箱を手にとり、触ってみると金属製の箱だった。継ぎ目等は見当たらず、金属独特のひんやりとした感覚を覚えた。
「これなんですか?」
「あぁ、これですか?腕、貸してもらえます?」
日下部さんがそう言うので腕を差し出すと、手首の辺りに箱を着けると金属の箱が開き、中身が巻き付いた。
「えっ!?」
それは銅色をした獣のようだった。細く巻き付いたそれは、外そうとしても外れない。
「あの!日下部さん!これ、外してもらえませんか!?」
「待ってくださいね。少しお時間を」
そう言うと日下部さんは、それが入っていた箱を開け、箱の縁をスーッとなぞった。すると、手首に巻かれた獣のようなそれは箱の中に収まった。
「あぁ、びっくりした。日下部さん、それなんですか?」
「これですか?これは狐ですね」
「き、狐?」
「そう、古来から管狐と言われていたやつなんですが先日、ようやく捕まえることができましてね。捕まえたと言っても、潰れかけの古道具屋から回収してきただけなんですが」
「な、なるほど……」
呆気に取られていると、佐藤さんが横から口をいれた。珍しいなと思っていたが、そのまま静観することにする。
「今どき、古道具屋というのも珍しいですが管狐とはさらに珍しいですね。結構したんじゃないでしょうか?」
「はっはっは!その店はかなりくたびれてましたからね。その時、手持ちはあったので色々と買わせてもらいました」
「なるほど……それでは残りの2つの箱の中身を教えてもらってもいいですか?」
「いいですよ。種田さん、もう一度手を出してもいいですか?」
「あっ、はい」
日下部さんに促され、両手を差し出すと日下部さんは箱を開け、中身を出した。左には、銀の亀。右手には、金の龍が巻き付くように取り付いた。
「亀の方は、古道具に紛れていたのを回収した個体です。龍の方は、以前天国の方へ用事があって赴いた際に、拾ったものです」
「……拾った?申請はしましたか?」
「ええ、ちゃんと通してありますよ。なんなら証明書みますか?」
「いえ、あなたの言葉を信じましょう。それで、この箱は一体どういうカラクリなのでしょうか?」
「理屈自体は、あなたが持っているポケットと変わりませんよ。ただ違う点と言えば、生き物を入れておいても生命維持ができるという点ですかね」
「生命維持が?」
「はい、そのポケットを作ったのは私より一つ前の責任者なんですが、いかんせん改良の余地ありのまま市場に出してましてね。それを引き継いで、私が回収した、という話です」
「そういうことだったんですね。この生き物達は、愛玩用として認識しても?」
「いえいえ。それぞれ、能力がありますから上手く使えばいい結果をもたらしますよ」
「なるほど、そうですか。とりあえず、種田さん。それ、外せますか?」
「やってみてはいるんですけど外れないですね」
「また待ってもらえますか?よっと……」
日下部さんが箱をなぞると、亀と龍は箱の中に収まった。どうやら、あの箱の中が大層お気に入りのようだ。
「これを種田さん。あなたに預けます。自由に使ってください」
「えっ、でもこれ使い方がわかんないんじゃ?」
「詳しくは使ってみないとわからないと思いますが、口頭でも言いますが一応説明書等を渡します」
「わ、わかりました。でも貰いっぱなしじゃ悪いですよね……」
「でしたら今度また食事にでも行きましょう。ええ、落ち着いてからでいいので」
「わかりました。では、この生き物達預からせてもらいます」
「ちゃんと手入れを怠らなければ彼らは従ってくれるはずですので。よろしくお願いしますね」
日下部さんから箱を受け取ると、日下部さんは腕時計で時間を確認していた。どうやら、そろそろ予定が入っているらしい。
「それでは私はこれで失礼します」
そう言うと、日下部さんはあっという間に外に出ていき、自室に戻っていった。
「なんか、台風みたいな人っスね……」
その意見には同感である。