誤字脱字、文脈がおかしい箇所があるかもですが、生暖かい目で読んでやってください。
オリジン。
ヒーローを目指すことになったきっかけ。または起源とも言うべきか。最強にして最高のヒーロー、オールマイトに助けられたから、両親がヒーローだったから、自分の命を賭しても他人を助けるその姿勢に感銘を受けたから、
どれも梵には当てはまらなかった。両親がヒーローをやっている訳でもなければ、事件に巻き込まれてヒーローに助けられた訳でもない。そもそも事件に巻き込まれるなんてイベントはそうそう起こりえる確率ではない。
では、彼のオリジンは一体何か。それは、ない。そう、何もないのだ。ただなんとなく、気分的に、思い付いたから、そんな理由だった。
現在梵は中学三年生だが、クラスメイトが俺はヒーローになる、私もヒーローになる、そんな会話ばかり耳に入ってくるので否応にも意識せざるを得なかった。
将来就きたい職業もないし、考えるのも面倒くさいから自分もヒーロー志望でいいや。その程度のもの。恐らくクラスメイト達にはそれはそれは高尚な理由があるのだろう。まあ、会話なんてあまりしたことないしする気もないから分からないが。
とにかく、梵にはおよそオリジンと呼べるものがない。それでもヒーローになる理由を後付けで述べるとすれば、生きやすそうだから。これ以上にシンプルな理由は稀に聞かないだろう。実は一度クラスメイトの女子とこんな会話をしたことがある。
「ねえ、那由多くんはどうしてヒーローを目指すの?」
「ん?ボク?そうだねぇ、そんなこと考えたこともないけど強いて言うなら生きやすそうだから」
「なにそれ、変だよ。私実はこの前ヒーローに助けてもらったんだよね。ショッピングモールで遊んでたら
「ふーん。聞いてもないことまで教えてくれてありがとう。そりゃあご立派なことで。頑張ってね」
その後、強烈な張り手が飛んできてちょっとした揉め事になったが、梵は終始ヘラヘラ笑っていて反省の色を見せなかった。
梵にとってこの会話の中にある、いわゆるヒーローになる理由は高尚な理由とはとても思えなかった。立派ではあるが、高尚ではない。故に分からない、ということになる。
そして梵にとって高尚な理由とは何か、答えは分からないし、知らない、だ。そんなこと梵本人は分からないし、分かろうともしない。高尚ではない、そう感じただけのこと。
ここまできて、まだ触れていないことがある。
なぜ
梵は迷うことなく
しかし梵とて
他人の意見に従ったり皆もやっているのだから自分もやる、そういうのが癪に障るし、日本人のそういうところが嫌い。なんてことはない、梵は自分に正直なだけだ。
ここで梵の経歴、過去を振り返ってみよう。
実は梵は捨て子で施設暮らしを余儀なくされている。と言っても、小学校三年生までは両親と暮らしていたが、梵の個性に耐え切れなくなり(梵はそう思っている)、施設に放り込んだのだ。
ある日、見知らぬ大人が二人、家に訪問しに来てなんだか小難しい話をしていたのを梵は聞いていた。内容は理解できなかったが、自分の名前が幾度も出ていれば、いくら幼くても自身の話だと察しは付く。
そしてあれよあれよと話が進んだのか、梵を老人ホームのようなやたらと大きい格式ばった建物に連れて行き、後で迎えに来るからと言って逃げるように去って行き、二度と迎えに来ることはなかった。
ここで梵は理解した。自分は捨てられたのだと。しかし、悲しくはなく、寧ろラッキーくらいの思いだった。
なぜなら、もうガソリンを飲まされることも、ビール瓶で殴られることも、こっそり飼っていた小鳥を無惨に殺されることも、飢えを凌ぐために段ボールを食すこともない、それらのことがないだけで気持ちが晴れ晴れとする。
要するに虐待を受けていた。梵はそれが当たり前だと思っていたので虐待だと知った時にはそれなりに驚いたらしい。因みに、瓶で殴られても傷がないのは個性で治したから。
そして両親がいないという現実は付いて回り、学校ではいじめのターゲットになってしまった。もちろん梵は反撃した。
ある時登校した朝、ドラマよろしく、目の前に自分の机と椅子が降ってきたことがある。ムカついたので、次の日誰よりも早く登校して、自分以外のクラスメイトの机と椅子を窓から放り投げた。
