本日2話投稿します。その1話目です。
独自設定があります。
キャラのイメージが異なる可能性があります。
上記ご注意ください。
※約9000字あります。
「──お前ら、そんなに長いことあの岩場に居たのか」
2年近くも岩場で修行していた、と伝えてカイトに引かれながら。
G.Iから脱出した私たちが選んだのはパラスタ空港。
スワルダニシティーに一番近いGIの出口を選んだ。
「ん〜〜! あたしは帰ってきたぞ現実! まさか空港にも出れるなんてハイテクだね」
「ま、余計な手間が省けたって意味では良かったわね。それよか、さっさとホテルとってお風呂にしましょ。もー身体ベタついて最悪だわさ」
スワルダニシティーは『原作』でいうところの、選挙編の舞台。
もっと言うなら、ハンター協会のお膝元だ。
「ここならミザイも来れるんじゃないかって理由で選んだけど、どーだろね。相当上でやり合ってるみたいだから、中々難しいかもしんないわさ」
「あたし依頼受けるって事がそんなに大変なの?」
「うんん、個人的な依頼に関しては協会の審査部を通す必要はないからね。それとは別件らしいわさ。何やら副会長派が動いてるみたいでねー、その抑えに奔走してるって訳。損な役回りだわね」
「……あー、そっか。十二支んって会長派の筆頭だもんね。そりゃ茶々入れるかー」
「正確に言えば、副会長派が仕掛けてきてるみたいだけど、なんでまたこのタイミングなのかしらねー。ま、考えたって仕方ないわさ」
「そうだな。他二人のシングルに話は通せるんだろ? そっちを優先しよう」
「カイトの言う通りだね。出来ることからやらないと!」
「……っと、送金は今のうちやっとくか」
「おぉ、お金大事……じゅるり」
「……あんた、久々にダラシない顔になってるわさ」
スワルダニシティーでホテルを取り(金に物言わせて最高級のスイート取った)、久しぶりの紅茶に感動しながら香りを楽しみ、柔らかなベッドにルパンダイヴを決め、そのまま泥のように眠ってビスケに叩き起こされて食堂に行き(ルームサービスは頼まなかった)、三人で料理に舌鼓を打った。山のように積み上がる皿はフードファイター並みだったとだけ言っておく。
美味である。
一晩休んで次の日。
柔らかなベッドで快適な睡眠を久しぶりに味わったあたしは文明の素晴らしさを身を以って実感した。
でも。
「久々に柔らかいベッドで寝たから、なんか違和感すごいね」
「ま、すぐに慣れるわさ。それにハンター試験始まれば嫌でも硬い地面と仲良くしないといけないからね。ダラけるのも程々にしときなさいよ」
「う〜、そうだった。でも、今だけは……はむはむ」
「あんたの勝手だけどね。そうそう、カイトはどうするのよさ? この子が試験受けてる内は暇でしょ?」
「あぁ、色々考えてるが、ヨークシンに先んじて入っておこうかと思っている。下見の時間は十分にあると言っても限られてるからな」
「むしゃむしゃ」
「そーねぇ。そしたら、シングルの二人をさっそく呼んでおきましょうか。同じ意見になるかもしれないし」
「そうだな、早いに越した事はない。……そもそもどういう二人なんだ?」
「ずず──、けっぷ」
「実力は折り紙付きだわさ。あの
「さっそくアポイントを取れるか?」
「はぐはぐうまうま」
「問題ないわね。もう連絡は取ってるし、今日にでもこのホテルに呼べるわさ」
カイトの問いに対してビスケはあっけらかんとそう言った。
薄い笑みを浮かべたカイトが、短く「そうか」とだけ答えた。
その様子を横目で見ながら、あたしは朝食をこれでもかと掻き込んだ。
うむ、美味美味。
──で、その日の夜。
予定通りホテルに来訪したシングルのハンター二人がスイートルームに通され、リビングにある高級ソファーに腰掛けていた。
一人は大きな
どっしりとした座り方でソファーに体重を預けている。大味な無頼漢といった雰囲気だが、マナーが悪いような印象はない。
キセルを床に下ろさないのも警戒心の現れだろう。大雑把そうな見た目とは裏腹に、緻密な頭脳戦を得意とするハンターの一人だ。
もう一人は細身の男性。
