その後、一週間が過ぎた。はなの体調は薬を処方されてからどんどんよくなっていき、今週に入ってからは風邪をひく前となんら変わらないくらいに思えた。
先日受け取った書類を書いていると、佐藤さんから連絡が来た。見てみると、どうやらぼたんさんが検疫から出られるようなので迎えにいくらしい。それを伝えられるとなぜ俺に伝えてきたんだろう?と疑問に思ったが、メールの続きを読むと詳細が書いてあった。
どうやら、あの時一緒にいた男も一緒に連れてきなさい、と書かれていたらしい。
無碍にするのもあれなので、身支度を整えてはなを託児所に預ける準備をし、部屋を出た。
今週に入ってからあまり天気は良くなく、曇天の空が広がりっぱなしだった。この空模様は、まるで現世の梅雨のようで、気分はあまりいいものではない。
一応、傘も持っていくことにしよう。
はなを託児所に預け、執務室の鍵を借りようと佐野さんのところに行くと、佐藤さんと佐野さんが何か話していた。邪魔するのもあれかと思い、少し離れた場所で立って待っていると、二人が気づいた。
「おはようございます、種田さん」
「おはようございます」
「では、佐野さん。このお話は内密で」
「わかりました」
佐野さんに鍵をもらい、執務室の扉を開ける。書類等は今日はないことを確認すると、佐藤さんは顎に手を当て何かを考えている様子だった。
「どうしました?」
「いや、姉さんが何故種田さんも一緒に連れてくるように言ったのかが分からなくて……」
「あー、それはあれじゃないですか?顔見知りになったから迎えに来させた、とか?」
「それでは種田さんを呼ぶ理由にはなりませんよ」
「それもそうですね……もしかして理由なんてないのかも?」
「……姉さんだったらありえないとも言い切れませんね。とりあえず迎えにいきます」
「わかりました」
「扉を出すので行きましょう」
佐藤さんがポケットから扉を出すと、ドアノブを捻った。見えた景色は、真っ白な空間。そこに足を踏み入れると、プンと消毒の匂いがした。
「着きましたね。私は手続きをしてくるので少し待っていてください」
佐藤さんにそう言われ、しばらく待っていると検疫場の中から獣の鳴き声が聞こえる。そういえば、以前捕まえた淫魔もここに連れてこられたんだよな……そんなことを考えながら、手持ち無沙汰に爪を弾いていると佐藤さんが戻ってきた。
「お待たせしました。ではいきましょう」
「話変わるんですけど以前捕まえた淫魔ってあれからどうなったんですか?」
「あぁ、アレですか?確か収容所に収監されていたはずです。国に返そうと思っても受け取りを拒否されたからしいので」
「受け取りを拒否、ですか?」
「おそらくですが、トカゲの尻尾切りに使われたんでしょうね。向こうだとそういうことは日常茶飯事と聞いてます」
なるほど、そういう事情があったのか。淫魔には少しだけ同情したくなってしまった。