AM.05:00
「……ッ」
ベル・クラネルの朝は健康的に始まる。早寝早起きは三文の徳、昔の人は上手いことを言ったものだ
ただ、その言葉の意味は正しくもあるけど、現実に起こる徳、それははたして
「べぇるくぅん……えへへ」
……ぎゅむぅ、ぎゅぎゅ
「――――ッ」
果たして、それは三文程度の小銭で済むと言えるだろうか
……神様、また
毎朝の早起き、健康的な習慣からそれは出来ているかと聞かれれば、多分少し違う。
神様と僕は別の場所で寝ているはずなのに、気づけば僕は神様と同じベッドで寝ていて、朝になる頃にはどうしてか僕は掴まって抱き枕に
そしてそのご立派なクッションに顔を塞がれて
「はぁ……また、神様……わぷ」
息が苦しくて、ちょっと危ないところで目が覚める。
……ほんとうに、いつか、死ぬかもッ
「うぅ……さむいよ、温めておくれよ」
「……ッ」
息ができない。余すことなく柔らかいたわわの前に、僕の呼吸は封じられる。
幸せな体験だけど、幸せが過ぎてこれでは天国に行ってしまう。
そして、この幸せからも抜け出ないと、僕はこの状態からどうにか神さまを剥がさないといけない。
……剥がして、でも
おそるおそる、手を伸ばして掴むは神様の腕。服の上から触れるけど、指が皮膚を押し込む感覚は柔らかくて暖かくて、言ってしまえば生々しい
「あまり、考えないように……神様、ごめんなさい」
謝罪を口にしながら、ベルは少しずつヘスティアの抱きしめをほどいていく。顔から離れる乳房の感触に名残惜しさを覚えながら、ベルは少しずつ、少しずつ
「……うぅ、さむいよぉ」
……ごろんッ
「へ……あぁアアッ!??!?」
引き込まれた。神様の腕が僕の首に絡み、そのまま僕を連れさて寝返り
その地さな体のどこにそんな力があるのか、神様に引きずられて、僕たちは
「ぐはッ!」
「……んっ」
僕は、神様の下敷きになって、床に体を打ち付けました。頭が痛い、でもそれ以上に
「あれ、ベルくん……ありゃ、僕ってばベッドから転げ落ちてるよ。ほわ、おはよう」
「か、神様……その、こんな状況ですけど、おはようございます。あと、できれば」
どいて欲しい、けど
「うぅん……ベル君のベッド。もう少し、んっ」
……ぱふぅ、もにゅり
「!」
「朝は、寒いんだ……もうすこし、おやすみなさい」
「――――ッ」
またも襲い掛かる柔らかさの暴力。
良い匂いが脳をとろかして、ぬるま湯のような暖かさは体の力を奪って行く。
「……ッ」
……起きないと、アイズさんの待ち合わせ、遅れるのにッ!
AM.06:00
早朝、アイズさんと会う。目的は訓練、だけどそれは今までとは少し違う。
アイズさん曰く、これは男女の関係についての研究、僕がどきどきして戸惑わないように、それとアイズさん自身の好奇心を埋めるため
とまあ、理屈は立てたけど、たぶん理由の十割は最後だ。
「今日の訓練は手をつなぐこと。ベル、手を出して」
「は、はい」
早朝、僕は城壁の上でアイズさんの手を握る。昇る朝日をバックにしたこの光景はさぞ映えるものなのだろう。
……よかった、わりかし普通のことで
「ベルの手、意外と大きいね」
「……は、はいッ」
変な抑揚で声が出た。握った手、とわいえ意中の異性に触れていることには変わりない。
……アイズさんの手、柔らかい
ドキドキしてしまう、握手の距離というのも中々巧妙で、すぐ近くにその美しい尊顔があると
「……ベル」
「!」
「なんで、よそ見」
「……ご、ご勘弁を」
「ふうん……そう」
……なんで残念そうに、そんなに僕の顔を見ても面白くないのに
「……手、大丈夫だね。うん、男女の勉強、取り合えずいい感じかな」
……ベルのドキドキした顔、ちゃんと見たかった。そらさないで欲しいな
朴念仁の片思い、対面の相手も関心があるくせに天然気質、どこか歪で効率の悪い、だがそれ故に
「ベル、もう少し試すね」
アイズは無自覚に、大胆な行動で少年にアタックを仕掛ける。
「え、アイズさん?」
