──話は、ビスケット=クルーガーがネオンと別れて現実世界に帰ってすぐにまで戻る。
ビスケはさっそくホームコードにお目当ての連絡が入ってないか確認したが、まだ返事は来ていなかった。
予想通りと言えば、予想通りではある。何せずっと無視され続けているのだから、もはや期待を持って確認するのが馬鹿馬鹿しく感じるほどの虚無の境地に至っていた。
ただそれが、フツフツと湧き上がる怒りを抑える理由になるかと問われれば断言できる。
──ぜっっったい無理だわねえ。
ぷるぷる震えながら、拳を固く握る。
脳裏に思い描いたのはターバンを巻いた男の姿。
「あんの放浪癖〜〜〜……!!! あたしがこんなに連絡入れてんのに無視するとは良い度胸だわね!!! もういいわ! 別の手段も模索するわさ!」
そこで切り捨てて、連絡を取る事自体を諦めない所が年の功を感じさせる。なんて本人に言えば月まで飛ばされそうであるが、幸いなことにこの場にはそれを指摘する者は居なかった。
さっそくビスケは別の手段に向けて連絡を取り、アポイントを取り付けた。電話口で豆男がなんやかんやと苦言を言っていたが、怒り心頭のビスケは何処吹く風だった。渋々といった様子の豆男に許可を取り、予定通りに足を向けたのはハンター協会の会長室。
この世界一座り心地の悪い椅子に座って踏ん反り返っている男こそが、今回ビスケがアポイントを取った相手だった。
コンコンとドアを叩くや否や、すぐさま声を掛けて開けた。返事は待たない。
「入るわよ」
許可を待つような間柄ではないし、そんな遠慮はとっくの昔に捨てた。というより、人が悪いことで有名なこの男と付き合おうと思えるのは、ビスケの持論ではこれくらい遠慮のない人間か、盲信的に従う人間くらいなものだ。
他の有象無象は知らないが。
そんな堂々とした手順で入室したビスケが見たのは、いかにも仕事してます、今後のハンター協会について悩んでます、といった雰囲気を腕を組んで目を瞑って出しつつ、机の上に出された書類が不自然なほどに全く手の付けられていないと判然できる状況の『じじい』の姿だった。
そして、室内に漂う匂いはお酒の香りだ。
──このじじい、仕事してるフリしながら酒盛りしてやがったな。
酒瓶とコップはお得意の素早さで隠蔽したのだろう。
無駄な事にハイスペックさを活かすじじいだ。
そして匂いを隠し切れていない事がわかっているのに、あの余裕綽々とした表情。
ピキッと眉間に訳もなく亀裂が入りかけるが、いつものことなので努めて笑顔を維持する。
無遠慮に入室したビスケにも、何ら苦言する事もなくじじいはヘラっと笑った。
「おお、久しいの。4年ぶりか?」
「くらいかしらね、相変わらず妖怪みたいなじじいだわさ」
「お主は……、少し老けたか?」
逆鱗に容赦無く触れやがった。
ピキピキ眉間が音を立てるのを感じながら、努めて冷静さを維持する。
──落ち着きなさい、あたし
いつものことでしょう。じじいのペースに飲まれちゃダメよ。
……文句は言うが!!!
「うっさいわね!! あたしのことはいいの! それより本題に入らせてもらうけど、A級首と戦えるくらい強くて口が硬いのが2,3人。出来れば5,6人ほしいの。心当たりない?」
「……ふーむ。わしを頼るとは珍しい。デレ期か?」
軽度のピキピキが入るが堪える。
「はいはいそうよデレたわよ。で、どうなの?」
「ふむ、少し待っておれ」
じじいは書類をいくつか取り出して、片手でこめかみを押さえながらふむふむと言い始める。
しかし、絶対と言っても良いが、このじじいは書類を読んでない。
こういうじじいなのだ。
視線はそれっぽく走らせているが、絶対、絶対、絶対読んでない。既に決まっていることを悩んでいるフリをしているだけだ。
そして、ビスケがそれを理解できるということもわかってやっている。
全て分かった上でその姿を見せている。
(──で。全てを分かった上で見せていると、あたしに伝わっている事も、じじいはわかってああああああああああああああ!!!!)
