【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】   作:ウェットルver.2

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 お待たせしました。
 初志貫徹(一日一話投稿)(できなければ一話ぶんの感想返信)は叶いませんでしたが、投稿はできたので(自分の中では)ヨシ!とします。


我欲に伴わないもの、

「おまえたちの組織とは、停戦協定を結んでいたはずだぞ!?

 それが、どうして――――まさか、クリスまで!」

 

 青年は悟る。敵の意図を理解する。

 わざわざクリスだけを避けて、それ以外のものを殺した。

 ヴァイオリンの演奏会も兼ねた、彼女のライブにあわせて。

 

 明らかに目標はクリスだ。ジョーカーの連れ子だ。

 

 だが、ジョーカーの連れ子についての情報は、こうして彼らが自分たちのアジトで生活するようになるまでは、特に敵対していた頃であれば、よくわかっていなかった。

 

 【なぜか自転車に乗せて、旅に同行している。よく歌うらしい。】

 

 このくらいだ。だから当時、人質に使えるかどうかも、実のところ不明瞭なまま死神に挑んでいた。コードネームは“カナリア”。あれが歌わなくなったとき、怪物がなにを考えて動き出すのかがまったく予想がつかないから、カナリアだ。*1

 

 自分たちですら、このような認識だったというのに。

 眼前の他勢力にすぎない男たちが、これ以上の彼女についての情報を、なんの付き合いもなしに得られるはずがない。名前だって、つい最近知ったばかり。

 

 ボスは知らなかったが、まさか、あの音楽家の娘だとは。

 敬愛する音楽家が、自分たちバル・ベルデ共和国の民の戦いに巻き込まれて死んでいたとは思わなかった。その子供を人質に取ろうとした罪悪感は、ジョーカーに指摘された己の愚かさへの後悔を含めても、寝ても覚めても鎮まることはない。

 

 そんな青年だからこそ、なおさら状況が呑み込めない。

 なんの情報もなく「そうだ」と気づかれるはずもないソネット・M・ユキネの娘を、なぜ眼前の男たちは狙うのか。

 

「しょうがねえだろ?

 『ノイズに追い出されちまったら』、なあ!?

 こうやって“ほかのエリア”を奪わねぇと、食ってけねぇのよ!」

 

 獣は笑う。

 

「お気に入りの女も死んだからよぅ。

 イイ女を抱かねぇと落ち着かなくってしょうがねぇ。

 寝つきが悪いんだよぅ……またぐらも寂しいのさぁ、わかるだろぉ?」

 

 欲望の奴隷は笑う。

 

「で、そこのガキは……あー、なんだっけ?

 “隊長”のお気に入りの女の……娘だからどうとかなんとか?

 まあ、女の写真が絶品だからなぁ、『ガキも』ってことじゃね?」

 

 心を忘れた「おとな」は嗤う。

 

 青年の仲間に、同志に、似たような色を知った男がいなかったわけではない。

 占領したエリアの女という女に粉をかけようとして、結局は「強引に食らいつこう」とした男が出なかった、などと善人ぶるつもりもない。

 

 それでも、ここまで醜悪だった身内はいない。出たならば殺した。

 女を玩具のように楽しむ、そんな男だったとしても、まるで下着を履くかのように語るほどの色気の奴隷でもなかった。さすがに全員が全員同類ではないのだ、女たちに復讐されたとしても、さすがに面倒を見切れない。

 馬鹿一匹のために貴重な体力を使うくらいならば、反乱の火種を撒くだけの馬鹿野郎を公開処刑でもした方が示しはつく。

 

 そうやって自分たちの行いを正当化しながら、ゆっくりと女からの信頼を得よう、手籠めにしようと考えるやつのほうがまだ多かった。

 そのためだけに、わざと似たような馬鹿を受け入れてから事件を起こさせ処刑する、なんて手口を繰り返した仲間もいた。国の掃除や、自浄作用を維持するのにちょうどよいからと、ボスもある程度までは黙認していた。死神が来るまでは。

 

 だからこそ、こんな男たちがありふれた組織など、青年は認めがたかった。

 いや、なればこそ、ボスは英雄になる道を選んだのだろうかと思い返して、

 

「………っ、」

 

 青年は理解する。

 舌の根を動かしたから、ではない。

 ひたすら頭が疲れるほどに考えたから、でもない。

 

 かつて、彼らは大義があると信じて「奪う」ことを選んだ。

 だが、こいつらに「大義がある」などという妄想はない。実質的な同盟を組み続けるだとか、停戦を維持するとか、そういった命への義あっての発想すらない。

 

 そんな約束事すら、今、こうして反故にした。

 

 「奪われる前に奪う」、そう選んだ少年がいた。

 憎しみに任せて、正義感に任せて殺し続けることができた。

 自分たちの理念を信じて、自分たちから敵対勢力を潰してまわった。

 

 だからこそ忘れたことがある。

 「奪うだけ」の者に、正義など必要ない。

 

 悪であることに反省などない。反省があるからこその苦悶もなく、反省あっても時勢から止まれないがゆえの懺悔もない。正しさすら言い訳の道具だ。

 自分たちが憎みあった相手とて、最低限の隣人愛はあっただろうに。

 いかに他勢力とて、奪いあわなければ憎みあうこともなかっただろうに。

 

 死神は語りかけた。

 

 “みんな(被害者全員)奪われてから始めたら、きりがなくない?”

