日下部さんが台風のように去っていったあと、佐藤さん達が持ってきてくれた弁当を食べながら今後のことを話し合ったりした。
例の犯人の男達の身元等は未だわからず、居場所等もわかっていないらしい。
「すいません」
「佐藤さんが謝ることじゃないですよ」
「そうっスよ。それよりもはなちゃんが無事なのかが心配っスよね……」
「ですね……」
「そういえば種田さん。犯人達が送ってきたアドレスにアクセスしましたか?」
「やってみましたが返事は返ってきてませんね。まぁ、返ってくるものと思ってないのであれなんですが」
「そうですか。ですが、一応何度も送ってみてください。もしかすると相手側から情報を得られるかもしれません」
「そうか……それは考えてませんでした」
「ええ。ですので、種田さんはそれだけに集中していてください。裁判は他の者でカバーしますので」
「わかりました」
「話変わるっスけどさっきの日下部さんが置いていったアレ、どうやって使うんスか?」
「確か説明書を渡すと言ってましたが……入ってませんね」
「まぁ、あれです。気づいたら持ってくるのではないでしょうか」
「そうですかね……とりあえず時間ができたらまた訪ねてみようと思います……ごちそうさまでした」
「それでは私たちはこれで失礼します。種田さんは今日は寝ていてください。何か進捗ありましたらまた来ます」
「それじゃあ失礼するっス」
「お二人ともありがとうございました」
◇◇◇
翌朝、夜明け前に目が覚めた。いつもなら、はなが起きていないか見てしまうがその姿はどこにもない。ベランダに出て息を吸う。露が下りているのか、空気はほんのりと湿っている。
肺に空気を入れ、少し置いて吐き出す。
それだけで気分は少しだけだが落ち着いた。どうやら、まだ気分は優れていないらしい。そんなことを考えながら居間の方へ戻ると、机の上に小さな生き物がいた。
それはあの時以来姿を見せていなかったアルカだった。
「よう、久々だな」
「……何しにきた」
「おいおい、その言い分は酷いじゃねぇか。せっかくお前さんが喜びそうな情報を持ってきてやったのに」
「喜びそうな情報?」
「あの赤ん坊の情報欲しくないのか?」
「……どうやって知った?」
「そりゃ企業秘密さ。そこを教えちゃ商売上がったりよ」
「……はぁ。何が目的だ?」
「へっへ。話が分かるじゃねぇか。それじゃあ血を一滴くれ」
アルカに血を渡すのは躊躇したが、情報が欲しかったのは事実なので少し悩んだあと手を差し出した。アルカは差し出した手に捕まると、勢いよく噛みつく。一瞬、痛みが走ったがそれで終わりのようだった。
「ふぅ……ご馳走さん。それで情報なんだがな」
「勿体ぶらずに早く言ってくれ」
「あいつらがいるのはここから少し離れた廃屋街にある空きビルだ。犯人の男達は3人。赤ん坊はすこぶる健康。これ以上の情報を知りたければまた血を寄越せ」
「廃屋街……そこにいるんだな?」
「あぁ。だが、行くまでに徒歩だとちと骨が折れるだろうぜ。なんせ針山や血の池があったりするからな」
「……なるほどね」
「俺からは以上だ。じゃああばよ」
そう言うと、アルカはまたどこかに飛んで行った。真偽のほどは定かではないが、情報は得られた。ひとまず、1人で突っ走らずに佐藤さん達に相談してみることにしよう。