「おい、大丈夫か!?」
「かろうじて息はしているが……この火傷はまずいぞ。とりあえず安全な場所まで運ぼう」
誰かの声が左右から聞こえる。多分、轟と江藤さんだろうか。
顔が、熱いを通り越して感覚がない。一度怪我したところを触れようと手を動かしてみるが、いかんせん指の一本すら力が入らなかった。
まずい……すごく眠たい……
「おい、寝るな!!!寝たら死ぬぞ!!!」
また誰かから身体をゆすられて意識がなんとか覚醒する。
「とりあえず合流するぞ」
「ああ、わかった」
どうやら両肩を担がれ、佐藤さん達と合流するみたいだ。途中何度か強い眠気に襲われたが、ギリギリ耐えられた。
「種田さん!大丈夫ですか!?」
「なんとか意識はあるがこの火傷だからな……なんとかしないと本当に死ぬぞ」
「少し待っていてください。たしか……ありました。これを火傷の患部にかけてください」
「これは?」
「天国の万病に効く薬酒です。本来なら、経口接種が理想なのですがこの様子だとおそらくそれをしたらまずいと思いますので……」
「たしかにな……これを頭からかければいいのか?」
「はい」
「わかった、やってみる」
江藤さんが薬酒をかける。すると、火傷した部分が熱を帯びる。一瞬、耐えられるかわからないほどの凄まじい痛みに襲われたが、メリメリという音と共に顔の皮膚が元に戻っていく感覚があった。
「大丈夫ですか、種田さん」
「はい、なんとか。一応、目は見えてます」
「はぁー、よかった。種田さん、あまり無茶はしないでください。今回はたまたま運が良かったからいいものを……」
「はい、すいません。そういえばさっき居た龍はどうなりましたか?」
「それはこっちだ。紙くずの状態になってたから全部吸い込んでおいたぞ」
「ありがとうございます。とりあえずなんとかなったんですかね?」
「いや、そうとは言い切れないみたいだぞ。アレを見ろ」
「アレ?」
そう言われ、遠目に見えるものを凝視するとそこには半透明の人型の何かが浮遊していた。
「アレって……もしかして」
「幽霊だろうな」
「え、え?ここ、地獄ですよ?」
「地獄にも幽霊は出るだろうよ。どうやらアレは本から出てきたやつみたいだけどな」
「……アレはどう対応すればいいんですかね」
「わからん」
江藤さんと二人黙していると、それを見かねたのか佐藤さんと佐野さんが前に出た。
「どうやらアレを退けないと先へ進めないようですね。佐野さん、出来そうですか?」
「そうですね……なんとかなる、と思いますよ」
「そうですか。では、いきましょう。江藤さんには私たちの事後処理をお願いしたいのですが出来ますか?」
「ああ、わかった。だが種田はどうする?ここに置いておくのか?」
「そうですね……轟さん、あなたに種田さんを任せます。出来ますか?」
「お、おう。わかった。ていうか、あんたに名前呼ばれたの初めてじゃねぇか?」
「そうでしたか?意識してなかったのでその件は申し訳ありません。それでは私たちは前線に出るので種田さんをお願いしますね」
「ああ、わかった」
◇◇◇
佐藤さんの手にはコンパクト、佐野さんは古びたフィルムカメラを携えて幽霊達が空を舞っている真ん中へ歩を進めて行く。
佐野さんは幽霊にカメラを向けたと思ったら、すぐさまシャッターを切り始めた。すると、それに気づいた幽霊達は、なぜか苦しそうに蠢き始めた。
それをすかさず、佐藤さんが懐から紙束を取り出した。すると、幽霊達はその紙束に吸い込まれていき、あっという間に紙束は水の中に墨を流したように真黒に染まっていく。
それを佐藤さんは細かくなるまで何度も何度も繰り返し破いていった。パラパラと解けていったそれを江藤さんが掃除機で吸い込んでいく。
「なぁ……見入ってるところ悪いが聞いていいか?」
轟が、何かを聞こうとしてきた。一体どうしたんだろう?そう思ったので質問を聞き返す。
「何を?」
「あの人、何者なんだよ」
「あの人?あぁ、佐藤さんか。俺もわからない」
「なんというか正体がわからないところがすげー怖い、と思いのは俺だけか?」
そう言われると、佐藤さんのことを何も知らない自分がいた。確かに、人の形をしているけどそれが真の姿とはいえないのかもしれない。
「まぁ、そうだな……今の所、頼りになってるからそう考えたことはなかったけど言われてみたらそうだな。今度どことなく聞いてみる。本人が口開くかはわからないけど」
「それもそうだな……どうやら片付いたようだぞ」
「みたいだな、よっと……」
佐藤さん達に合流しようと立ちあがろうとしたが、力が入らなかった。ふらりと倒れそうになるが、轟がグッと力を入れ倒れないように支えてくれた。
「すまん、ありがとう」
「別にいいよ。お前は一応怪我人だ」
「あぁ、そうだな。忘れてたわ」