お待たせしました。
更新優先で文字数少ないです。約4000字です。
よろしくお願いします。
更新話数のミスはしていませんのでご安心ください。
ところで、幻影旅団を待ち受ける最善策とは?
そんな非常に困る質問に答えるなら、ハンター試験に挑むまでの段階の、まだバレていない状態ならば、勘付かれない事がベストでありベターであった。
ソレ故にヨークシンに拠点を置く事は万が一を考えれば憚られる。星持ちのハンターが複数名滞在するというだけでも、十二分以上に周囲に向ける犯罪抑止となるのだから当然である。
故に選ばれたのはヨークシンではなく近隣の都市。
ネオンたちが仮拠点を置くのはそんな場所が望ましかった。
しかしそれも、幻影旅団に情報が漏洩している現状としては、もはや意味を持たない対応であった。
とはいえ、だからヨークシンに堂々と拠点を作る──なんてことは残念ながら難しい。
利便性、隠匿性を考えれば9ヶ月も前である現在から準備する必要があるが、そうなれば、どうしても同じ場所に留まり過ぎる。それは周囲の余計な警戒を招きかねず、特に後ろ暗い仕事をするもの達などを刺激しかねない。例えばマフィアであったり、マフィアと癒着をしている警察官であったり、だ。
プロのハンターというのはそれだけの社会的な立場を持っている。
もっと言えば、国家クラスの権力でもなければ抑止できないほどの力を持っている。プロのハンターという特権、そして武力は、特に事情を知る者からすれば、即ち『念能力』を知るものからすれば、非常に強い刺激と成り得てしまう。
と、つらつらと理由を述べたが、つまりはヨークシンに拠点を置くことは現状でも避けたいという事だった。
「──ま、買った甲斐があったって訳だわね」
ビスケがボヤきながら見上げる、その拠点は買い切りの一軒家となっており、利便性を考えてある程度の交通機関にはアクセスしやすい立地を選んである。立地のいい場所は土地も高い。既存の家屋を買う必要もあるから、豪邸などは望めない。
なので、そこそこの広さの二階建ての家だった。
扉を開いて、家の中に入るのはビスケ、ネオン、レオリオ、クラピカ、ゴン。
そしてキルアだった。
「さーて、ここがあたしたちの拠点なワケだけど、覚悟は出来てる? もう基礎は終わったわ。この次は本格的な修行に入る! もちろん死にはしないけど、相応の厳しい特訓が待ってるわさ。引くなら今のうちだわよ?」
「うん。オレは大丈夫! みんなも、だよね?」
4人を代表してゴンがそう言って背後の3人に振り返って表情を見る。
みんな一様に頷きを返した。
キルアだけが少し不満そうだったが、ゴンは苦笑いするだけで何も言わなかった。
道中での『尾行』を『尾行ごっこ』と言われた事が相当気に入らない様子で、それっきりずっとこんな調子だった。
そう。
ゴンたちはずっと一緒に行動してきた訳ではなかった。
ネオンとビスケが先導する中、その背後を気がつかれないよう気をつけて『尾行』して付いてきたのだ。
その理由はネオンとビスケが、ククルーマウンテンを出た後の話に端を発する。
「──じゃ、これで解散だわね。各々『纏』と『練』は欠かさない事。じゃーね」
「うそぉ!?」
平然と別れを告げられたゴンが叫んだのも当然だった。何せ『応用』があると明言しながらも『基礎』を固める間は教えてもらえなかったからだ。
これからようやくその話ができるのかと思っていた矢先の解散宣言に動揺するのも無理はなかった。
そんなゴンに対してもビスケはニベもなかった。
色々な理由で説明されたが、要するに『拠点に帰るから付いてくるな』という事だった。
ネオンも同じで、ビスケに同意するでもなく否定する訳でもなく、誤魔化すように笑っているだけ。
そして、そんな師弟から取り残された4名は顔を見合わせて今後のことを話し合った。
「──で、別れたはいいけど、これからどーすんの? ま、特訓しかないか」
まずキルアがそう言って周囲を伺った。
クラピカは当然、とでも言いたげに頷き、レオリオは少しバツが悪そうにした。
ゴンは意外にも小首を傾げた。