 

 ―――真に討つべき悪は。

 言葉では止められない「欲望(大罪)」のありかは、ここにあったのだと。

 

 

 少年であった彼は、ようやく理解した。

 

 

「う、ああああああっ!」

 

 青年は吠える。

 

 死神がなぜ、自分たちを殺すのか。

 簡単だ、「憎むべき相手」を間違え続けているからだ。

 

 死神がなぜ、自分たちを逃がさないのか。

 簡単だ、「手にする正義(武器)」が、こいつらの大義名分と何も変わらないからだ。

 ただの手段、ただの方便で掲げられた、軽薄な言葉の羅列とすらも。

 

 自分がどうして、こんなにも虚しい気持ちで泣き叫んでいるのか。

 

 

 自分の命が、心が、こいつらの欲望と変わらないのだと、

 

 

 

「――――あ、」

 

 

 認めたく、なかったからだ。

 

 

 

 

 

 青年は沈黙する。

 白毫。そう呼ばれる箇所に、赤く沸きあがるものを作りながら。

 彼の旅路がどこに向かうのかは、転生を知る者たちであっても、あずかり知らない神秘の先にある。ひとつだけ言えることがあったとすれば。

 

 

「対象を確保!

 このガキで本当にあっているんだよな!?」

 

 

 たったひとりの子供のために、立ちあがったことだ。

 

「ああ、この『ソネット』って女の写真に似ている、って話だろ?

 よく似てるぜ、はーっ、育ったら触り心地が凄そうだよなぁ………!」

「おいおい、()()人質だ。

 バレたらやべーぞ、急げ! マジで手ェ出してる場合じゃねぇんだからよ!」

 

 男たちは遺体から離れ、去っていく。

 彼の死も、バル・ベルデにはありふれた、あたりまえの出来事にすぎないから。

 雪音クリスもまた、彼に特別な感情は抱けない。どこにでもいる兵士が、「あたりまえのように誰かを守ろうとした」、それだけだから。

 

 青年の傍にある土埃に、ほんのわずかなしずくを残しただけ。

 

 

 

 

『こちらα地区、ジョーカーの“カナリア”が攫われた!

 繰り返す、こちらα地区、ジョーカーの“カナリア”が攫われた!』

『………あいつはどうなった!?』

『死亡、背中に傷なし、以上です!』

『………………馬鹿野郎。』

 

 彼と語らった戦士だけが。

 無線を交わし、言葉を交わし、語ることなく。

 

『ジョーカーの“カナリア”奪還は後でいい。

 まずはα地区からβ、γ地区への移動を許すな、Δ地区に誘導しろ!

 Δ地区で時間を稼ぐ! 通信終わり(OVER)!』

『了解! 通信終わり(OVER)!』

 

 亡き青年と、意思を束ねる。

 

 

 

 時は進み、兵士のひとりに呼ばれたジョーカー。

 彼が「おじさん」と呼ぶ武装組織のボス。ボスに対し、ジョーカーは問いかけた。

 

 

 

「そいつら、クリスちゃんだけをさらったんですよね?」

「ああ、間違いない、狙いは“おまえ”だ!」

 

 車を走らせながら、「おじさん」は伝える。

 

「元より、俺とあいつらは共同でおまえを倒すつもりだった。

 それぞれのエリアに接近次第、可能な限り情報を集め、あらゆる手を使ってでもバル・ベルデに現れた怪物を倒す。そういう目論見だった、今はやめたがな!」

 

 部下に運転を任せず、あくまでも、自分の手で。

 考えようによっては「部下を信用していない」ようで、「部下を必要以上に疲れさせない」ようでもある、男の運転は乱れない。

 

「だが、どちらの陣営も、お嬢ちゃんの顔までは把握しきれていなかった。

 あたりまえだ、おまえに対処するので手いっぱいで、連れてきている子供の顔など、憶えているものが生きて帰り、その情報を恐慌状態で記憶を曖昧にさせず、『正確に伝える』だけでも奇跡に近い。

 俺たちが降伏した日から数えても、むこうの陣営までの距離から考えて、調査、往復と作戦の立案、決行までに、外部からの侵略を受ける前提での警備体制の再調整を含めても、まず俺たちのエリアの発電所の燃料不足からして安定した電力供給も叶わん、回線設備がまともに動かないからネットワーク回線も電話回線も機能していない、そもそもの肝心の電波塔もすべて……()()()だが現状稼働停止、修繕工事中だ、AMやFMを介して報告など簡単にできるはずもない。

 ほぼ一か月はかかるはずだった……お嬢ちゃんを狙われるとしても、な。

 

 かつ、お嬢ちゃんのライブ活動は二週間前ほどから。

 つまり、明らかに『間に合うわけがない。』

 

 すべての情報を持って帰っても、たった十日間弱で可能なはずはない!

 ………そんな状況だったにも関わらず、お嬢ちゃんの髪色だけを頼りに攫うとなれば、もはや博打に近い状況下で、今、このタイミングで、的確に?

 

 『ライブをやっている瞬間』を狙って攫うだと!?

