前話は間話です。
捏造設定注意です。
約3000字
パドキア共和国。
主な産業は鉱山地帯からの資源採掘と農業、林業や畜産業などである。
いわゆる一次産業が主な収入源となる、長閑な国という表の顔とは裏腹に、一部地域では非常に剣呑な一族が住んでいた。
デントラ地区が産んだ稀代の暗殺一家。
ゾルディック家の存在である。
「──見えてきたぜ」
いつになく真剣な表情で列車窓から外を見上げるレオリオの視界に、森の中でそびえ立つ大きな山であり、目的地である『ククルーマウンテン』が見えていた。
肘掛に片腕を乗せて体重を預けながらじっと外を眺めるレオリオであったが、その表情はいつになく険しい。
理由は彼自身にも正確にはわからない。
ただその心中にはどことない不安があった。
プロのハンターに成りはした。ライセンスを受け取り、講習を受けて認定すらされた。
だが、中身がまるで伴っていない事はレオリオ自身が痛感している。せざるを得ない。
何せ同期のメンバーがあまりに濃い。
ネオンを筆頭に、ヒソカ、ギタラクル、ハンゾー、ゴン、クラピカ。
せめてもの意地としてゴンやクラピカに負ける気はないが、厳しく見積もって今期の合格者の中で自分が最弱であろう自覚のあるレオリオにとって『伝説の暗殺一家』の名前はあまりにも重かった。
その不安と重圧は逃げる事を促すものであるはずだったが、レオリオの心中にそういった思考は微塵も湧いていなかった。
仲間想いのレオリオらしい心境であったが、もしかしたら、寂しがり屋な部分も今回付いてきた理由だったのかもしれない。
しかし、それは別として今回ばかりは緊張の度合いが違った。
それゆえの硬い口調に対して、ゴンは呑気に『ククルーマウンテン』を眺めて感嘆の声を上げ、ビスケは猫を被り、クラピカとネオンは横目でレオリオ達を見ながら『コソコソ』と話し合っていた。
「……つまり、『蜘蛛』に関してはまだ話せないと言うのだな?」
「うん、そう。でも、ちゃんと話すよ。まずは集中してもらいたい事があるの。たぶん1ヶ月後にはちゃんと話すから、今はまだ待って」
「……必ず、だな? わかった。あの強さの秘密を教えてくれるのなら、是非も無い事だ」
「それは1ヶ月も待たないでいいかもね」
「それは……」
クラピカがそこまで言ったところで、ネオンが指を一本立てて『静かに』とジェスチャーをした。
身振りで示しながら、視線を向ける先は周囲だ。万が一にも誰かに聞かれてはいけない話。だからこそ、今はまだ話さない。
情報の秘匿性を理解するクラピカは静かに頷いた。
言うまでもない事ではあるが、いまネオンたちが向かっているのはゾルディック家の敷地の境目である『黄泉の門』である。
その門を少し越えれば、鍛えるのに打ってつけの小屋まである。
それを利用しない手はない。──懐に『ネテロ会長』から詫びとして受け取った一枚のメモ用紙を潜ませながら、ネオンはその眼差しを行き先で在るククルーマウンテンに向けていた。
その後にゴンがあまりに脳天気な発言をして、ビスケがネオンへの指導の癖で咄嗟に殴ってしまってゴンが目を白黒させるという経緯を辿りながらも、一行は無事にデントラ地区へと到着し、聞き込みと言うにはあまりに簡単な質問で『号泣観光バス』の存在を知ってバスへと乗り込み、バスに揺られながらゾルディック家名物でもある『黄泉への扉』に到着した。
バスガイドの女性の丁寧な話を聞いている途中で、カタギではない男たちが男性を襲って鍵を奪い、骨だけになるイベントを経てバスが去った後。ネオンたちは守衛、もとい掃除夫の男性と話をしていた。