フォーマルなスーツを着こなし、豊かな黒髪を額中央で左右に分けている。
メガネをかけて、スタイリッシュに決めている姿はいかにも仕事が出来そうな大人、という雰囲気を漂わせていた。
浅くソファーに腰掛け、両手を開き左右の5本指を体の前で絡み合わせている。
少し前傾でこちらを見据える瞳は鋭い。
生来のものだろう、と推測しても少し身構えてしまいそうな眼光だった。
あたしも、今朝のような気の抜いた姿は見せられない。
すっと背筋を伸ばして丁寧な『纏』を意識しておく。
ソファーに浅く腰掛けて、念のためいつでも動ける姿勢を保っておく。
あたしの左右後ろにビスケとカイトが各々楽な姿勢で立っている。
そんな環境で交渉が始まった。
「──さて、早速だが仕事の話をしようや。オレはシングルのハンターでモラウってもんだ。
「同じく、シングルのハンターです。ノヴと呼んでください。モラウさんではありませんが、仕事の話をしましょう。せっかく集まったのですから、有意義な話をしたいものですね」
二人の意思は仕事内容を聞きたい、と統一されてる。
それはそうだ。
ビスケから聞くに『幻影旅団』という話すらまだ通していない。
そんな状態でこの場に来てくれたのは、偏に
軽く唇を湿らせてから、あたしも話し出す。
「はじめまして。シングルのハンターであるお二人をお呼びできて嬉しいです。あたしが今回の依頼主である、ネオン=ノストラードです。もちろん、お二人の情報網なら既にご存知だと思うけど、ノストラードファミリーの娘です。さっそくだけど、お二人が気にされている仕事内容に関して、お話しする前に、後ろの二人の紹介をしても良いですか?」
にっこりと微笑んで続ける。
が、モラウが鼻を鳴らして続けた。
「余計な話はやめようや。お互いに時間の無駄だろ? そっちはダブルのビスケット=クルーガー。で、そっちはシングルのハンターでジン=フリークスの弟子のカイト、だろ? そのくらいは仰って頂いたようにご存知さ。重要なのはその先。これだけのメンツを集めてマフィアのお嬢ちゃんが何をしようとしてるのかって話だ。──くだらねー話じゃない事を祈るね」
「モラウさん、およしなさいよ。相手はまだ子供なんですから。とはいえ、大人の世界に足を踏み入れているのは事実。その点は容赦できませんがね」
「んで、だ。
ニヤッと笑みを浮かべるモラウ。
その笑みは同意を求めると言うよりは脅しを掛けていると言った方が適切な印象を受けるが、その程度でどうにかなる柔な精神はしていない。
あたしもニコリと笑みを返した。
「うん、そうだね。じゃあ、ざっくり言うね。でも、他言無用な話だから、ここで聞いた話は外部に漏らさない事。まずはそこを誓ってほしいな」
「はっ、どんな話が出てくるんだか楽しみで仕方ないね。……そして愚問だな。俺たちはプロだ。依頼人の情報は死んでも漏らさねェ」
「モラウさん。喧嘩腰で話しても仕方がありませんよ。……ですが、同感ですね。あなたが雇うのは一山いくらのボンクラではなく、プロのハンターです。守秘義務の重要性は理解していますよ。もっとも、あなたが信じられるかどうかは別の話ですが」
この二人ならそう答えるだろう。
そう予想した上での問答だったが、これも必要な作業。
何せ内容が内容だから、念のためでも確認しておかないといけない。
「うん、信じてる。じゃあ、話すね」
躊躇していない事を知らせるために間髪を容れず、一息だけ切って続ける。
「あたしたちが狙うのは『幻影旅団』。彼らのメンバーの念能力、次の襲撃場所と時期、拠点にするであろう場所の候補。全ての情報をあたしは握ってる。依頼内容は単純明快。『幻影旅団』のハントを、二人に依頼したいの。もちろん、背後の二人にも参加してもらう予定」
あたしの説明にも二人は動じる事はなかった。
それは驚いていないという意味ではなく、理解が及ばないといったような雰囲気に近い。
「……うん? オレぁ耳が悪くなったか。A級首の『幻影旅団』の話で間違いねェのか? お嬢ちゃんの妄想じゃなく?」
「……ふっ、にわかには信じがたいお話ですね。もし本当なら、さらに詳しい内容を伺えますね?」
