今日も今日とて占い師はがんばります   作:風梨

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お待たせしました。
HUNTER×HUNTERの連載再開と聞き、いてもたっても居られず。
構成中だったけど、中断して頑張る。

前回:ゴン、キルア、クラピカ、レオリオが仮拠点に移動。ビスケが彼らの修行のため、GIをバッテラから譲り受けに行った。

その後からです。
よろしくお願いします。


始動

 

 

 

「──さて、行きましょうかね」

 

 数時間後。

 部屋に戻ってきたビスケが抱えるのはジョイステーションと呼ばれるゲーム機器だった。

 キルアやレオリオ、クラピカは知っていたために『何故』という疑問が浮かんでいたが、ゴンだけはもっと根本的な部分で疑問を浮かべて居た。

 

「ビスケ、それ何?」

 

「あー、野生児って言ってたもんな、今時珍しい奴。ジョイステだよ、ジョイステ。ゲーム機で、色んなカセット入れてゲームして遊ぶんだよ」

 

「へー、そうなんだ」

 

「だからこそ、何故それを用意したのか、わからないのだがな。ビスケ、何故キミはそんなゲーム機を抱えているんだ?」

 

「そーだぜ、オレたちは修行するためにって、まぁオレはどっちでもいいんだけどよ」

 

「レオリオの戯言は置いておいて「オイ!」、ビスケ。是非聞かせて欲しい。これからに関係するのだろう?」

 

「いい勘してるわ。そーよ、ジョイステ。もっと言えば中に入っているデータカセット。『G.I』っていうゲームがあるの」

 

「……先ほどネオンが言っていた単語だな」

 

「あらそう。じゃあもう説明は聞いた?」

 

「いや、はぐらかして答えてくれなかった。体験したほうが早いと言ってな」

 

「まー、そう言えばそうねぇ。じゃあ、さっそくだけど行きましょうかね」

 

 そう言ってビスケは部屋の中央のテーブルにジョイステーションを鎮座させた。

 ニンマリといつも通りの笑みを浮かべたビスケが一室を見渡して、ネオン以外の全員が困惑しているのを確認しながら、悪戯っぽく面白そうに笑った。

 

「誰から行く?」

 

「……じゃあ、オレから!」

 

 ゴンが元気よく手を上げてそう言った。

 さっきまでの困惑はもうどこかに消えていて、何が起こるのか、というワクワクしか表情には浮かんでいない。

 

 ビスケは少し懸念に思い至ったが、まぁいいか、と思って頷いた。

 ジンの残したROMカード。

 今はまだゴンの生まれ育った家にある筈のそれを使わせるのが難しい、という懸念点だったが、今回はセーブが必要ないただの修行だ。

 本格的なゲーム攻略はまた後日にして、その時に使わせれば良いか、と瞬時に思考した。

 

「そうだわね。じゃあ、ゴンから行っておいで。合流しないと大変だから、入口からは動かないようにしなさいよ」

 

「うん。って、あの、ビスケ?どーいうこと?」

 

 入口。動くな。

 その単語が、このゲーム機を使った上でどう意味するのか、まるで理解できなかった。

 ゴンはそもそもゲーム機を知らないし、使った事もないが、さすがにこれを使ったらどこかに飛んでいく、なんて想像すらしていないので、そう言われても全くイメージが湧かずに困惑気味だった。

 

「行けばわかるわさ。このゲーム機に手をかざして『練』をしなさい」

 

「えーっと、こう?」

 

 ゴンが言葉を続けて手を翳して、オーラを増した瞬間。

 ビスケはゴンが質問を続けられないタイミングで、言い放った。

 

 珍しいことに、ビスケは優しげな微笑みを浮かべていた。

 

「あと、このゲームはジン=フリークスって奴が作ったゲームだわよ」

 

 びっくりした顔をしたゴンが、ビスケの方向を振り向く前。

 瞬間移動染みた挙動でゴンの姿が掻き消えた。

 

「ふーん、これも『念』って事ね」

 

「……これは」

 

「おぉ!? 消えたぞ! 大丈夫か?」

 

 キルアとクラピカとレオリオが、ゴンの居た場所の周りで声を上げた。

 

「次オレね、言っとくけど譲らねーから」

 

