【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】 作:ウェットルver.2
四話構成になりました。おおよそTV放送の十五分ぶんでも大変ですね。
「―――どうだ、栗女!」
「楽しかったかい、クリスちゃん?」
「すこしは気ぃ晴れたやろ!」
「ライブさいこーっ!」
「う、うん」
どうにも、気が引けるけれども。
モモタロスたちのライブは終わった。
ひとりひとりが同じ歌を、まったくちがう風に歌ったり、いや、なんかもう歌の種類がちがうような………ジャンルもちがうような。とにかく。
“亀公”さんの*1が、なんだか、あの、
“キンちゃん”さんの演歌風の歌*2は、演歌を初めて聴いたのもあって、すごい面白かった。リュウタロスの*3も軽快で、ビートにあわせて思わず
みんなのノリに。
けっこう、わたしの心がひっぱられた。気がする。
「そろそろ着く頃だろ、なあ、ディケイ………ド?」
そう呟いて、士さんに振り返るモモタロス。
振り返って、まるで振り返ったこと自体がおかしいかのように固まる。
「おい、なんで運転席に行ってないんだ、おまえ??」
モモタロスが目を瞬かせる。
「ああ、言ってなかったな。
実はまだ、デンライナーの停まる時間を決めてなかった」
何食わぬ顔で流して、惚けるように両手のひらをうえにする士さん。
デンライナーが停まる時間って、ようするに行く「過去」のことだよね。
それを決めていなかったってことは。
「………さっきから、どこにも向かって、なかった?」
「なんだ、そりゃあ!?
ライブの急ぎ損じゃねぇかよぉ! 飛ばしたんだぞ、
頭を抱えるモモタロスを横目に、士さんがポケットから何かを出した。
またカードだ。なんのカードなんだろう、今度のは。
「それ、なに?」
「ライダーチケット。
おまえの記憶を読み込ませる。過去に行くための切符だ。
……思い出せるか? おまえが契約するとき、思い返した記憶だ」
契約するときの記憶。それって、
「パパと、ママが、……死んだ日?」
「はあ?」
「ええっ!?」
「………やっぱりね。」
そうだ、わたしの願いは「パパとママに会うこと」。
思い浮かべた記憶は、パパとママに会えなくなったこと。
大声をあげる二人に対して、ちいさく頷くだけの"亀公"さん。
「………ふん。」
モモタロスは背中を向けて座席に座りこむ。
わたしの額にかざされたチケットが、ほのかに輝いて、士さんの顔を照らす。
「………よし、記録できたな。
あとは運転席で、この列車を運転するだけだ。
改めて、快適な時間の旅を楽しめよ?」
士さんは手を振りながら、わたしを見ることなく扉を開ける。
本当に運転席に行って運転するつもり、なのかな。
車掌さんでもないのに。いいのかな。
「………ふーん。って、え? じゃあ、またヒマ~!?
ババ抜きしようよ、ババ抜き!」
「ババ抜き? って?」
「自分の手札から同じ数字のカードを捨てて、ジョーカーを最後まで持ってたら負け。そのルールで、おたがいの手札を1枚ずつ引きあって、終わるまで繰り返すゲームだよ。
確か英語圏だと、『オールド・メイド』*4だったっけ? あってる?」
「うん。それならわかる」
前は嫌いだった。
自分の負けを伝える
パパとママを困らせたこともあったけれど、今は泣かないで遊べる気がする。
カウンター席を囲うように、リュウタロスたちが集まった。
………モモタロスは来ないけど。どうしたのかな。
「じゃ、オレが配ったる。
亀の字がやると、まあ、なあ?」
「ひどいなあ、イカサマはしないよ。女の子相手に」
”キンちゃん”さんがカードを1枚ずつ、しっかりと配っていく。
伏せられたカードを拾い、めくって確認する。
ジョーカーのカードと目が合った。そういえば、ジョーカーの名前も「ジョーカー」で、お腹のバックルから出たカードもトランプのカードだった。デザインが全然、トランプには見えないけれど、トランプとして遊べそうなカードだった。
ひょっとして、あのバックルからトランプのカードが出てきたりするんだろうか。
ええと、スートが4つで、数が13だから、……何枚だっけ、40枚だっけ?*5
そんなにたくさん身体の中にあったら、大変そうだし、なんかちがう気もする。
だったらジョーカーの名前、ジョーカーじゃなくて、「トランプ」とか「デッキ」じゃなきゃ変だ。なんかよくわかんないけど、そもそもジョーカーはデッキに2枚入っているものだ。だから、きっと、ジョーカーはジョーカーなんだ。
そうじゃなかったら、なんだか怖い。
ゲームが始まり、ひとり、またひとりとカードを交換していく。
「うーん、まあ、まだたくさんあるし。
引いても、だいじょうぶだよねっ! えい!」
「あ、」
行っちゃった。
「げっ、ババ!?