明らかに信じていない反応。
というより突拍子もなさすぎて、内容すら訝しんでいるといった様子。
まあ、そうなるよね。
あたしみたいな小娘が急に『幻影旅団』の話をしてもすんなりと信じてもらえるとは思っていない。
でも、ビスケにもカイトにも任せない。
これは、あたしが依頼する事が重要。
お願いする立場なんだから、それが筋ってもんでしょ。
改めて決意を秘めながら、言葉を重ねる。
「その『幻影旅団』で間違いないよ。詳しい話をする前に、まず報酬から話すね。前金で50億。成功報酬はさらに追加で50億。即金で支払う用意をしてる。……ここから先の話はあたしのリスクをさらに上げるの。だから、可能なら引き受けてくれる前提で話をしたい。ダメかな?」
静かに二人に語りかける。
あたしが、冗談でこんな事を言ってるんじゃないってわかってもらうために。
出来る限り心を込めて一文字一文字を丁寧に話した。
彼らの、プロの心に語りかけるように言葉を紡いだ。
「……冗談じゃ、ないみたいだな。金と希望に関してはわかった」
モラウさんから、茶化したような雰囲気が消える。
──あたしが本気で依頼している事が伝わった。
そう思うと嬉しいけど、交渉はここからが本番だから気が抜けない。
改めて気を引き締め直す。
「だが、いくつか確認したい事がある。前金で50億って言ったな。そりゃ俺たち二人で、か?」
あ、しまった……。
これはただの確認でもあり、咎める言葉。
どちらとも取れる言葉の裏を取って実は二人で50億でした、なんて下らない茶番を防ぐための。
そして、あたしの失敗を咎めているのと同時に、わざわざ確認することでこちらの落ち度を帳消しにしようという、モラウさんの誠意でもある。
あたしがもっと正確に言えば良かっただけなんだけど……。
そこまで気が利かなかったのはあたしの失敗。
「ううん、一人50億。成功したなら二人で合計200億払う用意があるよ」
だから、明確に合計で200億という言葉を断言しておく。
失敗は取り消せないけど、挽回することは可能。
あたしの謝罪を込めた言葉に納得してくれたのか、モラウさんは頷いた。
「お嬢ちゃん、いくつだ?」
……たぶん、年齢のことだと思う。けど、質問の意図は掴めない。
少し困惑しながらも普通に答える。
「最近19歳になったよ?」
「……そうか。こりゃ、てめーで稼いだ金か?」
そう言ったモラウさんからオーラが迸った。
燃え盛る炎のような凄まじい『練』
口調を険しくさせて、言葉にも『練』を込めながらあたしに問いかけた。
……あ、そういう意味で聞いてたのか。
気が付いてむっとする。
なるほど、そうだよね。普通の19歳がこんな額を即金で出すなんてありえない。
マフィアの娘だから、親の金で、そして非合法な事で稼いだ金じゃないのか、と確認してるんだ。
……これは、あたしの提供した情報に対してジンさんが払ってくれた報酬の一部。
『原作知識』だけど、それも含めてあたしの能力だ。
ジンさんから貰った、正当な報酬に対して貶すと見做しても良いような言葉を言われて、黙っているほど、あたしは馬鹿じゃない。
だから、怒りも込めてしっかりと言葉にした。
全力の『練』で応えながら、一文字一文字、口にした。
「あたしの能力で稼いだお金。疾しいものは一切ない。断言する」
じっとモラウさんと視線を合わせる。
サングラスで見えづらいが、確かにその向こう側と視線がぶつかっている感覚があった。
絶対引かない。
そんな意思を込めてモラウさんと睨み合う。
あたしとモラウさんのオーラがテーブル越しに鬩ぎ合い、物理的な圧力すら伴ってテーブルがガタガタと揺れて、あたしの前の紅茶もカタカタと震える。
しばらくの無言が続き、そして。
モラウさんが膝をバシンと叩いた。
圧力が霧散し、続けてカラッとした口調で言う。
「……わかった! オレは引き受ける!」
ど〜んと、言い切ったという表情のモラウさん。
つい、きょとんとした表情をしてしまって、慌てて表情を取り繕った。
──ええ? なんで? 急すぎない?
