佐藤さんの手料理をあっという間に食べ終える。せめて食べ終えた食器等を片付けようとすると、座っていてくださいと言われたので素直に応じることにする。
することがなくなったので食休みをしているといつのまにか隣にぼたんさんが座っていた。寄り添うようにして座るぼたんさんはこちらの手の上に自分の手を重ね、知らない人が見たらいちゃついているカップルにしか見えないような絵面をしていた。
「あの、ぼたんさん……その、距離が」
「嫌なの?」
「いやと言うわけではないですが……」
「ならいいじゃない」
いやでも自分の心音が高く鳴り響いてるのがわかってしまう。俺、こんなに女の人への耐性なかったっけ……過去のことを思い出そうとすると、あまりいい記憶が思い浮かばない。
「ふふっ、だいぶドキドキしてるわね。あなたの心音がよく聞こえるわ」
「……聞かないでください」
「いやよ。なんならもっと聞かせなさい」
ぼたんさんはそう言うと、さらに距離を詰めてきた。やばい、これ以上は……そんなことを考えていると、空気が一瞬冷えた気がした。なんだろうと思い、周りを見渡してみると佐藤さんが食器を洗い終えたのか手を拭きながら、こちらを向いていたのがわかった。
「……姉さん、何をやっているの?」
「何って、見ての通りだけど?」
「それにしてはいくらなんでも距離が近すぎると思うんだけど」
「いいじゃない?」
「……あまり感心しないわ」
「貴方もしたいのならばすればいいじゃない?」
「…………」
佐藤さんは沈黙して、ただじっとこちらをみていた。どう動くだろうか……そう考えていると、一歩、また一歩とこちらに近づいてきた。そして、左にいたぼたんさんの反対側、俺の右隣に座った。
佐藤さんが隣に座ると、梅の匂いの香水がうっすらと香る。やばい、心音がまた大きくなるのを感じる。
「なんだ、やればできるじゃない」
「……私だってこう言う行動はたまに取りたくなるわ」
「いつもそうやってやればいいのに」
「……私は姉さんのようには出来ないのよ」
「ふぅーん……損な性格ね」
佐藤さんとぼたんさんが挟むようにして会話をしているが正直頭に入ってこない。心音が高まると共に、頭のぼーっとしてくる。
ぼたんさんは、心の隙間を縫うようにしてこちら側に入ってくる。それはある意味手練れのようでいて、純真な気持ちも汲めた。
しばらくそうしていると、外からカラスが鳴く声が響き渡る。部屋の中は照明が付いておらず、窓からの自然光だけで陽が落ちてきてるのがわかった。
流石にこれ以上はまずい。そう思い、席を立つために立ちあがろうとすると、ギュッと両袖を引っ張られるようにして、立ち上がれなかった。その勢いで、姿勢を崩し、倒れ込んだ。