今日も今日とて占い師はがんばります   作:風梨

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この度はお騒がせして申し訳ございませんでした。

前回確認された方も再読推奨です。
裏設定であったヒソカの心情追記しております。

よろしくお願いします。

約9000字


原作開始!(修正版)

 薄暗い、周囲に太い管が張り巡らされている地下道だった。

 

 287期ハンター試験会場。

 何百人という受験生がすし詰めにされている。

 さながら監獄のようでもあり、張り詰めた空気は一切の油断が許されない。

 そんなハンター試験の実情を表している。

 

 そんな中。

 209番の番号札を着けた、この場に相応しくない雰囲気を纏った少女がいた。

 

 

 可憐な美少女だった。

 せめて目立たないようにと、壁の隅で腰掛けている姿はイジらしくも見える。

 

 色素の薄いシェルピンク(桜色)の髪色は癖っ毛であちこち跳ねている。

 髪色よりも濃いチェリーピンクのワンピースを着て、数日分の食糧などが入っているシンプルなナップザックを下げているのみで、武器の類は一切持っているようには見えない。

 特徴的なのは少女の頭に乗っている奇怪なシェルピンク(桜色)のぬいぐるみ。

 八の字につぶれた目をしたそのぬいぐるみが異彩を放っていた。

 

 

 例えるなら、ちょっとしたお出掛け。そう思わせるくらいの軽装。

 全身ピンク色の少女の服装は間違ってもハンター試験を受けに来る人間の装備ではなかった。

 迷い込んでしまったのかと、周囲がそう錯覚してしまいそうな程にこの場の空気にそぐわない。

 

 

 しかし、それが明らかな異常事態であると理解できない人間はこの場に居なかった。

 ハンター試験がそれほど容易く挑める場所ではない事は、この場にいる彼らこそが最も良く知っているから。

 

 その周囲の警戒を示すように、少女を中心としてぽっかりと円形に距離が出来ていた。

 誰も、少女と関わりたくないと言わんばかりに。

 

 そんな中で非常に珍しい趣味を持ち、それが理由でこの少女に声を掛けたことのある男がいた。

 その男の名前を『トンパ』と言った。

 

 

 太い管が張り巡らされていると言ったように、その管は座ることもできる大きさだった。

 

 周囲よりも少し高い場所にある管の上は目立ってしまう事を度外視すれば、周囲を見渡すのに過不足がない絶好の場所だ。

 トンパはそこに座って新しい受験生が来ないかと待っていた。

 新しい受験生にちょっとしたプレゼントをすることも、トンパの趣味の一環だったから。

 

 そして暇になったトンパがつい視界に映った少女を『チラリ』と見て、その少女と話した時の事を回想して身震いする──前に、チンと音を立てて新しい受験生がやってきた。

 

 

 それは『原作』を知っているものであれば、誰もが目にしたことのある人物たち。

 

 ゴン、クラピカ、レオリオの3人組だった。

 彼らは思い思いにこの場に来た感想を言い合い、そして『物語の始まり』を告げる人物であるトンパが、彼らに話しかけた。

 

 

 

 

 そんな、彼らを観察する一対の瞳がある。

 

 壁の隅でひっそりとしながら待っていた少女。

 209番の美少女だった。

 

 彼女の名前をネオンと言った。

 原作が始まる瞬間を今か、今かと待ち望み、前日は眠れぬほどの興奮。

 昨夜は最も仲の良いビスケにこれでもかと何が楽しみか語って聞かせた。

 

 返事は『あたしも試験官やりたかったのに……!! よぉくそんなに自慢気に話せるわねぇ!!?』と怒れるビスケの拳骨であったが。

 幸いにも拳骨で強制睡眠に陥り、睡眠不足にならなかったのは幸運だったのかもしれない。

 

 そこまで楽しみであった『新人つぶし』のトンパとゴン、レオリオ、クラピカが関わり合っているのを眺めていると、不意に視線を感じた気がした。

 すっと目を向けると特徴的なピエロが視界を横切った気がしたが、気のせいだっただろうか。

 気配のみを残して、得体の知れない視線は姿を消していた。

 ネオンが再び視線を戻し、そうこうして原作を満喫している頃。

 

