とりあえず牛頭の角のかけらと天国の蜘蛛の糸は手に入った。あとはこのなんと読むのだろうか……花ではあると思うが……
「佐藤さん、これなんて読むのかわかりますか?」
「どれですか……これはまんじゅしゃげですね」
「まんじゅしゃげ?」
「一般的に言いますと彼岸花のことですね」
「彼岸花、ですか……」
そう言えばこっちにきてから花の類いを見た記憶がない気がする。
「彼岸花って地獄にあります?」
「彼岸花は年中咲いていますがこれが特定の彼岸花を指している場合が厄介ですね。一度あの医者に聞いてみたほうがいいかもしれません」
「確かにそうですね」
それならば急ごうと思い、入り口があったところへ走って向かうとあったはずの靄が見当たらなかった。一体どういうことだろう?疑問に思っていると、佐藤さんがどこかへ連絡を始めた。
「はい、はい。それではお願いします。はい、失礼します。種田さん、少し待っていてください」
「わかりました」
しばらくすると大きな物音と共に、大きな門扉が現れた。これはもしかして……と思っていると、その扉が人が通れる幅くらいに開いた。
入るのに躊躇していると、隙間から牛頭と馬頭が顔を出した。
「おい、早く通れ」
「開いておける時間は限られていますから早く」
「わ、わかりました」
牛頭と馬頭に促され、扉を通る。すると、通り終えると同時に大きな音を立てながら扉は閉じられた。
「ありがとうございます」
「いいってことよ。それより、探し物は見つかったか?」
「はい、なんとか。残すところあと一つだけです」
「そうか、頑張れよ」
「はい!」
「種田さん、とりあえず医者のところまで扉を開けますのでついてきてください」
佐藤さんにそう言われ、ショッキングピンクの扉の前まで足を進める。扉を潜ると、医者がいた家まであっという間に到着した。
医者がいる家に入ると、はなが眠っていた。暖かいくるみ物で身体を覆っているが、顔色は先ほど見た時より優れていないように見える。
「これ持ってきました」
「ご苦労様です。おや、あと一つ足りないような」
「この最後に書いてある曼珠沙華がどれがいいのかわからなかったので聞きにきました」
「なるほど、そうでしたか。この曼珠沙華に関しては地獄に自生するもので大丈夫ですよ。ただ……」
「ただ?」
「近年の環境が変わったせいか生育地が変わっているのかもしれません。以前は、そこら中探さなくても見つかっていたのですがね……」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、種田さんはご存知ないと思いますがここ数十年単位で地獄の環境も変わっていると私は思っています」
「それで彼岸花が咲かない、と」
「はい、ですので自生している場所を調べないといけませんね」
「……それってどれくらい時間かかりますか?」
「そうですね……丸2日といったところでしょうか」
「それじゃ間に合わないですよ……」
心から落胆する声が溢れた。一体どうすればいいんだろう。