握った手は離さず、そのままアイズはもう一方の手を取る
向かい合ったまま、合わせて手を握り合う姿、まさに恋人同士にのみ許される恋人繋ぎ、その意味をよく考えないままにアイズは実行した。
「ひゃッ!」
「……ベル、ドキドキする?」
迫る、両の手を封じられ、更には間を詰めてアイズはベルを追い詰めてくる。
好奇心に動かされて、顔を背けるベルに対して迫っていく姿はまるでキスをせがむ伴侶にも見えるだろう。
だが、そんな暢気なことはベルには浮かべる余裕などない。良い匂いで、目がとてもきれいで
「あ、アイズさんッ……あた、あたって」
「……当ててる」
「なんで!」
「……」
……むにゅ、ぱふ
「!」
好奇心が止まらない、そんなお年頃アイズに振り回されて、ベルの朝の日課は過ぎていくのだった。
PM.07:40
「ベルさん、これ今日のお弁当です」
「はい、ありがとうございます。シルさん」
アイズとの訓練、かっこと意味深が付くその内容は決して人には言えない。当然、目の前の子の令嬢にも
「ベルさん、何か疲れてるみたいですけど」
「えっと、特訓がありまして……あはは」
「あまり、無理をなさらないでくださいね。怪我なんてしたら、私心配で倒れちゃいます」
しなをつくって、あざとい演技が胸をゆさぶる。
シルさんらしい、この人の振る舞いは実に愛らしくて、油断はできない。
「……えっと、じゃあそろそろ行きますね」
弁当をバックに詰めて、僕は少し急ぎ足で去ろうとする。
不思議だ。どうしてか、最近シルさんを見ると胸がおかしくなる。ドキドキするのはいつものことだけど、何かいけないことそしているような
……あの日、なんだかよく覚えていない
少し前、シルさんに会った日に僕は疲れから眠ってしまい、起きるまで店の中で介抱されていたことがあった。
頑張りすぎだって言われて、シルさんの言葉を信じて僕はそう納得した。
僕は自分の体調を気遣うことに決めた一方で、心のどこかで少し疑問が残っていた。
そしてそれはシルさんに会うたびに大きくなって、心の中でつっかえてくる。
あの日、僕はシルさんに、何かをされたんじゃ
「……ベルさん、ベルさん!」
「!」
「まって、ください……もう、そんなに急がなくても」
「え、あぁ……シルさ、むぐっ」
振り返った瞬間、僕の口に何かが押し込まれた。
柔らかく、少し暖かい。どこか牛乳のような優しい香りがする白パン
「ごはん、食べないとダメですよ」
「……ん、あむ……はい、でも今朝はちゃんと」
「私、これからは朝ごはんも用意してあげます。特訓の後なんですから、お腹空くはずですよね」
「……」
手に持った食べかけのパン、シルさんとパンを交互に見て、少し考えて
「……はむ」
「ふふ、決まりですね……あ、お代わりあるから言ってくださいね」
「……ふぁい」
空腹、今日は別に体を動かしたわけじゃないけど、なんだか色々と持ってかれてカロリーも消費している気がする。
シルさんのパン、手作りなのかいつも食べてる味とは何かが違う、暖かいし、表面も少し味が付いていて
「どうですか、おいしいですか?わたしの……パンは」
「……は、はい。その、とても」
「ふふ、やったぁ」
シルさんが笑う。屈託のない花のような笑みに、つい羞恥で視線が逸れてしまう。
「……」
……でも、このパン。本当にどうやって作ってるのかな
「おかわり、言ってくださいね。もう一つ、もう温めちゃってますから」
「?」
PM.00:00
「リリ、ポーション貰えるかな?」
「はい!」
ダンジョンの中、僕は傷を押さえて壁に腰掛けている。
ちょっとした油断。けど、それは手痛い負傷という、忘れてはいけない反省の証を残している。
……前に出過ぎた、かな……リリに、かっこ悪い所、見せちゃったかな
「……痛みますか、ベル様?」
「ううん、でも染みるね……うん、大丈夫だよ」
服が破けて、剥き出しになった裂傷にポーションが染みて痛い。戦いのさなかなら興奮であまり気にならないのだろうけど、こうして傷の治療となると痛みはひとしお強く感じてしまう気がする。
