この場の雰囲気がピリピリとひりつき、それを警戒したのか周囲5メートルの席には誰もいなくなった。やばい、一体どうすればいいんだ……そんなことを考えていると、独特の足音が聞こえてきた。足音がした方へ顔を向けると、閻魔様だった。
「やぁやぁたねちんに佐藤。元気かい?」
「こんにちわ、閻魔様。一応元気です」
「うん、そりゃよかった。……と、言うかなんだこの空気一体どうしたんだい?」
「うーん、なんか色々あってですねぇ……」
「ふーん、そうかい。じゃあ、とりあえず隣座らせてもらうよ」
そう言うと閻魔様は、左隣に座った。椅子に座ると、鼻歌を歌っていた。どうやら、閻魔様の気分はかなり良いようだ。
閻魔様が座ってからも、佐藤さんとぼたんさんの間には、険悪な空気が醸し出されている。一体どうすれば良いんだ、この空気。そんなことを考えていると、閻魔様が疑問に思ったのか口を開いた。
「一体どうしたんだい、この空気は?」
「……色々ありまして」
「色々じゃわからないよ。ちゃんと説明をしなさい」
「……実は」
佐藤さんが閻魔様に説明をすると、最初真剣に聞いていた閻魔様だったが、途中で事情がわかったのかニヤニヤとしながら脇腹を小突いてきた。
「おいおい、たねちんもスミに置けないねぇー」
「え?」
「えっ、まさか気づいてないの?カァーッ、だいぶ鈍いねー。いや、それとも天性のそれじゃないのかも?」
「ど、どういうことですか?」
「うーん、なるほどね……たねちんはもう少し機敏性えお学んだほうがいいと思うよ、うん」
閻魔様が機敏性と言ったが一体なんなのかさっぱり見当がつかない。そうこうしていると、佐藤さんとぼたんさんの睨み合いが一時休止したようだ。
「……とりあえず姉さん。住む場所を決めなくちゃいけないわ」
「それだったらさっきから言ってるけどこの人のところが良いわ」
「それは駄目よ」
「その理由は?」
「……色々あるけどなんか駄目なの」
「理由を聞いたのに教えてくれないのね。姉として悲しいわ」
「うーん、えーっとぼたんって言ったっけ。そもそもなんでこっちに来たんだっけ?」
「えっと、まず敬語じゃないとか色々ツッコミどころはあるけど……住むところがなくなったから地獄に来たと言ったところかしら」
「それだけじゃないでしょ?」
「えっ?」
そう言ったぼたんさんは口を小さく開けて、ぽかんとしていた。どうやら、他にも理由がありそうだ。
「うーん、そうだねー。もしかすると、妹に会いに来た、とか?」
「そうなんですか?」
「彼女たちは姉妹と言っても双子だからね。座敷童子ってのは双子でいることが多いし」
そう言われて見てみたら、佐藤さんとぼたんさんは身丈が違うが、鏡で写したように似ていた。確かに双子と言われたら納得できなくもない。
「よく分かったわね、私たちが双子だと言うことを」
「これでも年の功と言うものがあるからね。どんな妖怪でさえ、年下には変わらないよ」
「ふーん、そうなのね……じゃあ、閻魔様。あなただったらどうする?」
「どうするか、か……とりあえず、姉妹で一緒に暮らしたらどう?佐藤の家だったら二人でも余裕で生活できるでしょ?」
「うーん、そうね……あなたの意見はどう?」
「えっ、俺ですか?」
「うん、あなた」
「なんと言うか……しばらく離れていたのだったら色々と話したいこともあると思うんです。それだったら、一緒に生活するのも悪くないと思います」
「うーん、そうね……分かったわ。あなたがそう言うのだったら信じてみようかしら。それで良い?」
「わかったわ。とりあえず書類等を取り寄せるから今日はうちに泊まってちょうだい」
「ふふっ、分かったわ」
そう言って笑ったぼたんさんの顔は、佐藤さんそっくりだった。やはり、双子だから似ているのは当然なのかもしれないが。
「いやー、しかしあれだね。つくづく思うけどたねちん」
「なんですか?」
「姉妹丼ってのもありだと思うよ、ぼくは」
……一体、何を言っているんだろう。この人は……