一応ネーミングは北欧神話辺りから引っ張って来たけど、内容には一切関係ないから留意してください。
また、作中のやり取りが想像しやすいように主人公(ジョージボイスのたまご)とヒロイン(という名のツッコミ役)は挿し絵で描かせて貰いました。
鉛筆手書きの低クオリティーですいませぬ…( ;´・ω・`)
その世界の名は“トリニティー”、神の住まう世界“アースガルズ”、人や動植物、亜人が暮らす“ミドガルズ”、そして前述した二つの世界の生物が死んだ際に流れ着く死者の国、“ニヴルヘイム”の三つが織り重なって出来た世界である。
特に寿命がある者達が住むミドガルズは永き時をかけて様々な生物が繁殖し、多様化してゆき、数々の国が生まれて時に衝突しながらも文明を築き上げていく中で次第に寛容を知り、バランスを保つようになり、繁栄していた。
だが、それを快く思わないのが神の世界──アースガルズの王、ヴォーダンであった。
ヴォーダンは戦神であり、戦争を司る神であるが故に平和という状態は自身の権能を弱体化させかねないと危惧して自らの眷属をミドガルズに遣って人や亜人等の知的生命体を狩り、死した魂をヴァルハラという館に幽閉して洗脳し、自分達に忠実な崇拝者であり、ミドガルズの戦火を拡大する尖兵として利用し出したのだ。
我執に囚われた戦神は最高位の神でありながらその本分と世界の生い立ちを忘却してしまったのだろう、それは直接被害を受けているミドガルズのみならず、死者の魂を慰撫して浄化し、再び輪廻転生させてミドガルズに新たな生命を送り出す役割を担うニヴルヘイムにも甚大な被害を与えたのだ。
このままでは遠からず新たな命は産まれなくなり、世界の住人はアースガルズの神々とその神々に囚われ、隷属させられた死者しかいなくなってしまう。
「──そんな訳でニヴルヘイムの管理者である妾、ヘルはこの世界の冥府の管理者である閻魔に掛け合って彼の暴君と化した神王を打倒し得る者をスカウトしに来たのじゃ」
「北欧神話をバグらせたような惨状だな、うん」
拝啓、お父様、お母様──インフ○エンザで先に死んだ親不孝者をお許し下さい。
と、まあ…‥普通?に病死した俺を待っていたのは北欧神話のあの世の神様だった。
いや、俺普通に日本生まれの日本人だし、仏教徒じゃなくて自他共に認める変態だけども、それにしたってなんで北欧神話?そこはせめて黄泉比良坂じゃない?(世界観が)壊れるなぁ…♂️。
「せんせー、意見良いですか?」
「……‥申してみよ」
「ぶっちゃけただの変態に力を与えるより、歴史やファンタジーで名を馳せた英雄を召喚した方が手っ取り早くない?閻魔様に頼んで死人からスカウトするんなら尚更」
怒るかな?と思ったが、彼女は「うむ…‥」と、遠い目をして答える。
「妾も最初はそう思い、閻魔めに訊ねたのだがな…人の英雄は皆、既に浄化されてまっさらな生命として生まれ変わっており、ならばと半神半人や神の化身を紹介してもらったのじゃが…‥。
インドのやべー連中や中国のやべー連中しか物の見事におらんでな、アレをけしかけたら最期、戦いの余波で世界が消し飛びかねんので泣く泣く断念した」
ああ、うん…‥中国も中々だけどインドはヤバイね、神関連だと特に。家族を殺された復讐に世界が終わるまで士族を皆殺しにしてきた聖仙とか、末法の世界に堕落した悪人ごとトドメ刺して、残った善人達を新たな世界に導く未来王とか…‥あっ、でも覚者とか比較的(インド基準で)穏便な方ならワンチャン無いかな、訊いてみよう。
「お釈迦様はダメ?」
「ダメだな、説法が通じるような気質ではない──対話、説得が通じず互角以上の力を持つ者を派遣して戦わせれば世界が滅びる──ジレンマに悩まされていたある時、お主という死にたての珍妙な魂を見つけて閃いた」
女神はそこで言葉を一旦切り、答えを口にする。
「チートで物理的に殴り合うのがダメなら、カオスというギャグ概念で殴れば良いではないか」
「イカれているな…‥だが、そういう発想嫌いじゃないぜ!!」
かくして早死にした変態と血迷った冥府の女神の契約は成立したとさ。
一方その頃、ミドガルズは神々の軍勢による蹂躙劇が進み、人や亜人達の国々はもはや殆んどが屍と瓦礫が散らばった廃墟と化していた。
そんな中、人々の多くはニヴルヘイムの神、ヘルを祀っている大聖堂に避難し、そんな彼等を護る騎士達も負傷者や戦死者を出しながらも誘導して籠城していた。
なんとか一個中隊規模の騎士達を確保しつつ自国の民衆をここまで保護して来れたのは奇跡に近い──国王の庶子として生まれ、騎士としてこれまで心身を鍛えてきた金色の長い髪を黒のリボンで後ろに束ねた少女、ソフィアは治癒魔法で同胞の手当てをしながら現状の打開策を思いつけずにいた。
将軍や騎士団長はこの撤退戦の発端となった神々の超常的な力による転移による首都への奇襲を受けて戦死、国王もまた、このままでは自国に住む者達を皆殺しにされてはならぬと自ら囚われの身となり、時間を稼いでいる。
その結果が王の庶子であり、騎士として育てられてきた彼女に繰り上げで暫定的な指導者の役割が回ってきたのだ。
庶子とはいえ騎士団の者達を始めとする周囲の人々はソフィアを対等に扱い、優しく接してきてくれた上に人並み以上の善性を持つ彼女は責任を捨てて逃げるという選択肢は無い。
だが、いずれにせよ血に餓えた敵の軍勢がここを包囲し、攻め落としにくるのはすぐである。
神々の国にいる異形の馬の足はミドガルズの馬とは比べ物にならぬ程
ソフィアは治療を終えるとなんとなしに大聖堂の奥にある、祈りの間へ足を運びながら思考を巡らせる。
ーとなると、民衆を逃がすためにやはり自分を含む騎士達には負け戦に挑んで死んで貰うしかないかー
と、彼女が悲壮な決意をしている時であった。
祭壇に閃光が迸る──それを目の当たりにしたソフィアはすわ、敵襲かと身構えるが、その閃光が収まった所に鎮座する物体を観て、思わず絶句した。
そんな彼女を見た楕円形(?)に黒線の手足を生やし、禍々しい顔を付けた物体は フム…と、少し思案してから口を開いた。
「たまごです、よろしくおねがいします(CV.中○譲治)」
無駄に渋いイケボで発せられた挨拶らしき第一声に、彼女の頭は混迷を窮めながらも必死にどう切り返すか、目まぐるしく回転する。
だが、現実は無情だ──どうしようもないくらいに目の前のナマモノに対する情報が無い。
唯一わかった事はこのナマモノは先程の言葉からして卵を自称しているという事ぐらいである、だからなんだと言う他にない。
「お前のような卵があってたまるか」
姫騎士ソフィア、物語によっては悲劇から立ち上がる英雄として名を馳せそうな彼女は目からハイライトが消えそうな虚しい感覚に陥りそうなのを懸命に耐えてどうにかツッコミを入れた。
これが冥府の女神から贈られた特典によってナマモノと化した元地球人とファンタジー世界の人間のファーストコンタクトである、奇跡と魔法を謳い文句にしている正統派ファンタジーノベルに土下座をせねばなるまい。
BOY MEETS GIRL!!
みんな好きじゃろ?女騎士(ゲス笑い)。