「……」
「リリ、怒らないの?」
黙々と治療をしてくれるリリ、さっきのことで小言を貰う覚悟でいたけど、リリは何も言おうとはしない。
「なんですか、怒って欲しいのですか?」
「……いや、そういうわけじゃ。でも、失敗したから」
「そうですね、でも……ベル様は反省しているのでしょ。」
「……」
「なら、リリから言えることはありません」
これでよし、そう言って包帯の帯を断ち切った。
傷の処理は終わり。これでまた冒険に戻れる。気持ちも切り替えて、立ち上がろうとしたその時
「!」
「よしよし……痛くない痛くない」
抱きしめられた顔、僕の顔は覚えのある柔らかい感触に包まれる。ローブ越しの厚めの布でも、その弾力と豊満さはよく
「……リリ、もしかしてこれ」
「ええ、また仕込んでます。安心してください、ただのパットですから」
「……う、うん。でもなんで」
「リリはベル様を怒りません。ですが、慰めないとは言っていませんから」
「……それは、そうだけど」
「そろそろお昼時ですし、少し休憩にしましょう。ほら、リリが疲れを取ってあげますから、この胸に甘えてください。大丈夫ですよ、だってこれは、ただのパッドですから」
「……」
強引ともいえるリリの行動、リアクションを取って跳ね除けて、それで気丈に振舞うべきなのだろうけど。
……だめだ、こうされると、やっぱり弱いや
「リリ、いくらその……パッドでも」
「ふんふ~ん……ベル様、ベル様」
「……」
夢中で撫でる手を止めない。自分よりも背も低い異性にまるで母親のごとく甘やかされる。リリと僕だけの時になると、時折こうしたことが起きる。
たぶん、欲は無いと理解している。でも、なんでか抗えない
……ぱっど、だっけ?
「……でも、暖かくて、柔らかくて、落ち着く」
「ええ、まるで本物みたいな……ベルさまの大好きな、大きい乳房のよう」
「……ねえ、これって本当に」
「ええ、パッドです。だから、枕に顔を埋めているのと変わりません」
「……そう」
力を抜き、一層胸に顔を埋める。谷間に吐息を吐いて、リリの熱を吸い込む。
呼吸が落ち着く。不思議と、傷の痛みも和らいでくる。
「ベル様、二人きりですからね……お気になさらず、リリに甘えてください。いっぱい、サポートしてあげますから」
PM.05:30
「はい、これが今日の稼ぎです。頑張ってるね、えらいえらい」
「……エイナさん」
場所は変わってギルド。どうしてかいつもの換金所じゃない。講義の時に使う応接室で、僕はエイナさんと二人横並びに座っている。
「……あの、今日って講義は」
「聞いたよ、今日ケガしたって……だから、もう一度知識の再確認。アーデさん、優しいからあなたに甘やかすだけで、怒ったりはしなかったでしょ」
「……それは、はい」
「だから、飴の分の鞭は私のお仕事。さ、集中してね。今日はそんなに時間は無いんだから」
「……ッ」
熱血気味にエイナさんは迫ってくる。それはいい、言ってることは確かだし、僕も今日のことを反省して復習はするべきと思っていた。だけど
今は、そのことよりも
「あの、エイナさん」
「なにかな、ベル君?」
「……いえ、なにも」
エイナさんはずっと笑顔だ。ここにきてからずっと、エイナさんはニコニコと笑顔を耐えない。
だから、ちょっと怖い。
……怒ってる、のかな。僕、何かしたのかな
「……ベル君、君ねぇ」
「は、はい!」
すっとんきょうな返事が出る。いったい何が待っているのか、覚悟を決めて僕はエイナさんを
「…………えい!」
……むぎゅぅ
「ふぇ?」
身構えて、そんな僕に待ち受けていたのはとても大胆なエイナさん。
抱き締められた。顔に押し付けられる感触はエイナさんのそれ、僕はすぐ理解した。
……おっぱいの感触、もう覚えちゃった
「ねえ、ベル君…………最近さ、君の回り」
優しい拘束、でも声色は優しいまま、エイナさんは僕に続けて唱えた。
……最近、君の回り、大きい女の子増えてない?