 

 同じ空間で、1人の奇術師が『にんまり』と思い出して(・・・・・)笑みを浮かべた。

 

 

 

 時は少しだけ遡る。

 ネオンと『トンパ』のちょっとした遭遇劇だ。

 

 退屈。

 ヒソカがそれに気がついたのは、端的に言えばそういう状態だったからか。

 あるいはこの男であればどれほど他の事に気を取られていたとしても、『ソレ』の気配を取りこぼす事はないかもしれないが。

 

 いつも通りトランプで遊ぼうかとも思ったヒソカであったが、この時はたまたま気まぐれに歩き回っていた。

 理由は簡単。

 新しいおもちゃ探しの品定めだ。

 ヒソカの期待に応えられるほどの逸材はほとんどいない。

 しかし、だからといって探すことを怠ってしまえば、いずれは壊れてしまうおもちゃをいつまでも大事に持っておかなければならない。が、ヒソカはそんな殊勝な性格ではなかった。

 

(壊れる前に、新しいおもちゃを見つけておかないとね♥)

 

 おもちゃは壊れるもの。

 そういった前提がなければ至らない行動に、ヒソカはなんの疑念も持たない。

 それが、彼がヒソカ足る由縁であろう。

 気まぐれな奇術師は、今日もひっそりと笑いながらおもちゃ探しに勤しむ。

 

 しかし、彼が満足するほどの『おもちゃ』などそう簡単に現れるはずもなく。

 少しずつ積もる不満はヒソカの思考をより過激な方向へと導いた。

 

 

(うーん、ダメダメ。こんなんじゃ逆に萎えちゃうな♦︎……昂らせないと♥)

 

 昂らせないと、良いモノは見つからない。

 傍迷惑なそんな持論で、少しばかりの殺意をヒソカが見せた。

 

 そんな時だった。

 ヒソカの視界の隅にひっそりと映った少女に目を止めたのは。

 

 『纏』。

 それは念能力の技術の一つ。

 誰もが身につけられる技術ではあるが、習熟には才能と時間を要する。

 

 ただの『纏』でヒソカが目を止める事はない。

 中身が伴っていないなら、果実を育てる養分にすらなり得ないからだ。

 

 むしろ『纏』を覚えていない人材の中にこそ隠れた逸材は多い。

 つまり、ヒソカが目を止めたのは一重にその少女の『何か』がヒソカの心を惹いたからだった。

 

 素晴らしく丁寧で滑らかな『纏』ではある。

 『念』に対する強い理解がなければ到底得られない深みを見たヒソカは、しかしそれだけではないと一目で看破する。

 しばらく目で楽しんでいたヒソカであったが、それも長くは続かない。

 

(……う〜ん、()れったいな)

 

『何か』を感じ取る感性があっても、ヒソカは我慢強い性ではない。

 今より確実に大きな果実になるのなら、その限りではないが。

 

(少し、齧ってみようか……♣︎)

 

 

 ヒソカがそんな深々(しんしん)とした視線を向けていた時。

 スタスタと件の少女に近づいていく『四角い鼻の男』が現れた。

 

 ヒソカは不思議と邪魔をされたと思わなかった。

 面白いものが見られる。

 なぜかそう確信したヒソカはひっそりと息を潜めて見守った。

 

 

 

 

 ヒソカが味見をしようか、というまさにその時。

 隅っこに座ってぼーっとしていた209番にトンパが声を掛けたのはタイミングとしては偶然であり、トンパとしては必然だった。

 トンパが新人を見かけて声を掛けないなんて、相当に特殊な場合(301番とか)以外にありえない。

 あんまりに美少女オーラを発してるもんだから、若干の気後れはあったが、トンパは普段通りに声を掛けた。

 ──つもりだった。

 

「よぉ、そんな隅っこでどうしたんだ? ありえねーとは思うが迷い込んじまったか? ははは」

 

 今思えば油断していた。

 迷い込んだのか、なんて見た目がヤバイ奴には絶対しない声のかけ方だ。

 