 

 ありえん、明らかに誰かが『裏で情報を流した』としか思えん………!」

 

 男が語るたびに近づく、煙の出所。

 バル・ベルデ共和国の地形を知り尽くした戦士が語るなか、ジョーカーは。

 

 

 まったく話がわからずに、ぽかんと口を開いていた。

 

 

 

 

 

 おじさんの部下の話を聞いて、戦力として同乗したのはいいものの。

 

 なんか、ものすごく難しい話をしている気がする。

 なんだろう、別の目的があったうえでの「わざと」と、クリスちゃんを守るための「わざと」の両方が噛みあったうえで、なおさら情報面でのセキュリティが「インフラが使えなさすぎて」強固になっていた……から、余計に状況が理解できない、みたいな。

 

 そういう感じでいいのだろうか。

 

 ―――“あれは存在してはならない。

 ―――“バトル・ファイトの障害を排除せよ。

 

 ぽけっ、と、している合間に背筋を震わせる、生物種代表(アンデッド)の闘争本能。

 不死生物(アンデッド)の自我を問わない、“統制者”の意思だ。

 感覚は、格闘技での武者震いを強引に引きずりだされたかのような、高濃度のカフェインで無理やりテンションを高められたかのような、不気味な吐き気を催させる。

 ノリノリで戦えるやつなら、すごく集中力があがるのかもしれないが。

 

「う゛お゛ぇ。」

 

 車に乗っている最中に“これ”は、簡単に車酔いしそうだから勘弁してほしい。

 お願いだから“これ”やめてくれませんか、へたすると戦うどころじゃなくなる気がするのですが。あ、ダメ? いいから戦え? ……そっかぁ。

 

「……えっ?

 ウソだろ、近くにノイズがいるの!?」

「なんだと!?」

 

 おじさんが返事してまもなく、カーブを曲がったところで。

 

「くそっ、冗談だろう!?

 信じられん。やつら、自分を囮にノイズを連れてきたのか!」

 

 おじさんは苛立ちをぶつけるように、ハンドルを殴りつける。

 これでもかと道路に鮨詰め手前で集まっている、ノイズの軍団がいた。

 あれほどの数では、図体がおおきいノイズたちの間を通って走り抜けるなんて、どれほどの運転技術でも無理がある。通り抜けた頃には、乗っている人間の何人かが炭化させられてしまうはずだ。そんなことやれるわけがない。

 あんな密集されたら、自分が先行して道を作ることだって厳しい。

 

 そう、ノイズが、道を封鎖させるように集まっていて。

 

 

 

 

 

 ―――()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「……迂回してください。

 こいつらは、ボクがどうにかします」

 

 できすぎている。

 

「どうにか、って……おまえ、またか!?」

「やるしかないじゃないですか!」

「………っ、馬鹿野郎! 行け!」

「ありがとう、行きます!」

 

 車から飛び降りて、即座に擬態を解除する。

 図体は広がり、おおきく、得物を伸ばした不死生物(アンデッド)の姿へ。

 

「ボス? なら、ここで“駆除”が終わるまで待った方が、」

「囲まれるまで待つつもりか? なら降りろ、先に行くぞ?」

「あ。りょ、了解です! 行きます!」

 

 おじさんと兵士の声が、ダンプカーが遠のく。

 送り迎えをしている暇なんてなく。

 ノイズめがけて切っ先の残像を飛ばし、距離を詰められないように攻める。

 接近されたら倒しにくい種類の相手が何匹かいる。遠距離攻撃をする個体くらいならどうとでもなるが、集団で弾幕を張ってこないだけマシ。だからこそ。

 

 接近戦特化の個体を逐次投入されながら、その個体を誤射する前提で狙撃されると厄介だ。そんな知恵があるとは思えないが、()()でも似たような状況になると厳しい。

 

 そういう観点では。

 接近戦特化の個体の群れに突っ込んで同士討ちを狙いながら、ノイズの図体ゆえの大ぶりな仕草の隙を縫うように、確実に切り裂くよりも。

 遠距離特化の個体から潰すか、いっそ接近戦特化の個体を盾にしながら距離を詰めて、遠距離特化の個体を潰しにかかるほうが、まだマシだろう……とは、“掲示板”常連の『フィーネキ』の言葉。

 「似たような戦略」でノイズを狩っているからこそ、らしい。

 

 この状況。

 不自然なまでに集まった、知性がないはずのノイズ。

 明らかに「車が通れない」状況。まるで「クリスちゃんを救わせない」かのような。

 

 そのうえでの、【似たような戦略】って、まさか。

 

「―――ほう、やるじゃあないか」

 

 その、まさかなのか。

 こちらへと、金と白のシルエットが近づいてくる。

 

「ジョーカーアンデッド。

 おまえがすでに目覚めているとは気づかなかったが。

 ……なるほど。バトル・ファイトは始まっていたのか?」

 

 思案するように、独り言を呟きながら。

 金髪で、白を基調とした服を好む、同時に全裸だろうと構わず歩くもの。

 右手には、なにやら杖だか、鍵だか曖昧なもの。ちょっと仮面ライダーとは関係ないが、似たようなアイテムで悪のロボット軍団を従える悪の科学者にも見える。*2

 

「であれば、ジョーカー。貴様を潰させてもらおう。

 私の計画の邪魔になるものは、たとえ偶然であれ……いや、待て」

 

 

 

 

 

【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】4スレ目

 

69:ジョーカーアンデッド?(>>1)

 あのさ、杖だか鍵だかわっかんないのを持ったやつが来たんだけど。

 金髪で白服でギル博士*3って感じなんだけど、ぶっ飛ばしていいのコレ?