別の日、トイレの個室に入っていたら上から水をかけられたので、給食の時間に水をかけてきた人物に泥水をかけ返した。今度は靴と上履きを捨てられたが、犯人が分からなかったので疑わしい奴全員の持ち物を焼却炉に捨てた。
そうして健全(?)に梵は六年間一度も休むことなく登校仕切って、小学校を卒業した。中学校は別の地区のところに行かないかと施設のスタッフに言われたので、素直に従い別の地区の中学校に入学、それが現在の学校である。
中学校では特にいじめられることもなく、いじめることもせず、平和な日々を満喫して現在に至る。
まあ、色々と語りはしたが、ただの回想のようなものだと思って欲しい。
以上が那由多 梵の過去である。
………
……
…
帰りのHRだからなのか、少し浮足立っている空気の中担任の声が通る。
「進路調査書、全員分回ったよなー?明日の朝回収するから忘れずに書いて持ってくるように。以上」
がやがやと、部活に行く者は部活へ、帰る者は帰宅し、意識が高い者は勉強を始める、各々の放課後が始まる。
梵は部活にも入っていなければ、勉強もやる気が起きないので帰って寝ることにした。
進路調査、そういえば全く進学先の高校を調べていないことを思い出す。ヒーロー科と言えば雄英だろうことは知っているが、倍率とやらが凄まじいらしい。
さてどうしようかと悩みながら帰宅していると、商店街の方から爆発音が聞こえる。
「まあ、進路先は後に回して、野次でも飛ばしに行こうかな。なんせ人生初めてのイベントと言っても過言ではないからね」
誰に語りかけるのでもなく梵は独り言を発しながら人だかりができ始めている商店街の方へ歩き始める。
ひょっこりと爆心地を覗くと、黒いドロドロした泥…いやヘドロ?のようなものが同い年だろう少年を飲み込もうとしていた。
見たところ、小さく爆発が何度も起きていることからあのヘドロか少年の個性だろう。
(ふーん、彼の個性だとしたら強そうな個性なのに、ほどけないんだ。なかなかどうして強いじゃん、あのヘドロ。まあ、そもそも所詮ボクら中学生の個性の強さなんてそんなもんだろうな)
件の少年は最初こそ強く抵抗していたが、スタミナ切れなのか、心が折れたのか分からないが、徐々に弱まっていく。
それはそうだろう。ヒーローが来たかと思ったら、近づいて来ず、自分を助けようとせずに応援を待っている。もちろん、その少年はこのヘドロと今いるヒーロー達では相性が悪い事は分かっている。
しかし、人間というものはいつまでも同じ状態が続くと焦燥感に苛まれる生き物だ。なぜ助けてくれないんだ、誰でもいい、早く自分を助けてくれ、解放してくれ、そんな風に思ったのかは定かではないが、
少年の目つきは弱者の助けを求めるような眼をし始めた。
(その目は知ってるぜ。助けを求める目だ。だからといって僕は助ける気はないけど)
そんなことを思っていると、人ごみから同い年くらいの天然パーマの少年がヘドロに向かって駆け出していた。走りながら背負っていたリュックをヘドロに投げつけ、飲み込まれそうになっている少年を救おうと、
ヘドロをかき別ける。もちろんその程度ではヘドロは減らないし、助けることもできそうにない。
(自分の危険を顧みず他人を助けようとする、彼がこの場にいる誰よりもヒーローに見えるぜ)
やはりというか、当たり前だがヘドロは天然パーマの少年に対して触手のような腕を振り被り、排除しようとする。誰だって蚊は煩わしい、そんな感じだろう。
しかし、ヘドロの攻撃は天然パーマの少年には当たらない。なぜなら、最強にして最高、日本一のヒーロー、オールマイトが天然パーマの少年を庇って防御していたからだ。
(いつの間に…。やっぱり日本一は伊達じゃないってことかな。結末はもう決まったことだし、かーえろっと)
梵はくるりと踵を返してその場を後にする。
少し経ってから、Detroit Smashの掛け声と共に、うねりを上げながら天高く竜巻が発生する。オールマイトが少年たちを助けんとその力を振るったのだろう。
その力は最終的に天候を変えるまでに至り、雨を降らせて事態を収束させた。
(まあ、それはそうと進路先は雄英でいっか)
そんなこんなで、梵の進路先は雄英に決定した。