 トンパが後ほど回想するなら。

『返答は、まじで今思い出してもしょんべんちびりたくなるくらいの圧力だった。何が起きたかまじでわかんなかった』

 そう恐れ混じりに呟くほどだった。

 

 

 ぼーっと下を見てた美少女が視線を上げて、トンパと目が合った瞬間。

 途轍もない圧迫感が少女から吹き出してトンパに襲いかかってきた。

 

 それはいわゆる、ハンター試験を象徴するキャラクターに出会えた喜びの『練』というものだったが、トンパがそんな事を知る由もない。

 手に持っていたジュースを思わず取りこぼす程に狼狽したトンパだったが、その少女は幸いといっていいのかすぐにその圧力を引っ込めた。

 そしてニコリと笑って言った。

 

「わあ! あたし、あなたに会いたかったんです!」と。

 

 それは殺意ですか? と問いかけたくなったトンパだったが、もはやそんな事を気にしている余裕はない。

 関わる。絶対。ダメ。

 

「失礼しましたぁぁぁあああああ!!!!」

 

 ドップラー効果を残しながら凄まじい速度で逃亡したトンパを責められる者はいない。

 無能力者が念能力者に『練』を仕掛けられて(害意はなかったが)そのまま話し続けろというのは過酷(かこく)すぎる。

 例えるなら、猛獣が牙を出して唸ってるのに一般人が手を差し出すようなものだ。

 絶対に逃げる。間違いなく。

 そんな訳で、声を掛けただけで逃亡した。

 なので人となりは全くわからないが、トンパがこの試験中に決めた一つに、あの少女には絶対関わらないという項目が追加された。

 

 

 そんな光景を見ていた奇術師は。

 

 少女が発した輝かんばかりの『練』を目にして。

 

 股間を光らせていた。

 

(イィ……♥イィよ。キミのそのオーラ。『纏』の内にそんなに素晴らしいオーラを秘めているなんて、ズルいじゃないか。ボクでなきゃ見逃しちゃうところだった♦︎)

 

 昂る。

 これ以上ないほどにまでヒソカは昂った。

 それはヒソカが深くネオンを理解した事に起因する。

 

(ダメダメ。静めなきゃ……まだまだ()るには早すぎる♦︎)

 

 ヒソカはそのたった一度の『練』でネオンの秘める覚悟のほぼ全てを読み取った。

 異常極まりない、変態的な所業という他ない。

 

 

 譲れぬ確かな物を守るため、少女が類稀な覚悟を持って、たった1人相手に牙を研ぎ、オーラを練っている事。

 

 その相手が今の少女でも勝てるか分からないほどに強敵である事が、不安と自信でブレンドされたオーラから汲み取れる。

 

 そして少女の実戦経験があまりにも薄いという事。

 

(それだけのオーラ。素晴らしい師に巡り合ってるキミは幸運だ♥でも、まだまだキミは美味しくなる……♣︎戦いはダンス。ステップを学んだだけじゃあ、一流の踊り手にはなれない♦︎)

 

 戦闘経験。

 少女がその積み重ねを経た時に至るであろう到達点を想像する。

 素晴らしい使い手に育つだろう。

 理由はわからない。だがヒソカは確信する。

 

 それだけでも十分すぎるほどの喜びだというのに、ヒソカはさらに加速した。

 

(キミが想いを寄せる人物。その人物を打倒した時、その自信は飛躍的にキミをレベルアップさせるだろう♥それこそ、桁違いなほどに♦︎)

 

 キミを食べるなら、きっとそのあと♥

 そんな未来を想像して、ヒソカは周囲の目も憚らず絶頂した。

 

 ヒソカは知らない。

 その最高の成長を待つ事は極めて困難かつ、限定的であることを。

 ヒソカは知らない。

 嘘を交えてネオンに近づいた後。抑えていたオーラすら漏らし。『人物』を知って進んで予定変更するという事を。

 

 ヒソカは知っている。

 それでも、最強は自分であると。

 

 「……♥」

 

 少し先の未来でどのおもちゃから壊すのか、それはヒソカにもわからない。

 彼は、非常に気まぐれだから。 

 

 

 

 