 

70:名無しの装者

 馬鹿者、そいつがフィーネだ!

 というか、並行世界の私だ! 間違っても、殺すな、戦うな、戦わせるな!

 

71:名無しのアンデッド

 フィーネキが銭形*4で草

 って、なんでだ? 悪役なんだろう?

 

72:名無しの装者

 そいつがやらかさんと融合症例が……ああいや、可能性と未来の話は別だ!

 私の推測が正しければ、そいつや装者が死ぬと止められなくなるのだ!

 「その私」を戦わせるな、戦意を削げ、なにをしてもかまわん!

 

 

 

 

 

 

「………本当に、偶然か?

 ここを占領するテロリストども、その地域に。

 ……『知性のない貴様』が現れるだと? ほかのアンデッドではなく?」

 

「変身を、解け。」

 

 この世界について詳しくはないが、さすがにわかる。

 そんな痴女だか魔法使いだか、巫女だかなんだか曖昧な姿をする、どこかの誰かに憑依できる存在なんて時点で、その姿が正体ではあっても。

 

 肉体を奪われた「だれか」の本当の姿ではない。

 

「………おい、聞き間違いか?

 まさか、貴様が喋ったのか? ジョーカー、貴様がか?」

 

「解けって言っただろ」

 

「………………は?」

 

 信じられないものを見るように、こちらを見たまま固まっている。

 

「空耳か? いや、そんな、……馬鹿な。」

 

「その杖を使うな、たぶん、それで操っているんだろ?

 ノイズを。下ろせよ、壁に立てかけるだけでもいいからさ……変身を解けよ」

 

 指をさし、杖を手放すように勧告する。

 ノイズの制御を失って自滅しかねないのであれば、別にやらなくてもいいとは思うが。

 ノイズを増やして気づかないところでおじさんを殺していました、とか裏を掻いたつもりでドヤ顔をかますタイプかもしれない。最初から「おまえの命は勘定に入れていない」くらいの勧告で済ましたほうが、素直に話は聞くだろう。

 

 ………まずいな、ちょっと怒りすぎたかもしれない。

 ベルトがやたらと熱い。ひたすら赤く輝いているのが見なくてもわかる。

 

「馬鹿な、」

 

 こちらを見たまま、呆けるフィーネ……らしき、女性。

 

「ジョーカーアンデッドが、自我をもって、喋る、だと?

 ありえない。だが、現実として、そうして……馬鹿なことが………??」

 

 

 

 

 

 

73:ジョーカーアンデッド?(>>1)

 なんか馬鹿な馬鹿なbotになってる。

 

74:名無しの装者

 まあ、そうなるだろうな。

 自分の世界の融合症例を初めて見た私が、まもなくに並行世界から、やつの聖遺物の正体に気づいた日と同じか。なつかしいな、自分が道化に思えて何度ベッドでクリスに

 

75:名無しの装者

 すまん、途中で送った今のコメントをどう消せばいい、消し方がわからん

 

76:御嬢様ネキ(与太担当)

 まさかのクリスちゃん×翼(Inフィーネ)!?*5

 ………ありだわ! だれか漫画担当して、私原案と構成と台詞やるから!

 

77:名無しのアンデッド

 バブみが深いクリスと、おギャるフィーネキのCP*6かぁ……

 

78:名無しの装者

 やめろ、そういうのマジでやめろ!?

 

79:ジョーカーアンデッド?(>>1)

 シリアスやってる横でやめてもらます?

 

 

 

 

 

 

 

「―――それがありえちゃうんだから、世界って面白いよね。」

 

 奇しくも“掲示板”の面々が悪ふざけをしてくれたおかげで、演技にわずかながらも実の入った感情が混ざる。もちろん演技だけれども、ウソはない。

 ある音楽ソフトが日本国内だけでなく、世界中を席巻するメディアとなり、その名に恥じぬほどの未来であった令和の時代まで愛されるなんて、平成の当時では考えられないことだった。屁理屈や常識でのありえないは、いつだって覆されるもの。

 

 難なく成功し続ければ、なんでも大成するわけではない。

 仮面ライダー作品だってそうだ。本郷猛*7役の某氏が事故で怪我をしなければ、仮面ライダーの後継者たる「仮面ライダー2号」だの、変身ポーズだの、そんなものは生まれなかった。

 仮面ライダーに後継者が現れ、次なる敵と戦う、そんな物語だって生まれなかった。

 

 50年の歴史を生み出したものは、瞬間、瞬間を必至に生き抜く魂にある。

 

「………本当に、自我があるのか。」

 

 笑いかけるこちらに、目を瞬かせながら。

 フィーネキから「フィーネ」と呼ばれた女は、その姿を別人のものに変える。

 

 気のせいだろうか。

 “統制者”からの声が、ちいさくなった気がする。

 

「ノイズを召喚して、邪魔者を潰すように命令し。

 あとは思いのままにしてやろうと思っていたが……そこに偶然ではなく、必然で知性のあるアンデッドが現れた、ということであれば………」

 

 呟き続けるフィーネ。

 アンデッドの存在は把握していたらしい。「活動しているか」はともかく。

 

 思えば、“統制者”の意思には違和感があった。

 自分に語りかけた内容は、アンデッドを確認した、という内容ではない。

 「バトル・ファイトの参加資格者が現れた」、だ。

 

 この違いに、いったいなんの意味があるのだろう。

 

「おい、ジョーカー。やつらに与していたのか?」

 

 彼女は独り言をやめて話しかけてくる。

 

 聴きたいのは本当のところ、こっちも、なのだ。

 こいつのいた時代で、バトル・ファイトに何があった?