「!」
「ま、それはいいの。もう仕方ないし、ベル君をみて母性が刺激されない女の人はいないしね。」
でもね、と
「だけどね、私だって女の子だよ。だから、他の娘に負けたくないの。君に魅力的だって思われたい…………でも、おっぱいの大きい、優しいエイナお姉さん、ってだけじゃ弱いのかな?」
「…………」
悩みながらも、打ち明けながらもエイナさんは僕を捕まえて離さない。柔らかさ、暖かさ、どれをとっても魅力的で、何よりこれはエイナさんにしかない魅力だから。だから決して劣るとかの判断は当てはまらない。
そう、口にして言いたい。けど、胸で、口がモゴモゴして
……しゃ、喋れない!
「だから、さ…………ベル君に対して少しアプローチを変えてみよっかなって」
「へ………エイナさん何を、ひゃ!?」
抱き締める力が強く、その上でエイナさんは大きく動いた。ソファの上、動揺して身動きできない僕に、この人は
「………い、いたッ!」
与えた。それは痛み、感じたのは紛れもなく痛みだ。
けど、その方法は
「んっ…………ンんっ!」
「ひぁ、だめ、えいなしゃん…………ぁ、はぅ」
力が抜ける、吸いとられる。
首筋、鎖骨の部分の柔らかい皮膚、エイナさんの唇が強く張り付いて、それが痛い。
痛み、でも何かおかしい。
胸の奥が沸騰したみたく熱くなって、その感覚がドキドキなんだと理解するまでに時間がかかった。
エイナさんの行為、首根っこに付けられる何か。
……え、エイナさんの、キス?
「…………ぷはっ!はぁ、ふぅ…………ふうぅ」
呼吸を見出し、顔を染めたエイナ。ベルの首に着けた痣模様を見て、満足そうに笑みを浮かべる。
強く刻まれたキスの跡、指でなぞりながらベルは問うてみる。
「な、なんで…………こんな」
「ふふ、ちょっとしたいじわる、かな。でも、抵抗しなかったよね。」
「……ッ」
「あはは、ほんとそういうところが可愛いんだから。うん、今日はもう講義は無し。いっぱい撫で撫でしてあまやかしてあげる。痛くしたぶんは、ちゃんとかえしてあげるから、ね」
「…………」
異論反論、思い付く言葉はいくらでもある。でも
「……抱き締めて、ください」
「うん、いいよ」
拒めない。ベルは静かに、誘われるままにエイナの胸に顔を預ける。
いっそ、キスのついでに骨でも抜けたのかと、本気で疑ってしまう。そんなベルだった。
PM.08:00
屋台街で適当に惣菜を購入した。今日はもう、酒場に赴く体力はない。まっすぐ帰路につく、そんな道中。
……遅く、なっちゃった。帰らないと、でも
エイナさんの元を離れて、僕は帰路につく前に在る場所へ赴く。今日は傷のこともあってポーションを減らした。だから、ナァーザさんお店に買い付けに訪れた。
店前で出迎えたのはミアハ様。呼びかけられ少し早足で向かう
「ベル、今日遅いのだな。危うく、店を閉める所だったぞ」
「はい、ミアハ様……って、それは」
「うむ、いつものおすそわけだ。こういうことは続けてこそ「あの、後ろを見た方が」……む、どうしたというのだいったい」
……ゴゴゴゴゴッ ←金を払えと訴えるプレッシャー
「ナァーザさん…………はい、そうですよね。」
「ん?」
店の奥から漏れるナニカ、ナァーザさんが耳をとがらせてミアハ様の甘い行動に厳しく取り締まる。
「ミアハ様、お店に来たんですから、ちゃんと買わせていただきます。では」
「……う、うむ」
いそいそと店に駆け込み、僕はバリスを出していつもの注文を取る。
「……今日、遅かったね。なに、してたの?」
「あ、その…………まあ講義のようなことを」
「……それで、キスマーク?」
「!?」
「だいたい察しがつくね。いいよ、聞かないでおいてあげる」
「……すみません」
「謝らないで良いのに。で、今日はどうするの、道具、買うんでしょ」
「……はい、じゃぁ」
他愛ない会話を挟み、僕は必要な道具を交渉する。
最近、こういう買い物の際にするべき交渉の仕方、正しい物の買い方というのを教わった
そう、この目の前にいる人、ナァーザさん本人からだ。
あの日、中層から帰還して、すっかりナァーザさんの印象は変わった。
「ふふ」
「!」
「なんでもないよ、ベルの顔が可愛かっただけ。」
「……ッ」
