「さて、聞きたいことはいくつかあるけど……君はどこから来たんだい?」
「どこから……そういえばどこからだ?」
そう聞かれたアルカは口を噤んでいた。どうやら、話したくはないらしい。
「ふーん、口を割らないつもりか。それじゃあ」
そう言って閻魔様が懐から取り出したのはおそろしく太い千枚通しだった。
「オイオイオイオイ、一体それで何をするつもりだ!?」
「決まってるじゃないか、そこの壁に磔にするんだよ。そして……」
「そ、そして……?」
「生きたまま皮を剥いで地獄の釜で茹で上げることにするよ」
「鬼!悪魔!そんなの人がやっていいことじゃねぇ!!」
「はっはっはっ!ぼくを誰だと思ってる?ぼくは閻魔だよ?一応はこの地獄の最高責任者さ」
「……わかった。降参だ!降参する!だからとりあえずそれおろして!!!おろしてください!!!」
吊し上げられた脚を話してもらい、自由になるアルカ。閻魔様のやることがえげつなさ過ぎて若干引いていると、こちらを見てニコリと微笑んだ。
「まぁ、口を破らない相手にはこれぐらいしないとねぇ……とりあえずたねちん、気をつけなよ」
「わかりました」
閻魔様は指をパチンと鳴らす。すると、カチャリと音が鳴ったと思ったら目の前にお茶のセットが現れた。こう見ると、やっぱり閻魔様ってすごいんだな、と心の底から思ってしまった。
「さて、さっきも聞いた通り君はどこから来たんだい?まさかこっちの出身とは言わないよね?」
「……一応、西洋だ」
「どうやってこっちにきたの?」
「こっちに送られてくる荷物に紛れ込んで来た」
「ふーん、そこからどうやって禁書エリアまで行ったんだい?あそこは蝙蝠なんて入れる隙間一切ないよ」
「そ、それは……!」
「裏で誰かがこっちへ差し引いたと考えてるんだけどどうだい?ん?」
「わかった。言う。言うから!!!」
アルカはそう言うと、口を割った。どうあやらこの状況で口を破らないほうが損をすると考えたらしい。
「実は名前は知らねぇんだ。ただ、お前はこのあたりにいたほうが面白いことになるって言われて」
「それはどんな姿をしていた?人相とか覚えているだろう?」
「わからねぇ。そもそも俺あまり目が見えねぇからよ」
「ふーん、そっか。まぁ、蝙蝠だもんね」
閻魔様は、口を濡らすために少しだけお茶を含んだ。聞いている側でさえ、喉が異様に乾く状況だったので、こちらもすこし口に含んだ。
そのお茶はほんのりと苦く、わずかに甘い。佐藤さんがいつも選んでいるお茶とはまた別のおいしさだった。