万人にとって最も不変で高い価値を持つ情報。
『未来』の情報とは限りなくその表現に近いと俺は思う。
お金を得る。地位を得る。危機を回避する。など様々であるが、より良い未来を人は求めてる。
大多数の人はそう思っているはずだ。
そのために仕事、プライベートで努力をしているはずだ。
成功したい。認められたい。
今では人が当然のように持っているとされる承認欲求や、金銭的、あるいは三大欲求に代表されるあらゆる欲望。
それらを満遍なく支える事ができる情報の一つに『未来』の情報が挙げられる事は疑う余地がない。
そして《
これは大きなアドバンテージであると同時に、危険な切り札でもある。
アドバンテージは当然、常に万人にとって高い価値を持つ点だ。
先ほど述べたように不変の価値を持つのが『未来』の情報である。
危険というのは、強引にでも奪い取ろうと考える人間が居る点だ。
近いところで言えばライト=ノストラードの商売敵。
あるいは暴力に秀でており、占いを欲している人間。
身柄を確保されるだけならまだいい。
念能力で操作される恐れはあるが、命までは取られないため逆転の目は0ではない。
協力的な様子を見せれば、あるいは新たな庇護者になってもらう事も可能かもしれない。
だが、最も警戒するべき人物が作中に登場する。
クロロ=ルシルフル。
幻影旅団と呼ばれる盗賊団の団長。
彼の誓約の一つに死んだ人間の能力は盗めないとある。
だから殺されることはないのだが、盗られる事は絶対に避けたい。
──ネオン=ノストラードの記憶に刻まれている言葉がある。
銀河の祖母という、幼い頃にテレビで見た占い師の言葉だ。
彼女の言葉がネオン=ノストラードの原点であり、《
『占いは今を一生懸命生きている人を幸せにするためのものです。
だから私はなるべく悪いことばかり占うようにしてるのよ
そうすればみんな、そうならない様に願ったり努力したりするでしょ』
感覚的に理解できる。
その意識から逸脱した場合《
彼女の言葉を聞き決意したネオン=ノストラードの誓約は
『占いは今生きてる人を幸せにするためのもの』
誓約とは誓い約束する事。
魂が変わっても、その誓約は忘れていない。
だから、抵抗する。
クロロ=ルシルフルに盗まれた場合、その『今生きている人を幸せにする』手段がなくなってしまうから。
それは、嫌だった。
あと、生活水準が下がるのも困る!
漫画の中に転生して良かったことの一つだな。お金に感謝!
ありがとう、原作。ありがとう、HUNTER×HUNTER。
なので、目標の2つ目はこれで決まりだ。
クロロ=ルシルフルから『念能力』を守り切る。
でもこれ、かなり無謀な目標だ。
理由は簡単。
見つかった時点で負け確定だからだ。
ぶっちゃけ幻影旅団ではなく、クロロ=ルシルフルだけでも、捕捉されれば警備を突破されて拷問されて能力奪われる未来しか見えない。
4年間の間になんとか盗られないで済む方法を見つけないといけない。
ちなみに彼に見つからない可能性に賭ける事は出来ない。
原作でバレた理由であるマフィアを占うことをやめれば数年くらいは寿命が伸びるかもしれないが、相手はクロロ=ルシルフルだ。いつかは必ず捕捉される気がする。
ふと、隠れ潜んだ末に真っ暗な中でパソコンに向かっている自分の背後に、逆十字の男が無表情で立っている姿を幻視する。……うん、ありえる。
となると、考えられる方法は──
一つ目、戦闘力を上げて戦って勝つ。約4年で? ……師匠が居れば可能だろうか。
二つ目、現状では隠れることが無理なので、絶対に見つからない方法を探す。……見つかればいいなぁ。
三つ目は、逆転の発想はどうだろう。見つかる事が避けられないなら懐に入っちゃう、とか。
三つ目の方法を想像してみる。
《
一度の占いで一月分占う事ができる。なら、盗むより使わせる方がメリットが、ある?
