彼岸花を抱えて、等活地獄にいる医者の元へ戻るとはなの容態が急変したと知らされた。見てみると、顔はいつもより赤くなり、たまに咳もしている。あの時、気づかずに放置していたらと思うとゾッとする。
「どうやら間に合ったようですな」
「はい、持ってきました。先生、はなは大丈夫なんですか!?」
「なんとかなってますが少し遅くなっていたらどうなっていたかわからなかったとしか言えませんな。そこに置いておいてください」
「わかりました」
はなの手に触れると、ぎゅっと握り返してきた。触れた指先は、いつもより熱を持っている気がする。
「今から私は薬を調合しますのでしばらく暇を空けさせてもらいます。その間、見ていてもらっても良いですかな?」
「はい」
はなを抱き抱えて、あやしているとバタンと扉の開く音が聞こえた。どうしたんだろう、と扉の方を見てみると巻尾さんが息を荒げながら診療所に入ってきた。
「は、はなちゃん大丈夫っスか!?」
「正直言って余談を許さない状況です。今、薬を調合してもらっています」
「そ、そうっスか……とりあえずだいぶ汗かいているみたいっスから拭いてあげるといいっスよ。じゃないとこれ以上風を拗らせる可能性もあるっスから」
「それもそうですね」
はなの服を脱がせ、汗を拭こうとするとはなの身体に見たことのないアザのようなものが浮かんでいた。一体これはなんだろう?
「すいません、先生。はなの身体にアザのようなものが出てるんですがこれは?」
「それですか。それはいわゆる地獄風邪の症状に見受けられるものです。症状が落ち着けば消えますよ」
「そ、そうですか……」
「まぁ、身体にアザが残るとあれですからな……軟膏を塗れば多少マシになるかもしれませんからそれも処方しましょう」
「ありがとうございます」
「さぁ、汗を拭くのでしょう?そこにある布を濡らして使っていいですよ」
そう言われたので、ありがたく受け取り、はなの身体を拭き上げる。身体を拭くと、気持ちよさそうに顔を緩めていた。その顔を見ると、少し安堵したがまだ安心することはできない。
しばらく待っていると、先生は薬が出来上がったのか盆に乗せた何かを持ってきた。どうやら、それが薬のようだ。
「これを飲ませてください」
「飲ませる……どうやって飲ませたらいいですかね?」
薬を飲ませる方法に悩んでいると、巻尾さんが後ろに抱えていた風呂敷包みから何かを取り出した。見てみるとそれは、何かのパウチのようだった。
「これは?」
「これは子供でも薬が飲めるようにするためのゼリーみたいなものっスね。ここ最近、地獄でも取り扱いが始まったやつっス」
「これを使えば飲んでくれますかね?」
「粉薬っスから、間に挟むようにしてスプーンで与えればきっと飲み込んでくれるっスよ」
そう言われ、ガラス製のボールに無色透明のゼリーを出して中央に粉薬を置いた後、包むようにしてスプーン一杯分ぐらいにまとめる。
それをはなの口元へ持っていくと、最初は嫌そうにしていたはなだったが、口を開けさせ飲み込ませた。どうやらうまくいったようで、飲み込んだ後大泣きしたのは言うまでもない。
その後、身体に軟膏を塗って一安心したと思ったらどっと疲れが押し寄せてきた。ただ、寝落ちするわけにもいかないと思い、頑張って起きていたが、眠気はますます強くなる。生あくびを殺していると、佐藤さんと巻尾さんが何かの準備をしていた。
何をしているんだろうと見てみると、はなの布団の隣に大人用の布団が準備されていた。
「種田さん、準備ができましたので寝ていいですよ」
「あとは私たちが見ておくっス」
「え、そんな……悪いですよ」
「今日の種田さんはいつも以上に頑張っていましたから想像している以上に身体が疲れています。ですので休んでいてください」
「寝るのも仕事のうちっスよ」
「……わかりました」
敷いてある布団に横になると、あっという間に眠気に襲われた。少し、少しだけ眠らせてもらおう。