「──なるほどねー、あんた達はキルア坊ちゃんの友達ですかい。嬉しいねェわざわざ訪ねてくれるなんて、あたしゃ長年勤めてるけど、あんた達が初めてだよ、友達として訪ねてくれたのはね」
襲いに来る連中はひっきりなしに訪れる、因果な商売に対して少しばかり愚痴を溢した後にお茶をすすり、いそいそと掃除夫が頭を下げた。
合わせてクラピカとビスケは目を伏せて黙礼し、ゴンとネオンとレオリオが『いやいや』と照れ臭そうに頭を掻いた。
「本当にうれしいよ。ありがとう! だから、これは意地悪で言ってるんじゃないんですがね、君らを庭内に入れるわけにはいかんのです」
それでもと口を開こうとするゴンたちを手で制しながら、しんみりとした表情で続けた掃除夫の説明は納得はできずとも、理解の及ぶ話だった。
先ほど侵入者たちが使った鍵は、あくまで侵入者用の扉の鍵で在ること。
そして本当の扉には鍵が掛かっていない事と、ミケという番犬の話だった。
まるで機械の如く主人の命令を守り続ける番犬の話は、扉から見えた『ミケ』であろう太い腕を脳裏に思い起こさせ、クラピカは人知れず生唾を飲んだ。
──知っている。
掃除夫のゼブロの話を聞きながらネオンはそう思った。
『原作』で見たまんまなのだから当然だ。
改めて聞く話に『うんうん』としきりに頷きつつも、ネオンが一切口を挟む事はなかった。
変える事を恐れた訳ではない。
その判断をした理由は視線の先にあった。
真っ直ぐな瞳をしたゴンが、そこには居た。
ミケの存在を知って『試しの門』の存在を知り、それでも試されるなんてまっぴらだと平然と言ってのけるゴンの姿に、バカだなぁと思いながらも、むしろ応援したい気持ちになるのは、あの『覚悟』に魅せられたからだろうか。
きっと違うだろう。
ゴンがゴンだから、応援したくなるのだ。
友達を試すなんて変だ、そんな門からは絶対入らないと続けるゴンについ『くすくす』と笑みが溢れる。
ネオンのその姿に気がついたビスケが、いつの間にやら近くに居て呆れ顔で見ていた。
「まるっきり子供だわね、ありゃ絶対筋金入りの強化系だわさ。あんたもあんたで、そのゴンを見て嬉しそうに笑うなんて良い趣味してるわね」
「だってさ、色々思い出しちゃって。これから先もずっとあんな感じだよ、ゴンって」
「それは
『やれやれ』と肩を竦めてため息を吐かんばかりのビスケを見てまたネオンが『くすくす』と笑う。
嫌味の混じらない、心の底からの嬉しげな笑みだった。
「そんなゴンが、きっと自分の子供に思えるくらい好きになるよ」
預言者のように、ネオンが快活にそう告げたのを聞いて、ビスケが眉を顰めたのはその能力を知っているからこそだろう。
それを見てまたネオンが笑った。
掃除夫のゼブロとのやり取りや、電話での執事室とのやり取りは割愛する。
電話での私憤を、ゼブロに迷惑を掛けるからという理由で収めたゴンを見たゼブロの提案で、正面からミケを見ることとなって、ミケを見たゴンの素直な反応を知ったゼブロから使用人の家に泊まっていくよう招待を受けて、ゴンたち一行の予定は『試しの門』を開けられるようになってから、先に進むというものへと変わった。(ゴンも開けられなかった)
そして、待ちに待ったと言わんばかりにビスケが動いた。
「さーて。それじゃ、ここからはあたしの出番だわね!」
『にんまり』とした笑みを浮かべる金髪ツインテール少女の姿に、何故か一行の背筋に寒いものが走って、ゴンたち三人はその理由がわからず、少し訝しげに小首を傾けた。
次の投稿は明後日の18:00予定です。
よろしくお願いします。
──
誤字報告お礼
『佐藤東沙』さん
『ほす』さん
『四味浅流』さん
『画戯丸』さん
ありがとうございます。