内心を荒ぶらせ、それでもビスケの表情筋はピクリともせず、ニッコリ笑顔を貫いている。
じじいは僅かでも面白そうな断片を見つければ目を輝かせて突っ込んでくる。もし仮にネオンの事を知られればどんな無理難題をふっかけられるかわかったもんじゃない。
絶対に隙は見せない。
そんな覚悟も伝わったのだろう。
会話の途中で座った椅子の上でそのまま待てば、下手な芝居を止めて、面白くなさそうにネテロは言った。
「ふーむ、そうじゃな。便利な奴らじゃと、モラウ、ノヴ辺りか。あの二人は使い勝手が良いぞ」
他には──というじじいの言葉を覚えておく。
嘘は言わないのだ。
ただ、ひたすらに油断ならない。
「そう、助かったわさ。またお酒でも持ってくるわね」
「もう行ってしまうのか? 聞くだけ聞いて終わったらぽいか? 老い先短いじじいの話も聞いてくれんかの」
オイオイと嘘泣きをしながらチラッと見つめてくるネテロを前に額をピキらせ、歯噛みしたい気持ちを堪える。
今すぐにでもこの場から立ち去りたい。
GIの中に戻ればブループラネットを見つけると言う、待ちに待ち望んだ仕事が待っているのだ。時間を取られればそれが遠のく事を意味する。
聞けば、絶対に面倒なことに時間を取られるから。
だが、ここで頷かなければもっと面倒な事になるのは明らかだった。
ため息を押し殺しつつ、ビスケは再び椅子に腰を下ろした。
「──で。今度はどんな厄介事だわさ」
案の定。
ビスケがその仕事を片付けるのに、1ヶ月以上掛かった。
(あんのくそじじいいいいいいい!!!)
依頼された仕事中、ビスケが心の中で絶叫したとかしないとか。
五の付く日にお祭りがあると知ってから3日目。
あたしはどんちゃんと騒がしい市場の中を通り抜けて、噴水の近くには話の通りで柔和な笑みを浮かべる水の司祭様が立っている。お祭りの時でもない限り水野司祭様には話しかけられないため、ここは逃せない。ブループラネット入手のための第一歩になる事を少し緊張気味に期待しながら声を掛ける。
「──あの、少しお時間いいですか?」
「ん? ええ、構いませんよ。旅行者の方ですね、いかがされましたか?」
くるりと向きを変えて、あたしを見た水の司祭様は普通の顔立ちをしている。
その普通さが周りに安心感を与えるような、そんな人だった。
そんな彼を前にあたしが用意するものは一つだ。ブックと唱えるて、バインダーから一枚のカードを、例の『ブループラネット(偽)』を取り出して水の司祭様に差し出した。
「この綺麗な石なんですが、貰ってくれませんか?」
ドキドキしながらカードを司祭様に見せると、彼は目をまん丸くさせて驚いた。
そして懐かしげに息を漏らすと優しげな微笑みを浮かべた。
「おぉ、懐かしい。今はあなたが持っていたのですね」
よし! と特殊な会話がスタートした事に内心で拳を握る。手応えありだ。
あたしからカードを受け取って、頬を緩ませた司祭様はこの『ブループラネット(偽)』がどういう経緯で生まれたのか教えてくれた。
クエスト進行のための話なので、あたしもヒントが隠されているかもしれないと聞き流さずに黙って聞いた。普段はゲームの会話文なんて基本スキップしちゃうんだけどね。
──昔々、仲の良い5人の男たちが居ました。
彼らはそれぞれ違う教会の出身でしたが、気が合ったために自然と仲良くなりました。
本当に仲の良かった5人はこの関係が大人になっても続いていくものだと信じて疑っていませんでした。
しかし、5つの教会は昔から折り合いが悪く、彼らは大人の都合で引き離されてしまいました。
悲しみに暮れた彼、今で言う水の司祭様は、きっと『ブループラネット』がたった一つだから争うのだと考えました。
