本編難産のため間話
「──よぉ。来るもの拒まず、なんだろ? オレも混ぜろよ」
カキン国。
貧困層に覆われた一区画。
その外れにある周囲から浮いた豪華な屋敷が立ち並ぶ一角にて、ジン=フリークスは両手をポケットに突っ込んだまま、眼前のソファーに横暴に腰掛けて左右の両手に美女を侍らせる、世界最高峰のハンターの面影を感じる男と向かい合っていた。
横暴な男が、大きく表情を変える。
本人は『ニヤリ』と笑ったつもりなのだろうが、大味な性格なせいで『ニカリ』と破顔していた。
心の底から、この予想外の来訪すらも、本当に楽しげに待ち受けていた。
「はっは、待ってたぜ。──だが、それはまだ予定ってだけなんだが、まるで
「わりーが、それは言えねーな。で、どうなんだよ。ビヨンド」
「その前に、お前に一つ聞きたい。お前は、これまで一人でやるつもりだったんだろ? 気持ちはわかる、邪魔されたくねぇ、新大陸はオレだけのもんだ。そういう考え方は大いに共感する。まぁ賢くはねぇが。そんなお前が、考え方を変えてまで、オレのところに来やがったのは英断だが……、俄然! 腑に落ちねぇ!」
ビヨンドは言葉を切った。
次の発言に対する間だった。
「──邪魔すんなら潰すぞ?」
ジンはその言葉に対して、口角を粗野に傾けて強気に笑った。
「やってみろよ」
途端に空気が割れる。
世界最高峰。
そう表現して過言ではない、両者が発するオーラが『ビリビリ』と空間を揺らす。
そそくさと、ビヨンドの近くにいた者たちが離れた。
ジンとビヨンド。
その間を邪魔する者も、止める者もいない。
戦闘勃発か、と思われたその時にビヨンドが呆れたようにオーラを留めた。
もう先ほどの緊張感は霧散して影すら残っていない。
応じてジンもオーラを収めるが、怪訝そうに片側の眉をへの字にさせた。
ビヨンドが続ける。
「やめだ。試すにしては言い過ぎたな、お前とやり合うのはゴメンだぜ」
そんなビヨンドのなぁなぁで済ませようとする態度に、冗談半分本気半分で、子供っぽい表情のジンが応えた。
「え、嘘だろ。一回やり合わねーの? そっちの方が話が早いって。ボコってからが交渉の本番って言うだろ?」
「言わねえよ!?──オレは親父やお前と違ってな、一対一の戦いには興味がねぇ! そんなお前とやり合ってられるか! 面倒くせぇ!」
「──冗談よせよ。お前のオーラはそう言ってねーぞ」
「ふん! まぁオレが『やる気』出せば、お互いめんどうな事になる。それは間違いねぇ。お前も本気出す気はなかっただろ。パフォーマンスのつもりか?」
ビヨンドの予想ではジンが頷くだけだったが、実際には首を捻って顎に手を当てながら何事か考えた。
何故なら別にそんな意図はなかった。
とゆーか、ただの行き当たりばったりだった。
「ん〜〜、まぁそういう意図があったのは否定しねーけど。ビヨンドって男に興味があってな、それを確かめたいって気持ちの方が強いか。……うん。まぁ成り行きだな」
「……はー、オレも大概だが、お前も大概だな」
馬鹿かお前、と言わんばかりの呆れ顔を見せるビヨンドに、口元を恥ずかしげに『イーッ』と歪めてジンがそっぽ向いた。
「うるせー。で、どうなんだ。入れんのか、拒否んのか。ハッキリしろよ。もう答えは出てんだろーが」
「ああ、参加? かまわねぇよ。
「あー、そういう基準か。まぁ邪魔するつもりはねーよ。これが最速ってのはオレも理解してるし、あんたに共感もしてる。楽しみにしてた渡航に邪魔が入ったような気分だったんだが、話を遡ればあんたの方が先に計画してたんだし、そこら辺はオレの問題だな」
「……おかしいな。話に聞いてたほど無茶苦茶じゃなくねーか? もっと破天荒っつーか、猪みてーなやつかと思ってたんだが、意外に話せる、な?」