そんなぁ、手札シャッフルしないと!」
「………うん?
クリス、おまえジョーカー取られて、なんでそんな泣きそうになっとるんや」
「仲間の名前だから、だろ。」
あれ?
モモタロスに、わたし、話したっけ?
「………あー、ダウト*6のほうがよかったかなぁ~?」
額に手を当て、つぶやく”亀公”さん。
「せやな、ダウトがええな!」
「そーだねー」
リュウタロスがカードを受け取り、数回だけ山札をシャッフルして、すぐに配り始める。遊ぶのが好きすぎて、せっかちなのかもしれない。でも、なんだか声に
それにしても、そのカットの仕方だと、カードあんまり混ざってないんじゃないかな?
勢いよく、ぴっ、ぴっ、とカードを投げ渡すリュウタロスの席の横を、ずかずかとモモタロスが大股で歩いて、席に座らず通りすぎた。
「あれ? モモタロス、遊ばないの?」
「決まってんだろ、トイレだ、トイレ」
がらがら、ごろごろと音を立てて、力任せに扉が開かれていく。
がしゃん、と、今度は勢いよく扉が閉められた。
トイレ、運転席と同じ方向の扉を開けて行けばいいんだ。
憶えておこうかな。どのくらい時間がかかるのか、わからないし。
「………なれないウソは、つくもんじゃないと思うんだけどねぇ」
「”亀公”さん?」
「ごめん、ごめん。ゲームの話さ。
……そうそう、ボクは”ウラタロス”って言うんだ、よろしくね?」
「じゃあぼくの番ね!」、と、いきなり始めようとしたリュウタロス。
カードの置き場に伸びる彼の手を”亀公”さん、ウラタロスが止める。
「リュウタ、それダウト。」
「ああっ、ひどいよ、まだ最初の一枚目なのに!」
めくられたカードは、クローバーのキング。
「わ、すごいっ。なんでわかるの!?」
「亀の甲より年の劫、ってね」
「
こういう勝負、なかなか
今ので、リュウタロスが1のカードを持っていないことがわかった。
えっと、さっきオールド・メイドをやっていたから、同じカードが何枚か偏っちゃうかもしれないし、わたしもそうだから、つまり、その、………あれっ?
まさか。
リュウタロス、キングのカード、ぜんぶ持ってるの?
「はい、13、キングだよ」
「………ダウト。それ、キングじゃないでしょ」
「あれっ、バレちゃった?」
「やーいやーい、ざまあみろー!」
「ほお、クリスも強いんか!」
デンライナーの運転室。
マシンデンバード*7に跨る門矢士の後ろから、扉を開く音が響く。
「ディケイド」
「ん? どうした、モモタロス」
「おまえ、あの時よぉ――――」
時の列車は進む。
戦うべき終着駅へ。雪音クリスの記憶、両親が亡くなった時間。
ジョーカーアンデッドと出会う、ほんのすこし前の時間へ。
ゲームを始めて、しばらくして。
窓が光を放ったかと思うと、別の景色が浮かびあがる。
青空は黒煙に染まり、ビルは溶けるように崩れ落ち、数階建ての建物は潰されたケーキのようにぐちゃぐちゃだ。その隙間を縫って、人影が蟻の隊列を組んで逃げている。
『次の停車駅は、「クリスの記憶」、「クリスの記憶」でございます。
ご乗車のお客様は、列車が完全に停車するまでお待ちください。
………なんて、冗談を言っていられる状況じゃあないな、これは、』
『おまえ、“場を和ませる”ってのがヘタだろ、おい』
車内アナウンスから聞こえてくる、士たちの声。
空からの景色だから、全然どこだかわからなかったけれど。
どうやら、本当にわたしの記憶通りの場所にたどりついたらしい。
『着陸できそうな道がないな。街の郊外に停めるぞ』
『あ? ビルの屋上でいいんじゃねぇか?』
『対戦車砲が壊せば真っ逆さまだ、降りてみるか?
