家に帰り、しばらく待っていると呼び鈴が鳴った。扉を開けると、そこには子供が一人とてつもなく大きな荷物を風呂敷に包んで背負っている。
(この人が薬売りなのか?)
そう疑問に思っていると、薬売りの子供がぺこりと会釈した。
「どうもどうもあなたが種田さんですか?」
「はい、そうです」
「私、薬売りをやっています高田と言います。以後、お見知り置きを。さて、風邪の症状でお悩みとお聞きしましたがお加減はいかがでしょうか?」
「えっと、身体の怠さはなくて若干喉の痛みと……あと咳が少々って感じですかね」
「なるほどなるほど、少し見せてもらいますね。あっかんべーしてもらってもいいでしょうか?」
そう言われたので素直に口を開き、舌を見せた。すると、小さなライトで喉奥を照らし、患部を確認する。
「なるほどなるほど……種田さん、ここ最近埃っぽいところに行きませんでしたか?」
「えっと、仕事で埃が多いところには行きました」
「なるほどなるほど、じゃあ風邪の原因は主にそれですね。おそらくですが、知らず知らずのうちに埃を吸い込みすぎて炎症を起こしてると言った感じです」
「そうなんですね。そういえばマスクとかはしてなかったな……」
「まぁ、今回は炎症を抑える薬を出しておきますね。後、もしかして小さなお子さんでもいます?」
「えっ、なんでわかったんですか!?」
「あなたの後ろに子供用オムツが積んであったので」
「あぁ、そう言う理由か。一瞬、全部読まれたのかと思っちゃいましたよ」
「あははは!私にそんな能力はありませんよ。ただ、小さなお子さんがいる場合でしたら感染等も気をつけてください。この地獄の風邪はタチが悪いので」
「地獄の風邪ですか?」
「そう、地獄の風邪。あれが流行り始めるとうちもてんてこ舞いになっちゃいますので早め早めの予防が大事なんですよ。はい、お薬出しますねっと」
そう言って高田さんは背負っていた荷物を下ろして、薬を処方した。見た目は黒い丸薬。匂いは……独特の生薬のような匂いがする。
「これを朝と晩に飲んでください。とりあえず3日分出しますので。お大事に」
「ありがとうございました。あっ、支払いは?」
「そうですね、ではこれにピンをかざしてください」
何かの機械を懐から出したので、それに合わせてピンを置くと、ピッと言う機械音が鳴った。どうやらこれで支払いは済んだらしい。
「では、お大事に」
「ありがとうございました」
「また何かあったら呼んでくださいね」
「はい、そうします」
◇◇◇
高田さんにもらった薬を飲んで、ベッドに横になる。一応、佐藤さんに連絡をしておこう。後々心配させたくない。
「おはようございます、佐藤さん。今日はどうも体調が怪しいので業務を休ませてもらいたいのですがいいですか?」
『ええ、大丈夫ですよ。お薬等は飲みましたか?』
「はい、閻魔様の紹介で薬売りの人に来てもらって、処方してもらいました」
『そうですか。では、ゆっくりと身体を直してください。夕方ぐらいに様子を見に伺いますがよろしいですか?』
「大丈夫です。また、夕方に」
『では失礼します』
佐藤さんとの通話を終えると、眠気が襲ってきた。今日は、はなが定期的に起きるまで少し眠ることにする。
自分が思っている以上に疲れているようだから。