ダイジェスト多めです。
「──う〜〜〜〜ん!! よかったねぇ」
「いま、話しかけないでくれるかい……♦︎最高にいい気分なんだ♥」
「…………」
恍惚としたヒソカの表情だった。
それを目にしたネオンはお利口にお口をチャックする。
物理的にチャックされる前に。それは賢い選択だった。
『ゴン』の勇姿を見届けた後。
えっちらおっちらと森の中を奇術師と占い師は進む。
時折襲いかかってくる珍奇な動物はヒソカが殺していくので、ネオンは特に何もしないでいい。
散策するような気軽な歩調で森の中を進む。
「あッ、あの人」
何もしていなかったので、暇つぶしも兼ねて周囲を観察していたネオンがある事に気がついた。
武闘家チェリー。先ほど合図を出して、レオリオ、クラピカと同時にヒソカから逃げた内の一人だ。
トラップ型の植物の罠にかかって、木に吊るされて踠いているのをネオンは察した。
ネオンが呟く前に、ヒソカは既に動いていた。
切れ目の眼差しを向けて冷徹に笑う。
「……彼、不合格だから♦︎」
スタスタと歩を進めるヒソカ。
「ボク、審査にケチは付けたくないんだよね……♣︎」
「ま、まっ、たすっ」
チェリーが何事かを言いかけるがヒソカは全く興味がない。
壊れたおもちゃよりも価値が低い者を、ヒソカが気に掛けるなどありえない。
「ばいばい♠︎」
『ヒュン』と2枚のトランプが放たれる。
一枚は頭部に、一枚は首に。
突き刺さったトランプからたらりと血が垂れた。
森が再び静かになった。
「……あー、もう。すぐ殺すんだから」
「才能ないんだもん♠︎」
「そんな言い方しても可愛くないもん」
「…………」
ヒソカは沈黙にドクロマークを浮かべた。
──疲労困憊とはまさにこのことだった。
受験生たちは、みな一様に息を荒くして湿地帯を駆け抜けていた。
森は視界が利かない。
さらに珍奇な動物達のテリトリーの真っ只中だ。
罠を掻い潜り、湿地を走り抜け、ようやく受験生がたどり着いた場所には少しだけ森が開けた空白地帯があった。
その土地の中央には体育館サイズの建物が立っており、中からは猛獣の鳴き声が響き渡っている。
集団の先頭を走っていたサトツが、飄々とした表情で言った。
「みなさんお疲れ様です。ここビスカ森林公園が二次試験会場となります」
受験生一同にその言葉を聞く余裕などほとんどなかった。
息を荒くさせて『ハァハァ』と肩で息をする動作を繰り返す。
しかし、例外とはどこにでも居る。
その中で異常にも平然としている者が4人。
闇の住人キルア。
ウォーミングアップにもならないと鼻歌まじり。
奇術師ヒソカ。
まだ余韻が残っているのか『にっこり』とした笑みを浮かべて佇んでいる。
占い師ネオン。
同じく余韻があるのか『ニコニコ』と笑みを浮かべる。
ヒソカとは理由が違うが、笑みの質は似通っていた。
ギタラクル。
『カタカタカタ』と不気味に音を奏でながら平然としている。
機械じみた姿だった。
──ギギ、ぐるる。
と、体育館から獣のような声が鳴っているが、一次試験は無事終了。
受験生を前にサトツは紳士的な表情を崩さずに別れの挨拶をした。
「それでは、健闘を祈ります」
『ごるる、ぐおおお、ゴオオオ』
そんなサトツを送るようにまた鳴った。
ちらりと視線を背後に向けて、後ろ髪を引かれながらもサトツはその場から去る。
未練がましい視線の理由は、一次試験の内容を振り返り、受験生の事を考えていたからだった。
『ブハラ』と『メンチ』。
二次試験の試験管である、あの二人が行う試験の結果を想像して、サトツはなんとも言えない表情を浮かべた。
想像の中では『メンチ』が怒鳴り散らしている。
十分にありえそうだと思った。
もしそうなれば豊作と評した今年の受験生が本来以上に意図せぬ形で脱落するであろうことも。
「…………しばらく様子を見ていきますか」
ひそひそとサトツは『気配』を消した。
そして、彼の懸念が実現する。
ブハラのメニューを潜り抜けた受験生がメンチの試験を受けて。
「わり! 腹一杯なっちった!」
メンチがあっけらかんとそう笑った時点で合格者は0名。
やっぱりこうなるよね、と半ば諦めの気持ちでネオンが空を仰いだ。
サトツも一緒に空を仰いだ。
『二次試験 メンチのメニュー 合格者0名!!』
全員不合格の結果を受けて、ざわざわと周囲が騒めき立つ。
審査基準を満たしていない。そう言われればぐうの音も出ない。
しかし、結果だけを見れば納得がいくはずもない。
まず第一に料理での審査。
これで何が測れるというのか。
第二に合格基準だ。
運といえばそれまで。
