【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】 作:ウェットルver.2
ノイズ殲滅から数時間後。
人類の勝利。そんな話で終われば、どれだけよかったことか。
満身創痍の怪物は死ねず、その肉の隙間を少しずつ塞いでいく。
これを確認したリーダーはなにを確信したのか、自分の部下全員、奴隷として現在労働させている捕虜の医務担当に応急処置を命じる。
人類を炭化させる災害であるノイズ。
いわば、それぞれの国の事情など鑑みない危険生物。
あれらを炭化されることなく迎撃し、何度死にかけようとも起きあがる「ノイズの天敵」とも呼べる怪物の自己再生を可能な限り補助しろ、と言うのである。
めちゃくちゃだ。青年は頭を抱える。
自分たちの仲間を殺されすぎて、気が狂ったのだろうか。
己が慕う先達たる男には、是非とも怪物が殺した同胞の数を思い出していただきたい。
とはいえ、相手は怪物。人類を炭化するノイズとは真逆の、「人類を赤い霧にさせる」正体不明の怪生物である。自分とて「おとな」なのだと、青年は口をつぐんだ。
「説得できるだけ、説得はする」
軍服の男は目を逸らさない。
全身に包帯を巻き、緑色へ染めさせる“男”に向かって。
「………死ぬかもしれん。そのときは頼む」
「言わなくてもいいですよ」
その“男”は、ジョーカーアンデッドは朗らかな声で返す。
表情を、あるいは声色を変えず話し続けるという「行為」は、それが演技であろうとなかろうと淡々とした口調にしか受け取られない場合がある。
ゆえに、軍服の男の隣にいた青年が。
眼前の怪物は言外に「最初から、そうなるなら殺す気で来た」と伝えたのだ、と認識する。間違いではない。己のリーダーが「怪物を信じる」などと宣わなければ、自分もまた特殊工作部隊として接近した三番隊と同じ末路に至っていた。
そのくらいは自覚できている。
最初の予定通り、あの幼子を人質に取るべきだったのではないか?
そうすれば、これから会議室に戻って、世迷いごと手前の綺麗事を口走り、結果として同胞に銃殺される可能性だって限りなく低くなるのだから。
「結局、殺すときの感覚って、すごく気持ち悪いですから」
「そうだな」
「――――え、」
雪音クリスに目を向けていた青年は固まる。
「ですよね。
なんだかんだ理由をつけて、一生懸命誤魔化して。
いろいろと感情に任せて、全部塗り潰して真っ黒にして。
そこまでやった頃には、なんだかもう『だれを殴ってもいい』みたいな錯覚しちゃうじゃないですか。すごく怖かったんですよ、あれ」
異形の容貌をくしゃりと歪めて、怪物は泣き疲れた子供を見つめている。
ぐったりと寄りかかるように、ベッドの上で、怪物の上で眠り続けている子供へ、いったいなにを思っているのか。とげとげしい指先を丸めて、黒鋼じみた拳は作らず、手のひらを空気にさらしたまま交互に見ている。
「………そうなりたく、なかったんです」
「………そうだろうな」
男も、子供と怪物を見つめる。
何か思い出そうとするかのように、だんだんと手のひらに丸めた手を打ちつける仕草を始めた怪物。その
「殺人は殺人だ。
だが、敵を殲滅しなければ終わらんと、俺
その結果がこれだ。『より多くの敵を殺す』目標を持った相手に、ここまであっさりと味方を、同志を殲滅させられていく。とどめにノイズだ、やってられん。
我々が均衡だと思っていたものは、ノイズの手慰みにもならんのだからな」
怒気を堪えながらも。
肩をすくめているお前に対してではないのだ、と首を振る。
青年は、なにも言えなかった。
バル・ベルデの英雄。
そう呼ばれるにふさわしいと己が信じている、眼前の男は。
おおよそ似たような思考の怪物によって、その勢力を削られた。
命が奪われたから、こどもを泣かせるからなどという、とても具体的かつ詳細でわかりやすい「誰を奪われたから」ではない、大雑把で青臭くも感じる動機で。
国を平和にするための聖戦を。
「こども」の癇癪のような。綺麗事のような。
あまりにも納得がいく理由で、「ただの殺しあいだ」と突きつける。
「………くるってるよ、あんた」
そうとしか、駄々をこねることができないほどに。
「おかしいだろ、そんなの。
なにも奪われてないくせに、通りすがりの他人が死んだだけで?」
「おまえ!」
確かに、バル・ベルデの英雄の聖戦は終わっていた。