「え? なんの? 遊ばないの?」
キルアはゴンを見つめる。
どうやら冗談ではないらしい。
そう悟って思わずキルアは大声を上げた。
「はぁ!? お前なー、今のまんまでほんとにヒソカを一発でも殴れると思ってんのか!? 半年どころか10年たってもムリだっつーの!」
ゴンの額を人差し指で『トントン』と叩きながら、眦を上げたキルアが言う。
クラピカは幻影旅団なる集団の情報集め。
レオリオは医者になるため。
ゴンはヒソカに一発入れるのと、お世話になった人にお礼を言いたいと言っていた。
だから、まさか『遊ぶ』という選択肢が浮かぶほど能天気な脳みそをしているのが信じられない気持ちだった。
そこからキルアの思う戦力比較が始まる。
木の枝で地面に線を引き、各々の実力差を図解していた。
ガーーーっと線を引いてここ、とゴンの現在地を刺した場所は贔屓目に見てもかなり遠い場所だった。
そんなキルアの意見をゴンがムカつきながらも事実なので受け入れた後。
相手の強さを測る事ができないとゴンから言われ、キルアはそれに『勘』でしかないと答える。
「まぁ、なんにしてもヒソカは強い! いくら『念』を覚えたって、たかが知れてるだろ。オレたちはまだスタートラインにすら立ててないんだぜ」
「……そんなに? 一応『四大行』は覚えたし、スタートラインには立ってるんじゃない?」
「バッカ。あの女も言ってただろ。『念』は奥が深いってさ。オレの言ってるスタートラインってのは『発』を覚えてからだよ。いわゆる『必殺技』だな。話を聞く限りだと、『念』での戦闘はそれがないと話にならないだろ」
「うっ、確かに……」
目を白黒させながらも、考え込むポーズを取ったゴンが頷いて同意する。
チラリと目を向ければ、クラピカも否はない様子で、レオリオは明後日をむいて口笛を吹いていた。
(レオリオ、コイツ。『念』の基礎だけで十分とか思ってやがったな。まぁ医者になるって言うならそれでもいいとは思うけど、オレが決めることじゃないし)
キルアは距離感を詰める事が得意ではない。
コミュニケーション能力が低い訳ではなく、ただ今までの環境がそうさせた。
だから、レオリオのその様子にもあえて何も言わずにゴンと話し続けた。
「んで、特訓に文句はないよな?」
ゴンが特訓することに対して頷きを返し、キルアが二本の指を立てる。
「──なら、候補は二つだ。一つは『天空闘技場』。ゴンお前、金はあるか?」
「……うーん、実はそろそろやばい」
「だろ? ここなら一石二鳥だ。ファイトマネーでがっぽり稼げる。んで、もう一つは『師匠を見つける』」
キルアとしては、本命はこっちだ。
『天空闘技場』に行くよりも断然強くなれる方法。
無言になったゴンに対して、キルアは真剣な表情で続ける。
「ぶっちゃけ、『念』を鍛えるなら師匠が不可欠だと思う。オレは親父に教えてもらったけど、実家にあれ以上居たくねーし。見た感じだと、アイツらめちゃくちゃ強いだろ。実際に修行をつけてもらったゴンから見てどうだった?」
キルアが見ている前で、ゴンがじっくりと考え込む様子を見せた。
先ほど追いすがっていた姿を見るに、ゴンの返答は予想できる。
Yesを想定した質問だったため、ゴンの返事は予定調和だ。
「すごく強かった。ネオンもそうだけど、ビスケも。今のオレじゃ歯が立たないくらい」
「ビスケはネオンを育てた実績だってある。強くなるんなら、これ以上の適任は居ないとオレは思う。ゴンはどうだ?」
「オレも同感。覚えてみてわかったけど、独学じゃ限界がある」
「それはオレも思った。ってわけで、アイツら尾行しよーぜ」
悪戯を思いついた子供のように、ニヤリとキルアが笑った。
そこで口を挟んだのはクラピカだった。
「それはもちろん、私たちも付いていく前提での話なのだろうな? キルア」
「別に構わねーけど、あんたは尾行に関しちゃ素人だろ? 大丈夫なのかよ」
「問題ないな。『絶』に関しては習得している。……ただ一般的な『尾行』技術に関しては不足している感が否めない。どこかの達人に助言を貰えれば大変助かるのだが」
