忙しい人は前半だけで...
2日目。
午前は必修科目。
英語などの普通の授業が行われる。
「じゃ、この英文のうち間違っているのは?」
教師はプレゼントマイク。教科書付属の冊子の問題を黒板に写している。
余りに普通すぎる授業と余りに普通すぎるテンション。
プレゼントマイクの事だし、もっと叫び散らかすと思っていたのだが拍子抜けだ。
「Everybody hands up!!!!!!!!!!盛り上がれぇ!!!」
やっぱり叫ぶのか。
よくこの授業で叫べたな。
昼休憩は大食堂でクックヒーロー、ランチラッシュの一流料理が食べられる。
しかも安く。これは箸が止まりませんわ。
パクパクですわ。
「よく食うよね。あんた。」
「それを言うなら八百万の方が食べてる。」
「これは個性の都合上仕方が無いのですわ!」
「ハァ...。脂質の行く先よ。」
「どしたの...耳郎?」
「やっぱり私の味方はあんただけだなって。むしろ身長で私が勝ってるから何となく安心する。」
耳郎の視線の先を見やると、明らかに私のとある部位を捉えている。
「おっと、身長の話は地味に気にしてるからNG。因みにヒーちゃんめっちゃ着痩せするから実は...。」
「なッ!!!」
「安心しろ、耳郎。私は耳郎の味方だぜ...。」
「九重ーッ!!!!」
「耳郎ーッ!!!!」
「何やってますの...。早くしないとお昼が終わってしまいますわ。」
△▽△▽△
そしてついに午後の授業。
『ヒーロー基礎学』
初日に渡されたプリントの時間割には『担当教員:オールマイト』と書かれている。
No.1ヒーロー直々に、ヒーローとは何たるかを教えて貰えるのだ。みんな緊張と期待でソワソワしている。
「わーたーしーがァー...」
「普通にドアから来たァァァァァ!!!!!!!!!!」
「「「「おおおぉぉぉ!!!!!!」」」」
「本物だ!」
「ほんとに先生やってんだ...」
「あれってシルバーエイジのコスチュームね!」
「画風違いすぎて鳥肌が...」
流石、大人気だな。
かくいう私も少しテンション上がってるかもしれない。
「私の担当はヒーロー基礎学。ヒーローの素地を作るため、様々な訓練を行う科目だ!単位数も最も多いぞ!早速だが...今日は...」
「戦闘訓練!!!」
「そしてそいつに伴ってぇ...こちら!」
教室の脇からウィーーンという駆動音と共に番号順に並べられたケースが出てくる。
一体どんな作りしてんだこの教室。
「入学前に送ってもらった個性届と、要望に沿って誂えたコスチューム!」
「「「おおおぉぉぉおおおお!!!!!!!!!!」」」
「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」
「「「はい!」」」
▽△▽△▽
私のコスチュームは所謂着物スカートと言うやつだ。
まさしく大正ロマンみたいな、薄桃色に濃い赤の大輪と葉の緑が映える着物を紺色の帯で纏め、下は帯と同じ色のロングスカートになっている。
ヒーちゃん曰く、
「もっとカアイイのにすればいいのに!」
との事。
でも私にはこれで十分だし、これが気に入っている。
少し乱れても、根っこの部分は大和撫子でなきゃいけないと私の遺伝子が言っている。
顔も写真を見なければ思い出せない程度の記憶しかないが、"知り合い"の話だと私の母はお茶の先生をしていたらしい。
幼い頃からお茶の指導を受けていたためか、今でもお茶は点てられるし、正座は何時間しても痺れない。
特別思い入れがある訳では無いが、このデザインには拘りたかった。
因みにアパートの私の部屋は和風に改造してある。
一方、ヒーちゃんは...なんだろう...
