ぶっちゃけ悪ノリで書いた、でも後悔はしていない
豊穣の女主人、オラリオでは知らないものはまずいない、ここらで最もおいしい酒と、美しい店員たちを並べる名物酒場である。特に、美しい店員、豊穣の女神たちとも言うべき彼女達の一人、その一人はどこか他の人と比べると接し方が違う。
きっかけは小さなこと、でもどうなってかその距離感はすっかり短くなっていて、本当にどうしてこんなに綺麗な人が僕によくしてくれて、その上
……ベルさんのこと、待ってますから
「……」
何気ない一言、お店の客引きだったとしても、その言葉は男には突き刺さる。
本当に、どうしてあんなに胸を揺さぶってくるのやら
「……シルさん」
「呼びましたか、ベルさん」
「へっ……へぁあぁああああッ!!?!?」
転がる、石畳の道路の上で僕は坂を転がるように転がっていく。
「もう、ベルさんたら……そんなに驚かなくてもいいのに。傷ついちゃいます」
そんな気はないのに、シルさんは片目をつぶってニッと舌を出す。
愛らしい容姿、整った顔立ちは明るく柔らかく、どこか暖かい。
豊穣の女主人の店員、その一人であるシル・フローヴァ。お店の皆はとてもきれいだけど、本当の意味で女神を称するのはこの人が一番適している。そう思ってしまうのは、無理もない。
「……シルさん、その……あの」
「おはようございます。今日も、ダンジョンですか?」
「はい……あ、すみません」
手を貸してくれた。尻もちをついた僕はシルさんの手を取りその場を立つ。
立って、そして
「……あの」
「あら……なんですか?」
手を離さない。だから、距離が近い
「この距離、さすがに照れちゃいますね」
「なら、離しては」
「いやです。」
「そう、ですよね」
声の震えが顔に届く。僕とシルさんの身長差はそれほどない。間近で見るきめ細やかな肌、透き通る瞳、潤った唇、月並みの言葉だけど、眼前で見るその情報はあまりにも複雑で、僕の語彙だけでは解明しきれない。
指先がからむ。握手のようにつないだ手が、指と指を交わして握り合う恋人繋ぎに
「!」
「手、男の子の手って感じで……ベルさんのかっこいいのが、手の平で伝わってくるようです」
「……ッ」
「もう一つ、繋ぎますか?」
「え、遠慮します……その、シルさんお願いだから」
「……ふふ」
一歩、軽やかに一呼吸分の距離を置いた。間近で見た姿が、今は全身を映す。給仕のエプロン服を着た可愛らしい姿。いたずらに成功して、満足げに笑みを見せる姿
「文句……あるならどうぞ。私、聞いてあげますから」
上目遣いに、挑戦的に言って見せる。でも、文句なんてものは、当然
「…………せん」
「?」
「!……ありません、その、ごちそうさまでした」
言えるはずがない。感じる吐息、手の平の感触、お金をに換算すればきっと僕には手に余る、とにかく、過ぎたご褒美だ。
「はい、ベルさんに頂かれました」
「あの、シルさん?お願いですから、それを周りにそのまま言わないでください」
語弊がある表現、どこから知らないけどものすごく怖い獣の視線にさらされるような、とにかく言い表せない恐怖が背中を突き刺してくる。
朝のやり取り、シルさんは可愛くて、優しくて綺麗で、でも少しだけ意地悪だ。お弁当を貰う立場だから、多少からかわれるのは致し方の無いことなんだろうけど
「ベルさん、そういえばですけど……今日は早いですね。ダンジョンに行くのはいつものことですけど、何か大事なことでもあるのですか?」
「……はい、その……実は」
〇
中層、ついに果たした進出。今日はその記念すべき初日だ。
だからか、緊張でいつもより早めに目が覚めて、その上いつもよりまた少し早めに出てしまった。シルさんとあって、少し駄弁って、それでもまだ朝は完全に上り切っていない。城壁の陰に隠れて、街は少し薄暗いままだ。
で、そんな僕は今何をしているかというと
「……あの、シルさん」
「まってください、まだもう少し」
「……」
そう言われ、僕はまだ席で動かない。
シルさんに事情を話して、後はお弁当を受け取ってダンジョンへと行く。そうするはずなのに、僕は今酒場の店内で食事を待っている。
「……あの、シルさん。さっきも言いましたけど」
「駄目です。朝食はちゃんと食べないといけません」
「だから、それは露店でパンでも」
「それじゃあ味気ないです。どうせなら、ちゃんと暖かくて精の付くものを食べないと……というわけで、はい」
「!」
「いいですよ、もう目を開けてくださっても構いません」
「……はい」
目を開けていい、やっとその許しが降りて僕は少しほっと息を吐く。
どうしてか、いったい何故か、シルさんは僕に目をつぶって待つことをお願いした。でも、その割には音が静かで、別に台所で火を使った様子もない
というより、ずっと向かいの席で待っている。目をつぶっている僕の前で、シルさんは何もしていないのだ
だから、気になる。いったい、何をしていたのか
「……ん」
ぼやけた視界、それが元に戻るまで数秒。
じんわりとした映像が徐々に明快に、僕の前に置かれたお皿にあったのは
「……パン」
「はい、ただのパンです」
「……」
小さな白パン。それも一個、別に何かを挟んでいるとか、別段変わった調理は見られない
「早く食べないと、冷めちゃいます」
「……はい」
……これが、精の付く?