「あー、はいはい。わかったよ、オレが教えればいーんだろ。じゃ、クラピカとレオリオも来るって事で。ゴンはどうする? って答えは決まってるよな」
「──ちょ!おま!」
口を挟もうとしたレオリオを、意図的になのか、天然になのかゴンが無視した。
「うん、しようよ。尾行! みんなで追いかけてあの二人をびっくりさせようよ」
「おっけー。で、お前。尾行の経験なんてないよな?」
確定事項を聞くように、何気なく聞いたキルアの疑問だったが、ゴンの答えは予想を超えていた。
「えっとね、ハンター試験の時にヒソカを……」
「マジ? バレずにか!?」
「うん、まる1日くらいくっついてたかな……?」
思わず目が点になる。
『ヒソカ』。
あの『変態』だ。
キルアですら、尾行するのは出来れば御免被りたいくらいの相手。
そういえば船でヒソカがエモノとか言ってたっけな、と思い出しながら。
思わず、一瞬間を空けてゴンの頭目掛けて『ゴン!』と殴ったが、ゴンは普段どおりの調子だった。
「いっ! いった──、何で殴んの?」
「あ、いや。なんとなく」
何でだろう。
自分でもよくわからず、本当になんとなくで手が出てしまったので、それ以上話すのは気が引ける。
なので、話題を切り替えるために表情をわざとらしく変えて続ける。
「ま、それなら文句なく合格だ。相手の視界に入らないようにだけしてくれればいい。何でか知らねーけど、オレらに付いてきて欲しくないみたいだったし。見つかれば追い返されるだろ」
「うん。バレずに、だね」
「そーゆーこと。拠点に行くって言ってたし、案内してもらおーぜ」
「でも、修行つけないって言われたらどうするの?」
「そこは何とかする。一応、お前とクラピカ、レオリオは弟子になる訳だし、頼み込めば何とかなりそうな気はする。ただ何度も頼み込むには相手の居場所を知ってなきゃムリだ。だから尾行して拠点に行く」
「……なるほど」
「じゃ、やっていくぜ。遅れんなよ?」
「キルアこそ。ネオンに感づかれないようにね。勘がヤバイし」
「……あー、アイツか。気を付けねーとな」
そんなこんなで、4人はビスケとネオンの尾行を開始した。
「……え? オレも行くのか? おいおい待てって! お──い!」
「レオリオ!声がデカい!!」
すぐさま行動に移した3人の後ろに追い縋るように続いたレオリオが居て、クラピカが思わず青筋を浮かべてその言葉に苦言を呈した。
「──で、まぁ途中でバレちゃって何やかんやあったけど、また教えてもらえる事になってよかったね。ビスケはどこ行ったんだろ?」
ゴンはそう言ってみんなを見渡した。
クラピカは集めた新聞などを読み込んでいる。
1週間近く世間と切り離されていたから、という理由でこの部屋に入ってからずっとこんな調子だった。
レオリオも何かを読みたそうな顔をしていたが、ゴンとキルアを見て思いとどまるような仕草で仕舞い込み、今は寝息を立てて眠っている。
キルアは表情も先ほどと比べて落ち着いていて、静かに『纏』を行っていた。
ゴンを一瞥した後、集中するように手を組みソファーに座ったまま答えた。
「さーな。部屋で待ってろって言われたっきりじゃん」
「ネオンは何か聞いてる?」
ゴンはネオンに名指しで話を振ってみた。
ビスケは部屋を出て行ったが、ネオンはそのまま残っていたのだ。
部屋には大きなベッドがあって、そこでお菓子を食べながらゴロゴロと寝転がっていたネオンが顔を上げるとゴンと目が合う。
そのまま、少し目を逸らしながら笑って答えた。
「あ──、うん。ちょっとね、とある大富豪さんに連絡してるんじゃないかな?」
「大富豪ぅ? なんでそんな奴に連絡すんだよ」
「修行と言ったら、あそこしかないからね」
「あそこ?」
「うん。G.Iだよ。──今後のことを考えて、1台くらいは譲ってもらおっかなって」
ベッドの上で寝そべりながら、組んだ両手の上に小さな顔を乗せてこれからに期待するように、ネオンは少し意味深な笑みを浮かべた。
次の更新はまた未定です。
なるべく早い更新ができるようがんばります。
よろしくお願いします。