その後、昼過ぎまで河原のゴミ拾いを行なったがやれどもやれども終わらない。それだけゴミが多いということだろうけど……空が鉛丹色になる頃には、体は疲労困憊で足腰がフラフラと震えていた。
「よし、今日はここまでにするかー。片付けして帰るぞー」
江藤さんと轟は片付けを始めると、テキパキと慣れた様子で袋をまとめ道具を片付けていく。
「よーし、終わった!!!あー腹減った!!!」
「……これいつもやってるんですか?」
「えーっと、まぁなぁ……」
そう聞くと轟は、がしがしと頭を掻きながら答えた。また聞いちゃいけない質問を問いかけてしまったのだろうか。
「はぁ……こいつの場合はしょっちゅうやらかしてるからな。クビにならないのが不思議なくらい」そう言われた轟を見ると素知らぬ顔して口笛を吹いている。これはあれだ、誤魔化してる顔をしてる……
「まだ一週間以上あるからなー。毎日100パーセントの力で片付けてたら体が持たねぇよ。余力を残して次の日に備える。それが長丁場のコツだ」
「それを普段から実践してくれればなー……おっ、どうやらお迎えが来たようだぜ」
江藤さんが指をさす方を見ると、佐藤さんが赤ん坊を抱いて迎えに来たようだ。一人で帰れなくもなかったが、迎えに来てもらえただけでもありがたいと思ってしまう。
「お疲れさまです、種田さん」
「お疲れさまです。赤ん坊の方も迎えにいってくれて助かります」
「いいえ、お気になさらず。お二人ともお疲れさまです。これ、よかったらどうぞ」
佐藤さんはそう言うと二人に缶コーヒーを手渡した。青色の缶に山のイラストがデザインされている現世でもよく見たやつだ。
「ありがとうございます」
「ありがたくいただきます!!」
「では種田さん、帰りましょうか」
「ええ、そうですね。お二人とも、明日もよろしくお願いします」
「おう」
二人に会釈をすると轟は大きく手を振り、江藤さんは足元にあった丸石に座りタバコをふかしていた。
「なぁなぁ、あの二人……出来てんのか?」
「いや、アレは違うだろう……出来たら出来たで面白そうだが」
口から燻らせられた紫煙は、フワリと空に広がっていく。空は墨色に染まり、辛うじてタバコの火だけが蛍の光のように見えているばかりだ。
「俺たちも帰ろうか」
「そうだな……先に湯屋に行きたいところだがお前はどうする?」
「そりゃ決まってるっしょ!メシが先だ!」
「はいはい、わかったよ」
◇◇◇
その後数日に渡り、三途の川のゴミ拾いをした。どこから流れてくるのかわからないが、キレイにするのはそんなに嫌いではないのでひたすらゴミを集める。
「ここらへんのゴミはもうないみたいですね」
「そうだな。あとは下流の賽の河原あたりまで下らないとないだろうな」
「……ということは?」
「これで終わり。お疲れさーん」
「お、終わったああああ」
約一週間の掃除は大変だったが、身にはなった……と思う。そう思ったらドッと疲れが出てきた。
「とりあえず各ゴミをまとめるぞー」
各自集めたゴミを分別し、ひとまとめにする。こう見ると燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ごみと落ちているものの数に差があるのがよくわかる。
「そういえばこのゴミってどうするんですか?」
「可燃ゴミは圧縮してどこかの地獄に落とすとかだろうな……金属なんかは刑罰に使う拷問道具用にリサイクルってのもある」
「亡者の舌引っこ抜く時に使うやつとかなー。あれ見るだけで痛そうで見れないんだわ」
「お前は意外と小心者だな……で、どうするこの後。俺たちは一風呂浴びにいくが」
「そうですね……一度連絡とっても大丈夫ですか?」
「あぁ」
佐藤さんに連絡をするために端末を開く。そういえば、ごみ拾いを始めてから赤ん坊の迎えを頼んでいたけどそれもどうしよう。今日は早めに終わったし俺が迎えにいった方がいいのかもしれない。
諸々を連絡すると、佐藤さんから返事が返ってきた。
相変わらず返信が早い!
『連絡ありがとうございます。では今日は、種田さんがお迎えに上がるということを宮田さんにお伝えしますね』
「ありがとうございます。よろしくお願いしますっと」
「どうだった?」
「ええ、俺が迎えにいくことになりました。ただ、夕方まで時間が空いたので行けそうです」
「よっしゃ、じゃあ行こうぜー」
そう言うと俺たちは3人揃って風呂屋へ向かうのだった。
ーーー
所変わって佐藤は、閻魔様の執務室で書類業務の手伝いをしていた。
「一風呂ですか……」
「お、何?風呂?」
「いえ、種田さんが風呂屋へ行くそうなのですが一緒にいくのが他部署のものでして」
「ふーん、佐藤はそこを心配してるんだ。引き抜かれないか気が気じゃないってこと?」
「いえ、そう言うわけではありませんが……」
「だったらたねちんを信じてあげなきゃ。それにそこまで深い関係じゃないんだし……重い女は嫌われるよ」
「ハァ……」
佐藤はため息をつきながらこめかみに指先を当て、頭痛を抑えるようにため息を吐いた。