鳳を射ち落す日   作:ちぇばっそ

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騎操士メラニー
レスヴァント・ヴィード


 元青銅爪(せいどうそう)騎士団員のメラニーにとって実戦用の幻晶騎士(シルエットナイト)はティラントーが初めてだった。ヴォラキーロでの訓練を経て初めてティラントーに乗ったときは胸が高鳴った。

 幻晶騎士、ひいては強い力は弱者を守るためにあるとメラニーは固く信じている。

 

「兄さんは正義の徹底が不適当です。騎操士(ナイトランナー)は諦めませんか?」

「いや、俺も騎操士になりた――」

「本当になりたいんですか? 学者気質の兄さんが前線で戦う騎操士になりたいわけないでしょ? むしろ家の跡継ぎは兄さんなんですから安全な後方にいるべきだと思うんですよ。メラニーは兄さんを敬愛しているからこそ、騎操士になるといっているんです!」

 

 そのために兄を説得し騎操士の道を諦めさせた。

 

「おいメラニー、お前はどうやってティラントーを受領された?」

「いや、あはは、ウチもウチなりに頑張ったんスよ?」

「上官に体でも売ったか? どうでもいいけどよ、俺より目立つような真似をしたら承知しねえぞ?」

 

 自分を見下す同期の態度にも耐えた。

 新型幻晶騎士ティラントーでロカール諸国連合、そしてクシェペルカを攻めるとお上が言い出した時には、毒でも盛られて狂ったかと思った。それは、正義ではない筈だ。世界の父(ファダーアバーデン)を蘇らせるにしても、攻める相手はジャロウデクに比べれば弱者だ。

 

 ティラントーの性能を知るとその決断も納得できた。今までの機体で複雑な過程を経た法撃がかなり簡略化された上に出力も勝る。今までの訓練はなんだったのか。これならクシェペルカも打倒できる。メラニーは力に酔った。ロカール諸国連合を叩き潰し酔いしれた。

 法撃しかできない臆病者等と同期に呼ばれてもなお酔いが誤魔化してくれた。

 

 その酔いを醒ましたのは塔の騎士ことレスヴァント・ヴィードの登場である。

 金色の案山子は鎧を纏い、無防備なティラントーに一方的に法撃を仕掛ける。

 メラニーの法撃支援がいくら素早くともその数倍の法撃を浴びせてくる。メラニーを馬鹿にした同期は蛮勇で接近を続け法撃を浴びて全壊した。大した力もないくせに無謀なことをするからだとメラニーは心の底から嘲笑った。そして塔の騎士を仰ぎ見た。

 

「あの幻晶騎士、欲しい。あれなら、もっと、戦果をあげられる!」

 

 自分にはあちらの方がより扱いやすいだろう。メラニーはティラントーにも劣る塔の騎士の機動性など知らぬのだ。

 自分をまっすぐにレスヴァント・ヴィードが見据える。不気味に思い目をそらすと、視線をそらした先には全壊に近い同期のティラントーがあった。そこで初めて、同期さえ助けるべき弱者だったと思い出す。

 味方が逃げるまでの時間を稼ぐ間、塔の騎士について思いを巡らせた。弱者だったクシェペルカが力を得て、国を取り戻すために立ち上がった。それはかつてメラニーが目指した騎士の姿だった。苦しむ民の為に戦う騎士。

 

 今まで自分は何を行ってきたのか、酔いは醒め怯えと後悔がメラニーを支配する。ティラントーという悪魔に誇りも正義も売り払っただけではないか。それでも役目を放棄はできず、塔の騎士達相手に法撃を繰り返し力の差を見せつけられる。それ以来メラニーの心を黄金の騎士が苛む。

 

 

 そして噂に聞いた黒顎騎士団さえ倒した鬼神が黄金の装甲を纏いメラニーを見下ろした時、死を覚悟した。正義は為される。そうあるべきだとメラニーは受け入れていた。

 レスヴァント・ヴィードが自分を殺しに来たのだ。

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