そこで彼はもっと多くのブループラネットがあれば、5つの『ブループラネット』があればこんなことは起きないと思い、1つだけ模造品を作りました。
出来上がったのは綺麗なだけの石でした。
ブループラネットと似ているものの、偽物であることは明白でした。
そして、『ブループラネット』の偽物を作った事。
そのことを教会に知られてしまった彼は、もう二度と作る機会を得ることが出来ませんでした。
二度と作らない事を条件に許してもらえたのです。
たった一つだけ作られた『ブループラネット』の偽物は彼の手から離れて、今はどこにあるのかわかりません。
──滔々と語り終えた水の司祭様はほぅと吐息をこぼした。
過去を思い出して憂いながらも、輝かしい日常に想いを馳せて懐かしむような眼差しだった。
「……きっと、この『ブループラネット(偽)』が私の作ったものなのでしょう。これも神の……、いえ、それは不敬ですね。何かの
「……! はい! 受けます!」
「ありがとうございます。……依頼というのは他でもありません。他の教会との橋渡しをお願いしたいのです。私たちは長い間いがみ合って来ましたが、それはきっと正しい姿ではありません。本来なら同じ神様を信じる者同士で協力し合ってこの街を生きているはずです。火の司祭様はここから北にあるマンドラゴーラの実が大好きです。非常に危険な怪獣ですが、取って来てもらえませんか?」
──明らかにクエスト進行だ!
今度は内心だけじゃなく、思い切り拳を握りながら頷いた。
「まっかせてください! あたしが取って来ますから!」
「ありがとうございます、ではこれを。火の司祭様にすぐ会える許可証です」
水の司祭様から依頼を受けたあたしはさっそく喜び勇んで北の森に向けて駆け出す。
目指すは『マンドラゴーラの実』。
それを手に入れる事が『ブループラネット』に繋がる。頭上のヴィーちゃんはあたしと同じように、喜びのリズムで身体を小刻みに揺らす。そんなヴィーちゃんに視線を向けながら、あたしはようやくイベントが進んだ事に顔を綻ばせた。
「ヴィーちゃん! これでブルプラに向けて一歩前進だね!」
『ゔぃいいいい〜〜!』
機嫌の良いヴィーちゃんの鳴き声を聞きながら、あたしは北の森に喜び勇んで別け入った。
──北の森。
初めてのエリアなので少し警戒しながら進んだけど、ある程度進めば分布もわかってきた。
この森で襲ってくるのは植物と昆虫系の怪獣達だった。
蔦で拘束しようとしてくる植物。
地中に生えて落とし穴のようになっている植物。
などなどの、それらのトラップ型の食虫植物は『凝』を欠かさない事で対処した。ビスケの指導の賜物で、もう意識せずとも目を凝らすだけで使えるくらい『凝』は身体に染み付いてる。
特定のエリアに踏み込むと襲ってくるハチの群れは『堅』でノーダメージ。
オーラの籠もった巣を破壊するとハチ達もヘナヘナと地面に落っこちた。
ツルを張り巡らせて植物自体も自走するツリー型の怪獣は全力の『堅』という力技で突破した。ブチブチと蔦を引きちぎりながらトラップの真っ只中を中央突破。ビスケが額に手を当てて嘆息する姿を幻視したけど、気のせい気のせい。
必死になって作ったであろう包囲網を一瞬で突破されて、目が点になっている人の顔を模した木をぶん殴った。
キラキラと舞う木片の中に涙が見えたような気がした。
まぁ、ただの樹液だと思うけどさ。
その後も一面を埋めるアリの大群だとか。
(たぶん『絶』で回避)
ヒラヒラ舞いながら麻痺毒を撒き散らす蝶々だとか。
(たぶん布を『周』して口に当てて防毒対処)
しれっと後ろから刺そうとしてくる蠍だとか。
(たぶん『円』を使うべき)
全部『堅』と気合いと勘で突破した。
鍛えられた『堅』さえあれば多少の事は何とかなる。ってクエストだね!
