龍は切られた首の断面を見せながらも臨戦態勢を解かなかった。
警戒しているからか口から炎を吐くことはせず、ただじっとこちらを睨んでいる。
向こうからしたら先ほどまで逃げ回っていた自分より格下の生き物が反旗を翻したように感じるのだろうか。
首の上にいた封印対象の本は、大きな眼をこちらにギロリと向け恨めしそうに睨む。
あちらからしても、こいつらだったら勝てるだろうと算段をつけて勝負しにかかったわけだからそれが崩れるのは些か計算外だったのだろう。
この龍を早く倒して封印しないと……
そう思い脚に力を入れようとするとプルプルと震えが止まらなかった。どうしたのだろう?と思っているとアルカが目の前に飛んできてこう言った。
「あー、これはエネルギーの使いすぎだな。おそらくだが、お前さんの場合過剰にエネルギーが消費されるようになってるみたいだ」
「つまり……どういうこと?」
「おそらくあと数分でぶっ倒れちまうな。そうしたらお仲間みなさん皆お陀仏だな」
そう言ってアルカはケラケラと笑う。その行動に少しばかり腹が立ったが、いかんせんそれも事実だ。
「つまりあと数分で倒せばいいんだな?」
「そう言うこった。まぁ、陰ながら応援するぜ」
またアルカはバサリバサリと飛んでいった。どこかの物陰にでも潜むのだろうか。
銘秤を持って龍の元へ駆け出していく。
それを見ていた龍は、ギロリとこちらを見ると鋭い爪でこの身体ごと引き裂こうと考えたらしい。
あの腕は厄介だな……
そう思い、銘秤に数滴血を付ける。すると、刃先が共振を起こすように震えると同時にバラバラという音と共に一振りの太刀に姿を変えた。
これだったらきっと届くはず……!!!
そう思い、思い切って空へ飛び上がると、龍の真上に到達した。それをただ見ていた龍ではなく、落ちるだけの状態の敵を屠るため最後の豪炎を吐こうとしていた。
ただ、こちらもそれが狙いだった。
口を開けた瞬間に、上顎と下顎に滑り込ませるようにして刃先を入れる。
すると、ゴリっと骨が当たる音が響いた。
よし、これだったらいけるはず……!!!
そう思っていたが、龍も最後の豪炎を吐き出し、身体が焼けるような痛みが走る。
「おぉぉぉらぁぁぁぁ!!!」
首を切り落とした勢いで、床に叩きつけられる。
首の方を見てみると、封印対象の本が見当たらなかった。
どこだ、どこにいった!?
辺りを見渡すと、龍の首だけを持ち、空に逃げていく封印対象の本。
させるか……と思い、走ろうとしたが身体がもう自由に動かなかった。どうやら、エネルギー切れを起こしたようだ。
くそっ、後ちょっとだったのに……
すると、暗闇から何かが動いた。轟だった。その速度は半ば人が出せる限界の速度を超えているようにも見えた。
「キャーッチ!!!!!」
そう言うと轟は黒い物体を逃げられないように力一杯つかみ、床に伏せるようにして押さえた。
「は、早く封印を……早くっ!痛っ!こいつ、暴れやがる!」
「わかりました!」
そう言うと佐藤さんが、床にサッと陣を描いた。その中央に、黒い物体を入れ込むとジュッと言う音と共に虫が息絶えた時のような声が聞こえたような気がした。
「お、終わりましたか?」
「ええ、これで封印完了です」
「お、終わった……つ、疲れた……」