通りすがりの赤の他人。それを救うことこそ「国を救う」ことに繋がる、というより、同じ国民なのだから、人間関係のうえでは繋がりがなくとも救わなくていい命ではなかったはずなのに、いつのまにか順番が入れ替わっていた。
同志の命ばかりを重んじ、それ以外の命は勲章か道具かとしか思わない。
子供の涙を増やすばかりで、英雄とは名ばかりの名声に落ちぶれていた。
その恩恵に預かる部下が命を選別している。とっくに名声も誉れも装飾品にしかなっていなかったのだ。国民を救うより、悲劇的な己を救うことしか考えていない。
ふざけるな、そう叫んで拳を振りあげようとして、
「みんな奪われてから始めたら、きりがなくない?」
青年を勘繰るような声がベッドのほうから聞こえてきた。
「ずっと奪われ続けろってのか」
「そもそも、どうして奪い始めたのさ」
「あいつらが俺の家族を殺したからだ!」
「なら、どうしてクリスちゃんの家族を巻き込んだ?」
正確には、自分たちがやったことではないのだろうが。
たったひとつの問いかけが、青年の喉を詰まらせる。
「言い訳はするなよ」
“男”は、青年への嫌悪感を隠しもせず。
なにかを言おうとして、躊躇うように口を閉じる。乱雑に、勢いよく頭を掻いてから改めて開かれた口は、相当に言葉を選んだのであろうことが伺える。
一方で、青年は噛みつくように歯を見せて、なにかを言おうとして、
「………そのほうが、奪った命を数えやすいからな」
「――――ぁ、」
目の前の道化師は。
人間を殺す人間に容赦がないのだと、ようやく気がついた。
呆然とする同志の肩を叩き、部屋を後にする。
おたがい数えられない命を絶やした者同士だろうと、皮肉交じりに後悔しながら。
それでも前を向いているから。あの“男”を信じたいのだ。
たったひとりの
本当にそれしか考えていないなら、自分たちを見殺しにするはずなのだから。
【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】3スレ目
50:ジョーカーアンデッド?(>>1)
咄嗟の自分の癇癪に耐えきれなくて、結局、焼き増しみたいな台詞しか言えなかった。
まんま翔太郎*1の「さあ、おまえの罪を数えろ。」*2なんだよ………
51:名無しのアンデッド
それ言ったら翔太郎もフィリップ*3も、おやっさん*4の焼き増しだぞ。
つーか、たっくん*5も「戦うことが罪なら、俺が背負ってやる」*6って似たようなこと言っているし、イッチの姿勢と大体似たようなニュアンスだし。
仮面ライダーの歴史は繰り返すし、同じことしかやってないように見えて、その実は前に進むんだよ。受け入れておけ。ソウゴ*7もそう言ってる。
52:名無しの装者
長いこと生きているが、人間の思想も繰り返されるからな。
すぐれた技術を国家ごと滅ぼしておいて、何百年もかけて蘇らせて「自分たちが最初に発見した」などと宣う馬鹿どもと比べれば、貴様のそれはだいぶマシだぞ?
53:名無しのアンデッド
やっぱ装者ネキさぁ、フィーネだろ。
54:名無しの装者
知らん。
私には名前がちゃんとある、あと個人情報の詮索は厳禁なのだろう?
55:名無しのアンデッド
くっ、フィーネキ、現代のSNS文化にどっぷりつかっちゃって………!
56:名無しの装者
フィーネキ!?
57:名無しのアンデッド
うん? キャロルじゃなくてか?
58:名無しのアンデッド
フィーネの転生する技術が問題なんだよ。
あれ、ようするに先祖返りだろ? 現代人から古代人への。
だから、フィーネキの身体が誰のものであれ、理屈のうえでは【シンフォギアの世界】の住民であれば「誰にでも転生できる」可能性があるんだよ。
つーことは、フィーネキの皮は………なあ?
ほかに一番聖遺物の近くにいたやつなら、「おまえ」しかいないだろ?
59:名無しの装者
………だから、貴様らのそういう知力をだな。
もうちょっと現代社会の発展に費やせないのかとだな。
60:名無しのアンデッド
え、つまり、汚部屋で“掲示板”見てるのか今?
61:名無しの装者
ちがあああああああう!
62:名無しのアンデッド
かわいい。
63:名無しのアンデッド
かわいいわね!
64:名無しのアンデッド
すげぇ、まるでダメな女指数がエンゲル係数みたいに増えていく……!
これが伝説の並行世界フィーネキ人! 風鳴の名は伊達じゃないぜ!
65:名無しの装者
おまえら後で憶えてろ!
知っているぞ、オーロラカーテン*8とやらを使える某ニキに申請すれば、直接殴りに行けることはもう把握済みだ!