 

 特撮【仮面ライダー剣】での仮面ライダーになるシステム……「ライダーシステム」は参加資格者になる方法ではない。なんの関係もない人間が生物種代表(アンデッド)を封印する武装でしかなく、不死生物(アンデッド)になる手段ではない。普通に使えば。

 

 この世界で、バトル・ファイトに参加する資格を得る方法。

 そんなものがあるのか。不死生物(アンデッド)になる以外の方法で?

 

「………似たようなものかな。

 君みたいなやつが多すぎるからね、見ていられないんだよ」

 

 絶対、ろくな方法じゃない。

 ノイズをまっさきに駆除するように命令するときといい。

 ……絶対、フィーネと同じ古代人たちがやらかしている。それぞれの生物種代表(アンデッド)の誇りを蔑ろにさせるような、決定的な“なにか”を。

 

「なんだと?」

「君、自分が特別だって信じたいタイプだろ?」

「事実をなぜ信じる?」

「そこに人間の愛があるなら、今の台詞は大好物なんだけどね」

 

 天道総司みたいで。*8

 そっちなら、まだ好感情が持てはするのだが。こいつ個人に。

 

「なんのつもりかは知らんが。

 ずいぶんと人間に贔屓をするようになったのだな?」

 

 あ、そこで「私たち」って言わないんだ。へえ。

 

「………そんなおもちゃで、人間を殺して神様気取りかい?

 まさかとは思うけど、そんなつもりじゃあないよね?」

「喧嘩を売っているのか?」

「おたがいに踏み込まれたくない内面くらい、あるだろ?」

 

 じっと、睨みあう。

 あまり彼女については知らされていないが。

 たぶん、今の態度が最適解のはずだ。

 

 学校とかでよくある、身体能力や、教師からの評価や、周りからの人気や、成績や、親の裕福さやら地位やらで「自分が特別だ」と思い込むか。

 周りが悪いからと「なにをしてもいい」と周りに正義の鉄槌と称して犯罪行為に走るような、そういうタイプのはずだ。

 

 愛ゆえ「(誰かにとって)自分は特別だ」と思っている人種とは異なる。

 そっちの人種であれば、性根が優しい。誰かの尊厳を痛めつける必要なんてない。

 

 性根が卑屈に近いタイプにかぎって。

 他人を攻撃することでばかり笑顔になる。自分の精神的優位性だと思い込んだものを揺さぶられると、わかりやすく表情が変わる。パワーがあっても痛みに脆い。

 

 ………いや、まあ、ボクの場合、自分のエゴで加害者を生かして、周囲を巻き込み被害者を増やさせること自体が後先を考えない問題行為だから、殺すしか策がないので、同じことを指摘されると……素直に黙るしかないのだが。

 

 同じ化け物なら。

 こいつのほうが。どんな動機であれ、心の底から「他人を殺していい」「人間の尊厳を奪っていい」と思っている時点で、相当に中身が脆いはずだ。

 

「口まで達者になった、ということか。

 ……まあいいだろう、それで? 貴様の望みはなんだ?」

 

 話を逸らさせ、本題に移るフィーネ。

 気のせいか、個人的な願望あっての見間違いか、眉が痙攣したようにも見える。

 

「最初に言っただろ、ノイズを操るのをやめろ。

 呼ぶのもダメ。今、クリスちゃんを助けて、この町を守らなきゃならないんだよ。きっつい言い方もできるけど、こう言うよ。『邪魔はしないでくれ』」

 

「それはできないわねぇ。その雪音クリスが目当てで来たのだもの。

 私の勘が正しければ、彼女が聖遺物の適合者であるはず……逃がす通りはない」

 

 あ、なんだ、そんな程度のことか。

 

「別に、そっちを邪魔する気はないよ」

「………は?」

 

 戦わなければならない。

 そんな運命に、彼女を叩きこむことを推奨しているわけじゃない。

 

「『あの子を取り戻す』のを手伝うなら、なおさら。

 むしろ、君にとってもマズいんじゃないの?

 クリスちゃんが行方不明になるのは」

 

「そんなことか?

 あとで、どうとでもできるが……だが、そうか。

 ジョーカー、貴様が雪音クリスを連れまわっていたのか」

 

 こいつの計画を今、邪魔すれば。

 全力で抵抗するはずだ。だから、こちらの策にノッてもらう。

 

「ハーメルンだの、死神だの、ピーター・パンだの。

 わけのわからん噂話は聞いていたが、その正体はジョーカーアンデッドで?」

「おじさんたちは、ボクが怪物であることと、あの子との関係を知っているよ。

 数週間前の話だけど、あの子を人質に取られかけたことだってある」

「で、肝心の連れ子は雪音クリス、なるほど、なるほど……うん?」

 

 そう、ここだ。

 ボクを牽制するためだけに「人質に取られる」可能性を伝えてやればいい。

 

「………なんだと? つまり、待てよ?