可能性としては十分あると思う。
ただ、頭の良いクロロがどう判断するかわからないのが怖い。
ないとは思うが、俺が想定する以上の事までデメリットを出されそうで怖いところがある。
……うん。最悪これで行くけど、他の方法も考えておこう。
そうしたら、すぐに行動すべきは師匠だろう。
念能力を知覚でき次第すぐにでも……。
いや、無理やり起こしてもらうなら、すぐにでも呼んでいいか?
占いを出汁にすれば相当上の実力者まで呼ぶ事が出来る、はず。
すぐに思いつくのはやっぱりビスケット=クルーガー。
考えうる限り最高の師匠。
次点でウイングさん、だろうか。というかその二人以外思いつかない……。
でも、4年前の段階でウイングさんは師範代の資格持ってるんだろうか?
わからん。
とにかく、心源流師範代を呼ぶ事にしてみる。
可能ならというか、出来るならビスケに会いたいので!
占いも出して全力アピールするとしましょ。
ネットを駆使して依頼を投げてみる。無理ならライト=ノストラードの力を借りよう……。
「──で。あんたが依頼主ってことでいいの?」
電脳ネットで連絡を取ってから早1ヶ月。
1週間前に『念能力』に目覚め、同時期に返事が返ってきた。
『報酬要相談』と訪問日時が書かれているのみだったので、てんやわんやで準備をしてお出迎えをした。
部屋に通されたビスケット=クルーガーは開口一番で冒頭のセリフを言った。
じーっとこちらを見る目は、なるほどと思わせる雰囲気がある。
うまく表現出来ないが、どっしりと根が生えた判断力があるというか、そんな印象を受けた。
なんて冷静を装っているが、内心では興奮しまくりだ。なんと言っても生ビスケである。ちっちゃくて可愛い。
「悪いんだけど、結構飛ばしてきたのよね。座っていい?」
「どうぞ!」
俺が頷くが否や、ささっと部屋の奥に移動してソファーに座った。
「あら、良い物使ってるわ。あ、その紅茶ももらえる?」
ちゃきちゃきと侍女が紅茶を用意する間に、ビスケは胡乱げに俺を見る。
「──で。もっかい聞くけど、あんたが依頼主? 悪いんだけど、正直、この話に魅力感じないのよねぇ」
はぁとため息を吐くように言った。
「あたしの弟子はもう卒業してるけど、やっとストーンハンターとしての活動を再開できるようになった訳。なのにまたコブ付けて引っ張り回すのもねぇ、そう言うわけで魅力は感じてないわ。──でも、あんたの話に興味はある。だから、プレゼンしてちょーだい。それを聞いた上で判断するわ」
用意された紅茶を、ずずーっと飲みつつビスケはそう言った。
あら、美味しい紅茶ね。と目をまんまるくしている姿は少女にしか見えないが、その実力は本物。
念を覚えたからわかる。その実力を肌で感じてそれを確信した。
「わかりました。クルーガーさんに」
「ビスケでいいわ。堅苦しいの苦手なのよねぇ」
「では、ビスケさんで。ビスケさんに引き受けてもらった場合のメリットとデメリットを紙に起こしておきました。載せていないもの。あたしの念能力もあるので、それも含めて提案します」
──結果。
「──ということで、幻影旅団の団長に未来で狙われるんです。それを、撃退出来る実力が欲しいのでビスケさんに来てもらいました。──お願いします。あたしを、鍛えてください」
「……なるほどねぇ、未来が見えるっていうのも難儀だわさ。ま、ほんとのことは言ってないみたいだけど、嘘でもなさそうだわね。それで正解よ。念能力の切り札は親にも隠しておきなさい」
途中で念能力の話になったので侍女に出て行ってもらったり。
原作知識のことは未来を見たって事にしたり。
報酬として出せるものは今後10年分の占いを提案した。
その他希望の条件などを色々話した。
「うん、占ってもらったこれだけど、当たってるわさ。今後も占ってくれるなら報酬はこれで十分。でもねぇ、それとは別に問題があるわ」
「……なんでしょうか?」