──違う、そうじゃない。
という謎の声が聞こえたけど、うん。気のせい気のせい。
そのままバッタバッタと、来る敵来る敵を『堅』で轢き殺し──じゃなくて、薙ぎ倒しながら進み、目的地であろうボスエリアっぽい広場に出た。
円形に開かれた森の広場の中央にはドデカい蕾を抱えた花が一本だけ生えており、重すぎるのか
優にあたしを三人は丸呑みできる大きさの蕾で、葉っぱも相応に大きい。
何せ葉っぱですらあたしの数倍はある。青々とした色味をして左右に1枚ずつ備えている。……あれだ。某Mのイニシャルの付いた赤い帽子を被ったオジサンに出てくる、パックンみたいな姿だった。って、葉っぱが2枚だけって植物としてどうなの? というリアルに喧嘩売ってるとしか思えない姿の植物。たぶん、これが、マンドラゴーラだ。
警戒しながらも近づき、ある程度の距離に入ると『ぐぐぐ』と花が
中はテラテラとヌメっている。
開いた花びらにはギザギザの歯がこれでもかと無数に生え揃っている。
もし蕾に囚われたら歯で擦り潰されながら食われるという、壮絶な死を迎えそうだ。
そんな威容を前にして、あたしが浮かべるのは笑みだ。
警戒はしてる。油断もない。だけど、どうしても笑みが溢れるのは止められない。
その理由は察して余りある。
HUNTER×HUNTERという世界。ビスケに師事を仰いで念能力を覚えて、身につけた技量の全てを使って目的のために邁進する。
それが楽しくないわけがない。才能があったことも、もちろん嬉しいけど。何よりも今この場所で戦える事が震えるほど嬉しくて楽しくて堪らない。
「ヴィーちゃん」
『ゔぃいい!』
呼び声に応えて、ヴィーちゃんが念能力を発動させる。
──《
「あたしって。──意外と戦闘狂なのかもね」
ほんのりと微笑みながら囁けば、応じるようにパックン(仮称)が大きく口を開き、並んだ鋭い歯を見せつけてくる。
生理的な嫌悪感を抱く見た目と、威圧的な見た目の相乗。
そんなパックンを見て怯む気持ちがないとは言わない。だけど、それを上回って塗り替えるほどの興奮があった。
「はじめよっか、ヴィーちゃん」
『ゔぃいい!!』
パックン(仮称)を見つめ、動きを読んだ上であたしは全力で踏み出し躍りかかった。
途端にパックンは地面から根っこを飛び出させ、びゅんびゅんと鞭のようにあたしに向けて
──が。
既に予知によって察していたあたしは、初速に乗ると同時に減速を予定していた。完全に裏を描いたあたしは横に飛んで、地面を跳ねるように攻撃を続ける根っこを避ける。
的を絞らせぬよう、ジグザグに地面を跳び抜けばあっという間にパックンの眼前に躍り出た。
『練』で増大したオーラの一部を『凝』で拳に集めて、走って来た慣性と体重を乗せる。
踏み込む足は地面を抉り陥没させ、渾身の一撃をお見舞いする。
ズゴンと空気が震えるほどの衝撃音を響かせてあたしの拳が放たれる。
──が、しかし、それは2枚の葉っぱを抱き寄せたパックンが防いでいた。
真正面から挑みかかればこうなるのも道理だ。そして、あたしの真上から影が降りる。
蕾を開き、大口を開けたパックンの口撃。
『凝』でオーラを再び準備しながら、歯の並んだ口が降ってくるのをすぐさま飛び退き避ける。
あえてギリギリで避けたあたしの目の前には、無防備に地面に突っ込んだ花弁が広がっている。
──先ほどの渾身の一撃は、これを誘うための一手でしかない。
予知能力をフル活用した戦術の戦果を誇りながら、あたしは降りてきた蕾に向けて『凝』で集めておいたオーラを乗せて正拳突きを放つ。
花弁を裂いて、蕾が中で守っていた果肉にまで到達すると、念の籠もった拳は内部からも衝撃を与えてパックンを破裂させる。致命的な大ダメージだ。