 ということは、やつらが、『そういうことだ』と気づけば。

 ……あれ、ちょっと待って、待ちなさい。この状況って、まさか、」

「え、今さら気づくの?」

 

 さあっ、と、潮が引くように余裕を失っていくフィーネ。

 からかうような声色を保ちながら、語りかけてやる。

 

「めちゃくちゃ『マズい』に決まってるじゃん。

 お目当てのお姫様が、今、一番みんなが殺したいはずの化け物のアキレス腱で、おじさんたちに対しても『人質として有効な』子供で? 当然、君にも通用するんだろ?」

 

 指を折り、問題点を数えながら。

 

 

「どういう算段だったのかは知らないけどさ。

 

 ……あいつら、君がどうこうできても。

 クリスちゃんが無事でいられる保障、『だれにもできない』と思うんだけど。

 

 余裕かましている場合じゃないだろ、マジで」

 

 

 

 

 

81:ジョーカーアンデッド?(>>1)

 フィーネ、さっきのコメントでボクが書いたこと、全部説明したら、「FXで有り金を全部溶かした」みたいな変な顔になったんだけど……ねえ、このひと、本当にフィーネキと同じひとなわけ? なんか可哀そうになってきた。

 

82:名無しの装者

 ノイズもどきが自我をもって、「紛争地帯を鎮める」目的意識を持ち、よりにもよって“雪音クリス”を連れて旅をしていた張本人です、だなんて奇跡に奇跡をかけあわせた意味不明な状況など最初から予想して動けるわけがなかろうがいい加減にしろ。

 

 実は三つ巴どころか四つ巴で、“雪音クリス”争奪戦を始めたら一番不利なのが自分だった、だなんてゲームタイトルに偽りがある三国志のクソゲーをやらされたようなものだ。前提条件から間違っているのに、有利に立ちまわれるわけがないじゃないのよ。

 

83:御嬢様ネキ(与太担当)

 あー、なるほどね。

 チェスをやっているつもりが将棋だった、麻雀だと思ったらババ抜きだった、みたいなパターンは気が滅入るわよねー。第一、適合者って簡単に見つからないんでしょう?

 

 歴史的価値もある宝石を強盗に壊されるのが先か、怪盗の自分が盗むのが先か、素直に警備員たちが守り切って油断したところを狙うべきか……まあ、選択肢なんて、最初からひとつ、おとなしく3番を選ぶしかない。そりゃあ変顔くらいするわよね………。

 

84:名無しの装者

 >>83

 その喩え、なかなかいいな。

 「優雅に」盗めない以上、そっちの私の自尊心はそれなりに堪えているだろう。

 

 ………ご愁傷様と言うべきか、おなじ私でも、ほかの並行世界と同様にクリスを悪用するつもりなのだろうから、いっそ「ざまあないな」とでも笑ってやるべきか。

 まあ、こちらの俺は当然! 後者なのだがな! わはは、ざまあなさい、ばーか、ばーか!

 

85:名無しのアンデッド

 急に頭ロリになりよったぞ、こやつ。

 

86:御嬢様ネキ(与太担当)

 クリスママと、メスガキなフィーネ……ありね。

 

87:名無しの装者

 やめろって言ってるでしょうが、勘弁してちょうだいよ!?

 

88:名無しのアンデッド

 フィーネキ、翼成分(※Another)で頭愉快になってんのな

 

89:ジョーカーアンデッド?(>>1)

 だから、シリアスしてる最中に、やめて?

 

 

 

 

 

 

 

「………だが、しかし、そうだとしても……」

 

 ぼそぼそと、思索に耽るというより、現実逃避に近い屁理屈を構築しようとしているのか、あるいは邪道に突破口があると信じているのか。

 フィーネの独り言が続く。

 

 そういうときって、絶対ろくなアイデア出ないよな。わかる。

 

「あー……じゃあ、ボクさ。

 先に、クリスちゃん助けに行くね?」

 

 しかも、立ち止まってしまうものだから、状況がますます悪化する。

 とりあえず飛び込んでみてから考えたほうが、意外となんとかする方法が浮かぶものなのだけれども。この状況だって、さっさとクリスちゃんを助けてから作戦を練り直したほうが、絶対フィーネにとって有利な状況を作れるはずだ。

 なんなら、おじさんたちの信用を得る、っていうのもいいだろうし。

 

 ………まさかだけど、ひょっとして。

 そういう「プラスに物事を進める」立ちまわり、苦手なのかな。

 

「お、おい、待て、なにかアイデアはあるのか!?」

「ないよ?」

「はあ?」

 

 わけがわからない、という顔で見つめてくるフィーネ。

 

「無事な確証がないのに、無事に助けられる確証もなしに行くのか!?」

「手札を持っているのはボクじゃない、おじさんだよ」

 

 バル・ベルデでの陣取り合戦を必死に頑張っていたのは、おじさんだ。

 ボクはゲーム盤をしっちゃかめっちゃかにして、おじさんたちの陣取り合戦を防衛戦に引きずり落としただけ。「バル・ベルデでの人質の扱い」なら、おじさんのほうが熟知しているはずだ。

 

 ボクは不死身で、人間を確実に殺せるカードの1枚でしかない。

 できることは死なないこと。人間相手であれば皆殺しができること。

 

