犯人と思わしき人物とはなが忽然と消えたと言われ、頭が真っ白になってしまった。一体どう言うことなのだろう。理解が追いつかず、呆然としていると佐藤さんが発破をかけるように背中を叩いてきた。
「とりあえず落ち着いてください、種田さん」
「いや、落ち着いてはいるんですがその」
「見ていた感じ落ち着いてるようには見えませんよ。それよりも何か見落としがないか確認してみるのが先決では?」
佐藤さんにそう言われ、それもそうだなと思ってしまった。この場で呆けているよりも、まずは何かしらの痕跡が見つかるかもしれない。
そうと決まれば行動した方がいい。幸い、施設内の捜索は佐藤さんにお願いして同行していれば調べてもいいと言うことになった。
乳児棟の中に入ると、色々と調べている鬼が結構な数いた。どうやら彼らは調査を主に仕事にしているようで、話しかけてはならないと言う空気が出ていた。
「ここが最後に映った場所です。この先は突き当たりに廊下がありますがその先は物置き代わりに使われているようで出入り口はありません」
「つまり、そこから出ることは不可能、と」
「はい、その通りです」
聞いている限りではそこに何かしらの痕跡が残っていると思っていたが、思った以上に甘くなかったようで、調べられるところはほぼほぼ調べてある状況だった。
室内のレイアウトを確認するために歩くと突き当たりのところで壁に当たり、左右に分かれる廊下を進むと言われていた通り物置代わりに使われているであろう部屋にぶつかった。
正直、ここは調べるべきなのだろうか。だが、男たちがここに入った事実は変わらない。
「どう思います、佐藤さん」
「そうですね……私見でもいいですか?」
「状況を固めたいので色々と意見が聞きたいです」
「わかりました。おそらくですが、犯人たちはここからどこかへ扉を開けたのではないかと推測されます」
「……扉を?」
「はい。私がよく使う扉は存じているでしょうがあれと同一、または似通ったものを使った可能性が非常に高いです」
「でもそれっておいそれと使えるものじゃないですよね?」
「ええ、いかんせんいい値段もしますし何より鍵がないと使えません」
「ですよね……ただ、それを使われた可能性は非常に高い、と」
「はい」
佐藤さんが扉を使って別の場所に飛んだと言うのはあり得る話だと思った。ただ、そうしたら一体どこに飛んだと言うんだ?
頭を悩ませていると、後ろから誰かがのそりと現れた。一瞬驚いたが、それはこの部屋を調査しにきた鬼らしい。
「失礼します。あとはこの部屋を調べたら終わりますので」
「そうでしたか。では我々は邪魔してはなんなのでここで失礼します」
「なにか進捗ありましたらまたご報告して下さい」
「わかりました」
調査の鬼と別れ、どうしたものかと思いながら施設の外に出る。一体何をしたらいいのだろう。
「種田さん、先ほど言っていた顔を知っているかもしれないと言う話でしたがその店の場所は覚えていますか?」
「……正直、曖昧です。日下部さんと一緒に行ったんですが後ろをついて行っただけだったんで」
「なるほど……では種田さん。その日下部さんに連絡を取ることはできますか?」
「確か連絡先は交換していたはずなので出来ると思います」
「では、一度帰ってから連絡をしてみてください」
「わかりました」
佐藤さんたちと別れ、一度帰路に着くことする。自室に帰ると、空気の静けさがしんとしていてはながいない状況がいやでも鮮明にわかってしまった。