十分な打撃を与えた後はすぐさま離れて次の攻撃のため構える。
『ギィェエエエエエ!!』
パックンは狂ったように蕾を振って果肉と汁を撒き散らす。
辺りに『もわん』と甘い匂いが満ち溢れる。
──あたしの第六感が危険だと囁いた。嗅ぎすぎれば余り良くない。
すぐさま3秒先を見る。
思考は一瞬だった。
左足を踏み出し、低い姿勢で飛び出す。
突っ込むあたしは進路を防ぐように翳されるパックンの葉っぱを、逆に足場として利用して跳ね回って空に飛ぶ。
蕾の真上にまで跳んだ。
「はぁあああ!」
あたしは勢いで叫びながら、引き絞っていた右腕を打ち下ろした。
拳から伝わる衝撃。
命脈を刈り取るのに十分な威力だと確信する。
あたしの振り下ろした一撃は、確信するに足る波紋を伝播させて地面すら割っていた。
体重と念の籠もった一撃は瀕死のパックンを絶命させるのに過剰なほどのダメージだった。
ぼふん、と体格相応の大きな音と煙を立てて、パックンが消えてカード化すれば、あたしは落下しながら姿勢を制御して空中のカードを掴む。
地面に着地する頃にはパックンの残滓である煙も消えており、あたしの手の中にあるカードだけが戦いの成果を示していた。
「パックン討伐完了! ──えーっとなになに? 『火の実:マンドラゴーラが落とす実。果肉たっぷりでとってもジューシー。調理しなくても絶品の味。ただし非常に甘いのでびっくりしないように注意が必要』あっ。パックンじゃなくてマンドラゴーラだ」
とまあ、そんなことは置いておいて。
「よっし! 火の実ゲットぉ〜!」
『ゔぃいい〜!』
「さっそく火の司祭様に会いに行こう!」
そう。キーアイテムを手に入れたなら、やることは報告! ゲームの基本だよね。
駆け足で教会に戻り(帰り道も轢き殺しながら)、火の司祭様と面会を依頼する。
許可証のおかげですんなりと通された。
「ふむ。私に会いたいという旅行者はあなたかな? いったいどんな用件なのか」
教会の応接室で待っていると、少し厳つい顔をした火の司祭様が顔を出した。
額に傷はないが、あってもおかしくないくらいの強面だ。
パパの部下に居そうなくらいの強面である。
少しの懐かしさを覚えながら予定通りカード化されたアイテムを取り出す。もちろん、採れたてほやほやの『火の実』だ。
そしてこの『火の実』が水の司祭様から依頼された内容であることも伝える。
厳しい顔を少し緩めながら、火の司祭様はゆっくりと頷いた。
「……そうか」
「あの! 後これもどうぞ」
用意したるは『ブループラネット(偽)』である。また新しいクエスト貰えたりしないかな。
「……これは、俺が作った『ブループラネット』?」
そこからはとんとん拍子に話が進んだ。
要は仲直りクエストだ。
ABCDEの教会は同じ神様を信じているけど、それぞれ違う精霊の話を信仰基盤にしている。
なので、ギスギスしてしまったり、仲が悪くなったりしてしまっていた。
仲直りの仲立ちをそれぞれの司祭に依頼されたプレイヤーは、5つのクエストをクリアする。
そして、5つの教会が仲直りした結果、功労者であるプレイヤーに神殿の『ブループラネット』を授与してくれる、という流れだった。
我らには模造品だけれども絆を感じられる、我らにとっての『ブループラネット』が5つもあるからと。
たった一つしかない『ブループラネット』を持て余したのでと冗談まじりに言われながら、あたしは5人の司祭からたった一つの本物の『ブループラネット』を受け取った。
つまり。
──SSランクである『ブループラネット』ゲットである!