 その後の話。

 ヒソカが『昂り』を大事に大事に取っておいたのに、肩をぶつけられたために『ついつい』殺して少し冷静になってしまったり。

 トンパに騙されかけたゴン、レオリオ、クラピカがジュースを捨てたり。

 キルアがトンパに話しかけて下剤入りジュースを美味しそうに飲んだり。

 

 ネオンは呑気に『にっこにっこ』と微笑ましげな笑みを浮かべながら彼らを見守っていた。

 

 残念な事に。

 いや、むしろ気を使ったのか。

 寒イボを立たせた『念獣』がネオンにちょっとした危機に関して予知を告げる事はなかった。

 あまりにも、遠く分岐した先。

 未来での可能性であったがゆえに『念獣』の能力では背負いきれない。

 

 そしてハンター試験第一次試験。

 いわゆる『持久力テスト』が始まった。

 

 

 

走る。走る。走る。

受験生たちは試験官サトツに先導されるままに、地下道の暗い道をひた走っていた。

ネオンが途中でゴンとキルアの初対面を観察し終えて『にんまり』しながら見守った後。

 

『ドドドドド』と地鳴りのように響く足音は一向に減る様子もないまま、三時間が経過した。

 

レオリオとゴンが織り成す後方の友情ターンが始まり、そして観察し終えたネオンは感嘆の息を吐いた。

 

(レオリオを助けたいけど、助けることを望んでいないと悟って真剣な表情で待つゴン・・・。内心でどんな心境だったのか、限界すら超えて走り続けるレオリオ)

 

 ぶるりと背筋を震わせた。

(ビスケの友情壊したいって気持ちわかんない。こんなに良い物ならずっと眺めてたいのに・・・)

 

師匠から嗜虐性は引き継がなかったネオンが、それでも十分に変態性を滲ませながらそう思った。

 

 

 

 

しばらく時間が経過し、ところ変わってニコルは必死に走っていた。

罵詈雑言にも負けず、足を動かす。

しかし彼の心は容易にその言葉に取り憑かれ、その志を折った。

 

 

 そんな新人ルーキーの姿を見て、『新人つぶし』のトンパは嬉しげにニヤッと笑った。

 

 ──ハンター第一次試験。80km通過。

 ──脱落者1名。

 

 

 

「──ありがとよ、上出来だ」

 

「おう」

 

 トンパがそう声をかけて金を渡したのはアモリ3兄弟だった。

 先ほどのニコルに対する仕打ちは全てトンパの仕込み。

『新人つぶし』の面目躍如(めんもくやくじょ)だった。

 

 汗をかきながらもトンパの表情に陰りはない。

 むしろ趣味を完遂できた事で調子が上がってきたくらいだ。

 他人の不幸は蜜の味。

 それが才能がある若人であればなおのこと。

 トンパは先ほどのニコルの醜態を思い出し、またニヤリと笑った。

 

 

 1名を取り残し、受験生は地下道を駆ける。

 

 

 

 

 それに気がつき、驚きの声を初めて発したのは、294番のハンゾーだった。

 見上げる視線は高く高く昇っており、視界に映るさらに上方を見ざるを得ない驚きがあったことを物語っていた。

 続ける様に周囲の者たちも騒めき出し、騒然とした空気が満ちた。

 

 

『ヒュオオオオオ』

 

 空気が通り抜ける寒々しい音が地下道に響き渡る。

 どういった意図で作り出したものか、あるいはこれも『念能力』であるのか。

 太い管の通った、上へ上へと続く階段の並んでいる大きな円形の空洞が、受験生一同の前に姿を現した。

 

 サトツは階段を登る前に微かに振り向き、軽い調子で受験生たちを挑発した。

 

 

「さて、ちょっとペースを上げますよ」

 

 前言通りにペースを上げたサトツは眼前の永遠とも言えるほど長く続く階段を2段飛ばしで登っていく。

 スタスタと歩く姿は普通に歩く様な感じで、その超人の姿に階段を見上げた時と同様に受験生たちは騒めき、しかし置いて行かれぬ様に走るペースを引き上げた。

 

『第一次試験、第二段階到達』

 

 

 

 

 