だが、284番が料理内容をバラして合格条件が当初予定したものから変わっている状況に対して、はいそうですかと認められる訳もない。
色めき立つ受験生の中に怒りを最も顕にする者が居た。
255番のトードーだった。
青筋を立てて拳を握った彼がキッチンを破壊。
納得いかないと叫ぶ。
目指しているものはコックでもグルメでもない。
賞金首ハンターだと。
美食ハンターに判断される謂れがないと言う彼の意見は、しかし的を外れている。
ハンター試験とは、プロのハンターが審査するもの。
美食ハンターの試験だから、という彼の主張は根本的にズレている。
怒りに我を忘れているからか、それとも元々察することができない程度の人間なのか。
それはわからない。
ただ確かなのは、その言葉に対してメンチが言葉を飾ることはないという事だった。
「あっそ。残念だったわね。試験官運がなかったってことでしょ。また来年がんばれば──?」
短気な様子を見せる人間に対して、そんな言葉をかければどうなるかなど自明の理だった。
頭にさらに血を昇らせたトードーがメンチに殴りかかり、メンチが殺気を見せる。
──が。
ブハラが察して張り手で吹き飛ばした。
吹っ飛んだトードーは体育館の窓ガラスを破壊して外に飛び出すとはるか遠くにまで飛んで行き、地面に衝突音を響かせながら倒れ伏した。
そこからはメンチの独壇場。
ハンターの心得は美食ハンターといえど武術の心得があって当然。
未知のものに挑戦する気概。
ソレが知りたいと豪語する。
『それにしても、ちと少なすぎやせんか?』
周囲に響き渡るスピーカー音。
慌てて受験生が外に出れば、ハンター協会のマークの記された飛行船が飛んでいる。
それは『審査委員会』の証。
唖然と上を見上げる受験生を置いて、事態はさらに変化する。
黒い点のようなものが、見上げる視界に映った。
次第に次第に大きくなったソレは『人の形』をしていた。
『ドォン!!』と音を立てて着地したのは、着物を着て下駄を履いた老人。
メンチが真っ先に唖然と呟いた。
「……ネテロ会長。全ハンターの頂点に立ってる、ハンター試験の最高責任者よ」
「ま、責任者と言ってもしょせん裏方。こんな時のトラブル処理係みたいなもんじゃ」
顔を知っていた者はやはりと驚愕し。
知らなかった者もそんな大物がと驚愕した。
ネオンは知っていたとばかりにうんうんと頷いた。
視点はネオンに戻る。
一言で言うならば、ネオンの心境はほっとしたの一言だった。
『原作』を知っているとはいえ、ネテロが本当に来ると断言できるほどに、ネオンはネテロ会長のことをよく知らない。
もしかすればその不安は、『クラピカ』『ゴン』に対して『原作』から外れた行動をしたことで生まれた感情だったのかも知れなかったが、ネオンにそれを察する術はなかった。
事態の推移を見守れば、おおよそ予想通り。
ネテロがメンチに話しかけ、不合格の理由を問いただし、メンチが審査が不十分であることを認め、ネテロが代案を出すことを提案。
メンチも快諾して、新しい『ゆでたまご』という試験を打ち出した。
「ヒソカ、ゆでたまごうまっ! うまっ!」
「そう♦︎」
それはまるでトロけるような美味しさだった。
黄身の旨味をぎゅっと詰め込んだ身は半熟で食べれば舌の上でトロけて舌を覆う。
味蕾に染み渡る美味しさが舌の付け根をきゅんと締め付ける。
唾液が溢れ、もっともっとと欲しくなる。
白身も絶品だ。
濃厚な黄身に反して淡白な味であるが、それは決して味気ない訳ではない。
薄味ではある。
しかしそれが却って黄身の濃厚さに反しており、薄味の白身はその食感で箸休めのようなアクセントを加えてくれる。
「うまっ! うまっ! もう1個とってくる!」
「……いってらっしゃい♣︎」
可哀想な子を見る目のヒソカにも気がつかず、ネオンは『ゆでたまご』をたくさん食べた。
美味しかったと満足げに語るネオンに反省の色は全くない。
やれやれ、といわんばかりにヒソカはトランプを弄んだ。
微笑を浮かべる姿は微笑ましいというよりも、呆れが色濃かったが。
飛行船内部。
『ゆでたまご』を食べ終えたネオンはヒソカと別れて飛行船内を歩き回っていた。
その光景をネオンが目にしたのは偶然だった。
いや、『ゴン』『キルア』を探していたのだから、偶然と言うと少し語弊があるかもしれないが、少なくとも狙ってその光景に立ち会った訳ではなく、探していたらたまたまその場面だったというだけに過ぎない。
それが何かといえば、『ゴン』『キルア』がネテロ会長と出会うシーンであった。
咄嗟に身を隠して、通路に身を隠しながら頭を出して『にまにま』しながら見守っているネオンに、ネテロが気がつかないはずもなく。
