対面に怒っている人がいると、こちらもかなり気まずくなってしまう。
そんなことを考えていると、閻魔様はハァ……と大きく息を吐いた。
「まぁ、とりあえず今は流すことにするよ。あとできっちり話は聞くけど」
「う、うっす……」
「何その返事」
「わ、わかりました……」
「うん、よし。たねちん、お茶飲もう。茶菓子用意するよ」
「あ、ありがとうございます」
閻魔様は何かを探すように袂に手を入れる。しばらくすると見つかったのかそれを取り出すと、手のひらに収まるくらいのボタンのようだった。
「閻魔様、それは?」
「ん?まぁ、あれだよ。呼び出しのボタンみたいなものだよ」
閻魔様はそれを押す。すると、執務室の扉が開かれ、小鬼衆が数人ぞろりぞろりと現れる。何かを頼むように小鬼衆に言伝をすると、すぐに小鬼衆は見えなくなった。
「さて、と……兄貴、今までどこに行ってたの?」
「えっと……それはですね……」
「まさかとは思うけど外の国まで言ってないだろうね?一応聞くけど自分の立ち位置というものを理解している?」
「面目ございません……」
「ハァ……その様子じゃだいぶいろんなところに行ったみたいだね。とりあえず土産話でも教えてよ」
「わかった。まず、諸外国に行ったのは事実だ。そして色々と見聞を広めることができた」
「うん、続けて」
「この目で見てわかったことだが、いまはどこのあの世も人で溢れてやがる。こっちもそうだろ?」
「まぁ、そうだね。早急の問題としてよく上がるよ」
「そして何より亡者の態度が非常に悪い。生前と人間性が変わることがないとわかってはいるがそれにしても酷すぎる」
「自己中心的な考えの人間はまず地獄に落ちるからね……それで、向こうのお偉いさんとは話したの?」
「いや、大抵この見た目だから門番あたりに門前払いをくらった。話せたのはそこにいた現地民くらいだな」
「なるほどね……」
閻魔様が顎に手を置き、何かを考えるような素振りをする。しばらく時間が経つと、茶具を抱えた小鬼衆が執務室に入って来た。
「まぁ、とりあえず飲もうよ。考えるのはそれからでもいいから」
「そうだね……」
3人揃ってお茶を飲んでいると自分が嫌に場違いなところにいるのか考えてしまう。閻魔様は言わずもがな、そのお兄さんだったら色々と立場もあるのだろう。
そんなことを考えていると、それを見透かすようにして閻魔様は口を開いた。
「なんか色々考えているみたいだね、たねちん」
「そうですね……色々と考えてしまいます」
「一応言っておくけど顔に出やすい質のようだから気をつけた方がいいよ。そうだ。茶菓子もいると思うからこれ貰い物だけど開けようか」
閻魔様は机の上に置かれた箱を開け、適当に広げた。それは色とりどりの菓子で、見た目にもすごく華やかだった。
「色々考えてしまうと思うけど今だけは少しだけ忘れてもいいと思うんだ。だって、たねちん。すごい顔疲れているよ?」
閻魔様にそう言われ、ここ数日寝不足だったことを思い出した。はながいなくなり、気が動転しているのは確かだ。
「そうですね……ありがとうございます」
「うん、いいよ。とりあえず休みなよ。その様子じゃ仕事をしろとも言えないし」
「……面目ないです」
「とりあえず全部終わったらまた仕事を頑張ればいいんじゃない?」
閻魔様にそう言われ、何かがスゥーッと取れた気がした。気のせいかもしれない。それでも先ほどよりは確かにマシにはなっていた。