今日も今日とて占い師はがんばります   作:風梨

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本日1話目
キャラのイメージが異なる可能性があります。

約2000字


間話:ジン・フリークス

 

 

 

「──で、会わせてくれんのか?」

 

 大森林の中だった。

 清涼な空気に満ちた、樹齢何千年という木々に囲まれた一際大きな大樹の上に登って腰掛けるターバンを巻いた男が、携帯電話を片手に喋っていた。

 その身には寸鉄すら帯びていない。

 少し見窄らしいとも言える灰色のターバンに、灰色でダボダボの服と青いマフラー。

 黒い革のブーツだけが少しばかり値が張りそうだったが、それ以外は浮浪者と見間違えそうな格好だった。

 無精髭を生やして、ターバンから無数の髪の毛が飛び出ている姿は、とてもではないが世界有数の大富豪であり、『極秘指定人物』に認定されるほどの権力を持っているようにも、世界で五指に入るほどの念能力者にも見えなかった。

 

 だが、それらは全て事実である。

 誇張は一切ない、純然たる事実だった。

 

 そんな男が言葉を続ける。

 

「だーかーらー、ビヨンドに会わせんのか、会わせねーのか、どっちなんだって聞いてんだよ。どうせビヨンドは暇してんだろ、やることねーんだからよ」

 

『急に電話してきて、何かと思えばビヨンド? 誰だそりゃ、電話を掛ける先間違ってんじゃねーか、ジン』

 

「あーはいはい、そういうのいいって。ミュヘル、お前がビヨンドの依頼受けてるってのは知ってんだ。そこを隠しても意味ないぜ」

 

『……はぁ、お前な。それならそうと最初から言えよ。こっちから情報漏らす訳ねーだろが、このドアホ』

 

「……あー、いや。そういや、そうか」

 

『で? ビヨンドに会いたいって、なんでお前が会いたいんだよ。お前は別に会長信者でもないだろ。ネテロの息子に興味があるようには思えないんだがな』

 

「電話で話すにはちとあれだが、カキン国。真林館事件。これでどうだ?」

 

『……話が見えん』

 

「ん〜〜、これならどうだ。V5。膨大な資源。ついでに協専。とまで言えば伝わるか?」

 

『……オイ、てめー今どこに居る』

 

「そのカキン国。大森林の奥地だけどな。話をつけてくれる気になったか?」

 

『……どこのバカだ。お前に話を漏らしたやつは。腹ワタ煮えくり返りそうだぜ』

 

「安心しろよ、お前の兵隊が漏らした訳でもないし、その他でもない。ちょっとばかりズルしちまって、成り行きで知ったんだ。黙ってよーかとも思ったんだが、とりあえずビヨンドに会ってから考えようと思ってな。お前に話つけてる訳だ」

 

『絶対詳しく聞かせろ。必ずだ』

 

「悪いが、無理だ」

 

『ふざけてんのか? ジン。お前が言ってんのは、そういうこと(内通者の存在)だぞ?』

 

「わかってる。だが、こればっかりは言えねー。疑うのはわかるが、『そう』じゃない。ここまで言えば、お前ならわかるだろ」

 

『……ちっ、わかった。ビヨンドにはオレから話をつける。恐らくOKだろうが、お前はすぐ来れんのか?』

 

「おう、こっちもそろそろ終わりそうだ。まだ始めて2ヶ月だが、ノルマの2倍くらい楽勝だろ」

 

『何の話かわからんが、問題ないなら、わかった。追って連絡するが、そこは電波繋がんのか?』

 

「……あ〜、樹に登れば繋がる」

 

『お前は常に樹に登ってんのか? 猿か?』

 

「ウキー」

 

『……はぁ、二日後に連絡しろ。それまでに話をつけておく。いいか、二日後だぞ』

 

「悪いな、ミュヘル」

 

『そう思うんなら、ちっとはマシな連絡してきやがれ』

 

「……おう。気をつけるわ」

 

『できねーこと言うんじゃねーよ』

 

「ソンナコトナイゼー」

 

『なんかめちゃくちゃムカつくな、おい。まぁいい、オレはオレの仕事をやる。お前も義務は果たせよ、オレの顔潰したら承知しねーからな』

 

「あぁ、その点に関しちゃ、安心してくれ。お前の顔は絶対に潰さない。約束する」

 

『常にそう言ってくれりゃ、オレも安心なんだがなぁ……』

 

 その後も二言三言を交わし合い、通話が切れる。

『ツーツー』と不通音が流れる携帯を仕舞い込んで、樹木の上でジンが一つ伸びをした。

 気合を入れたようにも、ダラけているようにも見える仕草で、大きな口を開けて眦に涙を浮かべている。

 

「そんじゃ、ノルマ終わらせっか」

 

 そう呟いたジンの携帯に一通の連絡が入った。

 合格者通知と明記されたそこに記された一人の名前を見て、ジンはひっそりと笑みを浮かべた。

 

「……来るかゴン。こっちへ」

 

 その笑みはとても嬉しげで、それでいて、言った後すぐに気恥ずかしげに頬を染めるような言葉だった。

 柄じゃない、なんて呟きそうな面持ちで『ガリガリ』と頭を掻いたジンが樹木から飛び降りた。

 

「ったく、エレナのやろー。変更したっていいじゃねーか」

 

 二日後。

 ジンからミュヘルに連絡するまでに、ジンが発見した新種の数は1000種を超える。

 それまでに発見した新種と含めておよそ2000種の新種を発見、登録を終えた。

 まさしく怪物の所業を見せつけて、後の仕事をカイトの仲間たちに託して、ジンはただ一人で一路ビヨンドに会いに足を向けた。

 その胸に、どうしたいのか、未だ決めきれない想いを抱えながら。

 

 

 

 

 

 




本日18時に本編投稿予定
導入のため短めです。
よろしくお願いします。

──
誤字報告お礼
『佐藤東沙』さんありがとうございます。
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