「──もしそのゲームでワシに勝てたら、ハンターの資格をやろう。……そこのお嬢ちゃんもどうかね?」
(姿の隠し方といい、笑い方といい、どことなくビスケットに近い匂いを感じる)
ネテロがそんな事を思いながら声を掛けたのは、念能力者のくせに『絶』もせずにこちらを観察する、見つけてくれといわんばかりの少女に対してだった。
ネテロも鬼ではない。そこまで参加したいと言うのであれば声を掛けてやるのが礼儀というもの。
とか言い訳しながら内心で遊び相手が増えたわいと思っていた。
『ニヤリ』と話しかけたネテロに対する返答は、もの凄く酸っぱいものを食べたような表情だった。
そこでふとネテロは気がつく。
(ああ、『念』の秘匿を気にしておるのか? 確かにそうじゃ、しかしあの桃尻、いやいや、遊び相手を逃すのは惜しい。どうしたものか)
『ちらり』と見る少年たちは明らかに『纏』を覚えていない。
精孔も開いていないだろう。
そんな彼らに『念』を使った動きを見せるのはいくら会長といえど、いや。会長だからこそ危険だ。
(ふむ、少しばかり捻ってやってから、
『むほほ』と内心笑いながらネテロは決めた。
その決定により、ゴン、キルアの
「──ねえ、キミはやらないの?」
キルアと
「うん。あたしはまだいいかな〜?」
「そう?」
「このままじゃらちがあかんのー、2人いっぺんに掛かってきなさい」
「あっ、ごめん。じゃあ行ってくるね!」
それほど拘ってはおらず、ただの疑問だったようで、ネオンに今遊ぶ意思がない事を確認したゴンはネテロに突っ込む。
飛んだり跳ねたりと忙しい少年たちを眺めながら、ネオンは少し幸せそうに微笑んでいた。
意外なほどに粘る少年たちと遊び終えて、原作通りにキルアが去ってゴンが気絶した後。
気長に待っていたネオンと、少年と遊び終えたネテロは向き合っていた。
先ほどとは、少しルールに変更を加えて。
『どんな攻撃も自由。ワシの方は攻撃せん』は変わらず『ボールはなし。勝利条件は片方が、相手のお尻を触ること』
すけべじじい全開の要求に若干ネオンが引きつつも、真剣な表情でいかにお尻を守ることが重要であるか力説するネテロに圧倒されて了承した。
「ネテロさん。あたし『本気』は出さないですけど、『全力』は出しますからね」
「ほっほ。御自由に」
もはや2人の手合わせに障害はない。
秘匿すべき技術を用いた戦いの火蓋が切られた。
遊びが始まって数分が経った。
ネテロは思考する。
刹那にも満たない時間であったが、それはネテロにまだまだ余裕がある事を示唆している。
(この若さでこれほどの『心源流』を身につけた
攻撃を封じられ、実質片手落ちの状態であってもネテロがネオンに遅れを取る気配は微塵もない。
ネオンの手足に気を配り、いずれの着手も『尻』に届かぬよう調節しながらネテロは拳打を防ぐ、防ぐ、防ぐ。
さながら濁流のごとき応酬ではあったが、理に沿って動いている分、指導者でもあるネテロにとってあまりにもその攻撃は読みやすかった。
まさしく教本通り。
教えられた物をまっすぐに十全に吸収している。
生徒の手本としたくなるほどに癖がなく、ともすれば機械的と表現したくなるほど理想的だった。
(ほォ、ここで、こう。ここで、こう、そうきて、こう。はいはい、ワシの創った通りじゃん)
得難い才能だ。
吸収できる能力は性格によるところもあるが、何よりセンスが物を言う。
(極端に素直じゃ。どれ、ちと指導してやろうか)
ウズウズとネテロの中でちょっとした欲求が湧き上がり始めたのとほぼ同時。
ネオンのオーラが圧を増した。
『練』を始動。
小手調べは終わりと言わんばかりに勢いを増した打撃がネテロに叩き込まれる。
(ほっほ! うーむ、凄まじいオーラじゃ)
長年の経験でネテロはその潜在オーラ量まで正確に見抜く。
顕在オーラは平均よりも上といえど、常識の範囲内ではある。
だが、その潜在オーラはまさしく桁が違う。
概算でプロ中堅クラスの約15倍。オーラ量の化け物である。
(ただまぁ、まだまだ未熟)
しかし、ネオンは師匠のビスケに太鼓判を押されるレベルではあるが、それはあくまで弟子基準。
百戦錬磨といって一切誇張のないネテロからすれば赤子の手を捻るようなものである……はずだった。
(ほっほ、まだまだ甘い。どれ、少し『揉んで』やろうかの)
着手を少し変えてやり、リズムを乱させる。
が、意外にも付いてくる。
では、これなら。付いてくる。
これは? 付いてくる。
なんの! 付いてくる。
ええい、これならどうじゃ! 付いてくる。
(よかろう、そっちがその気ならとことんやってやるわい!!)