疑問を解せないまま、僕はそのパンを手に取った。
そして、すぐ疑問を解へと導く小さな気づきを得た
「!」
一口、二口、パンをかじる。少し甘めで、ふんわりと柔らかい上質なパンだ。
それに、このパンは
「……暖かい、でも」
それは、とても不思議な温度だ。焼きたてというわけでもなく、なんだったら少し温いぐらいだ。そう、その温度は……覚えがある。
「人肌……温めて」
「それだけ、ですか」
「……匂い」
ほんのりと、パン以外の香。どこか、甘いようで、でもそれは食材の放つ者とは質のレベルで違う。
妙に、この匂いを感じると、何かいけない気持ちになってしまう
「……あと、ほんのりと塩気……シルさん、このパン」
このパンは、一体何か
聞くため、視線をパンから離す。眼を開けてから、今初めてシルさんの方を眺めた
そして、僕は自分の目を疑った
「……あ、すみません……お見苦しい所、お見せしちゃいました」
「!」
視線を逸らした。シルさんはエプロンを脱ぎ、そして首元のボタンを外していた。
扇情的なブラジャー、そしてそこに収められた豊満な果実の作る谷間。不遜ながら、僕は女神の秘するところをその眼に収めてしまった
「な、なんで着崩して」
「ふふ、何でって……必要な調理ですから」
「でも、シルさんはずっとここに」
「はい、だからここで調理していたんです…………まだ、わかりませんか?」
「へ……それ、どういう」
「……嘘」
「!」
「もうわかってるはず……ベルさん、美味しかったですか?」
「……ッ」
思考が高速で回る。言葉ではわかっていないと言いながら
僕は、完全に解答を得てしまった。
……人肌のパン、良い匂い……それは、つまり
「……ベルさん」
「!」
色っぽい声、艶やかな呼吸が事細かに聞こえてくる。
固まって動けないでいる僕の手を掴み、シルさんはまた僕に
「……おかわりは、いりますか?」
「!!」
もう一つのパン、人肌に温められ、最上の芳香を纏ったパン
それは、僕の目のまえで、シルさんお胸の谷間から姿を現した。
「――――ッ!?」
食べたパンは、シルさんのおっぱいに挟まれ、最上の調味を施された女神の一品だったのだ。
「言ったでしょ、暖かくて、精の付くものを食べましょうって……だから、これです」
しっとりと、微かに湿り気を得て柔らかくなったパン、それ一口分千切り、僕の口元へ運ぶ。
色香に揺さぶられ、まるで石化したように固まって動けない僕に、シルさんは
「!」
「ちゃんと、食べてください……よく噛んで、味わって」
舌に乗るパン、込められた温度はどこまでも生々しく、そして味わいを甘露に変える。
舌でパンを、つまんだ指からもシルさんの味を、その温度を感じ取ってしまう
「……ぁ、こく…………しる、さん」
息が荒い、呼吸が乱れて体が熱い。
どうして僕は朝からこんな、ダンジョンに行かないといけないのに、なのに今
「……もっと、召し上がりますか」
「―――ッ」
意識がぼやける、お酒に酔ったような、どこか現実を離れた感覚に心が解けていく。
溶ける、溶けた僕はどこに行くのか。不安で仕方ない、このままが嫌になる
「……しる、さん」
ふらつく、体の芯が亡くなったようで、座ってすらいられない
「……ベルさん」
……むぎゅ、わふぅ
「……」
「すみません、すこしやりすぎてしまいました」
「…………ぁ」
顔が暖かい、何かに包まれている。暖かくて、でもこの温度を僕は味わったことがある。包まれる。うちも外も暖かく
溶けて、でもなぜか安心して、受け手止められて
「……ごめんなさい」
……なんで、謝って
「だって、あなたも悪いんです。他の皆と、あんなに進んで……だから、私も攻めてみました」
「――――」
「もう、聞こえてないですよね……ふふ、構いません。」
……いっぱい、味あわせたから
……ちゃんと、教えてあげたから
…誰の胸が一番あなたに優しくて、暖かいか
「ベルさん、私は待ってあげるけど……でも、いつかは」
日が昇る。
窓辺から伸びり陽光、それが照らす女神の姿。白髪の少年を胸に抱き、甘い言の葉を注いでくる彼女は
目を疑ってしまう。息をのみ、同時に身をすくませるような美の出で立ちは、果たして真に人の範疇なのか
「絶対に、遅れは取らない……だから、早く気づいてね。じゃないと私」
……悪い娘に、なるかもしれないから
シル可愛いよね、良いヒロインだよね……悪いこと、スルハズガナイヨネ
感想・評価などあればよろしくお願いします