鳳を射ち落す日   作:ちぇばっそ

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ティラントーが立ちあがる日?

「6号機は期待できそうだな!!」

 

 『施設』の工房ではティラントーの部品を用いてティラントーの修復を行い続けた。

 認識のすり合わせを長時間行ったところで、補助腕(サブアーム)蓄魔力式装甲(キャパシティブレーム)綱型結晶筋肉(ストランド・クリスタルティシュー)の特性を実感を持って理解しなければ製造過程でミスが起きる。

 まず1号機は酷いものだった。接合方法が悪く結晶筋肉(クリスタルティシュー)が装甲を吹き飛ばす、照準と補助腕の動作が一致しない、結晶筋肉の構造の変化に伴い銀線神経(シルバーナーヴ)の使用法が変わり歩行さえできない。複数のミスが複雑に絡み合ったせいか操縦桿を一定以上の速度で操作すると瓦解する。仕方がないので通常の結晶筋肉を所々使い無理やり動かしたのだ。

 技術の問題、ティラントーの構造に対する理解度の不足、士気の低さといったものがティラントーの膝をつかせたのだ。

 

「鞭打って鍛冶師を働かせようたぁ良い度胸だったよなぁ!!」

 

 『施設』の地位の低い騎操鍛冶師(ナイトスミス)は攫われて来た人物が多い。さらに『施設長』の人使いは荒いうえに給料が出るわけでもない。その上で作った幻晶騎士(シルエットナイト)の用途さえ教えられていない。失敗すれば文句だけが出る。これで士気が上がるわけがない。

 しかも高い技術がある騎操鍛冶師は別の部署に連れていかれて帰ってこない。

 士気が上がらなければまともな作品ができるわけもない。事実ミーシャンが『施設』に訪れた時はティラントーの解析結果を応用したナードナックの強化にさえ戸惑っていた。

 

「ナタルー、どうだー、酒と菓子は?」

「その件についてはもう……」

「うるせー、薄いエール、不味いクッキーなんざ寄越しやがって! 無いよりマシだからもう少し待つが、改善されなきゃ反乱起こすぞ!?」

 

 騎操士(ナイトランナー)ながら現場監督じみた真似をさせられているナタルを脅し、改善の要求を聞く気すらない構成員は徹底的に殴り倒した。『施設長』も殴った。そしてある程度の自由裁量が認められなかった場合は施設の破壊を行うと脅した。

 自由裁量を勝ち取ったミーシャンは徹底的に待遇改善と、施設の眼鏡に合う幻晶騎士の完成の暁には解放を確約させた。そして職員たちにはティラントーを作る意義を説いた。ティラントーに対する夢を説いた。反乱の訓練もした。

 

「はぁ、反乱起こしてもいいけど、こっちも皆殺しにしなきゃいけないぞ?」

「お前、誰が作った幻晶騎士に乗ってると思ってるんだい? 信頼に応えないと1月後に急に壊れる不良品納品しちまうぞ!?」

「なんでお前そんな乱暴なのに繊細な幻晶騎士作れるんだよ?」

 

 何よりナタルや施設長に恐れず噛みつくミーシャンは一定の信頼を得て、チームはそれなりの士気を保っている。

 そんな状態で作られた2号機はかなりマシになった。それぞれの新技術への理解も悪くない。しかしまだ不慣れな点も多く、全体的な調整の粗さが目立つ。一方で補助腕周辺の操作性がとにかく悪いことが判明した。

3号機で遂に全体が綱型結晶筋肉になった。そのおかげで装甲の不安定性がさらに増している。 しかしナタルでもまぁまぁ動かせる。

 

「いいかいナタル。ティラントーは紳士なんだよ。動く要塞だ、敵の法撃も剣撃も弾き返し、着実に歩を進める戦場に打ち込む楔だ。その楔が、後衛を万全な状態で進ませるんだ。そしてこの場合、後衛に最適な幻晶騎士は何か、誰か解るか?」

「汎用性に富んだナードナックでしょうか!?」

 一人の騎操鍛冶師が作業をしながら答える。

「んなわけねぇだろ、頭に猫でも飼ってんのか!? 前衛がティラントーであれば、後衛もティラントーだ!」

「じゃあ構造を変えるんですか?」

「ティラントー自体の構造は変えない。前衛と後衛の役割を持たせ、最適な装備を与え、魔力消費を少しでも抑えるんだ。最終的に全機の圧倒的質量で突撃すれば大概の敵はなんとかなる!」

「お前それやってジャロウデクは負けたんだろ?」

「確かに『鬼神』にゃあ勝てねえ!!!」

 ミーシャンはナタルに拳を振り上げるが、ナタルはそれを右手で捕らえる。

「流石にアタイの拳骨は慣れたか、よしよし、順調に『赤鬼』の騎操士になってきたな!」

 ミーシャンとナタルは互いに笑みを滲ませる。

「どうも。次こそは俺のシラージュが、お前のティラントーを討ち倒すから精々良いティラントーを用意しとけよ?」

「安心しな。『双剣』や『馬』ならティラントーの発展で十分に対応できる! もしティラントーを『赤鬼』が退治できりゃあ、アンタ達の要求する水準にゃあ達してるさ!」

 

 ミーシャンにとって設備があればティラントーの製造はそう難しいわけではない。

 しかし魔導演算機(マギウスエンジン)は完全に領域外であるため、回収されたものをそのまま流用するしかない。ミーシャンの仕事はそれ以外の部分と騎操士を完璧に仕上げることだ。

 

「5号機ちょっと修正するぞー! ちょっと手が空いてるやつ来い!」

 ミーシャンが5号機の前まで行き、脹脛(ふくらはぎ)部分に爆炎系統の魔法を放つ。そして、全力で殴りつける。それをひたすらに、繰り返す。稚拙な溶接を強化魔法をかけた鉄拳でやり直しているのだ。

 

「前の機体もこの辺吹き飛んだろー、この辺は結晶筋肉量が増えることもあってとにかく頑丈に作ってやらなきゃだめだ。ティラントーはな! 紳士なんだ。この厚い装甲はアタイ達を確実に守り、後衛を守り、拠点を守る。逃げられはしないが、それこそが力だ! 逃げられない! そう思った相手は慢心する。追撃してくる、だがコイツの装甲があれば増援が来るまで時間は稼げるさ! 増援が居ないなら出力勝負で道連れにできる! 万能じゃあないか! 高速戦闘は苦手な面もあるが、だからこそ実は熟練の騎操士以外にも戦術を組み立てやすいという側面がある。いいかい、ティラントーに身を委ねれば最低限の戦果は保証されるんだ。アタイみたいなボンクラな騎操士を立派な戦士にしてくれる。つまりこれはウェディングドレスでもあるんだよ。戦場で強い男と共にあることを許してくれる、強さを魅せてくれる。装甲、パワーが、既存の戦術では出来なかった女の滑らかな動きにさえ必殺の力をくれるんだ、いい男を見つけたらティラントーに乗れナルヤ、ナルヤがいねぇなクソ。話がそれたが、弱点がある機体というのは敵の戦術を誘導できると同時に騎操士にある程度の扱いやすさを与えることもある。そしてティラントーはその弱点を覆すために同時に多数を運用させたわけだが、この戦術は本来どの幻晶騎士でも行うべきもので――」




特に文章中で説明されていませんが
黄金のシラージュの騎操士ナルヤ、赤いシラージュの騎操士ナタルの2名が居ます
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