 その後はキルア、クラピカ、レオリオの順番で飛んでいく。

 

 そして残ったのはビスケとネオンだけになった。

 師弟は向かい合って、最後の確認をしていた。

 

「ビスケ、予定通りって事は『サンビカ』は彼女の治療が出来たんだね」

 

「ええ、バッチリだわね。けど、あんたもよく思いついたわね」

 

感心したように頷き、続けられた説明は事後確認のようなものだった。

 

「GIであらゆる病を治すカードがあるなら、それを作った者が居るはず、っていう推測には脱帽だわ。それを考えるならあの子しか居ないのもよくわかる。『歌うのが苦手』なのに、それを能力にしている子だからね。歌わずに吐息だけで『サンビカ』の能力を最大限発揮できる、っていう『大天使の息吹』はある意味納得だわ。あの子の理想そのものだもの。まぁ歌うっていうヘンテコなリスクだけど、結果的に効力は跳ね上がってるんだから、あれで正解なのよね。長年この道にいるけど、未だに『念』ってのは不思議だわねぇ」

 

「あはは、思いついたのは偶然なんだけどね。じゃあ、私は予定通り『実家』に一度帰るね。ダルツォルネさんからの連絡で必要な人員を雇うことには成功したって連絡きたから、準備してくる」

 

「……気をつけなさいよ。一応ノヴには護衛に付いてもらうけど、逃げる専門みたいなとこあるわさ。あの旅団に喧嘩売るには心もとないからね」

 

「うん、もちろん。無茶はしないよ。──交渉はもう、諦めるから。全面戦争の準備をしないとね」

 

 覚悟を決めた顔つきで、ネオンはそう静かに言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バショウはとある屋敷の内部を歩いていた。

 数ヶ月前に雇われて、しばらくは仕事がないため自由にして良いと給金だけを受け取れる素晴らしい職場環境だったのだが、つい先日に連絡が入って仕事が始まるというご用命だった。

 のんべんだらりとさせてもらった分は働かねばならない。

 比較的風来坊な質で、仕事は誠実に熟すが、やる気を出すことが珍しいバショウにとっても、この依頼は可能なら継続したい質のものだった。何せ食っちゃ寝してるだけで金が入って来るのだ。これ以上の仕事など望むべくもない。しかも金払いもいい。最高の案件というほかない。

 

 金は幾らあっても困らない。

 何故なら、金があればより長い期間放浪できる。

 

 放浪するために金を稼いでいるバショウからして、楽に大金を稼げるこの職場を逃す手はない。

 そんなこんなで、モチベーションは比較的高かった。

 

 そんなバショウには仕事仲間がいる。

 面接の時以来だが、揉み上げがくるんとなっているトチーノという先輩、スクワラという犬使いの先輩、ヴェーゼ、センリツ。

 そしてリーダーであるダルツォルネ。

 

 全員と面識があるが、久方ぶりすぎる。

 とはいえ、コミュニケーションは重要だ。

 そんな思惑もあっての、雑談をしようという意図でバショウは発言した。

 

「──しっかし、大層なお屋敷だぜ。いったい幾ら掛かってるんだ?」

 

「あら、良い目をしてるわ。廊下に置いてある美術品だけど、それだけでも相当な値打ち物ね。この屋敷全体を含めたら幾らになるのかしら。専門じゃないけど、良い物はやっぱり良いわね。目の保養になるわ」

 

 小さな身長の、独特な風貌のセンリツがそう言って。

 その後にラフでセクシーな服装のヴェーゼが気だるげに続けた。

 

「ふーん、そういうもんなの? 美術品とか、芸術とか、アタシにはよくわかんないけど、依頼主は相当な金持ちってことよね。自分の情報すら隠してるなんて、別に珍しいことじゃないけど、数ヶ月も放置されたのはどういう訳? ──隊長さんは何か知ってる風だけど。ねぇ先輩方、教えてくれない?」

 

 面接の時に、ヴェーゼにはあまり良い思い出のないスクワラが少し怯みながらも先輩として質問に答える。

 ちょっと間が空いたのはご愛嬌である。

 

「……オレも詳しくは聞かされてねぇ。知ってるのは隊長だけだ。だろ? トチーノ」

 