 そんな彼らに続いて階段を登る人物の中に、あの209番の美少女も居た。

 頭にぬいぐるみを乗せたまま、トントンと軽々と階段を登る姿はまるで散歩でもしているかのようで、疲れなど微塵も感じていないようだった。

 涼しげなチェリーピンクのワンピースを靡かせる、そんな少女に近づく一人の変態が居た。

 

「やぁ、初めまして♥自己紹介してもいいかな♦︎」

 

 44番の奇術師ヒソカ。

 ピエロメイクにオールバックの髪型。

 顔立ちは整っているはずだが、不気味な印象を真っ先に与えるせいで、イケメンである、とかそういった印象は全くない。

 少女の真横に並んで見下ろす姿は、しかし、ヒソカを知る者であれば『誰だお前』と力の限り叫ぶであろう、爽やかな笑みを浮かべていた。

 

「…………」

 無言で訝しむ少女に対してヒソカは続ける。

 

「う〜ん、警戒されちゃってるかな?安心しなよ♠︎いまキミと()る気はないから♦︎」

 

 ニヘラと笑う姿は確かに悪意はないように見える。

 だが、その本質は邪悪そのもの。

 快楽殺人のためならどんな苦労も厭わない。

 理性の箍の外れた狂人こそがこのヒソカの本性だった。

 それを少女は『知って』いる。

 

 ヒソカに話しかけられて、冒頭で思い浮かぶ感情は?

 恐怖。錯乱。

 否、ネオンの精神はそんなに弱くない。

 

 警戒をする。

 正しい反応ではあるが、ネオンはその反応もしなかった。

 4年間。その期間の修練はネオンの精神を非常に強靭にした。

 数多の経験を積み、当初緩み切っていた精神は現在高い水準にある。

 加えてネオンの勘は襲われないと断言している。

 ゆえに違う。

 

 では、喜ぶか。

 

 好きな原作キャラに会えたから?

 確かにネオンはヒソカのことを好んでいた。だが、あくまで作品の登場キャラクターとして。

 ビスケ、カイト、モラウ、ノヴ、ナックル、シュート、パームも全員好きだ。

 ……一応、トンパも。

 なので、飛び上がるほどの喜びは既に味わっている。

 だから、これも違う。

 

 では、どんな感情か。

 ネオンが取った行動は至って、自然体で。

 

「くすっ、なーに?口説き文句だとしたら、随分と色気がないね。ヒソカさん」

 

 そして『ジョーカー』を待っていたからこそ、余裕で挑発的な行動だった。

 ヒソカは微かに目を見張ったが、すぐさま元の笑みに戻した。

 

「……おやおや♠︎手厳しいね。もう知ってるみたいだけど♦︎ボクはヒソカ」

 

「あたしはネオン。よろしくね、ヒソカさん」

 

「うん、よろしく♣︎ で、キミみたいな子がどうしてハンター試験なんかに来てるんだい? ──あとヒソカでいいよ。なんだかむず痒いし」

 

「うん。……キミみたいな子って、どーゆー意味?」

 

「簡単さ、キミ。使えるだろ?♦︎」

 

 少し面白味を帯びたヒソカの言葉に、ネオンは薄らと笑みを浮かべた。

 

「あは。そーゆー意味ねー。うんうん使えるよー。それで?」

 

「キミは、たった一人を強く想ってる♥凄まじいほどの執念で追いかけてるんじゃないかな?」

 

「……すっごいね。そこまでわかるんだ?」

 

「ビンビンに伝わってきたよ(・・・)♥たった一人のために練り上げたオーラから……ね♠︎くっくっく」

 

「……ヒソカって変わってるって言われない?」

 

「うん、よく言われる♥」

 

「正解だから言っちゃうけど、そうだよ? ……でも、まさかオーラだけでわかっちゃうとは思わなかったなー」

 

「自分でいうのもなんだけど、ボクは特殊だから♦︎」

 

「うん!本当に変態だと思う」

 

「う〜〜ん、手厳しい♠︎でも。気が強いところも、いいね」

 

「それで──」

 

「し──っ♣︎」

 