表情を取り繕ったものの、急転する言葉についていくのがやっとだった。
モラウさんはそんなあたしに構わずに言葉を続ける。
「この先どんなヤバイ橋があろうが、この依頼中はお前さんに付いていってやる。……おいノヴ、お互い随分と高い評価が付いちまったもんだな」
すごく上機嫌な様子でモラウさんが言ったが、ノヴさんはメガネの位置を指で直しながら冷静だった。
「金額の多寡も依頼主の覚悟も、仕事とは関係ありませんよ。要はリスクとメリットが釣り合っているかどうか。それだけです」
「かー! こんなちっせえ嬢ちゃんが、オレの『練』に対抗してあんな良い『練』まで見せて、その上で有り金はたいて買ってくれるってんだ。俺は喜んで売るぜ」
「だから、詳しい内容を聞くまでは判断できませんよ。……言わんとしている事は理解できますが」
おどけたように両肩を竦めるモラウさんにもノヴさんは一切取り合わなかった。
しばらくやり取りを繰り返した二人はほぼ同時に、あたしへと視線を戻した。
モラウさんからは何故か親しみすら篭った視線を感じるが、ノヴさんの厳しい視線は変わらない。
あくまでも情報が先というスタンスは崩さない様子だった。
ノヴさんは、あたしが話すまで納得しないようだ。
出来ればここで協力の確約を得たかったけどしょうがない。
モラウさんもなんで協力得られたのかわからないし。
たぶん、あたしの『練』が気に入ったんだと思うけど……。
ノヴさんには効果がなかったようだし、先に話すしかないね。
「
覚えている限りの旅団の情報を話す。
ビスケとカイトには共有済みだったけど、二人も情報を確かめるように聞き入っている。
目の前のモラウさんとノヴさんに関しては、言わずもがな。
真剣な表情で、情報に聞き入っていた。
旅団全員の、把握している限りの能力詳細を『ヒソカ』を除いて全て話した。
そして把握している限りの、いつ、どこで、何をするのか。
余す事なく全てを話す。
話を進めるに連れて、モラウさんもノヴさんも深刻な表情となる。
特に能力の話をした後が顕著だった。
マチ、ノブナガ、ボノレノフ、フィンクス、パクノダ、シズク、シャルナーク、ウボォーギン、フェイタン、フランクリン、クロロ、コルトピ。
ノブナガに関しては予想。
ボノレノフ、フェイタンに関しては全容は把握していない。
それぞれのメンバーの切り札も、パクノダ以外は把握していないが、それでも十分すぎる情報量だった。
モラウさんもノヴさんも、あたしの話を聞いた直後からどんどん表情を険しくする。
そして、全てを話し終えた時、二人の表情は非常に険しいものとなっていた。
理由は想像が付く。
念能力をピシャリと当てる事。
行動の予想を完璧に立てられる事。それらの情報が如何に貴重で凄まじいものであるか、二人はきちんと理解している。
先ほど把握しているとあたしが言ったものの、実際に聞くと違うのだろう。
どちらも二人の想像を超えた結果が返ってきたのだと思う。
表情から、その様子が深く理解できた。
モラウさんが先に口を開いたが、口調は信じがたいと言いたげなものだった。
「……これ、全部、嬢ちゃんの能力で判明してんのか……? ……いくら何でも規格外すぎるだろ」
半ば唖然とした表情で、冷や汗すら額から垂らしながらモラウさんが呟いた。
あたしが話したのは『幻影旅団』の情報のほぼ全て。
『ヒソカ』に関してだけ情報は伏せたがそれ以外全部だ。
ノヴさんが引き継ぐ。
「……もし本当なら、ですがね。……しかし、100%の予知。……これほどまでの能力だったとは……。いえ、まだ当たっていると決まった訳ではない、はず」
二人とも困惑が色濃い。
ビスケですら、ジンさんですら、カイトも納得するまでに時間が大なり小なり掛かった。
だから、後押しをするためにあたしはペンを取る。
途中のお店で買った、鎌っぽい形のペンだ。
鎌の刃の部分が手の甲に引っかかるようになっていて、鎌の持ち手側の先端がペンになってる。
形が結構気に入ったのでこれから常用していこうと思ってる。
「じゃあ、もう一つの能力を見せるね。この紙に生年月日と名前、血液型を書いてくれる?」
モラウさんとノヴさんは顔を見合わせ、その後に紙を受け取って必要な情報を記した。
ひとまずあたしの指示に従うことにしたようだ。
(ヴィーちゃん、『占って』)
『ゔぃいいいい!!』
《
意識が飛び、腕が勝手に動く感覚。
《
内容は見ない。
見ないほうが当たる気がするから。
ささっと二人の前に紙を流して、あたしは目を伏せた。
「っはい! 占ったから見てみて。今日が11月20日だから、もう半分以上は終わってるかもだけど」
渡した占いを見て、モラウさんとノブさんはまた顔を見合わせた。
あたしが知る由もないが、そこには全く同じ文章が書かれていたからだった。