なにより、デンライナーは目立つ。全員ちょうどいい的になるかもな』
『あ、なるほど。』
街の中心から離れ、開けた道路に時の列車が着陸する。
空から見たときの景色が確かなら、このあたりに連中はきていない。
「………列車は、どうするの?」
「デンライナーは自動操縦*8で運行しているからねぇ。
放っておいても“時の砂漠”*9に戻るし、あんまり気にしなくていいんだよ」
さっきまでの砂漠が“時の砂漠”なのだろうか。
ちょっとまって、自動運転ってどういうことなの。
「なにそれ……こわい」
「え、なんで? めっちゃ便利だよ?」
「ヒューマニズムの観点だと、『勝手に動く道具』っていうのは怖いらしいよ? 人間じゃないのに人間が扱ったみたいな動きをして、人間の仕事を代わりにやる。
それが怖いんじゃない? 自分たちが必要じゃないみたいで」
「なんやそれ?
ぱそこんとか、げぇむ機っていうのと何が違うんや、これ?」
「そうかなぁ………」
そう言われてみると、なんか、大したことじゃない気もしてきた。
(よし、だいぶ緊張が解れてきたみたいだね)
(せやな。あくまで過去は過去や、変えられへん)
(え、なになに、内緒話? どんな話?)
「ちょっと心配だっただけだよ、リュウちゃん。
エスコートはいるかい、クリスちゃん?」
「………いい。降りれる」
気持ちは嬉しいけれど、嬉しくない。
なんだかよくわからないけれど、そういう優しさだと安心はするけれど、なんとなく自分が運ばれていくかのような感じがして、ほんのすこし嫌な気分にもなる。
ジョーカーなら、「わたしに必要だ」ってわかったら歌うから。
そばを歩くとき、自転車に乗せてもらうとき、すごく気が楽になるし。ああいう感じのほうが、自由に歌える気がして、自由に歩ける気がして、もっと嬉しくなる。
たぶん。
家族でもないのに、自分から近づかれるのが嫌なんだと思う。
………「うっとおしい」、そう思ってしまうのかもしれない。
「フラれてもうたなぁ、亀の字」
「紳士としての当然の行為さ、揶揄うものじゃない」
「ふーん、そーなんだ? でも、だいじょうぶかなぁ?
けっこう高いよね、デンライナーのドア*10。転ぶと痛そうだし。
ぼく行ってくる!」
『亀公、熊公、あと鼻たれ小僧!
………ちょっと運転席まで来い、話がある。』
アナウンスが気になるけれど、今はそれどころじゃない。
早く、わたしと契約した怪物が、悪いイマジンが過去を変えるのを止めないと、ジョーカーが本当に心をなくしてしまう。血の気が引くような、いやな感じが収まらない。
階段を駆け下りて、はやく、あの場所まで行かないと、こんな道路でもたもたしている場合じゃないんだ、はやく、はやく、
「ああいうタイプに靡かないのか、意外だな。
簡単に釣られるヤツかと思ったら、あいつみたいに骨がある」
振り向くと、士さんがこちらを見ながら、片手でジャグリングでもするかのように、大切そうなカメラを浮かせるように、悠長に投げ続けていた。
「………なにが言いたいの」
「そういう女は強いってことだ。
自分の役割を見つけたら、相手が誰だろうと絶対に逃げない。」
褒めているのだろうか。
「それより、あまり距離を離すな。
『おまえがいた場所』を憶えちゃいるんだろうが、モモタロスがいないとイマジンを追いかけることができない。ついた頃には別の場所に行っているはずだ」
「どういうこと?」
「冷静に考えてみろ。
モモタロスたちの外見はジョーカーアンデッド、クリスの仲間といい勝負だろ。
契約相手のイマジンも同じくらいの外見で、おまえの記憶通りの場所と時間にやってきたなら、その場にいた“おまえ”も親も、周りの連中もびっくりして逃げる。
だったら、テロリストの連中も逃げるんじゃないのか?」
ようするに。
相手がジョーカーを怖がって逃げるのと、同じことが起きるってことで。
「………あ、そっか。
みんなが一斉に動いたら、みんなに紛れてわからなくなる?」
「正解、なかなか悪くないな。
だから、モモタロスの鼻が頼りになる。
そろそろ来るはずなんだが、……やけに遅いな。トイレか?」
「トイレなら、もう行ったはずだけど……」
デンライナーの扉が開き、モモタロスが出てくる。
「おう、待たせたなディケイド。
栗女! せっかくだ、面白いもんを見せてやるよ」
おもむろにモモタロスが取り出したのは、定期入れと……ベルト?
