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女子会が終わって翌日。
『幻影旅団』討伐チームの日常が始まった。
「──さーて、さっそくだけど戦力的なバランスを取ったり、配置考えたりするわさ」
話を仕切るのはビスケだった。
年功序列と言うと、ビスケが鬼のように怒り狂うので誰も口にしないが、つまりはそういう理由だった。
基本的に戦術的なアドバイスを行うメンバーはモラウとノヴ、ナックルが主だったメンバーだ。
カイトは基本的に追従しつつ、疑問点、改善点があればポツポツと鋭く指摘する。
シュートは寡黙さを発揮してほぼ空気と化している。
パームはノヴにハートを飛ばす事に忙しいので戦力外。
ネオンは全くの素人なので、予知に関して一言二言付け加えたり、補足したり、質問があれば答えていった。
結果として。
カイト、ナックル、シュート組。(前線チーム)
ビスケ、パーム、ノヴ組。(サポートチーム)
モラウ、ネオン組に別れた。(撹乱、時間稼ぎチーム)
「ほんじゃ、こんな感じでフォーメーション組んでいくわさ。もちろん暫定的なものだから、ここから本番までの約9ヶ月間で変動する可能性もある。下見もまだだからね。それを念頭に各々連携の確認を行なっていくわ。この組分けの想定は、万が一バレてた時に備えて、『幻影旅団』と正面衝突する時のメンバーだわね。だから、弟子共はギリギリまで鍛錬を継続。疲れ切ったらあたしが能力で復帰させてあげるから、思う存分修行しなさいな。熟練者達は好きにしてもらっていいけど、可能なら弟子連中に付き合ってあげるか、作戦成功率上げるための何かを行なってほしいわさ。じゃ、解散〜」
「よっしゃ! カイトさん、さっそくで悪いんですけど、相手してもらえませんかね」
「……あぁ、わかった。だが、手加減は期待するなよ?」
「うっし! もちろんです! ガンガン遠慮無用でたのんます!」
「……その次は、俺の相手もお願いしたい。このままでは役に立てる気がしないので……」
「わかった、二人とも相手してやる。ビスケ、そう言う訳だが、ナックルとシュートの二人を借りて良いか?」
「はいはい、わかったわさ。呼んでくれたらささーっとクッキィちゃん出したげるわ」
「助かる。・・・いくか」
「うっす!」「わかりました」
前線組が部屋から出て行った。
スイートルームに設置してある《
見送ったネオンとモラウが顔を見合わせて、ニヤッと笑い合った。
「じゃあ、俺らもいっちょ闘るか。お互い能力の使用なしで闘ろうや」
「まっかせてよ! あたしの拳が火を吹くぜ!」
「かっかっか! おっかねェ嬢ちゃんだ!」
撹乱、時間稼ぎとは。
そう言いたくなるビスケだったが、本人たちが楽しそうなので野暮な真似はやめておいた。
「で、あたしたちは何かする? 何かするなら付き合うけど」
ビスケはそう提案したが、ノヴは首を振って答える。
「いえ、サポート組と言っても基本的には他のチームとの連携ありきですからね。各々で必要があれば各チームに合流すればいいでしょう。ですから今回に関してはパームの修行を見る予定です。……先日の醜態は記憶に新しいですからね」
ギロリと見下ろすノヴの視線に、パームはきゅんきゅんしながら頷いた。
「あっそう。じゃ、がんばってね〜〜」
良からぬ気配を感じたビスケは即離脱を決断する。
(ま、がんばんなさいよ)
容姿にも気を使い始めたパーム。
彼女に手を振って離れたビスケは、じゃあ自分は何を、と考える。
さすがに自分から言った手前、作戦成功に寄与する何かはやっておきたいが、これと言って思いつかない。
ふむ、ここは一つ、最重要である事をやっておこうかしらね。おほほほほほ。
取り出したるは好みの週刊誌。
《
おほほほほほほほ。
目の保養をしつつ、なんだかんだで一番最高級スイートルームを満喫するビスケだった。
とある日の会話。
「モーラウさん! 何してるの?」
「ん? あぁ、嬢ちゃんか。いや、ちょっとばかり仕事道具の調整をな」
「そう? でも昨日もしてなかった?」
「こういうもんは毎日やらねぇと鈍っちまう気がしてな。ま、ジンクスみてェなもんさ。そういや、嬢ちゃんが道具手入れしてんのは見たことねェな」
「えー、あたしにだってできるもん」
「かっかっか! そうだな、嬢ちゃんなら……『練』とか『纏』とか、占うってことになんのか。いっそのこと、ジンクスにしてみればいいんじゃねーか? 大仕事前は無償で占う、とかよ」
「……うん。それ、いいかも。なんかしっくりきた」
「こういう積み重ねがいざってときに信じられる根拠になったりするからな、意外とバカにできねェ」