「カアイイの権化」
みたいな?かんじ?である。
ダボッとした黒のパーカーにネオンピンクとネオングリーンのチューブが巻き付けられ、腕は装着型の巨大注射器になっている。
個性使用時の翼が巨大すぎる為、背中は首の辺りから腰までガバッと空いている。
所々にあしらわれたハート型or花型のポケット。
「花柄はキュウちゃんとのお揃いです!」
らしい。
ピンク色の可愛らしいポシェットの中には可愛らしくない得物(ナイフとか...)が入っており、背中には血を吸う用の大きなタンクを背負っている。
「そんなに沢山吸う気?」
「はい!キュウちゃんなら沢山チウチウさせてくれると思って!」
ヒーちゃんの笑顔を見ると断れなくなってしまう。
▽△▽△▽
「格好から入るってのも大切なことだぜ!少年少女!自覚するのだ、今日から自分はヒーローなのだと!! 」
真新しいコスチュームに身を包み、みんな揃ってグラウンドβへ。
顔は平静を保っているが、みんな関節の動きが飯田みたいになっている。
緊張してるのか、興奮してるのか、シンとした空気の中ヒーちゃんだけが
「カアイイ!デザイン案見た時は地味かと思ったけどキュウちゃんが着ればなんでもカアイイ!お人形さんみたい!」
と、私の頭を撫で回していた。
「折角髪もセットしたんだからやめてね。」
丁寧に頭の上からちっこくて白い手をどかす。
手は私の方がでかいんだよなぁ...。
理不尽だ。
「さあ始めようか!有精卵共!!!!」
私の平和的思考回路はオールマイトの大声にかき消された。
「あ、デクくん!かっこいいね。地に足着いた感じ!」
「麗日さん!?」
「要望ちゃんと書けばよかったよ...パツパツスーツになった...恥ずかし...」
恥ずかしそうに頭を搔く麗日にフォローを入れる。
「ま、そのくらいなら...もっと凄いのいるし!」
「すごいの?」
「ほら、八百万とかヒーちゃんとか。」
「うわ、背中すご...」
「まあ、八百万は露出多い方が個性使い易いらしいし、ヒーちゃんのは翼生えちゃうし、色々あるんだよ...。」
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」
「いいや、もう2歩先に踏み込む。ヴィラン退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪ヴィラン出現率は高いんだ。監禁!軟禁!裏商売!このヒーロー飽和社会...コホン、」
「真の賢しいヴィランは闇に潜む...」
「君らにはこれから、ヴィラン組とヒーロー組に別れて2対2の屋内戦を行ってもらう!」
「基礎訓練無しに?」
「その基礎を知るための実践さ!ただし、今度はぶっ壊せばいいロボじゃないのがミソ!」
「勝敗のシステムはどうなります?」
「ぶっ飛ばしてもいいんすか?」
「また、相澤先生みたいな除籍とかあるんですか?」
「別れるとはどのような別れ方をすればよろしいでしょうか!」
「このマントやばくなぁい?」
「ん~~~~聖徳太子ぃぃぃい!」
「良いかい?ヴィランは建物のどこかに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている。ヒーローは時間内にヴィランを捕まえるか核兵器を回収すること。ヴィランは制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえること!コンビ及び対戦相手はくじだ!」
▽△▽△▽
というわけでくじ。
チームA:緑谷、麗日
チームB:障子、轟
チームC:峰田、八百万
チームD:爆豪、飯田
チームE:芦戸、青山
チームF:ヒーちゃん、私
チームG:上鳴、耳郎
チームH:常闇、蛙水
チームI:尾白、葉隠
チームJ:瀬呂、切島
「お、ヒーちゃんがペアか。やりやすいね。」
「はい!はい!」
「あのチームずるくね?」
「ランダムにケチは付けられないでしょ。」
1発目はA対D。
緑谷のチームと爆豪のチーム...。
なんか嫌な予感するけどな。
とりあえず私たちはモニタールームに向かった。
モニター映されたのは余りに一方的過ぎる試合。
もはや試合にすらなっていなかったかもしれない。
繊細かつワイルドな戦いで緑谷を翻弄する爆豪。
捕縛テープさえ巻けば勝てるのに、一向にそれをしようとせず爆豪は執拗に緑谷に攻撃を入れ続けた。
「緑谷もすげぇって思ったけどよぉ...。爆豪は間違いなくセンスの塊だぜ!」
「私、あいつの相手嫌だわ。」
「キュウちゃんなら勝てる!」
「どうだか。私と執着が違うわ。」
私に向けてピースをするヒーちゃんに両手を上げてはぐらかす。
実際人間のいちばん怖い時は、心に3つのものの内どれかを抱えた時だ。
執着、恐怖、決意。
『デトロイトォォォオオオオオオオ!!!!!!!!!!』
『ウラォァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』
1度体制を立て直した緑谷は正面から爆豪と対峙、全力の拳を振りかぶっている。
一方の爆豪も小さな爆発を掌で何度も起こし、正面からぶつかる気満々という体制。
こりゃ被害甚大で済むのか?
「双方!中止...ッ」
オールマイトの中止措置を打ち消したのは緑谷の声だった。
「行くぞ!麗日さん!!!」
「SMAAAAAAAAAAAASH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
緑谷の拳は爆豪ではなく天井へ。
風圧で床もガラスも突き破り、核の置いてある部屋をも破壊。
「飯田くんごめんね!即興必殺!」
「彗星ホームラン!!!!!!!!!!」
床や破片を浮かした柱で野球の要領で打った。
思わず防御耐性を取った飯田の隣を浮いた麗日が通り過ぎ、核にタッチ。
「回収!」
「ヒーローチーム、WIN!!!!!!!!!!」
まさかの勝利に唖然し、静まり返るモニタールーム。
オールマイトの声が響いた。
渡我 被身子
個性:蝙蝠
5つの起動型能力の総称だ!起動型能力の切り替えには3秒かかり、同時に使用することは出来ない!(同時に使うと約1分で暴走するぜ!)
・個性:翼
背中に2mを超える翼を生成できるぞ!飛行速度もかなり早い!
・個性:変身
相手の血液を摂取することでその相手の姿になれるぞ!
etc...
(cv:プレゼントマイク)