「まぁ小さな無茶をコツコツ積み重ねて出来たイメージだからな、ってうるせーよ」
「参加するのは構わねーが、お前は何ができる? 参加人数無制限をぶち上げる予定ではあるが、それは各国に対して色々うやむやにするためだ。予定してるから混ぜろってんなら、『今』参加させる価値はねーぞ?」
そこでジンは、指を二つ立てた。
その後に、指を一つにした。
「──オレが提供すんのは二つ。求めてんのは一つ」
一息を吸って、ジンは信じがたい発言をした。
「あんたの枷を、取っ払ってやる。もう一つは資金の提供だな。求めてんのはここのNo2だ。んで──」
資金の提供。
No2の地位。
そんなものはどうでもいい。
ビヨンドは立ち上がった。
その前の発言が、あまりにも聞き捨てならない。
先ほどは『やる気』ではなかった。
抑えていた。
だが今は、そのオーラを『全力』に近いほど噴き出しながら、今までとは明確に異なる、一切の緩みのない、静かな表情で言葉を繋げた。
「──オレの枷だと? 理解した上で言ってんだろーな? 冗談じゃ済まされねぇぞ、おい」
ビヨンドの枷。
ネテロの言は『息子は再挑戦を望んだが、ワシが死ぬ迄は許可せぬ枷を与えた』である。
そう。
死ぬ迄。
つまり、アイザック=ネテロが生きている間のみの枷、である。
その枷を外すと言うならば、意味はたった一つ。
『アイザック=ネテロに対する殺害予告』に他ならない。
殺せるものなら、殺したい。
それが出来ないからこそ、座して待っているのだ。
より確実な道を、待つ事をビヨンドは選んだのだ。
謀殺する機会を虎視眈々と狙いながら。
オレが出来ねーと判断した事を、お前が覆せるのか?
ビヨンドは言葉にせず、行動とオーラで語る。
が。
「──そう逸るなよ。まだ全部言ってねーだろうが」
ジンは、尋常ではないその威圧を呆れ顔で受け流した。
正確な予想に基づく行動。
念能力などの特殊な能力ではなく、ただの思考力として、ジンは訪れる未来をある程度把握していた。
さらには、ネオンが今後どう動くのかも加味した上で。
「ジジイは、ネテロは遠からず会長から引き摺り下ろされる。お前もそれを見越してんだろ。だから、待ってる。違うか」
眉を吊り上げるのはビヨンドだった。
最悪寿命を待つつもりだが、出来るならその前に仕留めたい。
そのためにパリストンを副会長として動かし、協専のメンバーに支えさせている。
親父を会長から引き摺り下ろす。
計画の第一段階だ。
その後はどうとでもなる。
パリストンとの計画にまで勘付かれている事に、ビヨンドは眉を顰めた。
「結果は変わらねーよ、お前の計画……、あー、パリスの計画になるか。そっちでも構わねーし、何ならオレの提案に意味はないかもしれない」
「はぁ? なら、何でてめーはここにいて、オレに提案してんだ?」
ネオンが語った結果との差異はほとんどないだろう。
いや、少なくとも過程は大きく変化するが誤差でしかない。
ジンが狙うのは過去。
未来ではなく、過去を狙う。
──ネテロが『死ぬ』のは変わらない。
結果を変えたくて動いているのではない。
今回に関しても、それは一貫していた。
この男の行動指針はただ一つである。
「オメーもおかしなこと聞くな? ──狙った通りに獲物が動けば、ハンター冥利だろ?」
──道中楽しみたい。それだけさ。
どこか透き通った笑みすら浮かべながら、『捻くれ者』のジンは鮮やかにそう言ってのけた。
冨樫先生を真似して進捗あげております。
気が向きましたらよろしくお願いします。
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@shumi_dayon
追記
ちなみに破天荒はわざとっす。