むきー! と楽しみながら血を昇らせたネテロがどんどんとその手を険しく変化させる。
もちろん、約束通り攻撃はしない。
攻撃を開始すればいとも簡単に決着がつくだろう。それでは面白くない。
ここまで時間にすれば数分。
濃密な時間を過ごしながら、ネテロは薄らと笑みを浮かべた。
(退屈せんで、すみそうじゃ)
ネオンはいわゆる天才型である。
それは念能力を独自に習得した事ではない。
子供の念能力者は意外にも多い。
それゆえ、非常に幸運であれば身につけられるからである。
故に、ここでいう才能とは、戦いのセンスによるところが大きい。
ネオンの持つ、その数多ある才能の中で、最も価値のある物のうち一つ挙げるとするならば、それはたった一つと断言できる。
それすなわち『勘所』である。
思考のない、反射に近い第六感としての感覚は磨こうと思って磨けるものではない。
生来の素質が非常に重要となる。
もちろん、後天的に身に付けることも可能ではある。
しかし、それは経験値が圧倒的に必要となるのに比べて、先天的な第六感は初めから備わっているものである。これだけでも十分以上のアドバンテージになるのは理解が及ぶところであろう。
第六感とは『ひらめき』に限りなく近い。根拠のない、あやふやなものであるから、それを信じ切るのは重要な局面であればあるほど難しい。
しかし、その感覚を信じる事ができたなら。
それは簡易的な予知にも似た、有効な手段として活用できる。それこそが第六感の最大のメリットである。
──ネオンのそれは非常に多岐にわたる。
戦闘、日常、決断。
あらゆる場面でこれまでも顔を出してきたその『勘所』こそ、ネオンの最も重要な才能の一つであった。
それを、ネオンはこの戦闘で十全に活かした。
その殴打は数分前とは比べ物にならないほど的確にネテロの急所を抉りにくる。
まるでこうなることがわかっていた、と言わんばかりの猛攻にネテロは常に晒されていた。
蓄積、学習。
そして『勘所』。
必要な情報が集まったネオンの猛攻は、それこそネテロが少しばかり『やる気』を出さなければならないほどに的確で鋭い攻撃だった。
(よもやここまでとは。恐れ入るわい)
それでもネテロの余裕の表情は変わらない。
圧倒的な経験値、そして練り上げられた『念』と『武』の練度は才能で埋められるものではない。
だが、僅か『念』を覚えて3年の小娘が、かつて念能力者として世界最強であったアイザック=ネテロと相対して、多少であれ『やる気』を引き出しているというのは、ネテロを知る者が目を見張るほどの偉業である。
ネテロが防御に専念していることも、ここまでの猛攻を可能にした理由ではある。
それでも驚嘆に値する出来事である事は疑いようもなかった。
しかし、さらに少しばかり『やる気』というか『揉む気』を出したネテロの攻撃は鋭すぎた。
「ほい、終わり」
がしっと『尻』を掴まれたネオンが「ひゃんっ」と言いながら止まった。
その後も指導という名のセクハラを終えて、ネテロとネオンは普通に談笑していた。
『女の子』としての感性は身につけたが、『異性』に対する意識は軽薄なネオンらしく、尻を触られても、多少恥ずかしがる程度であったことが功を奏していた。
加えて『男心』を理解しすぎているネオンが、ついつい美少女に相応しい反応を無意識に心がけた結果。
セクハラに関して一家言のあるネテロも満足のできる指導となった。
爆ぜろじじい。
ネオンとしても『武』と『念』に関してこれ以上ないほどの人物から指導を受けられた事で確かな成長を感じていた。
短時間であってもあの『アイザック=ネテロ』と拳を合わせた。
それはネオンに深い満足感を与えている。
そんな、セクハラ指導で双方ともに満足という中々見られない光景を見せている中で、話はビスケットという共通の話題で盛り上がりを見せた。
「──ほォ、どことない雰囲気が似ておるとは思ったが、ビスケットの弟子か」(どことは言わんが)
胸にちらっとわざとらしい視線を送ったネテロ。