「んー、それは仲間としての言葉?」
「いーや、これは1人のプロとしての言葉、だ」
「……そっか、うん。あたしもやってみよっかな」
「おう、そうしな。人も念も積み重ねってもんが大事さ」
「友情! 努力! 勝利! だね」
「なんだそりゃ?」
「あはは、ううん。なんでもないよ! ……ちょっと占ってくる!」
「おう、きぃつけろよ。必ず誰か付けていけよ」
「はーい! 言い出しっぺなんだから、今度モラウさんもついてきてよね」
「……あー。こりゃ余計な助言しちまったか」
「あはは、また今度ね。じゃ、いってくるから!」
「おう。……ま、いい気分転換になるか」
手入れを終えたばかりの煙管を口に咥えて、モラウは煙を吹かせた。
「カーイトー」
「……ん、ここだ。どうした?」
「急にごめんね。少し外に出ようと思うんだけど今って大丈夫?」
「護衛か、もちろんだ。……なにか予定があったか?」
「あはは、違う違う。さっきモラウさんと話しててね。そうだ、カイトにもジンクスってあるの?」
「……ジンクス? ……そうだな。あるにはあるが、オレは迷信深いんでね。そういうことは教えないようにしてるんだ」
「えー、いいじゃん。おしえてよー」
「無理だ。で、モラウがどうしたんだ?」
「ああ、そうそう。モラウさんとジンクスの話をしてね。お前にはないのかーって。だから、作りに行くの。ジンクス」
「……まぁ、お前が突拍子もないのはいつものことだな」
「それ、なんか諦めてない?」
「そうか? 気のせいだ」
「……そっか?」
「そういえば、ジンクスとジンさん……ジン=フリークスと似てるな」
「……確かに! 名前はそこからなのかな?」
「ははは、どうだろうな。だが、ジンさんなら運命とか定めなんか知ったことかって蹴飛ばしそうだが」
「あはは、間違いないね! ……じゃ、占いに行くから街まで付き合って」
「護衛はオレの仕事だ。プロとして仕事はこなすさ」
「ちょっと、それってあたしの護衛は仕事でもなければしたくないってことー?」
「……お前のそういうところが本当にビスケに似てきたな」
「えっ、うそ。それって喜んでいいこと……?」
「まぁ、いいんじゃないか?」
「カイトって意外とそういうところ適当だよね」
「…………」
「ほーら! はやくいくよー!」
「……はぁ、やれやれ」
青い帽子を片手で押さえて、ふぅとカイトは息を吐いた。
「ま、これも仕事だ」
帽子の影に隠されてカイトの表情は見えない。
颯爽と銀の長髪を靡かせてネオンの後を追った。
「よーし! さっそく占いの館はじめるよ!」
「……で、金額は決めてるのか?」
「ううん、無償だよ」
「……は?」
「だって、ジンクスだからさ。あたしのためだもん、お金なんて取れないよ〜」
「……お前がいいんなら、まぁいいか。顔は隠しておけ、余計な問題が増える。余計な噂にならないよう常に場所は変えろ。それが最低条件だ」
「わかった! さっそくお洋服と仮面買ってくるね!」
「……これは、確かにジンさんにゃ無理だな」
ネオンが服装と仮面を用意し、適当な机と鉛筆を用意して、ネオンの占い店は開店した。
「はーい、そこのお姉さん! 今なら無料で、一瞬で占ってあげる! どう? ──そっかー、また時間あるとき来てねー!」
「あっ、占い希望? うんうん、もっちろん! ささ、座ってー、ここにフルネームと生年月日と血液型ね、書いてね。じゃー、いくよー」
「あ、ダメダメ。占った内容は聞かないようにしてるの! でも、百発百中って言われてるから気にしてみて。詩の形だからちょっとわかりにくいけど、考える価値はあると思うよ!」
「おばあちゃんも? いいよー、もちろん! 名前とか代わりに書こっか? うん、そう。わぁ可愛い名前。さっそく占うね!」
「お兄さん、ナンパはだめだよー。占いのお店なの! ほら、次の人が待ってるからまたね」
「えぇ! 来月のハンター試験受けるの? それで、受けても大丈夫か知りたいのね。うん、もちろん! あたしの占いは危機回避に持ってこいだから、眠りとかの暗示が出たら行かない方がいいかも──来月って占えるっけ。ま、大丈夫でしょ」
最初は閑散としていたが、ネオンが通行人に元気に声を掛けるたびに、次から次へと引っ切り無しにお客が入るようになった。
それをネオンの後ろで壁に背を預けながらカイトは見守る。
笑顔で、楽しげに占い、お客と話すネオンを見る。
『幻影旅団』と戦おうとしているとは思えないほど、年齢相応の。
いや、年齢よりも大分幼く純粋な印象を受けた。
ネオン=ノストラードの本来の望みとは、こういった街中で何気ない占い屋を営むことなのかもしれない。
明るかった陽は段々と沈み、夕焼け色に染まり始めてもネオンの元気は衰えなかった。