66:名無しのアンデッド
ツヴァイウィングの片翼が握手会(物理)してくれるってさ。
67:名無しのアンデッド
やったぜ。
:名無しのアンデッド
その某ニキだ。代理、だけどな。
安心しろ、俺があとで目の前でやっておく。
68:名無しの装者
助かる。
69:名無しのアンデッド
オイオイオイ、俺ら死んだわ。
楽天なカードマンならぬ爆殺なカードマンきちゃったよ。
:名無しのアンデッド
それが俺の役割らしいからな。
70:名無しのアンデッド
………え、まさか、ウソでしょう。
あらやだどうしよう、ドレスコード変えたほうがいいかしら……。
71:名無しのアンデッド
ところで、ジョーカーニキ。
対ノイズ戦闘の初体験おめでとう、感想は?
72:ジョーカーアンデッド?(>>1)
みんな元気だなぁ。なんか元気出る気がする。
>>71
めっちゃ痛かった。ノイズつよい。
あぶなかった。統制者に全部持っていかれるかと思った。
なんていうか、どこからどこまで自分の意思かって言うか、憎悪だったのか区別がつかなくなるくらいキレた。マジでありがとう……クウガニキほんっと………。
73:クウガ
わかる。
ああいう気持ちで戦うと、拳の感覚がわからなくなっちゃうよね。
「イヤな感じ」もなくなっちゃうっていうか、怖いよね。
74:名無しの装者
頼む、だれか私にもわかりやすく話してくれ。
75:名無しのアンデッド
「良心の呵責を感じなくなるから、憎悪で戦うな」だ。
殴った反動=「良心の呵責」だと捉えるといい。
憎しみで拳の反動がわからなくなる、良心がわからなくなる、つまり「イヤな感じ」もなくなってしまうというわけだ。一見、ノイズや悪党に対して間違った対応にみえるが、その失われた感覚は、ノイズ以外の「憎しみを抱いた対象」にも感じなくなってしまう。
身に覚えはないか?
関係ないやつを逆恨みで殴っちまった時とか。
76:名無しの装者
……なる、ほど。
77:名無しのアンデッド
さすが伝説を塗り替えた男……サムズアップだけで救いやがった。
78:クウガ
オレだけじゃないよ。
五代さんたちを憶えていてくれたジョーカーニキが、ジョーカーニキの記憶のなかにいる五代さんたちを蘇らせたんだ。
きっかけはオレかもしれないけど。
本当に力になったのは、ニキの記憶と、五代さんたちの心だよ。
79:名無しのアンデッド
あ、すみません、>>77の者です、ジョークで言いました。
ごめんなさい、ちょっと心ん中に湧き出た封印エネルギーくらってきます!!
80:名無しのアンデッド
>>79
限界オタク仲間が増えた………先輩として言っておくけど、それ控えておけよ?
状況次第で寒いからな? 隔離スレでやろうぜ!
>>72
ノイズから攻撃が通るってことは、アンデッドには炭化が通じないのか。
で、代わりにアンデッドに対してダメージを与えられる、と。
81:ジョーカーアンデッド?(>>1)
そうみたい。全身緑だらけで動けない。
包帯巻いてもらえたけど、再生が間に合うかが怖い。
クリスちゃんがめっちゃ泣いてた。泣き疲れて寝て起きても泣いてる。しんどい。
………つーか、さっき誰かいなかった? ログが消えた気がするんだけど。
82:名無しのアンデッド
私のログには! なにも! ないわね!
83:ジョーカーアンデッド?(>>1)
うーん、そっか。眠いなぁ、おやす
84:ジョーカーアンデッド?(>>1)
………えっと、みんな、ちょっと相談いい?
85:名無しのアンデッド
お? 安価か?
