「──という訳で私はこの世界のあの世の神様に協力するため、ここに来たんだ。たまごになってな!!」
「自分の事を元人間だと思い込んでいる異常な卵じゃないんですか…‥」
大聖堂、祭壇にて騎士ソフィアは絶望的な状況に現れた自分達が信仰している神の使者、或いは救世主的な役割を持つらしい存在に対してかなり塩対応であった。
これが歴戦の英雄だったのなら彼女も歓迎しただろう。
或いは彼の世界にあったなろう系と呼ばれるネット小説の一部界隈で一時流行っていたタイプの主人公ならば、めんどくさく思いながらも利用するだけ利用して、用済みになった所でどう始末をつけるか画策しながらも、いよいよの時までは笑顔を貼り付けて適度にヨイショしてやっていたのかもしれない。
だが、たまごだ──しかもガワは卵っぽいクセに煮ても焼いても食えなさそうな意味不明のナマモノである、どう扱えというのだ。
これならば適度に美女を与えて性欲と承認欲求を擽って満たしたりしてやり、下手に出てお願いすればホイホイ言う事を聞いてくれる俺TUEEE!!主人公の方が扱いが楽だ──どうしようもないくらいに性根が腐っていたら、言葉巧みに弱点を聞き出すなり油断させた所で首を斬り落とせば済みそうだし。
なお、読者諸君に分かりやすく説明出来るようにネット造語的な言葉を用いたが、これが今のソフィアが考えている概ねの内容である、実に強かな人間だ──流石ヒロイン汚いな、実に汚い…そこに痺れるゥ!憧れるゥ!!
だが、さしもの彼女も相手がUMAとなっては分が悪すぎた。
ーおお、神よ!なんでこんな訳の分からないナマモノを送りつけて来たのですか!!ー
返事はない、ソフィアは神に人の心は分からないのだと理解した。
頭を抱えている彼女の姿を流石に見かねたのか、たまごを自称する不審な転生者は転生前に、契約主から預かってきたからメモ書きを口から吐き出した。
「あ~…‥とりあえずそんな訳でその女神から私に対する取扱い説明書を預かってきたので、まずはこれに目を通すと良いかと」
「嫌がらせですか!?これは人生八方塞がりに陥っている私に対する嫌がらせですかッ!?」
「大丈夫、大丈夫、タマゴだから唾液とかは付いてないから」
「貴方、異世界出身とはいえ元人間ですよねッ!?最低限のエチケットとか、そもそも訳の分からない存在になってしまった事に対する疑問とか無いのですか!?」
「ないです」
「もうやだ、このナマモノ…‥チェンジできないかなぁ…‥」
姫騎士ソフィア、敵が来る前から早くもグロッキー状態である。
「チェンジは出来ないが、変態(変身)は出来るぞ!!」
「ただでさえ存在そのものが変態的なのに、それ以上変態行為に走らないで下さい!!」
タマゴはソフィアを励まさんと自己アピールをするが言葉のチョイスが絶望的に悪くて玉砕した、玉子だけに。
しかし、当の本人(“人”扱いが当てはまるかは甚だ疑問だが、とりあえず便宜上として人扱いする)はストレートな存在否定の言葉に「悪くない…少し昂る」と、興奮している。
しかしながら時間というのはどう足掻いても、ナニをヤろうと止まらないモノである──一人と一匹が漫才を繰り広げていると、目の前の空間に突如、巨大な光の柱が生じてそこから数十名の武装集団が現れたのだ。
「ああもう!こんな事している間に敵襲じゃないですか!ヤダァァァ!!」
どうやら彼女の懸念通り、アースガルズの軍勢が転移によって電撃作戦を仕掛けて来たようだ──現に死者の兵士達は無言で生き残りの人々を纏めている頭目であるソフィアを取り囲み、隙あらばその頸を獲らんと殺気立っている。
そんな中、タマゴは死者の剣から彼女を庇うように立つ──が、鶏卵位のサイズでしか無いため非常に微妙な画となってしまうのだが、それはさておき。
「取り敢えず変身の仕方がわからないから、急いでその取説読んで下さい!!」
「なんで!?」