失礼である。
案の定、張り手を飛ばされて、快音を鳴らしながら頬で受け止める事となった。
甘んじて受けよう、この痛み。
『じんじん』とする
「そうなんですよー。なので、ネテロさんの孫弟子? になりますね。あっ、ビスケにモラウさんとノヴさん紹介してくださってありがとうございました!」
「ん? あー、まぁの。いろいろ手伝ってもらったし」
「はい、ネテロさんに紹介してもらってすごく助かりました。ありがとうございました!」
「うん、うん。ま、ビスケットはワシの弟子でもあるし。あやつが困っていたのなら少しばかり
「あー、いえいえ。そのお願いって実はあたしのなんです。ビスケは私のためにネテロさんにお願いしてくれてて、中々難しいですね」
「……え? まじ?」
「えっと、はい。そうですけど、すごい汗!?」
ネテロの脳裏に電話している自分と、おそらくそれを笑顔で受けているであろうパリストンが描き出された。
(……いかん、いかんな。さすがにこの子にあやつは荷が重いじゃろ。無茶振りっていうか無茶殴りっていうか。鳥の卵に蛇をはなつというか。ビスケならわしの直弟子じゃし、性格悪いし、パリスに自由に動けんように釘も刺しとるし、『モラウ』『ノヴ』の味方が増えた分のマイナスってとこじゃ。あれくらい多少の障害じゃろうが……。(シャレにならない難題ではある)この子は。いや、むしろもう手が伸びてんじゃね? こやつ死ぬ間際なんじゃね? わしやらかした?)
だらだらと汗を流しながら、ネテロは言った。
「つかぬことを聞くが、A級首はどこで?」
「……内緒にしてくださいね? ヨークシンです」
(ヨークシン。A級首)
ネテロの脳内で単語が瞬き、一つにつながった。
なぜネオンのことを知らなかったのか、不思議なほどにこのじじいは地獄耳である。
この少女に関する情報が、『故意に遮断』でもされていたのか。
最近の噂と繋がって。
あのビスケ、モラウ、ノヴが情報を漏らす可能性はほぼ0。
となると犯人はおそらく自分が振ったパリストン。
だらだらと滝のような汗を流す。
(まずい、まずいの。さすがにビスケットも拳の一つや二つで許してくれんじゃろ、これ)
想像してさらにだばっと汗を流した。
(わしが行くか? いやいや、パリスがさらに嬉々としてかまってくるじゃろ。下手すりゃ状況悪化するわ)
ネテロはなんでもないように頷いた。
(うん。逃げちゃえ。……十二支んで空いとるやつおったか?)
ここに新たな
「「「へっくしょん!」」」
(……パリスの制御は、ビスケットにも無理か? わしが死ぬ前に、ここらで経験を積ませたかったんじゃが。いやいや、まだわからん。ただ、まだ今はあやつに関してはわしが抑える必要がある)
嬉々として構ってくるであろう副会長を想像して、ネテロは少し困ったような嬉しそうな苦笑いを浮かべた。
(わしのような
『それはない』と十二支んが珍しく一致団結して断言するような事を思いながら、ネテロはとりあえずネオンに土下座した。
「すまんかったぁぁぁああ!!」
「えええぇぇ!?」
次話投稿明日18:00予定です。
前回間話のおかげで良い方向に吹っ切れたと思います。
ご感想に救われました。感謝します。
私の書きたいものを、引き続き楽しみながら書いていきますのでよろしくお願いします。
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誤字報告お礼
『佐藤東沙』さん
『kuzuchi』さん
『流夜』さん
ありがとうございます。
P.S(下記読まなくても問題ありません)
私見ですが、ネテロってパリストンのこと大好きだったと思うんです。
理由はうまく言えないのですが・・・。
手のかかる子ほどかわいい的な?なんか違いますね。あれが、可愛い。。。?
薔薇は責任感(もっと複雑ですが詳しくは蟻編で書きます)だと思いますから、自己犠牲ってタイプでもないですし、本当に茶々入れが楽しかったのではないかな、と。
そんなネテロを書きたいです。