『天使を乗せた死神の、黄金を対価に願いをあなたは聞き届ける。
「……あー、オレぁ占いってのはどうにも苦手なんだが、意味わかるか?」
「なんとなく、ですが……。完璧とは言えませんね」
「あっ、あたし耳を塞ぐからね! あっちで話してね!」
あたし宣言通りに耳を塞ぎ、二人が結論を出すのを見守った。
モラウとノヴは頭を抱える。
二人とも占いとは無縁の生活を送ってきた。
偏屈な言い回しが好みではないモラウに至っては蕁麻疹が出そうだ、と冗談を言いながら身体を
『天使を乗せた死神の、黄金を対価に願いをあなたは聞き届ける。
モラウは頭をガリガリ掻きながらペンを片手に唸る。
手元の紙にはネオンの占いとその考察であろう乱雑に書かれた文字が散乱していた。
その中で重要な箇所に丸を付けて読み上げる。
「えーっと、わかった事を纏めるとだ。天使ってのはあの頭の上に乗ってる『念獣』のこと。『死神』は嬢ちゃんで、『黄金』は50億の事。『
「おそらく鏡写しになっていること。横並びになっている事を示しているのでは?」
「あー、かもな。で、『若葉』だが、こりゃ弟子って意味。んで、『老葉』と『若葉』が掛かってると考えりゃいいのか」
「素直に受け取るならそうなるでしょうね。私たちで全く同じ占いが出ました。つまり、私たちの弟子を呼んで、あの二人に付けろ、という意味でしょう。……待ってください。そうなると『水面』に関して鏡写しという意味合いで取るなら、同性とも考えられます。パームはビスケット=クルーガーに。ナックルとシュートはカイトにつけろ、と捉える事が出来ます」
「『耳を塞ぐ事はもっとお勧めしない』これはオレでもわかるぜ、話を聞けって事だろ? 『天使の鎌』ってのはなんだ?」
「天使は『念獣』、ネオン=ノストラードが『死神』。そこから連想するに、占いの能力のことでは? 『虚いやすい』は『移ろいやすい』と掛けていると思われるので、私たちが耳を塞げば、あの能力が失われ、誰かに移る。そう取れるかと思います」
「おいおい、さっき聞いたばかりだぞ。奪って使える能力をな。じゃあ、何か? 今月襲われる可能性があるって事か?」
「……いえ、そうとは限りませんよ。文脈から察するに、私たちが耳を塞がなければ回避できるという意味合いでしょうし、『虚ろう』ではなく『虚ろいやすい』ですから、可能性が上がる程度に考えたほうが良いでしょう。さらに未来の話かもしれませんね」
「あ〜〜〜、また身体が痒くなってきたぜ。つまりなんだ? オレとお前は依頼を受ける。んで、弟子を呼ぶ。つまり直訳するとこうか?」
『天使を乗せた死神の、黄金を対価に願いをあなたは聞き届ける。
>直訳
『念獣を乗せたネオンの、50億を対価に依頼を引き受ける。ビスケットはカイトの横に立っている。二人に俺たちの弟子を付けろ。男は男。女は女に付けろ。依頼を受けない事は絶対にお勧めしない、ネオンの念能力が盗まれる可能性が上がるから』
「まぁ、それで概ね問題ないでしょう。……先週分は見事に当てられてますし、100%の精度というのも
「……自動書記つったよな、あれ」
「制約のようですから、自分で書く事は出来ないでしょうね。……運命とやらの仕業、ということにしておきましょうか」
「かかかか、そんな曖昧なもん信じちゃいねーよ。オレはてめーの言葉に従って嬢ちゃんの依頼を受ける! それだけだ。ノヴはどうするんだ?」
「そうですね。その答えを伝えに行きましょうか」
ノヴとモラウは知らない。
占いの意味を後一歩考える余地が残っていた事を。
あくまでこれは、ネオン自身の占いではなく、彼らの占いである点を見落としていた。
つまり『虚ろいやすい』とはネオンが失うのではなく、彼らが失うと言う事。
そして『移ろいやすい』とは、彼らから
『天使の鎌』が、彼らの手から離れて、最悪の人物に渡るという事。
しかし、本来の意味を悟れずともそれは回避された。
ノヴもモラウも、事がここに至っては依頼を断る選択肢を思い浮かべてはいなかったから。
知らず最悪の事態を回避していたことに、二人が気が付くことはなかった。
気が付かなかった事が、幸運だったのか、それとも不運だったのか。
それは、彼らが潜む闇に出会った時にわかるだろう。
ただ一つ確かな事は、彼らが雇われたと知って。
どこかの副会長が残念そうに
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誤字報告お礼
『佐藤東沙』さん
『あんころ(餅)』さん
『青黄 紅』さん
『土屋 四方』さん
『路徳』さん
『kuzuchi』さん
『よんて』さん
ありがとうございます。
P.S
(下記は読まなくても問題ありません)
ミザイストムがパリストンをガードしました。
ノヴ、モラウがチャンスを逃しませんでした。
パリストンはニコニコ笑っている。