「──ええ、ええ! そうでしたか。いえいえ! とんでもないですよ! 教えていただいてありがとうございます! このお礼は期待していてください。私はこれでも義理堅いと言われていますから! ええ、もちろんです。では、何か異変があればまた教えてください。……そんな! 私なんて大したことのない人間ですよ。だからこそ小さな事も気になってしまって。……本当ですか! いやぁすごく助かります! ええ、ではまた」
ハンター協会副会長室。
別名サツ部屋と。そう呼ばれている部屋がある。
サツは札。『お金』という意味。
副会長側に付けば良い思いが出来るぞと揶揄した事から始まったその別名は、しかしこの部屋の主人からして歓迎するものであっても特に忌避の感情は湧き上がらなかった。
それだけ、自分に近づいてくる人間の意図が明確になってむしろやり易いとすら感じていた。もちろん、公に認める事はせず、この悪評で同情やら選別やらと有効活用しているのだが。
今日もとある報告を受け取った副会長のパリストンは、ニコニコと笑みを浮かべながら受話器を置いて、最高級の皮張りチェアーの背もたれに体重を預けた。
「──いやぁ、残念だなぁ。占いの能力だなんて、とっても魅力的なのに。……ビスケさん、カイトさん。モラウさんとノヴさん、ですか」
先ほど受話器で聞いていた事とは別件。
それらのハンターの情報を反芻しながらパリストンはニコニコと笑う。
「ネオン=ノストラード。ビスケット=クルーガーの経歴から考えていきなり彼女を弟子にするって違和感しかないですよね。何があったのかな? もしかして、彼女の性格的に見過ごせない情報を教えてもらったとか? 気になるなぁ。カイトさんはジンさんの弟子ですよね。ジンさんも一枚噛んでたり? でも、あの人が占ってもらってる姿は想像がつかないな。……モラウさんにノヴさん。うん、熟練のハンターですね。彼らはどこまで知って協力したんでしょうか? 教えてもらいたいですし、気になりますね。でも、プロ意識高そうなので諦めましょう。その代わり、よーく見て彼らが何をしたいのか見逃さないようにしないといけませんね。……せっかく会長がくれたおもちゃですし」
でも、とパリストンは続ける。
暗い、底知れぬ闇を瞳に潜ませて、パリストンは微笑んだ。
「未来が見える能力者……。うん、管理出来ないならすごく目障りだなぁ。それに全く面白くない。……場合によっては、退場してもらいましょうか」
ニコニコとキラキラと、いつも通りの笑みを振りまきながら、パリストンはまた電話を掛ける。
「あっ! ミザイストムさんですか? お忙しいところすみません、いえ。そんな! まさか! 私とあなたの仲じゃありませんか! 会長を慕う同じ十二支んの同胞だと私は心から思っています! 会長のためにも仲良くしましょう! いえ、先日の会議の時から少し様子がおかしいな〜なんて思ったりしまして──」