まずは佐藤さんに言われたように日下部さんに連絡を取ることにした。そうと決めたら連絡をしようと端末を開いて連絡先のリストを確認する。
日下部さんの名前はすぐに見つけられた。画面をタップして連絡をしてみるとすぐに繋がった。
「日下部さんですか?種田です。実は少しお話ししたいことがありまして」
『それは急ぎのお話ですか?』
「はい。かなり急ぎです」
『わかりました。では、私の部屋に来てください。お話はそれからでよろしいですか?』
「わかりました。ではあとで伺います」
通話を切り、多少の準備をする。無意識にミルクを準備しようとした自分がいた。そこにはなはいないと言うのに。
頭を切り替えて、日下部さんの部屋の前に行く。扉をノックすると、扉が開かれた。出てきたのは、つなぎに白衣という独特の服装をした日下部さんだった。
「やぁやぁ、お久しぶりです。種田さん」
「お久しぶりです。今日はお話があってきました」
「まぁ、ここで話すのもなんなので入ってください」
「わかりました。失礼します」
日下部さんの自室に入ると、以前と変わらずジャンク品の山ができていた。置き場所をとるだろうに手元に置きたがるのは不思議でならない。
「それで今日はどう言ったお話でしょうか?」
「実は……」
今回の出来事を簡潔に説明した。最初は疑問に思っていたようだが、話の本筋が見えてきたからか真剣に耳を傾けてくれた。
「なるほど、あの時の鬼ですか」
「はい。おそらく犯人はあの二人組だと思ってます」
「少し待っててください」
日下部さんはそう言うと、立ち上がり奥の方へと引っ込んでいった。しばらくすると、何かの端末らしきものを手に持って戻ってきた。
「確か以前食事に行った時にすれ違った鬼ですよね?それなら店長に聞いてみるのが一番いいでしょう」
「店長さんにですか?」
「あの鬼たちの目的は定かではないですがあの様子じゃ何度もあの店に妨害をかけているでしょうしそれにあのあたりの顔役なので我々が知らない情報も持っているはずです」
「そうなんですか?」
「はい、少し待っていてください。少し時間があればある程度のことまで調べることができるはずです」
日下部さんは店長に連絡をとり始めた。しばらく静観していると、話し終えたのか端末を机の上に置いた。
「種田さん、今からなら時間があるそうなんですが行けますか?」
「あっ、はい。大丈夫です。少し連絡したいこともあるので少し待ってもらえれば」
「わかりました」
とりあえず進捗状況を佐藤さんに報告するため、端末を開いて連絡を取った。何度かコールすると、すぐに佐藤さんは出た。
「お疲れ様です。お時間大丈夫ですか?」
『はい、大丈夫ですよ。何か進展はありましたか?』
「はい、実は……」
佐藤さんに事情を説明するとしばらく間があったが、そこで待っていてくださいと言われた。どうやら、こちらに合流するようだ。
「えっと、場所は自室の前でいいですか?」
『おそらくそれで大丈夫かと思います。では失礼します』
佐藤さんとの通話を終え、一息つくと日下部さんがニコニコと笑っていた。一体どうしたんだろうと思ってしまった。
「ど、どうしましたか?」
「いえ、なんでもありませんよ。それより、待ち人はもうすぐ来るみたいですね。部屋の外で待機しておきましょう」
「それもそうですね」
日下部さんの自室を出て、廊下で待っているとショッキングピンクの扉が目の前に現れた。扉が開かれると、佐藤さんが汗ひとつかかず現れる。
「種田さん、それとお初にお目にかかります。日下部さんですね?」
「はい、そうです」
「私、種田さんの先輩兼上司にあたる砂糖と言います。よろしくお願いします」
佐藤さんと日下部さんが挨拶をしながらも裏の探り合いをしているようにも見えた。それは気のせいかもしれないが、二人は初めましてなのに昔から知っている間柄にも見えた。
「では、いきましょうか」
「あの店ですよね?店名なんて言ってましたっけ?」
「はい、店の名は根の国です。少し歩きますがいいですか?」
「その店は知っているので店の前まで扉を開けましょう」
佐藤さんはそう言うと、ショッキングピンクの扉のノブをガチャリと一回回した。