86:ジョーカーアンデッド?(>>1)
ちがいます。
目を覚まし、まぶたをこする。
眼前に広がる緑色のキャンパスに浮かんだ、黒い肌。
内なる生命力に脈動し、吐息を震わせ、懸命に傷跡を治そうとしている相手は、自分が寝つく前よりも快方に向かっている。自然とほころんだ頬の硬さが自分でわかるほど、涙が乾いており、ぱりぱりと跡が剥がれ落ちる。
少し恥ずかしいので、服の袖で拭い落とす。
「………起きてる?」
返事はない。
体力を回復させることに専念しているのか。
痛みに堪え続けているのか。本当に寝ているのか。
不安を感じないわけではない。
無敵。不死身。そう表現する兵士たちは多かった。
ノイズすら処刑する死神だと恐れる声。なにがしたいんだか理解できない怪物。ノイズよりは人間味を感じなくもない、やたらと無力な人間ばかりを庇う妖精のようなもの。
呼ばれ方、思われ方はたくさんある。
本気で言葉通りのものしか考えていないわけではないのだろう。
その根底には、自分たちが今まで殺してきた命、その無防備さ、あるいは儚さ、殺しあうものとしてのしぶとさ、そこから逸脱した生命体への感情があるのだろう。
だから彼らから、彼らがノイズから逃げ惑い、ジョーカーからも逃げる際。
死なない怪物同士勝手に殺しあってくれ、という声も聞こえてきた。そんな押しつけを、決して声には出さないなりに目に浮かべていた。そんな「おとな」たちがいた。
どれもこれも。
自分たちに殺せない相手だから、そう思っているだけなのだろう。
ジョーカーは「死なないだけ」だ。
死ねないから、己の望んだ戦いに挑み続けられる。
どれだけの恐怖を感じても、どれだけの憎悪に呑まれても、道化を貫いて涙を誤魔化すときも、傷だらけになって泣き叫んでも、かならず立ちあがることができてしまう。
寝ても覚めても、悪夢を見続けるようなものだ。
本当に狂ってしまえるのであれば、どれだけ楽なのだろう。
それでも、そのすべては。
見ず知らずの敵を救うために、あるいは、わたしを救うために、
「………ん、」
かならず立ちあがるしかないのだと、戦い続けることをやめない。
カーテンから差し込む光を照り返す、ベルトのバックルに触れる。
ノイズとの戦いの合間によほどの熱を帯びたのか、その色は変色し、熱が引いてもなお色を戻すことはない。今は溶けた鉄のような、不思議な色をしている。
彼にとって。
自分たちを見る夢は、この現実は悪夢なのだろうか?
そんなことがあってしまったら。そう思うと、バックルへ触れる手がちいさく震える。そんな彼が楽しんでいたものは、両親と同じもので、自分も好きなものだった。
「………持ってくればよかった、な」
ヴァイオリン。
両親からもらった、あるいは、両親も持っているもの。どちらでもいい。
すべてが終わったら、取りに行くことができるのだろうか。
ひょっとしたら、街のみんなに捨てられているかもしれないが。
なら、歌はどうだろう。
どれならば、彼の眠りを妨げずにすむのだろう。
なつかしい声が脳裏に響く。
あのおだやかな歌なら、きっと彼を起こさないだろう。
祈るように。ひょっとすると、思い出に縋るように。
震える喉、毛布を掴む手。その弱さがむなしく、悲しいままに。
「―――
父の言葉で、「きらきら星」。
母の言葉で、「Twinkle, twinkle, little star」。
眠る前に聴かせてもらった、童謡、マザーグースのひとつ。
喪ってもなお失わない、あたたかな記憶のままに。
「―――
しゃこん。と。
ジョーカーの腰のあたりから、なにか、機械音が聞こえた気がした。
「………え?」
まじまじと、ベルトのバックルから吐き出されたものを見つめる。
見た目は、トランプ……トランプ、なのだろうか?
つられてカードに顔を寄せる。裏面の絵柄がトランプのそれだと捉えるには、いくらなんでも荘厳な雰囲気がありすぎて憚られる。掴んでひるがえすと、鎖がかけられた額縁のような絵の中に、ハートマークを胸に抱えた人間のシルエットが描かれていた。
タロット・カード、そう言われた方が納得できる外観だ。
なのに、カードの隅に刻印されたものが「トランプである」と主張してくる。
「……なんだろ、これ。
ハートの2? SPIRIT……HUMAN?」
「………………え?」
87:ジョーカーアンデッド?(>>1)
なんか、クリスちゃんが見てたから、歌ってていい感じに起きれたから、その、痛いの我慢して気がついたんだけどさ。おねがい、マジで話を聞いて。
バックルが赤い。♡2出た。頭追いつかない、助けて。
88:名無しのアンデッド
……はあっ?!
つーことは、まさか……チッ、そういうことかよ! やりやがったな統制者のやつ!
おまえら、考察班! あとフィーネキ! 隔離スレ集合しろ!!!
89:名無しの装者
なんだ? おまえのバックルが赤いと? どうなるんだ?
90:名無しのアンデッド
おの ディ
:名無しのアンデッド
はいはい、俺のせい俺のせい。
……なるほどな。【この世界】の事情も、だいたいわかった。
作品タグを読む順番によっては、本作への認識がややこしくなるのが歯がゆいですが、「クロスオーバー」タグはつけます。
ただし、「A,R,world」「ブレイドの世界(もどき)」タグを実質の特撮【仮面ライダーディケイド】タグとして使わせていただきます。まぎらわしいので。まだ。
ちなみに、仮面ライダーゴーストのOP歌詞はあれであってます。
ちゃんと「に」ってお歌いになられています。「に」抜きで諳んじてみてください、微妙にリズムがおかしくなるので……「に」も歌ってみましょう、すごく楽に歌えますよ。