図書館の資料を集めようとタブレットで調べ始めたが、いかんせん絞る為のキーワードが少なすぎることに気づいた。
どうやら、あの図書館にある所蔵されている本の総数は想像していた以上に多いようだ。
一体どうしたものか、と悩んでいると佐藤さんがいくつかのキーワードを提案してきた。そのキーワードを入れ検索をすると何冊かの書籍がピックアップされたのでそれを取り寄せた。
「これでよし、と」
「届くまで少し待つことになりますね」
「そうですね。それまで少しだけ休憩しましょうか」
「ではお茶でも淹れますね」
「ありがとうございます」
佐藤さんが指をパチンと一度鳴らすと、急須などの茶具が現れた。一体どうやって出しているんだろうと毎回思うが、そこは聞かない方がいいと思ったので聞くのをやめた。
佐藤さんの手際はさすがと言うほかなく、あっという間に茶を注ぎ終えた。その注がれたお茶を飲むと、渋みが強い目が覚めるような味だった。
「うわっ。し、渋いですね……」
「さすがにお疲れのようでしたので目が醒めるような茶葉を選んだのですが口に合わなかったですか?」
「いえ、ありがとうございます」
しばらく休憩していると、扉をノックする音が聞こえた。扉を開けると、小鬼衆が本を抱えて持ってきてくれていた。
その本を受け取ると、小鬼衆は一礼し、廊下を歩いて図書館の方へと戻っていく。
受け取った本は、吸血鬼の伝承関連を纏めたものや、感染症等疑いのある病気等の症例が書いてある本など、全部で8冊ほど。
この中に、欲しい情報があるといいんだが……
ひとまず、読み始めないと終わらないことはわかったので、1冊目を手に取る。
中身は、古代の伝承から始まり、中世までの吸血鬼伝説を纏めたものだった。
「こうやって調べると昔から吸血鬼っているんですね」
「そうですね。その本は、中世までの記録になっていますが、中世以降になると地上では吸血鬼の目撃情報などはかなり減少していることがわかります。その理由はわかりますか?」
「なにかしらの理由があって減少、したのでは?」
「それで間違ってはいませんが、私が質問したのはその原因と理由についてです。種田さん、わかりますか?」
「……すいません。勉強不足です」
「自分の非力を認めることは次につながります。その姿勢を忘れずに。さて、先ほどの質問ですが答えは魔女狩りと西洋地獄の対策、と言えばわかりやすいでしょうか」
「魔女狩りと西洋地獄の対策、ですか」
「ええ、種田さんも魔女狩りは有名なのでご存じだとは思います。不思議な力を使ったと噂されて私刑をされると言ったものが魔女狩り。その中には、ほんのわずかですが本物の魔女もいたそうです」
「それが吸血鬼とどう繋がるんですか?」
「その魔女たちにほんの少しかかわりがあったのが吸血鬼とされています。吸血鬼は蝙蝠と縁が深いものですが、魔女が使役していた動物の中にも蝙蝠はいました。この意味がわかりますか?」
「……つまり、一緒くたに殺された、で合ってますか?」
「はい、その通りです」
「だとすると、さっき言っていた西洋地獄の対策が繋がることになりますよね」
「ええ、さすがにこの事態を重く受け止めた西洋地獄のトップが地上にいた魔女と吸血鬼を地獄に引き入れ、外に出さないようにしたんです」
「ん?でもあれですよね?少なくなったとは言え、中世以降にも吸血鬼は現れた、で合ってますか?」
「はい、合っています。そもそも、吸血鬼自体は蝙蝠の突然変異から生まれたとされるのが地獄での通説です。魔女も、同義。特殊な能力を持つ人間は、母数が膨らんだ場合少なからず生まれることになります」
「……と、言うことは現代でも魔女や吸血鬼は生まれる、で合ってますか?」
「はい、合っています。西洋地獄などはいまだ積極的に保護をしているようですが、こちらではそういった対策をしていませんから」
「な、なるほど……」
「保護と言ってはいますが、実際のところ封じ込めと言った方が正しいでしょうね」
「封じ込め、ですか?」
「ええ、魔女や吸血鬼といった者の知識は馬鹿にできませんからね。それこそ、やろうと思えば地上全ての生き物を滅ぼすことだってできます」
「その知識を、独占している?」
「概ね合っています。ですので、閻魔様もあちらのトップとはどうも相性が悪いようです」
なるほど、そう言う事情があったのか。佐藤さんとの話を終えると、また目の前にあった本を読み進める。
知らないことを知ること、知ったふりをしないこと。それがこの地獄に来て直接的には言われてないが、教えられたことだ。