 そして、ノイズから人類を守れること。

 

「どんなふうにジョーカーを切ればいいのかは。

 おじさんのほうが、きっと、よっぽどわかってるよ」

 

 命令を待つように立ち惚けているノイズたち、その横を通らせてもらう。

 

「それでもダメそうなら、ボクも考える。できれば、君も。

 『そのために行く』、……って言ったほうが、君はわかるんでしょ?」

「………どういう意味だ?」

 

 フィーネの姿が視界の端から消えるほどに、ボクは歩みを進める。

 

「本当は、『助けたいから行く』だけ。」

 

 質問に答える気は、もう、ない。

 心まで置き去りにした屁理屈なんて、どんなに正しくても、それは何もやっていないようなものだろう。そういう退屈な屁理屈合戦はキライなんだよね、ボク。

 

『―――いいだろう、貸してやる』

 

 ぐわん、ぐわんと、遠くから拡声機によるものらしき音が鳴り響く。

 おじさんが部下に指示していた通り、Δ地区とやらに敵を誘導できたらしい。

 

『おい、おまえ、私の代わりに外せ。インカムを歌姫につけて差し上げろ。

 死神にも聞こえやすくしろ、かえって好都合だ………!』

 

 歩みを早め、息を乱さぬように駆け足に、走りに移行できるようにする。

 相手が焦って、焦らされるのに我慢できなくなったら、見せしめと言わんがばかりに手足を銃弾で撃ち抜く、くらいはやるかもしれない。

 そこまでの考えなしじゃないかもしれない。さすがに個人的な願望か。

 

「………おい、」

 

 複数の足音が響く。

 ふり返ってみると、フィーネが杖を片手に近づいてきている。

 ノイズを従えながら。やめろっつったじゃん。

 

「よくは知らんが、『雪音クリスを生かす気』なのだろう?

 ……ならば、バトル・ファイトはどうする気だ?」

 

「しつこいな。

 ()()がわかれば、あとはわかるんじゃないの? 行くよ?」

 

 ああ、もう、これだから理屈っぽいやつは。

 ボクも似たようなものだけれども、やっぱ「バカになれ」*9たほうがいいよ。

 こういう時は。

 

『クリス、どういうことだ。説明してくれ!』

 

 おじさんの声が聞こえる。

 相手側のものと比べると、かなり音質が悪いのかもしれない。

 なにを言っているのか、まったくわからない。

 

「って、そういえばさ、君、名前なんなの?」

 

 “掲示板”の予備知識があるとはいえ、眼前の彼女がそうである、とは限らない。

 フィーネ、というのが種族名かもしれないし、組織名かもしれないのだから。仮面ライダーでいうところの「ショッカー」みたいなものだ。*10*11

 

「知らなくてもいいだろう。

 ……いや、一応は協力関係を結ぶのだから、名乗ったがほうがいいか。

 フィーネと名乗っているが、この身体には“櫻井了子”という名前がある」

 

 ふーん、やっぱり人間の名前が別にあるのか。

 

「へー。ボクにもあったほうがいいかな、人間の名前。

 どんなのがいいと思う?」

「貴様、本当にジョーカーなのか?」

 

 怪訝そうな目つきだが、すこしだけ考える素振りをすると、いくつか考えてくれた。

 やはり自分ひとりで空想してみるよりも、面白い。髪色から名前をつけたり、血の色からつけたり。

 どれで呼ばれたら、いちばんしっくりくるんだろうな。

 

『………呼びたかった』

 

 クリスちゃんの声だ。

 すごく、はっきりと聞こえる。

 相手側の音響機器がよほどいいものなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

『“はじめ”って、呼びたかった』

 

 

 

 

 

 

 

 足が固まる。

 ほんのすこしの間でも浮かべていた感情が。

 フィーネに向けていた笑みが、罅割れる。

 

「うん? どうしたジョーカー」

 

 立ち止まったボクに振り返る、フィーネ。

 

『ジョーカーを、“はじめ”って、呼びたかった』

『クリス、おまえ……まさか、』

 

 どうして立ち止まったのか、ボクにもわからなかった。

 

『だって、ひとの名前じゃないから。

 ずっといっしょにいるのに、いっしょじゃないみたいで、』

 

 内心「冗談だろう?」としか思えない名前に、心臓を縫い留められる。

 

『………人間になっても、ジョーカーを怪物なんて、思いたくないから』

 

 憧憬、尊敬、物語の終わり。

 一瞬のうちに思い起こさせられた、たったひとつのベンチ。

 

『だが、血は緑色だ!

 死神は死神のままだ、あの姿でも不死身なんだぞ!?』

『それでも!』

 

 歩みを、進める。

 前へ向かうたびに、建物の陰が動く。

 建物の隙間から伸びる光が、どこか鋭いものに変わった。

 

『“はじめ”は、“はじめ”なんだって言いたかったんだよッ!』

 

 夕日だ。

 

『名前は嫌がられたけど。

 でも、姿も人間で、歌が好きで、心もおなじなら―――!』

 

 自分の影が後方へと伸びる。

 電波塔の輪郭が、道路が銀杏色に染まり、すべてのシルエットが。

 

『あいつは、“はじめ”は!

 人間なんだよ、人間でいいんだよっ!』

 

 なつかしい故郷の情景を浮かびあがらせる。

 

『あいつだけ独りぼっちとか、そんなの“はじめ”がさみしいし!