そんな間の抜けた応酬があった次の瞬間、無数の剣刃が姫騎士とナマモノに殺到する。
やべぇ、初っ端から何も出来ずにオワタ\(^o^)/───そう思っていた時期があったたまごです、たまごはどこにでもいます、よろしくおねがいします(ミーム汚染)。
結論から言うと彼等の攻撃は光の壁に遮られて此方には届かなかった。
「あ~もう…‥最悪です、民間人を逃がすために取っておいた魔力、これですっからかんになりました。なんで自分の能力の使い方すらわからないんですか!?」
どうやらこの障壁はソフィア殿の魔法らしい、そして彼女の怒りは尤もだが、こればかりはギャグでもなんでもなく、真面目な理由があるのだ。
「すまない、助かった。実を言うと女神ヘルと私が契約を交わしたタイミングは本当にこの状況になるギリギリ前の時点で、そこから手遅れにならないよう、急ぎ転生させられたのでそういった説明は現地でする
「うっ…そ、そうだったのですか。ならば仕方ありませんね、気が動転し過ぎていました。謝ります──では早速説明書を見るとしましょう」
「頼む」
一先ずはどうにか落ち着いたので、彼女に早速説明書を開いて貰い、目を通して貰う──が、その直後、ソフィアの顔から表情が
『転生者■■■と、ミドガルズの民へ~
転生体“エッグ”の能力説明。
卵とは生命の起点という概念であり、即ち無限の可能性を秘めたる物である。
故にその体に備わっている能力は“体の主のイメージする姿への変態である。”
変身時間等の説明もあるが何分時間が差し迫っているため、それは追って別紙を送るから取り敢えず変態するための条件をここに書き記す。
ソイツをどこか柱の角など、硬い所へ──
転生早々ダイナミック自殺が能力の発動条件とは、あの世の女神も中々鬼畜である。
もし私が前世同様、人間の身体だったら危うく股間の射突型ブレード♂️が暴発する所だった…フゥ。
「いや、貴方はそんな扱いで良いんですか!?」
ここで会ったばかりのナマモノに気を遣える辺り、彼女は本当に優しい性分なのだろう。
だからこそ、私はそんな彼女に私をかち割る役を頼むのだ(外道)。
まず、願いを聞いて貰うには相応のポーズを取らねばなるまい。
私は頬を赤くし、眼を潤ませながら上目遣いで彼女にお願いをする。
「(身体を力ずくで砕かれるのは)初めてだから…‥出来れば優しくシて欲しい…‥」
その瞬間、ソフィアの眼からハイライトが消えて彼女が絶対零度の殺意が乗った眼光で此方を観ながらがっしりとこの身体を掴む図に快感が電流の如く身体中を駆け巡る。
そして───ソフィアはまさに般若のような形相で、私をこの部屋の壁の角目掛けて全力投球した。
「死ねえェぇェェエ!!」
「ンア”ァ”────ッ♂️!!」
未だかつてない衝撃が身体を千々に砕いてゆく──私はそのあまりの快感に野獣のような咆哮を上げた。
ブチキレたソフィアの全力投球によって砕け散ったタマゴから溢れ出す夥しい量の白濁ぇ──眩い白光の奔流が広間を束の間、満たす。
そしてその光が収まった時、ソフィアが観たモノは──ウサギを模したキグルミのような愛くるしい頭と、褌だけを身につけた筋骨隆々の雄々しき肉体が合体したナニカだった。
「うっ…‥!?」
そのおぞましさに対する生理的な拒絶反応が、ソフィアに強烈な吐き気を催させる。
姫騎士ソフィア、ゲロインになるか否か尊厳の危機だ!!
待たせたな…‥これが転生者、戦闘形態“(メッフィー)滅非威”ちゃんだッ!!
うん、ごめん。モデルは作者が大学時代にやったハロウィンイベントのコスプレなんだ()。
某形態魔獣のかくとうタイプなゴー○キーのキグルミ胴体と、ミッフ○ーちゃんのヘッドパーツをアセンブルしたヤツ。
なお、ソフィアちゃんは根っこは比較的善人だけどこれまでの過酷な戦いで心身が疲弊した所に変態ナマモノを送り込まれて精神的に大分キちゃったため、敵対者と変態は容赦なくギルティな判定になっています(笑)