精力的に。そしてそれ以上に楽しげに占い続けていた。
「……これが、特質系って奴なのかね」
知らず今まで以上にネオンを熱心に護衛している自分に気がつき、カイトは青い帽子をより深く被った。
まるで、微かに覗く口元までも隠すように。
《
『念獣』がその月に起こる出来事を4行詩で自動筆記する能力。
自動書記による4行詩という形式で予知を行う。
対象者に直筆で名前(ペンネーム・芸名などでも可)・生年月日・血液型を紙に書いてもらい、その紙に詩を書き込む。
(対象者がその場にいないと顔写真が必要)
悪い予言には必ず警告が示され、その警告を守れば予言を回避できる。
自らの未来は占えない。
本来であれば、9月に占うなら例え末日であっても9月の内容しか占えない。
しかし、能力に対する理解が深まったことで現在は多少オーラを多く消費するが来月を占うことは可能となっている。
それは最大で32日後に該当する月までであり、先々の日数に応じてオーラの消費量は跳ね上がる。
ただし、今月分を先に占っていた場合、来月分を占うためには来月に入るのを待つ必要がある。
時は移ろい1月7日。
第287期ハンター試験が開始される日が来た。
あたしは今日までの日々を振り返る。
ナックル、シュートとは仲良くなれた自信がある。
ナックルとは素の実力が近い事もあってしょっちゅう喧嘩してた。
お互いに笑みを浮かべながらの打ち合いが男同士の友情って感じで最高だった。
幸い性別に関して頓着がない様だったので助かっている。
シュートとの仲もたぶん悪くない。
頻繁にではないが、模擬戦もしたし、よく近くにいるので話しかけたりした。
その反応を見るに、勘違いじゃなければ、あたしに惚れていると思う。
・・・何かした覚えはないのに。
ま!あたしは可愛いからしょうがないね!小悪魔にはなりたくないので、出来る限り気を使っている。それがより惚れられる理由になってそうな気がするけど、うん。
たぶん大丈夫。
シュートはピンチになれば本領発揮するタイプだし、実はかなり頼りにしているのだ。
蟻編でのシュートは本当にカッコいいと思う。
パームは本当に可愛くなった。
この1ヶ月間でビスケの指導とあたしの金に物を言わせた物量戦で(5000万Jくらい使った)普段から化粧、スキンケア、マッサージ、食べる物や寝る時間などの生活習慣を改善し、劇的に変わった。
あのモラウさんとナックルとシュートが3人揃って、日に日に変化するパームに冷や汗を流すレベルと言えば、その凄さが伝わるだろうか。
もはや化粧なしでも可愛い。
元々顔立ちは整ってるもんね。
モラウさんとも正面から殴り合ってより理解し合えて仲良くなった。
能力あり(あたしは訓練のため禁止)での殴り合いだと消耗戦に持ち込まれて、《
勘で見つける、癖を見抜く以外はジリ貧だった。
そのお陰で不意打ち対策だったり、戦闘中の気の配り方に関しては非常にためになった。
……不意打ちに関しては、ヴィーちゃんを使えば良いだけの話ではある。
でも、クールタイムがあるから常に使うわけにはいかない。
だから、あたし自身の力も高める必要があるのだ。
ノヴさんはクールに受け止めてくれるので連携に支障はない。
いざとなれば《
もし『幻影旅団』と交渉をするとなれば最も重要になるのが逃走経路の確保。
瞬間移動可能な《
モラウさんの煙も重要ではあるが、即離脱できるのは強みだ。
万が一にもノヴさんに攻撃が当たらないよう、敵がこの位置にいる時はこう、というようなマニュアルもしっかり頭に入れた。
ビスケとは言わずもがな。
一番付き合いが長い事もあって最高の師匠だ。
目を合わせるだけで大体の事はお互いに察し合える。
……ただ最近、ビスケ以外と接するようになって、若干あたしの感性がビスケ化してるんじゃないかと悟る事が多々あったけど、これは良い影響なのだろうか?
ともかく仲はいい。
たまにご飯が食べたくなってお願いするが、しょうがなさそうな顔で作ってくれる。美味美味。
カイトともちょこちょこ話をしている。
ジンクスのために占いに出掛けるようになってから、どうしてかお互いの理解度が非常に深まった気がする。
あたしの話も聞いてくれて大人の余裕も感じる。
連携面ではあまり練習出来なかったが、人柄と実力は頼りになる事間違いない。
そうして。
原作は、ついに開始した。
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誤字報告お礼
『ヒオン』さん
『アント』さん
『路徳』さん
ありがとうございます
修正
>動物を占っていた事に関して
>原作に占えない明記が確認できたため削除実施