「敬語やめていいわよ。あんたの本音が聞きたいの。……ぶっちゃけ、なんであたしに頼もうと思ったの? 見たらわかるわ、あんたの『念』は赤子レベル。あたしの弟子が教えてもお釣りが返ってくるくらいの練度でしかない。なのに、なんであたしなの? こういうのも何だけど、あたしは癖のある指導者よ。もちろん受け持った弟子には責任をとる。でも、あんたを見てるとあたしよりもっと適任の指導者は思いつくわ。なんでか、聞かせてくれる?」
これは、誤魔化せないな。
本音の意味を取り違えたらその時点で話が終わる。
……うわぁ、ネオンの姿でこの口調嫌なんだけど……。
しょうがないか、俺も腹を括ろう。
「……今から話す事。絶対他言しないでくれ。
少し目を丸くした後に、ニンマリと笑ってビスケは頷いた。
「あら、あたしはその口調も好きよ」
「ありがとう。──何から話すべきか……。まず今から話す事は確度の高い話だと思って聞いてほしい。今から約4年後の1999年1月1日から始まる話だ」
そこから、覚えている原作知識を予知という形で話した。
前世も俺の能力と言えなくもないので、ビスケも何も口を挟まず聞いてくれた。
話が旅団編に差し掛かった時には眉をひそめ、……GI編では『ブループラネット』の話に目を輝かせながら机をバンバン叩き、根掘り葉掘り聞かれた。
アリ編では深刻な表情となり、選挙編はあからさまに嫌そうな顔をした。
そして暗黒大陸編では、ありえないと言わんばかりに口を開いた。
「……まって。それ、いや、ありえる……!? じじいは何やってんだわさ!! 身内の恥くらい片付けときなさいよ!」
うがー!! と両腕を振り上げながら怒るビスケをどうどうと落ち着かせつつ話を続けた。
「俺が識ってる未来はここまで。この後どんな
「十分すぎるわ。あんたのその能力、末恐ろしいわね。というか、あたしが聞いていい話じゃないと思うんだけど……、じじい、ハンター協会会長のネテロに話してもいい?」
「出来れば避けてほしい。俺って言う存在が知れ渡るのは避けたいからな」
「まー、そうだわね。……わかった! 他言しないって約束したからね、約束は守るわさ」
「助かるよ」
「にしても、ほんとぶっちゃけたわね。盗聴対策とかちゃんとしてるんでしょうね?」
「……大丈夫」
「ちょっと、あんた、この話が外部に漏れたら大混乱じゃすまないわさ。カキンの話なんて国際的な大問題。下手すりゃ国が一つや二つ無くなるわさ」
ほんとに大丈夫でしょうね、と恐らく『円』を使って探るビスケ。
ひとまず問題はなかったのか『念』を収めた。
「で、話が脇に逸れすぎたけど。──あんたの依頼受けるわ。ここまで腹を割られちゃ、受けない訳にはいかないもんねぇ。その代わり! ビシビシ鍛えるから覚悟しておく事!」
「おお!!! ありがとう!!」
「返事は押忍!!!」
「押忍!!」
「よろしい。ではさっそく行きましょ」
「え? どこに?」
「決まってるわさ、GIよ。……あたしの伝手全部使ってでも見つけてやるわぁ、ふふふふふ。まっててねブループラネットちゃん♡」
恋する乙女の表情で頬を押さえるビスケを見て、ちょっとだけ、先行きが不安になる俺だった。
明日のこの時間に続きを投稿予定です。
今話から急展開が始まりますが、頑張って書くのでお付き合いください。
よろしくお願いします。
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誤字報告お礼
『路徳』さん
『ジャック・オー・ランタン』さん
『kuzuchi』さん
ありがとうございます。
P.S
(下記は読まなくても問題ありません)
A.ビスケット=クルーガー(ハンター協会のおか、お姉さん)
裏話
ウイングさんは30歳を超えている独自設定です。
なので、弟子の育成は終わっており、ビスケのストーンハンターとしての活動は随分前から再開しているため、本文中の断り文句は嘘です。