 ネオンが口を開こうとして、ヒソカが人差し指をネオンの形の良い唇に添えた。

 

「いま、良いところなんだ♥……耳を澄ませてごらん。『凝』は出来るだろ?」

 

 くっくっくと笑うヒソカに従って、ネオンは素直に『凝』をした。

 目を見開いた。

 それは『原作』でも聞いたことのある、有名な場面だったから。

 ヒソカに続くように、ネオンもにぱーっと輝くような笑みを浮かべ、そして頬に手を当てて『いやんいやん』と蕩けるような笑みを浮かべた。

 

 周囲は、それぞれの笑みを浮かべる奇術師と占い師にドン引きした。

 

 

 

 一方でその頃。

 死ぬ気で走る決意を決めたレオリオが階段を見たと同時に上着を脱ぎ捨てて上半身裸になるという暴挙に出ながらも、なりふり構わず全力で疾走していた。

 その表情に余裕はないというのに、吹っ切れた顔はどこか充実感すら漂っていた。

 

 ハッハッハッハッ

 

 滝のような汗を流し、両腕をテンポ良く振り、両足をダダダと駆け抜けさせる動きは冷静なクラピカから見ても心配になる姿だった。

 つい、といった様子で声をかける。

 

 レオリオ大丈夫か、と。

 

 その後のやり取りに聞き耳を立てた2人が笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ね。面白い話だったろ?♦︎」

 

 そんなレオリオとクラピカの会話を楽しんでいた二人の人間が居た。

 ネオンと呼ばれるピンク色の少女と、奇術師ヒソカだった。

 

 ニヨニヨと頬を緩めるネオンはヒソカの問いをガン無視した。

 耳をすませば、ネオンが呟いていた。

 それはもしかしなくてもビスケの影響を多大に受けていた。

 

「あぁ、男同士の友情。すっごい素敵……。未来のために生きるレオリオと過去に囚われてそれでも進むクラピカ……。二人の友情……。まじ大好物。最高に幸せ……」

 

「…………」

 

 沈黙にドクロマークを浮かべそうな表情のヒソカ。

 意外とこの子、ボクと別系統の同類かな? 

 ヒソカにそんな失礼なことを思われているとも知らず、ネオンはトリップしたまま中々戻ってこなかったのでヒソカがもう一度続けた。

 

「ネオン?」

 

「……はっ! なに!? なになに!? どうかした?」

 

「ううん、なんでも♦︎……あぁえっと、さっきの話を続けようか」

 

「あ、そうだね、ごめんね。えーっと、そう。……それでヒソカが声を掛けてきたのは、あたしのオーラがたった一人を想ってたから。だからってなんで? あたしが誰を想ってても関係なくない?」

 

「重要なポイントは、ボクが強い人を探してるってところかな♠︎」

 

「……はっはーん。なるほどね!あたしのオーラを見て、新しい獲物が見つかるかもって思ったんだ?」

 

「うん♥でも、よくわかったね。ボク、そこまで話してないんだけどな♣︎」

 

「んー、……乙女の勘♡」

 

「なるほど、それならしょうがないね♦︎……で、教えて欲しいな。キミの獲物って、いったい誰なんだい?」

 

「んっふっふ。ヒソカ、ちょっとこっち来て」

 

「ん? なんだい?」

 

 ちょいちょいと手招きするネオンに誘われるまま、ヒソカは耳を近づける。

 両手で唇を挟んで、ヒソカの耳にだけ届くようにひっそりと呟いた。

 

(額に逆十字)

 

 ピクリ、と身体を震わせたヒソカに続けて囁いた。

 

(9月。ヨークシン。逆十字タイマン。あたしが想ってる相手♡……譲ろうか?)