「今日も、いっぱい揉まれたんだね、女の子に…………でも、もしかして揉む側だったり」
手を前に出して、自分の胸を揉んで見せる
目を背けて顔を真っ赤にしてしまう。そんな僕を見て、ナァーザさんは楽しげに微笑む
……本当に、変わったよね。ナァーザさん
広場で僕に癒しをくれた日から、ナァーザさんは僕に対して少しだけ特別な接し方をしてくれる。他のお客には見せない、年上の、優しいお姉さんの振る舞いを見せてくれる。
そして、見せてくれるだげじゃなく、その上で
「…………ベル」
「!」
「どうしたの、ボケってしちゃって。ほら、ちゃんと買ったものを確認して」
「……はい」
指示された通り、僕は購入した。ポーションや各種道具類を一つ一つ目を通す。でも、あまり集中はしていない。
ずっと、ひとつのことばかりで
「…………あの、今日は「これ、ポーションの詰め合わせ。空き瓶も回収するから、出して」
「…………はい」
受け取った商品をポーチに入れて、使用して空き瓶になったガラスをまとめて手渡す。
……やっぱり、今日はもう
店の外ではミアハ様が通行人に呼びかけをしている。だから、今日のナァーザさんは
「……その、やっぱり今日は無いんですか?」
「……」
意を決っし思ったことを聞いてみる。でも、反応はスルー
「……その、すみません。あ、お金これ……はい、また来ます。では」
粛々とやり取りが終わる。空回りみたいで、なまじ期待していたから、どこか恥ずかしくていたたまれない。
……でも、して欲しい
求めるのはあの日の延長。お店に来て、こうしてカウンターを隔てる距離で、僕はこの人のサービスを求めてしまう。
頭を撫でて欲しい。優しい言葉を、そのふんわりとした気持ちのいい声で囁いて欲しい
ナァーザお姉さんの感触を、ほんの少しでいいから感じ取りたい。
……でも、わがままだよね。これ以上は
「失礼します、ナァーザさん」
今日は諦めよう。そう思い、出口へと足を
「……ベル」
「!」
呼び声、僕の心は一気に奮え立つ。
体がちぎれんばかりに、素早く振り返るとそこには
「忘れ物、受け取って」
「へっ」
指でくいっと、服を引っ張られ体が傾く
頭が何かに受け止められた。柔らかくて、でも弾力もある、この世で最もやさしいクッション
「!!」
「もう、こけたら危ないよ……ほら、もう行きなさい」
手に握らされた何か、けど
「……は、はい」
受け答え、でも妙に頭が沸騰して返事はおぼつかない。
「おや、ベルよそなた疲れておるのか?」
「そうみたい、フラってしたのを受け止めた。ベル、今日はもう帰りなさい。ね」
「はは、ナァーザは良い隣人だな。ベル、ではまた明日に」
× × ×
ふらふらと、どこか頼りない足取りで道を行く。
「……ナァーザさん」
一瞬、受け止められたあの時。僕の額に何かが触れた
僕の顔はナァーザさんの胸に埋もれていた。だから、触れたのはきっと
……ナァーザさんの唇
「!」
真っ赤になったベルの顔、一心不乱に走って帰路につく。
ホームについて、一人冷静になって荷物の整理をしたさい、またも仕掛けはあった。
「?」
手渡されたハンカチ、ポケットに押し込んでいたのを今ホームで就寝前にベルは開いた。
底にあったのは短い文章が書かれた手紙。コイネ―で記されたメッセージとは
……明日、ミアハ様は用事でいないから
……だから、またお店に来たら今度こそ二人きり
……もっとイイコトしてあげる。お姉さんの優しいサービス、ベルにしてあげる
……良い子にしててね、愛してる…………なんて、ね
「――――ッ」
その夜、ベルは悶々とした気持ちを押さえられず、結果翌朝に寝坊をするのだった。
一日は終わる。そしてまた、ベル・クラネルの一日は始まるのだ。
明日から出会うお姉さんは、いったいどんな人だろうか
PM.11:00 就寝
きょうもベルくんはみんなにモテモテ、よかったね、べルくん!
……チャンチャン
次回の投稿ですが、予定では来月以降に、またしばらくしてからになります。
目次で説明してるように、たわわ以外にもいろんな内容をやってみるつもりです。どんな内容で誰をネタにするか、そのあたりもじっくりと、感想やリクエストボックスを見返しながら考えていきたいと思っています。
それではまた来月に