はどうにもできるものではなかった。ただ……そうなると新たな疑問が沸き上がる。
「つまりお前はずっと見ていた?」
「そうだな、それで合っている」
なんで助けに来ないと言いたかったがそれよりも口から出た言葉は自分でも驚くものだった。
「……わかった。とりあえず会いに来てくれたでいいんだな?」
「まぁ、そうなるな」
「じゃあなんですぐに来なかったんだ?それこそ会いに来るだけだったら場所も割れてるんだしすぐに来れるだろうに」
そう言うとアルカは一瞬考えるように目線を逸らした。これは何かを隠している。
「教えてくれ、アルカ。なぜ、すぐに会いに来なかったんだ?」
「そうだなぁ……お前の今の現状を遠くから観察していたのもそうだが今この場所の管理をしているアレに見つからないようにしていたってのが理由かな」
「アレ?」
「お前を狙ってるあの女だよ」
お前を狙っているあの女?
「あー……なるほどなぁ。その鈍感さが命拾いしているのかもしれんなハッハッハ」
「もしかするとこの家の主のことだったりするのか?」
「そうだ。アレはいろいろやばい」
たしかにやばいと言われたらそうだが現状たてついたらどうなるか分かったものじゃない。そういえば佐藤さんが言っていた蛇と蜘蛛というワードに触れるものなのかもしれない。
「アルカ、もうひとつ聞きたい」
「なんだ?」
「蛇と蜘蛛。この意味はわかるか?」
「そうだなぁ……欲の具現化といったところだろうなぁ」
「欲の具現化?」
「そう、欲というのは昔から動物に例えられることが非常に多いんだ。鷹や狼、熊や獅子。それらはすべて欲の具現に使われる」
欲の具現。そういわれると蛇と蜘蛛というのはもしかするとそういう意味だったのかもしれない。アルカに礼を言おうとするとアルカの目線が何かを示した。
「おい、だれか来るぞ。じゃあ今日はここらへんで。あーばよ」
そういうとアルカはバサバサと翼をはためかせ飛んで行った。空の色は鉛色に変わっていた。
◇◇◇
空はどんよりと鉛色をしていて、今にも一雨降ってきそうな空気だった。廊下に立っていると奥の間のほうから女中が歩いてくる。
「失礼します、種田様。お食事の準備ができましたのでお伝えに参りました」
「……ありがとうございます」
「冷めないうちにお召し上がりください」
そういうと彼女は一礼し、また奥の部屋へ戻っていった。出された食事にはいまのところ問題はないと思いたい。部屋に戻ると、座敷の真ん中に食事が用意されていた。
正直、食欲はあまりないがそうも言っていられない。盆にのせられた食事を口に運ぶ。……精神なのか身体なのかわからないがあまり味はわからなかった。
正直今の現状は飼い殺しにあっている気分だ。ひと暴れしたら変わるかもしれないが現状はよくならないと確信できる。
はなは……大丈夫だろうか……
そんなことを考えていると急激な眠気に襲われる。瞼は重く、意識はもうろうとしてくる。だめだ、起きろ。絶対に眠るんじゃない。そう頭ではわかっていても身体は言うことを利かず、意識はプツリと手元から離れていった。
◇◇◇
世界というものはいかんせん不思議なもので個人のひとつの行動の選択でまるで万華鏡のようにがらりと変わる。
それはまるで魔法のようでいて実際のところ真理はわかっていない。
世界というものは固定ではない。
変わり続けていくものだ。それがいいほうに行くのか悪いほうに行くのか。
それを指し示すことはできない。
種田といっただろうか。……もしかすると彼は、彼だったらもしかするとと思うと笑みが浮かんでしまう。
さぁ、世界をかき混ぜろ。あらなければならない理などあの世にもこの世にもない。