「ぃやったあああ──ー!!!」
『ゔぃいいいいい!!!』
指定ポケットカードNo.81!
ビスケが喜ぶ顔が脳裏に浮かぶようで、スキップしながら岩場に戻る道中でポップ音が響き渡った。
──ポーン。
『他プレイヤーがあなたに対して《
『久しぶりだわね。いきなりで悪いんだけど、こっちまで迎えに来れない? 10日間過ぎちゃって、念のため持ってたカードも全部無くなったのよさ』
「ビスケ!!!」
『ん? なんかあったの?』
「『ブループラネット』!!! ゲットしたよ!!!!」
『──えぇ!!? ちょ、あんた! 無くすんじゃないわよ!? 取られたら今までの倍じゃ利かない修行を……ふふふふ』
「う、うん、気をつけるね」
『まぁ、あんたの事だから心配してないけどね』
不意打ちのその言葉が、信頼に裏付けられたものだと伝わってきて頬が緩む。
「んふふ」
『……なんか安心したわさ。当然だけど、あのじじいとは真逆だわねぇ。ほら、師匠を待たせるんじゃないわよ』
「はーい。『
その後のビスケは予想通りと言えば、予想通りだった。
まさしく嵐と形容するのが相応しい。
『
本能的にあたしはブックと唱え、カード化された『ブループラネット』を渡せば、打てば響く速度で間髪を容れずにゲインと唱えるビスケ。
現れるのはまさにこの世に二つとない煌めきを持った、摘めるほどの大きさの球体の宝石。小さな惑星と言われれば納得してしまうそうなくらい美しい色合いを魅せ、魅入られたようにビスケはうっとりと表情を赤く染めた。
あーでもない、こーでもないと言いながら、恍惚とした表情で『プラネちゃん』と名前を決めると、ハッと正気に戻ってあたしと視線が絡み合った。
無言の間。気まずげにビスケが視線を外した。
「お、おほほほほほ。……おほん! ──ありがとね。あたしのために取って来てくれたんでしょ」
とても優しげな、いつか見た微笑を
少しだけ頬が赤いのは先ほどの醜態のせいだろう。
周りを気遣う余裕を失うほど夢中になってくれたと思えば、なんてことはない。
そんなビスケの行動の全てが、ただただ嬉しかった。
あたしは満面の笑みで頷いた。
「……ありがとう、ネオン」
燦々と輝く太陽の下、ビスケは少女のような儚さで、はにかんだ笑みを浮かべた。
とある会長室での出来事。
「おー、わしじゃ、わしネテロ。うん、パリストンくん。ちょっと頼まれてくれんか。いま大丈夫かね?」
少しの間を空けて大袈裟なくらいにネテロは喜んだ。
「おお、さすがは副会長じゃ。頼みというのは
通話を終えたネテロは受話器を人差し指の上でバランスを取らせながら、もう片手で顎を触る。
茶目っ気たっぷりに片目を瞑って、意味深な微笑を浮かべた。
「どれ、お手並み拝見と行こうかの。ほっほ」
P.S
「そういえばあんた、ダルツォルネはどうしたの?」
「あっっっ」
悲報:ダルツォルネ今月、先月分の占い持って帰れず。
加筆済み
────
誤字報告お礼
『佐藤東沙』さん
『kuzuchi』さん
ありがとうございます。
P.S
(下記は読まなくても問題ありません)
──お知らせ──
パリストンがアップを始めました。