 

 その変化は一瞬だった。

 ゾワゾワゾワとネオンの全身が総毛立ち、危機を感じたことで皮膚の穴という穴から汗が吹き出した。

 目を伏せたヒソカの表情は見えない。

 ただ、暗い暗い表情の奥で口元が弧を描いている事だけがわかった。

 抑え込まれていた、不気味で粘り気のある尋常ではないオーラが吹き出している。

 

「いいね……♥詳しく聞こうか♦︎」

 

 ヒソカは何気なく顔を上げた。

 そこに、薄っぺらい微笑を湛えながら。

 オーラと股間を漲らせながら。

 

 

 

 

 

 レオリオとクラピカが語り合い、さらに確かな友情を結び合った後。

 ネオンとヒソカがイチャイチャ(意味深)して周囲の受験生をドン引きさせている頃。

 ゴンとキルアは数多の受験生を追い抜いて最前列のサトツのすぐ後ろにまで到達していた。

 

 持ち前の運動能力の高さ。

 キルアからすれば、この『持久力テスト』は訓練にもならない負荷を与えられる、むしろ生まれた余暇をどう潰すかに思考の大半を取られるような退屈なものだった。

 ゴンにキルアがそう告げ、しかしゴンは気にした様子もなくキルアに答える。

 

 そして。

 類稀な純粋さを滲ませた瞳で嬉しげに父親のことを語った。

 キルアが目を見張るのをゴンが確認する前に、2人の前に出口が見えてきた。

 

 光が地下の暗闇に慣れた受験生の目を刺して細めさせる。

 しかし足を早める者は居ても緩める者はいない。

 『第一次試験 第二段階』の終わりが見えていた。

 

 

 

 

 

 光差すその場所。

 地下道から地上に出た面々を出迎えたのは、広大な大自然の光景だった。

 

「うわ────……」

 

 あたり一面に広がる湿原地帯。

 そこら中から感じる、湿原にしかいない珍奇な動物達の気配。

 故郷のくじら島で自然に慣れ親しんでいたとはいえ、ここまで広大な範囲に広がる大自然を直接目にして肌で触れるのは初めてだった。

 雄大な自然に接することで、純粋な喜びを覚えたゴンが感嘆の声を漏らすのも無理はない。

 

「ヌメーレ湿原。通称『詐欺師の塒』。二次試験会場へはここを通って行かねばなりません」

 

 人差し指を立てて、面白がるようにサトツが言った。

 

「十分注意してついて来てください。だまされると死にますよ」

 

 その言葉に合わせて、地下道に通じる通路のシャッターが下りる。

 なんとか階段の終わり頃まで辿り着いていた受験生が絶望の表情で手を伸ばし、シャッターに阻まれて一同の視界から消えていった。

 

 

 ゴンは少し期待するように。

 キルアは相変わらず生意気な顔で。

 ヒソカは退屈そうに。

 ネオンは目をキラキラとさせながら。

 ハンゾーは考えを巡らせる。

 

 そして、レオリオがぼそりと呟いた。

 

 だまされるのがわかっててだまされるわけがないと。

 それはクラピカにしか聞こえない声音だったが、そのタイミングに合わせたかのように大声が上がった。

 

 ウソだ。そいつはウソをついている、と。

 

 そこから始まった喜劇は語るに及ばない。

 騙し騙されるこの湿原の日常の一つが、この場で展開されたに過ぎない。

 

 騙そうとした猿をヒソカが殺し、サトツはトランプを受け止めた。

 ただ、それだけのこと。

 

 ヒソカがトランプを手元で遊ばせながら、これから(・・・・)に思いを馳せて『にんまり』と笑った。

 

 

『第一次試験、第三段階開始』

 

 

 

 

 




次回更新は予定通り27日土曜日18:00更新予定です。
今回『原作の大幅なコピー』に該当するお騒がせをして申し訳ございませんでした。

今後このような事がないように利用規約にしっかりと目を通した上で書き続けていきます。

よろしくお願いします。


そして、
この場を借りて皆様に感謝します。
高いモチベーションを維持できたのは一重に見限らずにお気に入りを入れたままにしてくれた方々、お声掛けあってのことです。
本当にありがとうございました。



────
今回、誤字報告お礼
『佐藤東沙』さん
『kuzuchi』さん
『よんて』さん
『キャスト』さん

ありがとうございます。



────
前回、誤字報告お礼

『佐藤東沙』さん
『イルイル』さん
『ふ〜せん』さん
『げんまいちゃーはん』さん
『由祐』さん
『青黄 紅』さん
『KJA』さん

ありがとうございます。

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