地獄の沙汰も君次第   作:Marks_Lee

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悪鬼蔓延る

亡者が獄卒に引き連れられてやってきた。見た目は、30過ぎぐらいだろうか?少し痩せ型で、骨格自体もあまり良いとは言えない。

 

ここでもう一度亡者の情報を確認しようとすると、後ろの扉のドアノブがガチャリと開く音がした。一体誰だろうか?確認をするため振り返ってみると、佐藤さんだった。

 

「お疲れ様です」

 

「お疲れ様です。どうやら、先に始めていたようですね」

 

「ついさっき始めましたが……何かまずかったですか?」

 

「いえ、大丈夫です。それよりもタブレットの情報を再度確認してください。どうやら、更新が入っているようです」

 

更新?はてと思い、確認すると修正が加えられているのか文字ログが動いている。しばらく待つと、改訂を終えたのか微動だにしなくなった。

 

◆◆◆

 

太助(享年:34歳)

 

生前は、野伏等をし殺人、強盗、誘拐等を主に手仕事にしていた。

 

罪状:殺人、強盗、誘拐

 

死因:飢えによる餓死

 

◆◆◆

 

記載されていた内容が内容だけにどう裁けば良いのかわからなかった。野伏、と書いてあるがそれが何を示しているのか、罪状等も明らかに犯罪どころか人として大丈夫なのかとも思ってしまう。

 

悩んでいると佐藤さんが横に立ち、教鞭を取るように教えてくれた。

 

「まずですがこの亡者を裁く際に重要になるのが亡者の生きた時代を頭におきます。この場合、安土桃山時代の終わりから戦国時代の頭ぐらいになります。ここまでは大丈夫ですか?」

 

「あっ、はい。あと、ここに載ってる野伏ってなんですかね?」

 

「簡単に言うと農村から出た盗賊のようなものです」

 

「盗賊……」

 

「農作物を作っているだけではこの時代生きていられませんからね。それもあって、野伏になるものも少なくなかったはずです」

 

「佐藤さんは見たことあるんですか?」

 

「私はその頃まだ生まれていませんでしたしおそらく居たとしてもまだ輪廻転生で言うと前世ぐらいになると思いますが」

 

「な、なるほど……」

 

「論点がズレてしまいましたね。今回、この亡者を裁く際に重要なのが先ほども言いました通り時代背景と罪状のバランスをどう考えるかがポイントになります」

 

そう言われ、亡者の顔を見てみようと顔を上げたが、俯いていて顔は見えなかった。どうやら、顔を上げるのを極端に嫌がっているらしい。

 

一体どうしたものか……時代背景が大事とは言われたが最後に勉強したのが学生の頃で正直あまり覚えていない。専攻していたわけでもないから、時代背景の詳しいデータもわからない。

 

正直八方塞がりの状況だった。

 

「佐藤さん、聞いてもいいですか?」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「死後の裁判でこう言う事例は少なからずあるんですかね?」

 

「そうですね……現状の種田さんでしたら裁けると見込んで許可を下ろしたのですが厳しかったですか?」

 

「……なんと言うか自分が勉強不足だと言うことがよく分かってしまいました」

 

「なるほど、そこは褒めても良いと思いますよ。世の中には、自分の足りないところを補おうともしない者が大多数いますから」

 

佐藤さんはそう言ってくれたが、正直悔しかったのは事実だ。知らないことが多すぎる。

 

とりあえず恥ずかしがるのは後にして、ひとまずはこの裁判を終わらせなければならない。

 

そう思い、タブレット端末に過去の判決とその理由のリストをダウンロードして、展開した。膨大な裁判記録の中から、今回の亡者の罪状を検索して近しいものをリストアップする。そのリストを確認し終えると、判決を決めるためにページを切り替えた。

 

「……正直、自信はないです。だけど今できる範囲で決めました」

 

「そうですか」

 

「はい」

 

ページを確認すると、項目にどの地獄に落とすか等が書かれていた。選択する場所は 叫喚地獄 を選び、画面をタップすると、本当にそれでよろしいですか?と書いてあるオブジェクトが浮かんできたので承認をした。

 

判決が決まると、獄卒が亡者を引きずるようにして後にする。その際、見えてしまった。亡者のおどろおどろしい眼差しを。

 

お前は絶対許さない。そんな目をしていた。

 

 

 

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