 わたしだって、さみしいんだよっ……なにが死神だよ、ふざけないでよっ!』

 

 東京タワー。心の奥底にある、ひとつの思い出。

 ただの電波塔だったはずの虚像に、なぜか、手が伸びていく。

 

 ジョーカーアンデッドの腕が。

 まるで、まぶしい夕陽にかたちを溶かされて、別の腕に見えてしまう。

 

『死神ごっこするんなら、()()()()()()()()

 そんなの、付き合わないで……ずっとそばにいてよ―――!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこか、遠くへと消えていくような。

 ―――(はかな)いヴァイオリンの音色が聞こえた、気がした。*12

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子。ずいぶんと、おまえに入れ込んで。

 ……ジョーカー? なぜ膝をついている?」

 

 どうして、名前ひとつで(はしゃ)いでしまったのだろう。

 どうして、今の今まで浮ついた気分で。彼女の気持ちも知らないまま。

 

 ひとからもらった名前に、ぜいたくを言うものじゃない?

 ………ちがう、それでもない。

 

 大切なひとからもらった名前だから、大切にしたい?

 ………ちがう、それでもない。

 

 その名前で呼ばれるのが、畏れ多い?

 ………………間違っていた。

 

 

 

 家族(クリス)がそう呼んでいた。

 たったそれだけの暖かさに、理屈(ウソ)が言えるものか。

 

 

 

「……ラウズカードだと?

 そんなものを掴んでどうした、ジョーカー?」

 

 ラウズカードを。

 人類の生物種代表(アンデッド)のカード、♡2の「SPIRIT HUMAN」を。

 ベルトのバックル、「ジョーカーラウザー」に通す。

 

 ああ、そうか。

 

「君が、そう言ってくれるなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間として、生き続けていいのなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子の、“はじめ”は、―――ボクなんだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
炭鉱において、窒息、および毒ガスを回避するための()()()として使用された。

*2
漫画【仮面ライダー】および漫画【秘密戦隊ゴーレンジャー】を手掛けた、仮面ライダー作品と戦隊ヒーロー作品の原作者、故「石ノ森章太郎」氏が手がけた漫画【キカイダー】に登場する、悪の科学者「プロフェッサー・ギル」のこと。

*3
漫画【キカイダー】に登場する悪の科学者、「プロフェッサー・ギル」のこと。「悪魔の笛」と呼ばれる道具により、己が魔改造し支配した(元)自然保護ロボ「ダークロボット」の命令系統に干渉できる。

*4
漫画・アニメ【ルパン三世】に登場する日本警視庁の警部にして、アニメシリーズにおいてはICPOのルパン専任捜査官として出向中の、「銭形幸一」のこと。そちらの作品と仮面ライダー作品との関係性はなく、おなじ「ルパン」モチーフの仮面ライダー、および怪盗が存在するのみである。

*5
カップリングにおける「×」とは、左側が攻め、右側が受けとされる。この場合の攻守とは、性的なものだけではなく、プラトニックな関係や友愛からの関係も含む。

*6
カップリングの略。

*7
特撮【仮面ライダー】、および漫画【仮面ライダー】の主人公であり、通称バッタ怪人、または「仮面ライダー」、あるいは「仮面ライダー1号」。

*8
特撮【仮面ライダーカブト】の主人公、仮面ライダーカブトに選ばれた者。その変身に使用する「ライダーシステム」、ライダーシステムである自我を持った「カブトゼクター」、それらを開発した「ある2人組」、家族から託された大切なもの、そのすべてに選ばれた―――天の道を行き総てを司る、家族愛の男。

*9
特撮【仮面ライダー剣】の登場人物「桐生豪」の台詞。後輩の橘朔也への言葉。

*10
特撮・漫画【仮面ライダー】に登場する、代表的な悪の組織。ナチス・ドイツの残党組織でもあるが、ショッカーの“首領”と呼ばれる存在は“ナチス党の何者か”と同一人物であるとは描かれておらず、正体不明。後年の作品では“首領”と同一人物らしき別組織の首領が現れている。

*11
物語のうえでは、戦闘員を含めて十把一絡げにショッカーと呼ばれる、ショッカーの名を冠した怪人がいる、首領すら首領と呼ばれずショッカーとやはり十把一絡げに呼ばれる場合があるなど、時と場合によっては非常にややこしい。

*12
特撮【仮面ライダー剣】公式サウンドトラック、53番「君の仇を討つ」より。




 というわけで。
 主人公善堕ち回(カブト回&剣回)でした。


 人間に成り代わる怪人「ワーム」、人間に化ける「アンデッド」。
 家族の似姿になった“家族”、人間の姿になった“仲間”。

 「家族の愛」から生まれた仮面ライダー、仮面ライダーカブト。
 「人間への愛」ゆえに戦う仮面ライダー、仮面ライダーカリス。

 彼が仮面ライダー? まだ早いですよ。
 まずは人間にならなきゃあ、ねえ。


(野暮な話ですが、人類にならなきゃ、って意味じゃないデスよ?)



 提供された感想は、最新話のものではない「途中の回からのもの」でも楽しませていただきました。今さらみたいに過去の話の感想を書いてもいいんですよ………結局こちらが嬉しいので。自由にお楽しみください。

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