「少し待っていなさい」
医者の男がそう言って奥の部屋へと足を進める。しばらくすると、手元に何か紙の束のようなものを持ってきた。
「これを見てください。ここが現在地、そしてこれが下層の地図です」
「下層、ですか?」
「そう、地獄と言ってもここだけではないのです。詳しくはお隣の方が説明をしてくれると思います」
「わかりました。僭越ながら引き継がせてもらいます。種田さん、地獄は階層に分かれていると言うのは以前教えましたが覚えてますか?」
「えっと、確か最初にこっちにきた時に執務室で覚えさせられたやつですよね?」
「そうです。そして先ほど先生が言っていた現在地の地図がこれです」
地図を見ると、赤い点がポツポツと見える。もしかしてこれが彼岸花の自生している場所だったりするのだろうか?だとしたら現在地からあまりにも遠すぎるし足りるとも思えない。
「そしてこれが下の階層の地図です」
「下の階層がこれですか……こんなに地形が違うんですか?」
「はい、下と言ってもかなり距離がありますが全く景色は変わっていると言っていいかと」
「なるほど……じゃあ、下の階層にいきましょう!」
「落ち着いてください、種田さん。一つ問題があります」
「問題ですか?」
「はい、下の階層に行くには許可証が発行されないといけないのですが種田さんの場合、その許可証がまだ発行されていない可能性があります」
「そ、そんな……一体どうすればいいんですか!?はなは助けられないじゃないですか!?」
「そうですね、正規の手続きを踏むとしたらそうなります。ですのでこれはずるいやり方ですが事情が事情ですので使いましょう」
「そ、それはどうやってやるんですか?」
「少し待っていてください。関係各所に連絡をしますので」
そう言うと佐藤さんは連絡をするため席をたった。残されたのは、医者と寝ているはなの3人だけ。
「いい上司をお持ちですな」
「ええ、そうですね」
「普通だったら自分でどうにかしろと言うところをあんな風に動いてくれる人なんてそうそういません」
「はい、助かってます」
「この子はあなたの子であってますよね?」
「諸事情あって血は繋がってませんが娘です」
「そうですか。では言わせてもらいます。あなたの働きはきっとこの子に伝わっているはずですよ」
「えっ?」
「これは自説になるので信じてもらえないかもしれませんがね……赤子というのは大人が考えている以上に色々と考えながら成長している物なのですよ」
「そ、そうだといいですが……」
「胸を張りなさい。背筋をまっすぐにして前を見る。そうしないと見えない景色というものがあります」
「……そうですね。確かに前を見れていなかった気がします」
「失礼します。種田さん、下の階層へ行けるようにしましたので向かいますよ」
「ありがとうございます」
「頑張ってください。あとこれを持っていくとあなたの助けになるかもしれません」
「それは?」
「下の階層の地図です」
「あ、ありがとうございます!」
地図を受け取り見てみると、赤い点が先ほど見た地図より沢山あるように見えた。どうやら、下の階層ではまだまだ咲いているようだ。
「準備はできましたか?」
「はい、できました」
「では行きましょうか」
「わかりました。先生、本当にありがとうございます」
「礼はすべて終わってからにしなさい。さぁ、早く行きなさい」
「はい、失礼します」
先生に頭を深々と下げて、下の階層を目指す。
「すいません、佐藤さん」
「どうされましたか?」
「……下の階層ってどうやって行くんですかね?」
「……ある場所まで行きますので道中に説明します」
不勉強この上ないし恥ずかしくて顔から湯気が出そうになったが、わからなかったのは事実だ。今後、ちゃんと勉強することにしよう。