「なんだ、もう変身するのか?」
「あたりまえだろ。
亀に言われるまでもねぇ、時と場所は弁えるってこった!」
ベルトを巻きつけ、赤いボタンを押す。
突如デンライナーの駅発車メロディが流れ出し、
「俺、変身。」
『Sword Form』
バックルに定期入れをかざすと、駅発車メロディが止まる。
まるで駅に入る時のような、ICカードを通す素振りに似た動き。
電車が発進した時の走行音が鳴り響くと、モモタロスの全身を砕けたガラスのようなものがまとわりついて行く。そこから組みあがるパズルのようなものは、骸骨を思わせる白黒のアーマー。
虹色の線に囲まれたアーマーは、後頭部から桃のようなバイザーを移動させ、いきなりまっぷたつに割れてから、トンボかなにかの複眼じみた形状へ変わる。
うん?
「………モモ、タロス?
桃が割れる? ……えっ、
「おっ?
よくわかってるじゃねぇかよ。そういうこった!」
やがて虹色の線を走るように現れた、無数の赤い物体がアーマーと合体。
完成したボディアーマー。
モモタロスは親指で自分自身を示し、
「俺、参上っ!」
そこから歌舞伎の構え……みたいなポーズを決める。
あ、なんかわかった。モモタロス、こういうのが好きなんだ。
「おー……かっこいい、かも?」
「ちょっと待て、俺のはどうなんだ」
「痛そう。あと五月蠅い。」
どこかから、息を噴き出したような音が聞こえる。
周りを見渡してみる。……おかしいな、だれもいない。
「どうだ、ディケイド!
これが俺様のクライマックスな格好良さってわけだ。悔しいか、えぇ?」
「今はそれどころじゃないだろ。
早く行くぞ、あそこにおまえがいたんだよな?」
なんとなく、士さんのこともわかってきた気がする。
毎回カメラを持っているから、なんとなく距離がある気がしたけど。
たぶん士さん自身は、けっこう繊細なひとなのかもしれない。
「………うん」
だって、自分の、ええと、変身だっけ。
それを聞いたのに、もう話を切り上げようとしているんだもん。
「バイクに乗ったほうが早いな。モモタロス、行くぞ」
「おう!」
デンライナーの先頭車両が開き、バイクが飛び出してくる。
そのバイクに追従するように、陽炎のように現れた銀色のオーロラからディケイドの顔に似たバイクがやってくる。え、なにこれ、どういうこと。
「また機械が勝手に動いてる………!?」
「あ゛? 別にいいだろ」
「ほっとけ、お国柄の問題だ。
……で、相乗りするなら、どれがいい?」
そんなことを言われても。
どっちも勝手に動くバイクだ。マシなの、は。
「………じゃあ、士さんで」
「よしっ!」
「ちえっ。ま、いっか。
振り落とされないようにしろよ」
わたしを乗せて、走り出すバイク。飛び去るデンライナー。
ふたりのバイクの早さなら、きっと間に合うはず。
きっと、ジョーカーを助けられるはず。
「じゃ、ボクたちも行きますか」
「せやな。クリスも行ったし、もうええやろ」
「よーし……そいつ、一緒にぶったおそうよ。いいよねぇ? 答えは聞かないよ………!」
その二輪の走行跡を、みっつの光球が追いかけていった。
特撮【仮面ライダー電王】のブルースBGMいいですよね。
最近、みなさんの「これ好き」が楽しいです。
ありがとうございます。