「ああ、オレも知らない。オレとスクワラはもう雇われて数年になるが、未だにボスの顔すら見たことがない。護衛も、屋敷の警護だったり、機密性の高い代物の輸送だったり、その程度だ。だから、顔を合わせて挨拶するって連絡が来た時はたまげたよ。あの秘密主義のボスが? ってな」

 

「ふぅ〜ん。新人のアタシたちまで駆り出すって事は、相当にデカい山ってこと? 面白そうね」

 

 ヴェーゼが楽しげに、そして妖艶にそう言ったのを聞いて、バショウが雑談を引き継いだ。

 聞きたいのはボスのことだ。

 今から顔を合わせる。

 少しでも情報が欲しいところだった。

 

「ま、なんにせよ、オレ達は仕事をするだけだな。出来れば理解のあるボスであると嬉しいんだが、そこんとこはどうなんだ?」

 

「さぁな、マジで何もわからねぇ。調べようとした事すらねーよ。調べようとしたやつは、ほら、そこで絵画になってやがるからな。……少なくとも、イカれてやがるのは間違いねぇよ」

 

 スクワラが指差した方向を見れば、コンクリートで埋められたような、壮絶な断末魔を感じさせる人間の標本が飾ってあった。

 ゾッとしない話だ。

 良い仕事かと思えば、そういう裏がある。

 よくある事だが、選択肢さえ間違えなければ良いとバショウはそう考えた。

 

 何故なら、先任であるスクワラとトチーノ(揉み上げがくるんとなっている先輩)が生きてる。

 隊長でもないコイツらが生きてるって事は、生き残る選択肢さえ間違えなきゃ問題ない、と捉える事が出来る。

 

 もちろん、油断は禁物だが。

 バショウがそう結論づけて、感謝の言葉を口にする前に、隊長であり先頭を歩いて沈黙を保っていたダルツォルネが、重い口を開いた。

 

「──お前ら、雑談はそこまでにしておけ。……そろそろボスの部屋に着く。いいか、絶対に、これだけは忘れるな。カケラの稚気すら見せるな、次の瞬間に首が飛んでいても、オレは責任を持たんからな」

 

 カケラの稚気。

 つまりは侮り殺意を見せるな、ということか。

 護衛対象に? 殺意? 

 ありえねーと思いながら、唯一隊長が口を開いたと思えば、それだ。

 何か根拠があるのだろう、と思い視線で先を促す。

 

 その場の全員が、その行動を取った事で、ダルツォルネは足を止めた。

 振り返りもせず、ただ淡々と口にした。

 

「……いいか、オレは過去に一度だけ、あの方が『本気』で戦うのを見たことがある……。相手はプロのハンターで、ちょっとした食い違いで喧嘩になっていた。相手の姿は、オレのただでさえデカいこの顔が、このさらに5倍に膨れ上がるから決して口にしないが、壮絶な戦いだった。オレですら目で捉える事すら出来なかったくらいにな」

 

「そいつはおっかねぇ」

 

 戯けたバショウの言葉に、冷たく目を細めたダルツォルネが続ける。

 

「……喧嘩のキッカケはなんだったと思う? 事が終わった後でボスに聞けば、なんて事はなく笑いながら教えてくれたよ」

 

 その光景を思い出す。

 ダルツォルネは薄く笑って、けれど冷や汗を垂らしながら続けた。

 振り返ったダルツォルネの表情は強張っていた。

 

「──食事中に、ナイフの切っ先がこっち向いてた、ってな」

 

 それがお遊びの一環であった事を、ダルツォルネは知らなかった。

 緊張感を維持して、常に気を張るための修行の一環として、ビスケがナイフを向けるだけで反応するように訓練している最中のことだった。

 それをダルツォルネが目撃してしまったのは不運という他ないが、『GI』で『絶』の技術が磨かれすぎた故の不幸だった。

 

 想像の中でボスのイメージを膨らませて、その場の全員がゴクリと生唾を飲んだ。

 

 僅かに遅れた足取りを取り戻すように、ダルツォルネは力強く踏み出した。

『GI』で鍛えられた『纏』をまとって、堂々と。

 

 

 








──
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佐藤東沙さんありがとうございます。
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