地獄の沙汰も君次第   作:Marks_Lee

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fall in down

佐藤さんと江藤さんが二人で何かを話していたのはなんとなく察した。どんな話をしたのかはわからないが、二人の間の空気は険悪な雰囲気を感じなかった。

 

「どうやらみなさん揃ったようですね。ではまいりましょう」

 

「ここから図書室まで歩くのか……結構距離あるぞ」

 

「大丈夫です。私の持っているこの鍵束は、地獄全ての場所に通じていますので」

 

「そいつはすごいな」

 

「ありがとうございます。ですがこの鍵。全てつなげた場所をきちんと覚えておかないと扉は開かないようになっているのでそこだけが管理する上で大変なんです。では、皆さまこちらへ」

 

佐野さんはそう言うと、右手を挙げパンパンと2回空に向けて拍手をすると、目の前に巨大な扉が一つ、音を立てずに現れた。その扉は、赤銅色に面し大人数の人間が一度に通れるほどの大きさだった。

 

「ここから少し歩きますので。足元、気をつけてくださいね」

 

「足元って……うっわ」

 

扉を潜ると、目の前に雲海が広がっている。ただ、違っているのは空の色が濃い濁色で星は全く見あたらない。

 

「この道は地獄の玄関先と言われている三途の川のちょうど真上を通る道です。流石にここから落ちると洒落になりませんのでお気をつけください」

 

「……俺はこの道が残っているのが驚いている」

 

「事情を知っている人でしたら驚くのは当然かと。この道は聖人と言われる類の人間しか通れませんので」

 

「聖人、ですか……今は昔に比べて少ない、ということで合ってますか?」

 

「ええ、そうですね。私個人としては、信仰の自由は尊重します。が、それが罪の数や重さと秤に掛けられるかと言われると難しいところですね。さぁ、着きました」

 

そこには緑色の土管があった。こ、これに入るのだろうか?まさかとは思ったが、一応聞いてみる。

 

「えっと、佐野さん。ここに入るんですか?」

 

「おい、そこが見えねぇぞどうなってんだこれ」

 

「なんか昔やったゲーム思い出したわ」

 

「では、みなさん。この土管に入ってください」

 

そう言われたが誰も動こうとしなかった。

 

「しょうがないですね」

 

そう言うと、佐野さんはまた拍手を2回ほどする。すると、佐野さん含め全員の身体が空中に浮き、土管へと運ばれていく。全員が驚いて声も出せずにいると、佐野さんを始めとして全員が土管に飲み込まれていった。

 

「う、うわああああああ」

 

落ちる。落ちる。落ちる。内臓がふわりと浮かぶような感覚だけが身体を通していく。

 

◇◇◇

 

数秒間落ちていく感覚があったが、床に叩きつけられる。そう思ったが実際はそんなことはなく、着地することができた。全員大丈夫かを確認をすると、誰も怪我せずに無事着地出来ていた。

 

「こ、怖かったあああああ」

 

「確かにヒヤッとしたなぁ……体感数秒だったけどすげぇ怖かったぜ」

 

「みなさん、怪我は特にしていないようですね。では、現場に入る前にもう一度確認を。今回の目的は、禁書を再度封印すること。これは、先ほど決まったことでしたのでみなさん共有できているかと思います。次に、悪霊ですが先ほどみなさんが受け取った道具で消せる、もしくは弱体化できると思います。わからないことはありますか?」

 

そう言われ、全員の顔を見てみたが誰も特に何も言わないし聞こうともしなかった。

 

「では禁書区画に入ります。何か様子がおかしなことがあった時には、すぐに報告をすること。それと全員バラけずに行動してください」

 

「わかりました」

 

「了解」

 

「ああ、わかりました」

 

「了解です」

 

禁書区画の前には黄色いテープが張り巡らされ、扉の前には二人の警備と思われる獄卒が二人いた。その二人は、佐野さんをみると、通せんぼしていた扉を掻き分けるようにして通り道を作った。

 

佐野さんは、ガチャリとノブを回し、扉を開いた。

冷たい空気が身を震わせる。

 

全員言われた通りに固まって移動していくと、どこからともなく音が鳴った。初めは家鳴りのような音だったが、どんどん、どんどんと大きな音に変わっていく。

 

「どうやらお出迎えのようだ」

 

「ああ、全員気をつけろ」

 

轟と江藤さんがそう言うと、書棚は大きな音を立て崩れ去り、元々本だったであろう紙たちが宙を舞った。思わず綺麗だなと思っていると、その紙は一つにまとまり、得体の知れない形に変わっていく。

 

それは大きな眼だった。それは長い髭だった。それは立派な角だった。それは鋭い爪だった。

 

その姿は、実在するモノではない。空想上の動物。そうわかりきっても、頭は現実に追いついていかない。

 

それは、とても美しく気高い獣だった。

 

 

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